相変わらず、修行とそれの成果の試しを3ヶ月に一回の闘技場での繰り返しを2回行った時、ある人物から着信が来た
『やぁ☆』
「……」
『聞こえているだろ?♪』
「…聞こえてます」
そう、ヒソカからの電話だ。意外にも付き合いが続いている。
何かヒソカの戦いたい欲求が出たときに相手を度々している。そう、度々しているのだ。
闘技場以外で、どこからそんな土地を用意したのか全く分からないが、何時も違う土地を用意して暴れる。
一度マジで殺しに掛かられたけど、何時の間にやら自力もかなり縮まってきたみたいで、何とかなった経験がある。
あの時は、完全に火事場の馬鹿力だった。ぶっちゃけ、此方も結構重症だったけど、あっちも腕とか俺が吹っ飛ばしたので何とか死なずに済んだのだ。
「またやるんですか?」
『いやいや☆今回はちょっとお願い事さ♪』
「お願い事…?」
いや、でもよくよく考えてみると、何時も願い事だよな。戦おうっていうお願い事だよな。
『そ☆その内容はね…』
「で、何故か美術館の警備に配備されたという…」
ヒソカも慈善活動をやっており、こういったこともやっていたそうだ。
意外や意外で、何かもっとこう…派手に稼いでると思ったけど
『まぁとある理由でね☆』
という理由で普通に活動もしていたらしい。
その他にも、いろいろやっているとの事だけど、その中の一つに警備があった。
が、その警備と丁度自分の属している団体の活動の日時が重なってしまったらしい。
どっちが面白いか考えて、団体の活動を取った。そして警備が空いてしまうので、その助っ人にということで誘われた。
これはプロハンターでは契約ハンターに最も近い活動だと思う。よって、そういった経験もしておきたかったので承諾したのだ。
というか、ヒソカが属してる団体って確か、幻影旅団だよね。A級賞金首の盗賊団。どっかで盗みがあるのか…
まぁココの警備頼まれたのだから、旅団の活動場所がココではないということは確かだ。
「よ、お嬢ちゃん」
「あ、こんにちは」
そういって声を掛けてきたのは、同じフロアを担当しているバロガンさんだ
年は大体30~40のベテランといった所で、プロのハンターではないけど、念は使えるようだ。
その腕を買われて、こうやって契約ハンター紛いのことを行いながら生計を立てている。
この美術館は2階建てで、その2階に飾ってある「レッドムーン」というかなり大きなダイヤ…のはずなのだが、何故か赤い。
その為レッドムーンという名前が付いたのだが、これが少々曰く付で、呪われているらしい。
持っている者を不幸にするとか何とかや、何人も呪い殺されたとか、まぁ諸説あり今は国に寄付されて各地の美術館を回っているというのが現状。
オーラもそれなりにあることから恐らく何かの念が篭っていると思うが…藪をつついて蛇なんか出てきたら嫌なので
ちょっとお願いして手袋を装着して触らせてもらっただけだ。
そしてそのダイヤを守っているのが別の今度こそプロのハンターで俺たちは二階への入り口を警備に当たっているのだ。
全部で20人。かなり物騒に守っているが…何かあるのかな?
