第零幕
「絶望したっ!もうこの世の全てに絶望したっ!!」
「先生!」
そう唐突に言い残し彼、『糸色 望』は教室を飛び出した。
「もう全てに絶望した!私なんてもう生きている価値など無いんだ!死んでやる!!もう死んでやるっ!!」
彼は駆け抜けた。人生と名づけた公道を一心不乱に駆け抜けた。
「もう、もう...s「そう。じゃあさよなら。お兄さん?」...へ?」
いきなり声をかけられ一瞬呆けた。だが、はっきりとその姿をとらえた。
周囲に決して馴染まない、黒いロ-ブを纏った少女。フ-ドは被らず、その長い黒髪が風に靡いている。顔は人形のように整っていて、総じて言うと日本人形のような美少女。しかし、容姿も服装もかなり人目を惹くだろうその少女を、見ているのは自分だけ。まるでそこに何もないように道行く人々が通り過ぎていく。
...何かオカシイ。そう思い、口を開こうとした瞬間、少女がロ-ブの中からその細い腕を出し、上に掲げた。まるで何かをふり落とすように......
ーーその手には、肉厚の鉈が...
「え?ちょっ!まっtーー」
瞬間、血の噴水が周りに舞い散った。
...光が、見える......向こうで‥だ…れか‥が、呼んで、い‥る。
手を光に掲げ、掴むようにしてーー
危ないじゃないか!あんな物人に向けて…
意識が覚醒し、体が自分の物であると、現実に生きていると実感し、感覚がはっきりしてくる。そして、
「死んだらどうするんだ!!」
叫んだ。…ん?何かがオカシイ。声が、高い?なぜか自分の声でないような……
「あ!アスナさん!?このかさん!アスナさんが起きましたよ!!」
「本当!?アスナ、大丈夫?痛いところあらへん?」
叫んだ直後、赤髪の少年と黒髪の少女が駆け寄ってきた。…誰?
とりあえず、何となしに上(そら)を見上げ、
「知らない添乗員だ…」
スチュワーデスのポスターが貼ってあった……