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No.34830の一覧
[0] 【ネタ】MTG転生物【TS転生物注意】[どくいも](2015/02/01 13:26)
[1] プロローグ[どくいも](2012/10/06 17:37)
[2] 1-1[どくいも](2012/10/21 02:28)
[3] 1-2[どくいも](2012/11/01 17:30)
[5] 1-3 前半[どくいも](2012/11/01 17:35)
[6] 1-3 後半[どくいも](2012/10/21 02:29)
[7] 1ー4 幕間[どくいも](2012/11/01 17:40)
[8] 1-5[どくいも](2012/11/05 18:19)
[9] 1-6[どくいも](2012/12/04 08:43)
[10] 【おまけ的な何か】そもそもMTGとは?[どくいも](2012/10/13 14:39)
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[34830] 1-6
Name: どくいも◆a72edfa5 ID:6bed7031 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/12/04 08:43
時間は深夜。
彼女に任務が告げられてから、すでに一月ぐらいが経ち、すでに季節も《収穫の月》から《狩人月》へと移行していた。
しかし、外が寒くなろうが今日も今日とて、ニウは錬金術の実験室で彼女は発明と実験を繰り返していた。

彼女の錬金部屋。
初め、この家をスカースタグ教団に紹介されたばかりのころは、彼女はこの部屋を地下室を隠すためのダミー程度にしか思っていなかった。
しかし、実際ここに住み始めてから悪魔から得た知識を運用するためには、地下室は《黒魔術の儀式》ようにしなければならず、それ以外の本格的な錬金術の実験や発明はこの錬金部屋でやったほうが効率がいい事に気が付いたのだ。
ここに入った当初は、量の虫の標本と虫かごが散乱し、訳の分からない冒涜的な文章で散らかっているという怪しげな部屋であり、この部屋を使うのもいやであったのだが。
(まあ、地下室も巨大な昆虫の繭や不気味な蜘蛛の巣などまともな環境ではなかったが。)
しかし、彼女が数年にわたる努力の結果、現在のこの部屋は大量のビーカーや怪しげな機械、多数の薬瓶とそれらが散乱している大型の机と椅子、そして本棚と薬棚がある程度の普通の部屋というまだましな見た目な普通の錬金術師の部屋と変わったのだ。
そして、それを成し遂げた件の人物は、現在その部屋の椅子に座っており、机の上で何か作業をしている。


「……っん、ここはこう書いてっと。
おい、ネズコウ。次のページをめくるから本の上からどきやがれ。」

「ふうん、やはりこの世界の錬金術とやらは興味深い。
この世界に満ちている、《マナ》の質、吸血鬼の生態、狼男の呪い。
これ程にこの世界は悪意に満ちている、これでアヴァシン教徒とやらがなければ最高なのにな。」


《鼠》はニウが読もうとしている本から降りながらそう呟く。
ニウはその鼠の言葉を聞き流しながら、本のページをめくり、作業を続ける。
ニウは一見だけ本を確認すると、すぐに彼女の手元に視線を戻し彼女の握る筆の先を凝視する。
ニウの手にある筆は一見只の羽ペンのように見える。
しかし、そのペンの先端についているのはただの墨では無いようで、その筆先が薄緑色に発光している。
何より彼女がそのペンで書きこんでいるのは物は、紙でも羊皮紙でもない。
それは金属片であり、彼女がその金属片の上に筆を走らせるとそこが緑白色に輝き、その軌跡は何かの文字のようにであった。
さらにいえば、その金属片がくっついているのも普通のモノではない、机いっぱいよりも少々でかい物であり、よく見るとそれが動物の胴の一部であることがわかるだろう。
そう、今彼女が作業をしている机の上には《大きな蛇の胴体》が横たわっていた。
しかも、その蛇の様子はどう見ても死体であり、胴体の一部には大きな穴が開いており、、その顔にはいくつかの縫い跡が見られる。
何より特徴的なのが、その口内や胴の一部には、現在ニウが文字を書き込んでいる金属片同様、いくつかの金属でできた部品がくっついていることだ。


「……ったく。
ああ、今日は調子がよくないなあ、ルーン文字がガタガタだし、集中力も全然だめだね。
やっぱり《スカーブ》は薬品よりの死臭っぽい臭いが強し、何より値段のことを考えると憂鬱になるしなあ。
これなら、同じ労力や値段でも違法じゃない《ゴーレム》作ったほうが効率がいいだろうとか考えるあたり、私は《スカーブ師》、いや今はやりの言い方は《縫い師》だっけか?
とにかくそれには向いてないのかねえ。」

「くくく、手間を掛けずに成果を得たいのなら、我との契約をもっと深くやらないか?
時間も一瞬、手間もなし、この世界のアヴァシン教の奴らにはばれない素晴らしい力をあたえるぞ?」

「やだよ。
お前の場合、その為の対価が取り返しがつかない物ばっかりなんだろ?
せいぜい今は、ニワトリとかネズミで我慢しろ。
ていうか、この前の契約では結構奮発しただろ?」