「まさか、あのヒソカがこんなちびを寄越すなんて…と思っていたが、君を調べると天空闘技場の200階クラスの実力者ではないか」
「私も使えますし、いいお小遣い稼ぎにもなりましたよ」
「はは、そうか」
「そういえば、ヒソカさんをご存知で?」
「まぁ一方的に知っていると言った所かな」
そう語りだすバロガンさん。ヒソカは警備の仕事を確かにしていた…が、持ち場なんて関係なく警備し、何かを待っていたとの事。
それが数年前の話で、ある日を境にそこから全く警備に顔を出さなかったが、腕は確かなので依頼をすると、たまに俺みたいに腕利きであろう人物が代わりに来るらしい
そして、今回限りでヒソカへの依頼をしないことになった。とのこと
「まぁ、恐らく何か脅されたんだろう」
「ははは…そうでしょうね」
何か待っていたか…幻影旅団と関係があるのかな?……いや、ヒソカなら確実に自力でたどり着けそうだけど…まぁ考えても仕方がない。
「しっかし、警備ってこんなに念能力者を雇うものなんですか?」
「いや…本来なら能力者は一人二人が妥当なところだ…だが、その倍。四人もいるし、内二人はプロのハンターだ…これは何かあるぞ」
やっぱりかー!?何かって何だ?やべぇ、今からジャンプして家に帰りたい。お家に帰りたいよぉ…あったかシチュー…
冗談は程ほどにして、なるほど…けだ、やれることは限られてくる。
この二階に行くにはこの階段を利用しなければ到底上れないはずだ。
まさか壁を破壊して二階への直通通路なんて作らないだろうし、窓なんて上っていたら外の見回り組みに蜂の巣にされるのが目に見えている。
「まぁ、俺たちが守るのはココ。ココだけ集中して守ればいい」
「ですか。分かりました」
その後も一通りアドバイスを頂いて警備に集中。今の時間は2330。つまり午後11時30分だ。因みに契約時間は0800まで。開館時間だ。
「此方二階階段前、異常ない」
『了解』
トランシーバーで定期報告をするバロガンさん。慣れた手つきで行う姿はベテランといった印象を受ける。
しかし、警備ってかなり疲れるな…円の持続ではないが、たまに円を行ったりしながら警戒態勢は正直疲れる
「ま、そう硬くなるな。何かあるといっても殆どの場合、何にもなく終わることのほうが多い」
「そうなんですか?」
ああ、とバロガンさんが頷いた。びしっと着こなしているスーツがやけに似合っている。そうダンディである。
対して俺もスーツ姿である。動きやすいように女性用のスラックスを履いている。かなり無理があるが、この顔だと何故かちょっと様になってる。不思議。
バロガンさんのアドバイス通り、気を楽にしながら夜食のパンとカフェオレ(購入した物)を飲食しながら待っていると…
『お、応答願う!此方、しょ…ぎゃあああ!』
「おい!?どうした!?」
マジで来やがった。トランシーバーから断末魔の叫びが聞こえ、外から発砲音が鳴り響くが…少し時間がた経つと直ぐに無くなった。
「…何か起こりましたね」
「……俺だって何時も予想が当たるわけじゃない」
そらそうだ。確実に未来を当てられる能力があったら是非…あれ?何かそんな能力無かったっけ?
まぁいい、今は…
「なんだ?子連れのおっさんか?」
「フィンクス、どっちも能力者」
そうして奥から歩いてきたのは……ん?んん?んんんん!?
「げ、幻影旅団?」
「何!?本当か?」
男の方はツタンカーメンの被り物をしており、ゆったりとした服で、古代エジプトのコスプレでもしているのではないのだろうかという、総合的に見てなんか変な男と
黒い髪、大きな眼鏡、黒いタートルネックにジーパンというシンプルな服装に、逆十字のネックレス、そして手にはぎょぎょと言っている掃除機を持っている女性。ちなみにナイスバディ
「俺たちを知っているのか?」
知っているも何も…原作でって、しまった。普通は知らないんだ。つうかマイナーな宝石にこんな大物が来るなんて…聞いてないぞ!?
「いえ、知りませんが、情報として全員が一流の念能力者だという事だけで予想しました」
「へー…おいシズク。このガキは俺がやる」
そうしてエジプトコスプレ男改め、フィンクスが此方に攻撃的なオーラを向けてきた。
というより、強化系は向こうに行け!確実にヒソカより堅いじゃねぇか!?
