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No.35154の一覧
[0] 【ネタ アクエリオンEVOL】 アクエリオンKASEGE[釜の鍋](2012/11/18 22:39)
[1] アクエリオンKASEGE その2[釜の鍋](2012/11/18 23:42)
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[35154] 【ネタ アクエリオンEVOL】 アクエリオンKASEGE
Name: 釜の鍋◆93e1e700 ID:3759d706 次を表示する
Date: 2012/11/18 22:39
【注意・ネタばれも含みますので、アニメ『アクエリオンEVOL』を全話見ていない方はご注意ください】




――墓地。


多くの人々の魂が眠るこの地で、また一つの別れの時が近づいていた。

その墓地の中を少年は走る。唯必死に、彼女を求めて走り続ける。

だが少年がようやく彼女の近くへとたどり着いた所で、運命は残酷にもその時を迎える。

薄暗い空が突然、眼を覆う様な眩い光を放つ。

そしてその光の中を、一人の女性がまるで天に召されるかのように登って行く。


「――嫌だっ! 行かないでっ!!」


眩い光の中に、自分が求める彼女の姿を目にした少年は、必死に彼女を引きとめるように、縋りつくように手を伸ばし悲痛な声を上げる。

そんな少年の悲痛な声に、女性は憂いと悲しみに満ちた瞳で振り返り――そして未練を断ち切る様に顔を背けた。

それを見た少年が、さらに切羽詰まった表情を浮かべ声を上げる。


「――待って! 行かないでっ! このまま置いて行かないでっ!!」


少年の心の中を荒れ狂う焦りが蠢く。行かないで欲しい、待って欲しい。

そして少年は身の内の衝動のままに、光の中へ消えて行こうとする彼女の背に向い必死に手を伸ばす――

待って! 行かないで! 僕は――僕はまだ――っ!!








「――っまだ銀行の暗証番号を教えて貰ってないんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!?」









――瞬間。時が止まった。


その悲痛な慟哭とも取れる叫びを、激しい轟音の中辛うじて聞き取ったらしい女性は、驚いたように再び少年の方へと振りかり、『あ! 忘れてた!』と言った表情を浮かべる。

そして物凄く焦った表情で、大きな声を上げて少年へと声を張り上げる。


『アマ――! 銀――は――の――!!』

「――えぇっ!? 何っ! 聞こえない!? 聞こえないってっば! ちょッ――風強っ!?」


ああ――だが哀しいかな、空から割れんばかりに振り注ぐ光の放流の衝撃のせいで、それが発生させる激しい突風が彼等の会話を妨げる。

少年焦る。女性も焦る。

オイ誰か止めてやれよ。少年の危機だ。

ちなみにこの少年は女性――母が自分を捨てて何処かへいってしまうなどとは思っていなかったりする。

それもその筈、少年は母に『お母さん、お父さんの仕事の手伝いに行かないといけないんだけど、アマタも一緒に来る?』と色々内容を暈かした質問を聞かれ『え、ヤダよ』と応じるやり取りを以前にしていたからである。

父親とは一度もあった事の無い少年――アマタは。まだ見ぬ父の事を『家庭を顧みない、仕事人間な冷たい男』と認識している為、そんな父親と今更一緒に暮らす? ハッ! 冗談じゃない! と言った気持を表情一杯に浮かべて拒否ったのであった。

ちなみにこの事を愛妻経由で知った父親は、部屋の隅でそっと膝を抱えたと言う。なら頻繁には無理でも、顔くらい見せて家族サービスしてやれば良いのに。正に自業自得である。

それでも母はそんな父親の所に行かなけばならないと言う。ああ成程、自分の母はそんな碌でもない男でも愛してるんだな。クソ親父め、こんな理想の女性を体現したような母さんをモノにするとは上手い事やりやがって……何時か会う事があれば出会いがしらに一発キツイのお見舞いしてやると固く誓うアマタ少年。