そう言いながらも、ニウが金属片に走らせる筆の動きはよどみがない。
そう、今彼女が製作しているのは錬金術師の作り師、不格好な生命こと《スカーブ》である。
スカーブはこの世界での錬金術師の主流戦闘法ともいえる、錬金術師ならば作り方を知らなければもぐりとも言えるレベルの物である。
しかし、それを創る手順や材料はどれも手間がかかるモノであり、そう簡単に一般人が手を出せるものではない。
手順としては大まかに4段階あると言える。
まずは『死体修繕』別名『身体製作』。
これは文字通り、生き物の死体を調達し形になるように部品を集めることである。
《スカーブ》はスケルトンやグールとは違い、できるだけ体の部位が多くそろっている方がよい。
もちろん通常なら人間の体の部位を集められるのが基本だが、別にそれに限る必要はない。
力を求めて、熊や馬の死骸の腕を使ってもよいし、ドラゴンやグリフォンの翼を繋げて空を飛ばせるのもよい。
そして、その集めた体の部品を繋げる作業を「ルーン繋げ」と呼び、別名「板金合ワセ」という。
それは「繋ぎの金属板」を使用して様々な解剖学的組織を繋ぎ合わせる工程である。
そしてこれこそが今彼女がやっている作業であり、彼女はその手に持つ筆で猫の体を各部と繋げている金属片にルーン文字を刻んでいるのだ。
これらはルーンが刻まれている銅や青銅の板で、死体修繕によって集められた異種の部位間を(神経の代わりに)繋ぐ秘術的な橋の役割を提供する。
これのおかげでスカーブは、自身の体に貴金属の凶器や生前持っていなかった羽などの部位が仕込んであったとしても、それを己が体の一部のように扱うことができるのだ。
その後に続く作業として、第三工程「臓液注入」、最終工程「静カナル呪文」と続くわけであるだが、今ここでは割愛しておこう。


「くくく、確かにお前の血は私の契約者の中ではなかなかうまい方であることは認めよう。
そうだな、《祭壇の刈取り》でくだらない生き物の命をいただく位なら、《血の署名》で貴様の血をもらった方が我としてはうれしいな。」


《鼠》は笑いながら呟く。
その言葉を聞き、ニウはピクリと眉を動かし《鼠》に尋ねる。


「それは私がもしや『魔術師』として魔力が多いからとかだからか?
なんか特別な理由があるからか?」


ニウは《鼠》の言う自身の血の価値とやらを少し気になり、《鼠》に尋ねてみる。
彼女はなぜ件の悪魔が、自分に対して契約を申し込んできたか未だに知らず、彼女としては早くなぜ自分がこの悪魔の眼に適ったかが知りたかったのである。
もしこれが、何か特別な血ならよし、なくても自身の契約の発端を知ることができるかもと思って尋ねたが、返ってきた言葉は彼女の期待に反した物であった。


「いや、特にそういうものはない、貴様の血の味はなかなか我好みであるからだな。
あえて言うなら、黒魔術師なのにただの人間、しかもそこそこ若い処女っていうのは珍しいからだな。
おお、できれば貴様が性行する時は我に知らせろよ。
その時に流れる血はとても美味だろうからなあ!」


その言葉言い切ると《鼠》は高笑いをし、ニウは手を止めて額に手を当てる。
《悪魔を信用してはならない、嘘はつかないが》これがこの悪魔との会話の基本である。
それにより、この悪魔が自分の血を欲したのはあくまで嗜好品程度なのだろうとわかり、結局質問が無駄骨だと知った上に要らんことまで言われ、ニウの心はさらに重くなった。


「……はあ、今の私はあんまりお前の冗談に付き合ってやれる余裕はないんだよ。
分かったら、とっとと地下室の様子でも見に行ってくれ。
そろそろアイツも集中力が切れる頃だろうから。」

「おお、怖い怖い。
叱られる前に、あの餓鬼の様子でも見に行こうか。」


ニウは《鼠》に向かってそう新た命令を下す。
ここ最近ニウの心は重くなっている、その原因は多々あるが現在一番重くのしかかっているのは《スカースタグ教団》からの指令である、《ポールの保護》及び《修行》と言うものであったという事だ。
ニウにとって初めは訳が分からない任務であったが、内容は一見簡単な物であった。
それは、《教団員》であった《ポール》の両親が《教団》や《黒魔導師》に恨みを持つと思われる者から殺されたらしい。
しかも、そいつはここの所《教団員》やそれにつながりがある《黒魔導師》を探しては殺すという大悪党(?)でありながら、未だ《スカースタグ教団》と《アヴァシン教会》のどちらも未だにそいつは捕まえることができていない。
それ故、今は別の州に住んでいる彼の親せきであるほかの《教団員》が見つかるまでは、教団とはつながりが薄いニウが《ポール》を預かり、ついでにその子供を『錬金術師』、いや正確に言えば《スカーブ師》の弟子として役に立つレベルまで修行をしてくれと言うものであった。
その時はどうせ断れない類の任務であろうし、命にもかかわらない任務のようであったからなんとなくで流し聞きにしてしまった。
が、今現在は、もし過去に戻れるのなら過去の自分に言ってやりたいことがあった。
どうして、二つ目を断らなかったのだ。
一方《鼠》は地下室の入り口前まで近づくが、突然ぴたりとその足を止める。
その突然の《鼠》の様子の変化に、ニウは尋ねた。