「…気をつけて、結構やばいオーラ纏ってるよ」
「は!上等だよ」
くそ、覚悟を決めるしかない。そうして俺も臨戦態勢に入りながら
「バロガンさん」
「何だ?」
「おいしい所紹介してくださいよ」
「ああ、たらふく食わせてやる」
そうして、俺はバロガンさんと反対側のフロアに行きフィンクスを待った。
ルクルが行ったフロアは縦14メートル横20メートル高さ5メートルの美術展示品が至る所にセットされている比較的大きな部屋だ。
展示されている物は主に文献や、当時の遺品などで、武器に使えるものは殆ど無い。
そのフロアに入ってきてルクルはフィンクスを待ったのだ。
「よお、警備は良いのか?」
そうして遅れる事数秒。フィンクスがルクルがいるフロアに足を運び入れた。
既に堅の状態が維持され、凝も淀みなく行っている所から実戦経験が豊富という事は明らかであった。
「あなた方みたいな方を排除するのが警備です。ただ、このままじゃあの通路の所にはバロガンさんしかいません。ですので」
その言葉で切り、ルクルも堅と凝を展開する
「ヒュー」
フィンクスと同じくらい力強い堅と共に発現した禍々しいオーラ。フィンクスもオーラ量に恵まれている方だが、ルクルはさらに上を行っている。
その事に感激し、フィンクスは自然に口笛を吹いていた。
「貴方を早々に排除します」
更に力を増すオーラ。ルクルはこの時、全開の7割のオーラを使用していた。
何故最初から全力ではないかというのは、単に相手にこのオーラ量が最大という認識を持った際に生まれる余裕を突くためである。
一撃が軽いルクルが足りない頭で一生懸命考えた単純な作戦。だけど、決まれば大きい差が生まれるであろう作戦だ。
「へー…面白くなってきたじゃねぇか」
そうして構えるフィンクス。
そして、先に動いたのはルクル。足の裏にオーラを集中させて爆発。0-100の高速移動による急接近で一瞬にしてフィンクスの懐に入る
(何?!)
驚くフィンクスに容赦なく流によるオーラの高速移動を用いた右ストレート。
空を裂いて迫るそれを冷静にフィンクスは同じ量より少し多いと思われるオーラで払いのける。こうすることにより、自身の腕へのダメージを抑えられるからだ。
パンと、空気がはじける音が聞こえ払いのけられるルクルの拳。その反動を利用して、回転し、足払いを掛けるが、バック転で難なく避けられる。
「…やっぱ強いですね」
そうしてフィンクスを見るルクル。フィンクスは仕切り直しと言わんばかりにポケットからハンカチを取り出してルクルの拳を払った手を拭っている。
「そりゃな、俺たちは蜘蛛だぜ?」
そう答えるフィンクスだが、内心は冷や汗が出ていた。
(奴のオーラ…かなりオーラが込められている)
そう、フィンクスが予想していた、いや、外から見るオーラがフェイタンの予想以上に込められていた。
(多めにオーラを込めて命拾いしたのか…クソ!)
あの時オーラを多めに込めなかった場合、払いのけが上手く決まらず彼の方がダメージを受けていたのは必須であったのだ。
「だけど…私の勝ちです」
「は!……ハッタリはよせ…お前はここで死ぬ」
その言葉と共にフィンクスが仕掛ける。こちらも足にオーラをためて爆発させ、加速力を得てルクルに突っ込む。
一瞬で背後を取られるルクルだが、予想をしていたのか、小さいオーラ弾を発射して牽制を行い、そのまま裏拳を放つ
それをスウェーで避けて裏拳を手の平で止めて握る
「捕まえたぜ!」【サイクロン・リッパー】