だから『なら母さんだけ行ってきなよ。俺はこっちに残るから。大丈夫、俺の事は心配しないで、だって母さんの息子だもん』と、母親の事は大好きなアマタ少年は、母の気持ちも考え健気さ一杯の笑顔でそう答えた。この日の夜、愛する息子の純度百パーセントの笑顔にノックアウトされた母と一緒のベットで眠った。

そしてやって来た別れの日。家の玄関で母と子の感動の別れと見送りを成し遂げたアマタ少年は、母から渡された預金通帳を確認した所――ここで母から銀行の暗証番号を聞いてない事に愕然。

自分の母は普段はとてもしっかりしているけど、たまに盛大にうっかりをやらかす人なので、盛大にやらかしアワアワする母をアマタ少年は『母さんはしょうがないな~』といつもは笑顔で見て和んでいたが……今回ばかりは流石に笑い事じゃ無い。自分の命に関わる。

うっかりをやらかした愛する母を舐めちゃいけない。きっと暗証番号を書きだした書き置き何て物もあの人は残してる筈が無いのだから。瞬間、アマタ少年は疾風の如く家を飛び出し、文字通り母の元へ飛んでいく。エレメント能力大活躍である。

そして辿りついた母の元。今正にこの瞬間、アマタ少年にとって最悪の別れとなってしまう場面へと移るのであった。

風よ吹け、もっと吹けとばかりにゴウゴウビュウビュウ荒れ狂う風のせいで、自分の声が愛する息子に届いていないと察した母親は、オロオロしつつも何とか伝えようと今度はジェスチャーを取り始める。

空に浮かぶ女性がそんな行動を取るのは、傍から見たら何してんのあの人と思うシュールな光景だが、それでもアマタ少年は必死に母の動きに注目する。


「―0!? 0なの!? 最初は0で――次は2!? いや7!? ちょっと待って何その動き分かんないよ!? って言うか何ケタなの!? ちょっうわ母さん体柔らか――6!? それ何番目の!? いや分かんないってば、全然伝わらな――母さん!? 貴女本当に女優だったんだよね!?」


既に奇妙な踊りと化してる母の動きに、アマタ少年は盛大にツッコミを入れる。アマタ少年涙目、母も涙目である。

が、その時アマタ少年とアマタ母は、アマタ少年とアマタ母の中間地点に、何だかアマタ少年とそっくりな容姿の少年の姿を捉える。

ちなみにその少年。先程アマタ少年の『まだ銀行の暗証番号を~』の叫びを聞いて、盛大に地面にヘッドスライディング。軽やかに地面を滑ってしまった為所々汚れている。

そしてアマタ少年とその母のやり取りを半ば呆然と見ていたが、アマタ少年が自分の姿を捉えた事に、ビクッと体を震わせた。気持ち的には『何この子怖い』である。


「ちょっと其処の君!? 良い所に! ちょっと仲介してっ! その位置からなら母さんの声がまだ届くでしょっ!? しっかり聞いて! 後でお礼するから! その代わり一つでも漏らしたら絶対許さないからな!?」


余裕の無いアマタ少年の、地獄の鬼も逃げ出す様な形相に、中間の少年は思わず高速でコクコクと頷く。もし洩らしたりなんかしたらどんな目に遭うか想像も付かない恐怖に支配された少年は、アマタ少年の母に視線を向け聞き取ろうと耳を澄ませる。

そしてそんな少年にアマタ少年の母が、何とか伝えようと声を張り上げる。そして少年はその言葉を良く聞き取ろうと一歩前へと踏み出し―――


――浮いた。


「――ちょっと君なにやってんのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」


仲介所か、自分の母のあとを追うように天に昇って行く少年の姿に、アマタ少年が盛大にツッコム。

空に浮かぶ少年もワタワタと盛大に慌てる。そんな少年をアマタ母が残念な子を見る様な哀しい視線を向ける。何だこのカオス。

遂には少年に向かって羽織っていたマントを脱ぎ、地面に叩きつけ『この役立たずの駄犬がっ!!』と悪態を付くアマタ少年。それを見て『ひぃ!?』と恐怖に体を縮込ませるアマタ少年似の男の子。この時彼の心にアマタ少年に対する苦手意識が芽生える。