「ん?どうした?
なにかあったか?」

「ふむ、契約者よ。
どうやら、少し遅かったようだぞ。」


鼠がそう言った瞬間、地下室の入り口付近から、〈ポンッ〉という小さな破裂音が漏れる。
それと共に、その入り口から洩れる光の量がまし、どたどたという複数の物音まで聞こえてきた。
もし、これが初めて遭遇することであったらニウも驚いていただろう。
しかし、これはすでにここ数日の間でニウが数回経験したこと、いやな意味で彼女の中ではお約束ともなっていた。


「……またかよ。
はあ、ちょっと地下室行ってくる。」

「くくく、わざわざご苦労なことだ。」


ニウはそう鼠に言うと椅子から立ち上がり、地下室へと向かう。
彼女が地下室を見ると、まず眼に入ったのが床にはいくつかのガラス片。
それと忙しそうに動き回る2体のアーティファクトクリーチャーと先日ニウが作った動物のスカーブである《黒猫》が一匹。
そして、床に広がっている多数の燃えている液体、もしここが木製の床であったら火事になっていたことであろう。
ニウはこのような惨状を見て、以前はこの地下室にあった木製の本棚や赤いカーペットという燃えやすい物や、水晶玉や生贄用の動物籠と云ったものが壊れやすいもこの部屋から事前に運び出しておいて正解だったなと、内心安堵する。
彼女が視線を部屋の中央に向けるとその目に飛び込んで切るのは、机の前にいるむくれ顔をした、小柄の体に赤いローブをしている者である。
その人物こそがこの惨状を作り出した原因だということをニウは理解しており、そして、その人物に向けて何度目になるかわからない同じ言葉を吐く。


「おまえ、《臓液》に魔力を注ぐときは最大限注意を払えって言ったよな。
それには《天使の血》が入っているため安くないし、その上失敗したら死ぬかもしれんから細心の注意を払えって、何回私が説明したと思ってんだ?
なのに、このような同じ間違い何度も繰り返しているようじゃ《スカーブ師》になるどころか、スカーブ一匹作れるようになれないぞ。
……いや、ほんとうにわかってるのか?」


ニウは件の人物にそう説教交じりに話しかけるが、その人物は全く反省の色が見えずむしろニウに向かって強気に反論する。


「ふん。別に一回や二回の失敗でガタガタいうなよ。
俺は偉大な錬金術師になる男だ、むしろ指導できることを誇らしく思え。」

「一回や二回じゃないから文句を言ってんだよ、ガキん子。」

「俺はガキじゃない!」


叱られているはずなのにやけに偉そうなのが、今回《スカースタグ教会》より預けられた少年、《ポール》である
そして、自称錬金術師であり、同時に『反抗期』まっさかりの少年でもあった。




【ネタ】MTG転生物【TS転生物】 1-7




「ん?まだあの子は起きていないのか?」


その翌日、昼の少し前位にニウは遅めの朝食をとっていた時に彼女はそう、デアの話しかけられた。


「あ~、ポールのこと?
昨日の夜、私の実験につき合わせていたからとりあえず昼過ぎまでは寝かせてあげてよ。
大人びているけどまだ子供なんだし。」


デアはそう一人で納得しながら、部屋の掃除をしている。
ちょうど、ニウが首都から帰ってきた当初、彼女が前触れもなしにポールを預かるとデアに伝えたのだ。
デアがニウから聞いた話は、『ポール』は自分が世話になった雑貨屋の知り合いの子供であり、その両親が流行の病で亡くなったから、しばらく預かることとなったという事だ。
デアは突然の話に驚いたものの、その事に対して別段反対の意見は出なかった。
デアはもともと孤児、子供が一人で生きていく厳しさを知っている。
仮に今回もしポールが《救貧館》に預けられるとしたら、元々両親がいたある程度育った子供が親を亡くして入館する場合、その子供は《救貧館》内の空気になじめず、院内で孤立ことがよくあるからだ。
《救貧館》内でグループにあぶれるという事は、それだけで居心地が悪くなるのは当然であり、下手をしなくてもいじめに発展することも多い。
元孤児出身として、子供にそのような道へと進んでほしくはない。
今回子供を預かることで問題があるとしたら、それは料金面位ではある。
しかし、それはどうやらある程度は向こうが出してくれるようで、聞けば、今回ポールを預かるのはあくまで一時的な物であり、この子には親せきがいるとのこと。
で、そちらに連絡がつき次第そちらに行くとのことらしい。
まあ、それならこの時々家を外したりするような変わった家ではあるものの預かることができ、また、それまでの間そのような心象が複雑になっている子供を何とかしたいという親切心からも、彼はその話を承諾したのだ。
そして、そんな彼の思いやりからか、毎回とあることについてニウへ訴えていることがあった。


「で、結局ポールには『錬金術師』としての技術を教える意味はあるのか?
そのせいで、ここんところポールはほぼ毎日夜更しとはいかないものの日が沈んでからもかなり起きてるじゃないか。
俺としてはまだアイツは子供なんだから、下手な無理はさせずに、何かを学ばせるとしても家事手伝いとかもっと別の技術にしたほうがいいんじゃないかと思うんだ。」