早々に決着をつけるべく、自身の能力を使用し、跡形も無く粉砕しようとする為に肩を回そうとする…が
ルクルはその瞬間に念を発動させた。
【ジャンプ】
「何!?」
掴んでいた筈の手の感触が無くなり、衝撃。
「ゴフ!?」
全身がバラバラになるような衝撃が駆け抜けて強烈な打撃音と共に壁をぶち破り外へと転がっていった。
「…ふぅ…やっぱこれ初見殺しだな」
長期戦にするつもりは全くなかったし、殺そうとも思わなかった。
そう、俺の今の仕事は警備。あの階段の先へ敵を行かせてはいけないのだ。
というより、長期戦にもつれこむこと自体、俺にとって不利になっていく。
まず自力が違うのと相性が悪い。ストレートを振り払われた時に感じたオーラの攻撃力は確実にヒソカ以上であった。
そしてそれは防御力にも比例する。故に短期決戦に臨んだのだ。
だからこその硬での攻撃だった。この攻撃で相手が死んでもいいやと思っていたが…恐らく生きている。まぁ俺に殺意がなかったというのもあるが。
サイクロン・リッパーを発動する直前だったのか、流ではなく堅による防御を行っていたのは眼で分かった。
しかし、こちらは硬を使用しての空中でのサイドキックで背骨を折る勢いで攻撃したのだ。
いくら強化系能力者でも俺のオーラ量で硬をしたら無事ではいられない筈だ。
もっとも、サイクロン・リッパーが決まる直前にジャンプしてやれば確実に勝てたと思うけど…
もし避けれなかった事を考えたらやっぱりあのタイミングでするのが良いかなと思った。
そうして隣の階段があるフロアに行くと
「ぐ!?」
「しつこい」
バロガンさんが地に伏しているが、必死にオーラを操って交戦している。
対するシズクは全くダメージが無く、掃除機で飛んでくるオーラや、トラップだろうか、床から出てくる無数のオーラ弾を華麗に避けていたり、すっている。
その度に胸がぷるぷる振るえているのは正に圧巻である。
「っは!バロガンさん!!」
その言葉ともに、バロガンさんを攻撃しようとしていた掃除機に攻撃をいれようと、オーラを爆発させて距離を詰める
「え?」
此方に若干驚いた顔を向けるシズクに構わず、腕ごと蹴り飛ばす。
「くぅ!?」
縦に回転して後ろへ吹っ飛ぶが、空中で直ぐに体制を立て直し、壁を蹴って着地する…という大きな隙を逃さないために、オーラを爆発させて接近。
着地という大きな隙を逃さないべく、ドンピシャのタイミングでシズクを拳でとらえる事が出来たかに思えたが
「デメちゃん!」
瞬時にデメちゃんなる掃除機を具現化してそれを盾に私の攻撃を軽減し、シズクも防御しダメージを最小限に抑えられた。
「流石ですね」
「…フィンクスは?」
「倒しました」
驚きの表情でこちらを見るシズク。やっぱ可愛いなおい。
……いや、フィンクスをマジで倒そうとすると此方がかなり不利だと思うのでそんな事はしたくないが、今はまだ戻ってくる気配が無いのでまぁ倒した事にしよう。
「これで、2対1だな」
そうしてバロガンさんが俺の隣に並ぶ…が、おいおい、よく見ると左の腕の骨とか折れてるよね。明らかに。
「あの、休んでいた方が…」
「ふ、俺の能力は腕が使えなくても行使出来るぜ」
【カラーズトラップ】(色罠)
能力が発動したのか、バロガンさんのオーラが減少する。
「この能力は俺の円の中に無数の罠を配置できる能力だ」
その言葉と共に俺も凝で周りを見ると…なるほど、微かにオーラの残りカスが見える。
「しかも配置した箇所のオーラには円が掛かっており、自動で敵を攻撃する事が出来る…そしてそれを任意にも発動する事が出来る、つまり…」