落ち付けアマタ少年。近所のオバ様達に大人気の甘いエンジェルフェイスが台無しだ。

そして――


「――かああああああああああさああああああああああああああああああんっ!!?」


アマタ少年の目の前で、愛する母と、使えない駄犬少年が天の光が消えると同時に消えて行くのであった。

薄暗い空へと戻ったそれに向かって、空しくも手を伸ばし続けていたアマタ少年は……次の瞬間には崩れ落ちるようにして蹲る。

ああ――お金はあるのに引き落とせないなんて……。アマタ少年はこの先に待ち受ける自分の運命に落ち込む。このままでは自分は――。





「……お金……! 稼がなきゃ……!?」





――アマタ少年が、生きる為に働く事を決意した瞬間であった。


そして数週間後。『空飛ぶ勤労少年』として巷ではちょっとした有名人になるアマタ少年が、新聞片手に大空を舞う姿が頻繁に目撃されるようになる。

え? エレメント能力? それは勿論有効活用。

怖がられる? 化け物扱い? そんなモノ気にしてたら金は稼げない。それに頻繁に空とんでればそんな事誰も気にしなくなる。人は慣れる生き物です。






――そして年月は流れ。ある映画館の中。






上映される、一世風靡した人気女優『アリシア』が出演する映画。『アクエリアの舞う空』を放送の舞台裏の一室からじっと見つめる成長したアマタ少年の姿あった。

そして放映される『シルフィ』役のアリシアの姿を見て……アマタの両目からスッと細い涙が流れ落ちる。

その時、部屋のドアが音を立てて、一人の老人が姿を現し映画を見つめるアマタに声を掛ける。


「……『アクエリアの舞う空』か……ってアマタ!? お前さん何で泣いとるんだ!?」
「……ぁさん……それだけの演技力を持っていながら、何であの時もっと……!!」


血を吐く様なアマタの絞り出すような声に、入って来たこの映画館の館長の老人は、年の割にしっかりと真面目に良く働くアマタの事を心配して声を掛ける。

此処以外にもバイトを掛け持ちするアマタ。もしかして体調でも崩しているのではと思った館長の優しさの表れだった。


「ど、どうかしたのかアマタ? 何処か体が痛むのか? 何なら今日は早めに上がっても良いんだぞ? バイト代は弾むから……」
「――おやっさん! 俺おやっさんの事大好きですっ!! あっいけない館内の掃除がまだだった! ちょっと行ってきます!!」
「あ、ああ……本当に良く働く奴だな……御蔭で助かるが」


途端に元気良く舞台裏から飛び出していくアマタ。それを何とも微妙な表情で見送る館長。



生きる為に、幼い頃からお金を稼ぐことに青春の全てを注ぎ込んできた彼。ありとあらゆるバイトを経験し、社会の荒波の中を生き抜いてきた彼は、勤労少年として逞しく成長していた。



今日もアマタはバイト代の為に、生活費の為に大空を駆け巡る。



飛べアマタっ! 安定した職に就職する、その時までっ!



――これは、お金を稼ぐことに全てを懸ける勤労少年『アマタ』と、その彼と出会う人々との数奇な運命を描いた、新たな『神話』の物語であるっ!!



『時は金なり……今こそ稼ぎ時。少年よ、稼げる時に――稼げ……っ!!』(草むしりに勤しむ不動さん)




続いた。



【後書き】

ようやくssを書く時間が取れるようになって来たので、リハビリがてらネタを一つ投稿しました。『アクエリオンEVOL』面白いですよね。ネタ投稿なので多分続かないと思――ったのですが続きました。二話目をお楽しみ頂けたら幸いです。


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