意外と子供好きなデアは、ポールがここの所毎晩夜更しし、錬金術の修行をしていることに対して反対の姿勢なのである。
確かにニウもデアの意見がポールを思っていっていることは理解しているし、それが《教育》の面ではおそらくだが、正しいということはわかる。
《ポール》ぐらいの年齢の子供に夜更しは相当きついであろうし、今の時期の子供は、下手に専門的なことをさせるよりも《数学》や《家事》といったことを学んだ方が将来役に立つであろう。
彼や彼女が《救貧館》にいた頃も子供たちの多くがやらされていたことは、『読み書きの練習』や《数学》など、いわゆる前世で言う《小学校》みたいなことをやっていた記憶があった。
しかし、ニウにとってそのことは耳にタコができるほど聞かされていることであり、うんざりしているのが本音であった。


「……それに関しては、何度も説明しただろう。
彼の両親の遺言で≪彼が立派な錬金術師になる様に錬金術師の所で修業させてくれ≫って書いてあったらしいから、さすがにそれを無視するわけにはいかないだろう。
それにあの子自身も『錬金術』の修行にかなりのやる気を見せている。」


ニウはそうデアに毎回説明をしているが、デアの表情は思わしくない。
もちろんポールの両親は突如不審者に殺された故に、遺言など残す暇がかったので、この理由の前半部は嘘である。
ニウが、ポールに『錬金術師』、しかもその中でも彼女が不得手としている《スカーブ師》としての修行をしているのはあくまで《教団》からの任務だからだ。
まあ、だからと言って手を抜かずに修行の指導をしているのは本人の生来の凝り性からか、それとも教団からのいちゃもんが怖いからかは不明ではあるが。
しかし、デアは諦め切れずに再度ニウに対して訴え続ける。


「けどなあ、ならせめてその頻度を減らすやら、もっとゆるくするとかいろいろ方法はあるだろう。」

「しつこいなあ~。
なら、ポール本人に言ってよ。
一応、彼の頼みでこの修行を着けているんだから、あの子が無理って言ったら私はやらないよ。」

「それができたら、お前に言わねえよ。」


結局またこの流れになるのかあ、両者ともひそかにそう思い、ポールについての会話を続けていった。
ニウは思う、デアは将来子供ができたら絶対に子煩悩になる典型だろうなと。
結局二人の公論は日が天の頂点に来るくらいまで続けられ、デアが教会へと出かける時間となったので、ひとまずその話題は打ち切りとなった。


「いいか、できるだけ頑張ってくれよ!」

「はい、はい。
ポールの事は良いから、今は自分のことに集中しろよ~。」


結局、なぜか毎回『ニウがポールを《錬金術》以外の特訓もやるよう説得する』という方向に話は収束してしまっている。
無論、ニウはそんな面倒くさいことを尽力を尽くす気は全くないが。
そして、ニウはデアが部屋から出て行き足音が遠ざかったのを確認すると、彼女は後ろを振り向きそれに向かって声をかける。


「で、今までの話を聞いてたとは思うけど、どう?
いったん《スカーブ師》の修行、あきらめる気ある?」

「断る。
これは俺から言いはじめたことだ。
今ここであきらめる気は全くない。」


ニウが声をかけた方から、実は数刻前からひそかに隠れていた、さっきまでの話題に上がっていた少年、ポールが現れる。
その横には体の一部が金属ででき、体表には複数の継接ぎがある猫のスカーブ《黒猫》をつれており、まだ眠いのか、眼をこすり大きな欠伸をしている。
ニウはポールの横にいる《黒猫》の動きを見てふと気が付いた。


「おお~。
眠くても、ちゃんと《スカーブ》の制御ができるようになったな、関心関心。」


ポールは現在、ニウの元で様々な《スカーブ師》として必須な技術を学んでいる。
そして、現在《ポール》が行っているのは《スカーブ》の制御と操作というある意味最も《スカーブ師》にとって《基本》でありながら、大事な魔法である。
錬金術師の手によって生み出される《スカーブ》は、生者への恨みにより復活する《グール》とは違い、その性質は『純粋無垢』、アンデットというよりは『ホムンクルス』に近いと言えるだろう。
作ったばかりのその精神はまさに赤子の状態であり、生まれつき《残虐性》の強い《グール》とは違い、学習自体でどのような性質にもなりうるのがスカーブである。
しかし、そのような状態である《スカーブ》を一から教育したり、口頭による指示だけですべてを行うのは難しい。
(そもそも耳が機能していないスカーブも多いし、動物の脳で作ったスカーブの場合、人間の言語が理解できるほど賢いかも怪しい。)
そのため必要となるのが《精神制御》という魔法。
とは言ってもこれは近くでしか使えない『テレパシー』レベルの簡単な魔法であり、まさしく『呪文』の必要すらないような魔法である。
現在これが《ポール》が唯一まともに使える《スカーブ師》としての技術であり、逆にこれ以外の《スカーブ》に関する技術はちょっと……といった具合である。
ニウとしては、《ポール》には、もっと《スカーブ師》として大事な《創造的》な技術、たとえばスカーブとして使える死骸かどうかを見極める『死体鑑定』やスカーブの体液である《臓液》の製作などの技術をきちんと学んでほしいという気持ちがあった。