バロガンさんが腕を振るうと…シズクを中心した円形から一斉に無数の念の弾が射出される。しかも様々な色が付いている
「更に、各色の念弾は効果が違う。赤は高熱、青は冷却、黄色は電気、そして白が何も効果が無い攻撃力が高い念弾だ」
なるほど、それが無数にシズクに向かっていく、が、相手は腐っても蜘蛛だ
「デメちゃん!私に迫ってくる念の弾を全て吸いこんで!」
『ぎょぎょ!』
瞬時にデメちゃんを具現化し、ジャンプして全てを吸い込み始める
「ち!これだから…本当は念の弾も操作できるが、あの吸引力にはなすすべも無かったのだ」
そりゃ、相性悪いな。殆どの攻撃が吸い込まれるし、普通にシズクのオーラ量、質共にかなりレベルが高く纏まっているので、倒すのは至難であろう。
「しかし、今は私がいます」
そう、今は俺がいる。吸い込み途中のシズクは無防備。そこを狙う。
空中に居るシズクは行動が不可能。よって、瞬時に詰めよりジャンプ。硬による踵落としを右肩にプレゼントしてやる。
「くう!?」
相手も流を用いての防御だったが、足から骨が折れる感触が伝わってきたのは確か。これで右腕は使えない。
そのまま地面へ落下し、バロガンさんの念の弾にに身を曝されて、のた打ち回る。
堅を維持しているから恐らくまだ死んでないと思われる。が、やはりかなりのダメージを負ったのかくぐもった声を上げている。
追撃で更に場外へ蹴り飛ばして、壁を突き破っていけ!と思い接近し、溝を思いっきり蹴りあげ吹き飛ばそうと思ったら、突然風を切る音がしたのでしゃがんで避ける。
通過したのは石。しかし、オーラが纏ってあり、殺傷性が高い。
「お前の相手は…俺だろ?」
声がした方向を見ると、フィンクスが此方側に歩いてくるのが見える。
「…まぁ死んでないのは分かりましたが、タフですね」
「……ぜってぇ殺す!!」
足元に居るシズクには手を出さずに、瞬時にフィンクスの間合いへ接近する。
それを迎え撃つフィンクスは先制にオーラが籠った高速のストレートを俺に繰り出すが、逆に俺がそれをオーラも用いて払いのけてやる
空いた胴体に左足でのサイドキックをするが、ブリッジをして避けられ、そのまま距離を取られるが、それに追随して顔面に向かってボレーキックを繰り出す。
それも頭一つ小さくなり最小限の回避でやり過ごされて、アッパーをカウンター気味に繰り出されるが、ジャンプを発動し、アッパーを繰り出している右手の左側面に姿を現す
既にボレーキックから蹴りあげに動作を移行していたので、消えて現れたと同時にドンピシャでフィンクスの顎を打ち抜いた。
「ぐ!?」
消えた所で恐らく堅をしたのだろう。骨は砕けなかったけど、脳はぐらんぐらん揺れているはず。
というより、よくまぁ一回見ただけで対応してくるよ。本当に化け物だ。
しかし、そこまで。
「はあ!」
硬による攻撃を溝に放とうとするが
「くそがぁ!」
恐らく我武者羅だろうが、此方の拳に硬による攻撃を放ってきた。
そして激突。衝撃波が広がり、展示品が吹き飛ぶ。
「あぐ!?」
くそ!やっぱ強化系の攻撃力は強い!オーラで保護していない腕の骨が悲鳴を上げているのが分かる。
折れてはいないが、罅位は入っていそうだ。が、ヒソカと戦ったほどじゃない!
威力負けした衝撃を利用して回転し、足払いを掛けた。
「くそ!」
やはり顎を打ち抜き平均感覚が安定していなかったのだろう、避ける方向が後ろではなく、斜め後ろになっており、俺の足払いに掛かった。
そのまま足を振り上げて踵落としをブチかましやるよおおおおおおおおお!