「ふん。
俺は一流の《縫い師》になる男だ。
これくらいできて朝飯前だ。」


しかし、ポールはニウの言葉を純粋にニウの褒め言葉として受け止め、若干眠そうながらも、誇らしげな顔でポールは答える。
余裕と言いつつも、その声のトーンが若干高いのご愛嬌というやつであろう。
そんな若干、テンションが高くなっているポール少年の様子を見つつ、ニウは考える。

ニウから見て、ポールが錬金術師として才能があるかと言われれば難しい所だと答えるであろう。
現在彼は未だに《スカーブ》一匹も作れず、かといって正式な『錬金術師』としての腕もほとんどない。

確かにポールは錬金術師としての魔力的、いや先天的な素質はそこそこはある。
まず《魔術師》として最も重要である、体内に秘めるマナの量はかなりのものである。
デアでは比較にならないほど多いし、もしかしたら自分より多いかもしれない。
そして、次に彼の体内に秘めるマナの性質である。
《教団》によると父親が元《グール呼び》の《スカーブ師》でもう片方《錬金術師兼スカーブ師》であったらしく、腕はどちらも一流と言って過言ではないらしい。(まあ、その一流とやらがどこまで信用できるかは不明だが。)
彼らが本当に一流なら、彼の父親のマナの性質は《黒》、母親は《青》マナ、もしくは《赤》のマナといったところであろうし、それゆえ彼は両親どちらかのマナの質に似ていると考えられる。
最も《スカーブ師》に向いているマナはおそらく《青》のマナの持ち主であろう。
多くのスカーブは《青》のマナの生き物であり、またそれを呪文として唱える場合も《青》の呪文になるからだ。
次点で《黒》はもう、云わずともわかるであろうが、《黒》の呪文は『死』の呪文、《アンデッド》に関する呪文は得意中の得意である。
まあ、一応《赤》のマナは《錬金術師》としては有用であり《スカーブ》製作途中で必要となある《臓液》の製作に向いているので一応《スカーブ師》の才能があると言えるかもせれない。
いずれにせよ彼の身に秘めるマナの性質は《スカーブ師》に向いているであろう。
その上、彼は頭もこの年代の子供にしては良い方であろうし、すでに読み書きや簡単な計算ならできるほどである。

しかし、ポール少年に肉体的に《スカーブ師》の適性があったとしても、本人の性格があまりにも《スカーブ師》のそれとはあっていなさすぎるのである。
ポール少年の性格はいい意味では意志が強くて積極性があり、悪い意味では意地っ張りで短気。
正直、《錬金術師》や《スカーブ師》が必要とされる、繊細さや計算高さなどの俗に言う「科学的思考」とは真逆の人間である。
まあ、性格の問題は彼が子供だからと言われてしまえばそれまでだが、それにしたっていろいろやる事がおおざっぱであり、正直これが生来の性格なら《錬金術師》としては致命的であろう。
しかも、普通の子供であるなら、ここで自分とあっていないと思ったり、投げ出すのであろうが、なまじやる気があるだけ面倒くさい。
聞けば彼は、両親が生きていた頃からこの技術を学び始めかれこれ数年が経っているというのが驚きだ。
正直、ニウにはなぜポール少年がそんなに《スカーブ師》にこだわるか、わからなかった。
彼位の年頃の少年であるなら、大抵は『錬金術師』=陰気な性格というネガティブなイメージとして扱われることが多い。
(まあ、彼の場合両親がそれなのでそうとは限らないが。)
彼みたいなある意味典型的な『少年』のような性格の人が目指すものではない。

……ちょうどいい機会だし、聞いてみるか。
そう思いニウは褒められたからか、やけに饒舌になっているポールに向かってその疑問を尋ねる。


「そう言えば聞いてなかったが、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いい?」

「ん、なんだ仮師匠?」


ポールは突然ニウに真顔で話しかけられ、少し不思議に思いながらも聞き返した。
なお、ポールはニウが彼が親戚の所に行くまでの一時的な師匠でると言ったら、かってにこう呼び始めた。
ニウとしても面倒くさいので特にこの呼び名について訂正はしていない。


「いやあ、さあ。
そう言えばなんでお前がスカーブ師を目指すか聞いてなかったなあって思ってな。
お前くらいの年ごろのやつらは、大概《アヴァシン教》の聖戦士を目指してるだろう?
やっぱりあれか?親の仕事にあこがれたからとかか?」


ニウは自分が考えるなかで最も確率が高そうなことを口に出し、ポールに尋ねてみる。
ニウの予想としては、おそらくは『親の仕事』に憧れたからや、『両親が馬鹿にされたのを見返したいから』とかを予想していた。
多くの子供は小さい子供が変身ヒーローに憧れるように、この世界の子供も《アヴァシン教》の聖戦士を憧れる子供は多い。
その理論で行けば、ある意味典型的な子供っぽい性格であるポールも《アヴァシン教》の聖戦士を目指すのが普通かなと考えた。
しかし、現在錬金術師をやっているニウは、『錬金術師』と《アヴァシン教》の関係がすごい悪いのがよくわかる。
正直、デアという緩衝剤があるおかげで大分ましではあるが、それでも《アヴァシン教》が自分、いや《錬金術師》という存在を嫌っているのが眼に見えてわかるほどだ。
ポールが『錬金術師』の家で育ち、且つ親思いであったとしたら、と考えるのがポールが錬金術師になる理由として妥当、そうニウは考えた。
まあ、特に彼の場合、両親への思いが特別強くなくとも、殺されたという悲劇、習い途中というシチュエーション、いろいろとなんかこうベタなシチュエーションが固まっているので、『俺が両親の思いを継ぐ』とか思っても不思議ではない。

しかし、このようなニウの予想は次のポールのセリフで大きく外れることになる。


「はっ。
おれの様な天才がそんな理由で錬金術師になろうとするわけないだろう。」

「……さよか。」


どんな根拠があるかはわからないが、ポールのセリフはやけに自信にあふれていた。
そのセリフにいろいろ突っ込みどころがあるが、ニウはあえてスルーした。
ニウの反応を知ってか知らないか、ポールは話を続ける。


「そもそも俺は、どんなことでも数回やれば、できるようになる天才だ。
その俺が今、錬金術を勉強しているのはあくまで通過点に過ぎない。
確かに親父と御袋がなくなったのは残念だが、それだってわりかし周りじゃあありふれているし俺としてはな。
今迄みたいに、おれはこれを学ぶことを通してもっと新しい物を見つけてやるんだ。
そして、真の天才の俺でしかわからない何かを調べつくしてやる。
そんな俺が《スカーブ師》になることぐらいで挫折していちゃいけないんだ。」


うん、訳が分からない。
それがニウの頭に浮かんだ率直な感想であった。
ニウはポールの余りの自信と訳の分からない超理論が若さゆえなのか、それとも本人の基質か、もしくはどっちもか、到底判別できなかった。
しかし、一応彼なりの《錬金術》を学ぶ情熱とやらは本物のだろうという事でニウは自身の中で決着をつけておいた。
これ以上言及するのが面倒くさかったというのが本音である。
一瞬、ニウの脳裏に黒魔術による《精神魔法》でポールの頭の中を覗こうかと思ったが流石にやめておいた。
彼女の数少ない良心であったのだろう。


「まあ、とりあえずお前は《錬金術》とか《スカーブ師》についての勉強をやめるつもりはなく、やる気万端ってことでOK?」

「ああ、もちろんだ。
なんなら、親戚の家に行く前に仮師匠の腕を超えちまうかもな。」

「まだ、スカーブ用の《精神制御》の魔法しか使えないくせによくそんなこと言う。
せめて、死体の『目利き』と《臓液》の作り方がわかってやっと見習いレベルだ。
それすらできないお前はまだ、『お客さん』レベルだよ。」


ポールの余りのテンションの高さに、ニウは少しあきれつつも何か力強いものを感じた。
まあ、案外こういう変人が大成するのかもなあとか頭に浮かんだが、とりあえず今はこの図に乗った小僧に少し現実と言うものをわからせねばいけない。
そう思いニウは魔法を行使し、ポールの制御下にあった《黒猫》を奪い、それでポールの顔をひっぱたいた。








「ああ、今回もダメだったよ。
アイツは人の話を聞かないからな。」

「……おい、本当に真面目に聞いたんだろうな。」

「ん?私を疑うのか?」

「……お前だから疑うんだよ。」


時は夜。
食卓を囲みながら、デアとニウはやっぱりポールについて話し合っていた。
そして、この話題の到達点は今回もニウの《ポールの説得は不可能》という結末で締めくくられるのであった。

今晩のメニューは日持ちのいい黒パンと鳥肉と野菜の串焼き、それに目玉焼きである。
つい最近、ようやくニウは念願フライパンを買うことができるようになったゆえの目玉焼きである。
この世界では、鉄製品は基本どれも高い。
その中で、鍋や鉄串はどこの家庭でもある一般の調理具ではあるが、フライパンは比較的高級品なのである。
彼女としては今までちょうどいい『フライパン』的な物が売ってなく、つい先日オーダーメイドで鍛冶屋に頼んでしまったが彼女は後悔はしていなかった。
もちろん、デアには無駄使いだと怒られたが、彼女にしては珍しく聞き流すわけではなく、全力で反論したことを追記しておく。


「まあ、あの子の強情っぷりは私じゃ説得するのは無理だわ。
物覚えはそこまでよくないけどな。」

「俺としては、せっかく親戚の家に連絡がつくかもしれないんだから、『礼儀』とか《家事手伝い》とか学んだ方がいいと思うんだがなあ。」

「ホントそればっかりだねえお前は。
それらこそ本人のやる気がなきゃ無理でしょ。
まあ、とりあえず《礼儀》とかは、時々だけど学ばせてるから大丈夫だよ、元々両親が教えていたらしいし最低限の《礼儀》がないわけじゃないしな。
今、アイツが別の家に泊めてみているのもそれの一環だ。」