「こなくそおおおおおお!」
閃光といってもいい速度で降ろされる踵落としに、硬で強化して思いっきりフィンクスの胴体に振り下ろした。
「がはぁ!?」
堅をしていたが、此方は硬でしかも速度、力共に完璧に入っている。
フィンクス中心に床に蜘蛛の巣城の亀裂が走り、更に若干遅れてクレーターが爆発に近い音と共に生まれる。
そして先ほどより強い衝撃波が室内全体を襲い、窓ガラスが全て割れる。
「や、やったの…か?」
土埃が晴れるなか、バロガンさんが呟く。フィンクスから距離を取って声がしたほうを見ると、どうやらオーラが殆ど無く、回復に専念していたようだ。
「…いえ、死んでおりません」
その言葉と共に土埃から姿を現したフィンクスだが…
「ぐ…はぁ……はぁ」
吐血しており、恐らく内臓にかなりのダメージを負っている。ふらついている足で漸く立っている状態だ。
「…本当にタフですね」
「う…ぐ…うるせぇ……!!」
瀕死だというのにオーラがまだ好戦的だ…なんという精神力。これが彼の強さなのか。
しかし、それでも止めを刺そうとした時に
「遅いと思ったら、二人ともこんな所に居たか」
「うわ…フィンクス、大丈夫かい?」
「シズクは回収したわ」
二階から一人、一回正面玄関に通じる通路から二人このフロアに入ってきた。
って…やべぇ…団長と、あれ、シャルーナクだっけか、とマチたんだ。マチたん可愛い
「へ…これから逆転するんだよ!」
「いやぁ…無理だと思うけどなぁ」
「うるせぇ!」
俺もバロガンさんを回収して、旅団が集まっている反対側に身を移す。
戦力を確認してみよう。こちらはまず俺と…プロハンター二人は…
「宝は頂いた。ここに用は無い」
「…二人念能力者が居ましたよね?どうしました?」
「答える必要があるか?」
……プロハンターは全滅。よって此方の戦力は右腕が負傷している俺とオーラが全然ないバロガンさん。
対してあちらは、気絶しているシズクと瀕死のフィンクスを抜かすと、無傷の団長様と無傷のシャルーナク、無傷のマチたんだ
「フィンクス、誰にやられたんだい?」
「あの女の方だ…かなりやるぜ、シャル」
「へー…ああ、見おぼえがある。確か天空闘技場の200階クラスの女の子だよ。名前はルクル。今年で14歳だったはず」
「14だと!?」
その言葉と共にフィンクスががっくりと膝を突く。
そして「俺が14の子供に…」と呟き攻撃的なオーラが引っ込んで通常の堅に戻った。
「ほう…14か……」
「…………」
やばいやばい。やばいって…流石に三人の相手は無理だし、クロロに至っては能力の全貌が明らかになってない以上手を出すのは危険すぎる。
さらに、念を盗まれる可能性も存在しているし、なにより、シャルーナクとマチたんが居る…勝てる要素が万に一つもない。
「どんな能力で倒したんだ?」
「………」
「…だんまりか、まぁいい。此方の目的は終わった。長居は無用だ。引くぞ」
その言葉と共に、悠々と去っていこうとする団長に、フィンクスが
「おい!こいつらは殺さないのか?」
「…必要無い。それに、お前らが中々来なくて時間を取りすぎた、直に奴らの応援が来る」
「だが!!」
「団長命令だ」
ぐっとうなってフィンクスがシャルーナクの肩を借りて立ち上がる。
そして此方を睨んで
「お前は俺が殺す…必ずな!!」
その言葉と共に幻影旅団のメンバーはこのフロアから出ていった。
「「……はぁー」」
幻影旅団が出ていって数分、場の空気が一気に緩み、ため息を吐いたらバロガンさんも一緒にため息を吐き、タイミングが重なった。
「…ダイヤ、取られちまったな……」
「……」
「まぁ、生きてるだけで儲けもんだ、というより、お前さん。かなり強いな」
そう言って立ち上がり、二階へと続く階段に腰を下ろしタバコをふかした。
「まぁ、それなりに鍛えてあるんで…」
そうして俺も隣に腰を下ろす。正直、もう警備したくない…ん?メールだ
そうして見るとヒソカからのメールが着信され中を見る。
『生きてるかい☆』
……これで分かったが、こいつ知ってて俺に警備を回したに違いない。むしろそうとしか考えられん。
「…はぁ、次は絶対にぼこぼこにしよう」
「……お前くらいだぜ幻影旅団にそんな事思えるのは」
俺はもう勘弁だぜ。と、首を振り、絶状態になって体を完全に休める状態になった。
そして言い返そうと思ったけど、ヒソカも幻影旅団だったから別に先の言葉を否定しなくていいなと一人笑った。
そう、世の中は割と狭いと思いながら、右手にある瞬間移動で取り寄せたダイヤを覗き見たのであった。