「そういえば、今は《錬金術》の材料を売ってくれる店とやらに泊りに行っているんだったな。
本当に大丈夫か?正直、いろいろと不安なんだが。」

「……まあ、デアが言わんとすることはわかるけどね。
たぶん大丈夫でしょう、多分。」


ニウはニウの渋い表情を気が付きながらも、眼をそらしつつ言う。
デアが心配なのは、まず一つ目にあのような性格のポールが件の店に迷惑をかけていないかどうか、もう2つ目の意味はその店の評判が、(ニウの店同様)あまりいい評判をしていない事だろう。
件の店は、薬やシャマニズムの魔法の材料専門店と称して、『ワームの死骸』や『異臭を放つ植物の乾物』、『天使の血』などのわけのわからん商品を取り扱っている『雑貨屋』もどきであり、世間の評判がよくないのだ。
しかも、その店、デアは知らないが実はそこ『死体売り』という裏の顔を持つ、違法取引所である。
今回、デアがポールをその店に送ったのも、ポールに《墓暴き》を経験させるためである。
通常《スカーブ師》が《スカーブ》創造に必要な材料、いわゆる『死体』を集める場合、《墓暴き》やホムンクルス、または彼の弟子がこれを引きうけて行う。
そこで今回ニウには《墓暴き》に同行させてもらい、その《スカーブ製作》のための死体の目利き及びその方法を学んでもらうつもりで送ったのだ。
今頃はきっと、ポールは多数の墓暴き達と共に、近場の墓場で墓を掘っていることであろう。
もちろん、夜のイニストラードの墓場に子供を歩かせるというのは飢えた狼男の前に怪我人を歩かせるくらい危険なことだとは重々承知している。
しかし、今回ポールには護衛のための《黒猫》を同行させているうえ、今回ポールに同行している《墓暴き》達も《スカースタグ教団》出身のプロである。
墓場に現れる野生の『スピリット』や野生の巨大動物にやられることや、巡回中の《アヴァシン教徒》に捕まるというヘマを犯さないであろう。

そんなことを考えつつ、ニウは食事を続けていた。


「そう言えばまだ云っていなかったが、明日は俺は朝早く家を出るから。」

「ん?どうしてだ。」

「ああ、流れの《モンク》の方が今教会に来ているんだ。
まあ、今日は教会に泊っていくらしい。
だから俺が町を案内することになったんだ。」


デアからなんとなくかけられた言葉に対し、ふと頭に考えがよぎる。

ここ、ガヴォニーにはイニストラードの他のどこよりも多くの墓所が存在する。
何故ならイニストラード中から人々が死体を持ちこみ、もっとも安全な場所で埋葬したいと思うからである。
特に首都スレイベンには死者のアーチと呼ばれる門があり、そこを通って巡礼者たちは愛する者の身体を都市へと運びこむほどだ。

さて、厄介なのはこれからであり、この州ではどこの州よりも多き死体があるせいで最も《墓暴き》が多い州でもある。
そのため、『教会』の方も、《墓暴き》が墓を荒らさないように《墓場》の警護を徹底しているのである。
それゆえ、《墓暴き》が墓場に侵入するためには、その警備時間の隙を突いたり抜け道を使ったりしているわけだ。
しかし、今日に限っては教会に流れの《モンク》が来たせいで、デア達《アヴァシン教徒》の日程が変わっている。
もしかしたら、今晩の『墓の見張り』のスケジュールもいつもと違うのではないだろうか?
それを《墓暴き》達は知っているのか?


「(……嫌な予感がする)」

「ん?
難しい顔をして、どうした。」


ニウの食事の手が止まったことを察し、デアがニウに声をかける。
話しかけられたことに気が付いたニウは、表情を戻す。


「いやな、もともとこの町に住んでいない人、特に《モンク》みたいな熱狂的な《アヴァシン教》の方が来ると、私みたいな《錬金術師》を目の敵にする人が多いからさ。
ちょっと不安になって。」


ニウはそう苦笑しつつ、デアに平然と嘘をつく。
しかし、ニウの言うことは今現在考えている事ではないものの、的外れなことは言っていないつもりである。
以前少し説明したが、《モンク》とは本来、文字道理《僧》であって《僧》でない者たちを指す隠語である。
《アヴァシン教》内にもいくつかの《宗派》はあるらしいが、その根幹の考えは同じである。
しかしながら、《モンク》は《アヴァシン教》の教徒でありながら、不適切な言動や誤った教義の強制によって追放された狂信者たちだ。
中には、《錬金術師》=《教敵》として、襲ってくるようなものまでいるらしい。
デアはニウの言葉を真に受け、その不安を和らげようとこう言った。


「ああ、それに関しては安心しろ。
明日、町を案内はするものの、その人はこの町に長期滞在するつもりはないらしい。
だから、お前が《錬金術師》だからというだけで、この店に文句を言ったり《異端審判》にかけられる事はないだろう。
そんなことは司祭様がそれを許さないだろう、いざとなったら、おれもきちんと反論する。」


デアのちょっと見当違いな台詞にニウは一瞬きょとんとした顔をするが、その真剣な顔を見てニウは思わず笑ってしまった。


「ぷっ、くふふ。
あはははは。」

「な、おま、こっちは真剣なつもりで言ったのに!
いいから、笑うなよ!」


ニウが笑ってしまったことに、デアは赤面しつつ怒った。
その様子に、ニウの笑いがさらに加速し、笑い終わる頃には顔を真っ赤にしつつ顔を机に伏せたデアと笑い過ぎからか目端の涙をぬぐうニウがいた。


「ごめんごめん。
せっかく真剣に励ましてくれたのに、笑っちゃったことは悪かったから、どうかそんなに拗ねないで。」

「……別に拗ねてない。」

「そういうのが拗ねてるっていうんだよ。
まあ、ありがとね。」

「……どういたしまして。」


伏せたまま、お礼を言うデアに思わず笑顔になるニウ。
ニウは思う、デアはこんな化け物跋扈する恐ろしい世界において、すごく珍しいと。
彼は孤児であるので、一部の首都に住む、『首都から一歩も出たことのない』お坊ちゃんとは違いこの世の恐ろしさと言うものを知っている。
しかし、それでも彼は未だにこのような善人でありながら、自分の様な《錬金術師》という怪しげなものですら受け入れている。
まあ、だから自分みたいな《教敵》がのざばってしまうわけだが……、それは言わぬが華と言うやつか。
そんなことを考えつつ、ニウはデアをいじるネタができたと思うのであった。

その後一通りデアをいじったニウは食事を終え、食器を洗いなどの残った家事を始めた、
デアの方はというと、ニウを手伝おうとはしたが明日朝が早いだろうと諭され、早々に寝ることを進められ、デアはすでに寝室へと向かっていったのだった。
しかし、食器を洗いながらも、ニウの心の中は未だに嫌な予感がうずうずと残っていた。
そして、一通り家事が終わると彼女は決心する


「……こい。《チフス鼠》」


そういうと、彼女は突然『呪文』を唱えて、《チフス鼠》を一匹召喚する。
呼び出された鼠は一見普通の《鼠》のようだった。
それは呼び出されてしばらくは普通の鼠のように辺りをちょろちょろしていたが、突然何かに取りつかれたかのように動きを止めた。
そして、すぐにまた動きを開始するものの、先ほどまでの統率の無い動きとは違い、それはまるで意志を持つ者のように、真っ直ぐにニウの方を方へ向かってきて、上方へと頭を向ける。


「……こんなところで突然呼び出して、いったいどうした我が契約主様よ。
せっかく今日は『研究なし』だから、久々にぐっすり寝るとか言っていなかったか」


この《鼠》いや、《悪魔》はいやらしい笑みを浮かべながらニウに向かって話す。
こいつは今のニウに呼び出されたという事だけで、ニウに予想外のことがあったことが分かったのだろう。
《他人の不幸は蜜の味》とばかりに《鼠》のテンションはうなぎのぼりであった。
そんな《鼠》の心理を知ってか知らないか、ニウはこの《悪魔》に舐められないためにも軽い口調で《鼠》に話しかけた。


「まあ、ちょっと嫌な予感がするからな。
今から夜の墓場に行くから、ちょっちエスコートを頼もうかと思って。」

「くくく、了解だ。
我が契約者よ。」


こうして、急遽ニウの今晩の予定が、ぐっすり睡眠から深夜の墓場ツアーへと変更されたのであった。





★★★★★★★★★★

墓暴き (黒)

ソーサリー

あなたの墓地にあるクリーチャー・カード1枚を対象とし、それをあなたの手札に戻す

「いつも腐れ落ちた亡骸ばかり扱うものだから、新鮮な死体に出くわすと……何だか、誕生日が早く来たみたいだ。」
――屍術師ネビニラル


★★★★★★★★★★



★★★★★★★★★★

黒猫 (1)(黒)

クリーチャー — ゾンビ(Zombie) 猫(Cat)

黒猫が死亡したとき、対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーはカードを1枚無作為に選んで捨てる。

最後の命は、お前の夢を苦しめるために費やされる。

1/1

★★★★★★★★★★



★★★★★★★★★★

錬金術師の弟子 (1)(青)

クリーチャー — 人間(Human) ウィザード(Wizard)

錬金術師の弟子を生け贄に捧げる:カードを1枚引く。

副作用には、悪臭、蒸気の噴出、および不随意の消滅が含まれます。

1/1

★★★★★★★★★★




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


どうも、リアル事情でまだまだ亀更新になりそうな作者です。
とりあえず、まあいろいろと不格好な感じなってしまった、第8回目です。

今回はと言うか今回もかなりの難産なため、いろいろと納得のいかない展開が多いかもしれませんがとりあえずご了承を。

とりあえず、次の更新もあまり早くはないでしょうが、次回はできるだけ早く仕上げられるようにしたいと思います。

さて、今回も感想や誤字脱字がありましたらどしどしお願いします。
では次回の更新でまた。



おまけ


俺「ドラフト(その場で開けたパックを一枚ずつ交代で回し、その場でデッキを作って勝負する)やろうぜ。」

友1、2「おk。」

俺「(おお、『もぎ取り』、これはいけそうだ。)」

友1「お、ジェイス」

俺「え」

友2「お、リリアナ」

俺 「なにこれこわい。」


……自分が毎度パックを買ってくるんですが、どうして自分で開封すると欲しいカードが出ないんですかねえ。
教えて、エロい人。


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