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No.34830の一覧
[0] 【ネタ】MTG転生物【TS転生物注意】[どくいも](2015/02/01 13:26)
[1] プロローグ[どくいも](2012/10/06 17:37)
[2] 1-1[どくいも](2012/10/21 02:28)
[3] 1-2[どくいも](2012/11/01 17:30)
[5] 1-3 前半[どくいも](2012/11/01 17:35)
[6] 1-3 後半[どくいも](2012/10/21 02:29)
[7] 1ー4 幕間[どくいも](2012/11/01 17:40)
[8] 1-5[どくいも](2012/11/05 18:19)
[9] 1-6[どくいも](2012/12/04 08:43)
[10] 【おまけ的な何か】そもそもMTGとは?[どくいも](2012/10/13 14:39)
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[34830] 1-5
Name: どくいも◆a72edfa5 ID:6bed7031 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/11/05 18:19
高地都市スレイベン

岩山の間を流れた水が集まり、巨大な滝として流れ出す白鷺湖の中央に位置するどっしりとした台地の上に鎮座し、その周囲には何重にも霊的防御の施された城壁が囲む。
ガヴォニーに住んでいる人、いや、イニストラード中の人が住みたいと願う憧れの地。
また都市には、この世界最大のアヴァシン教の聖堂があり、そこの統治により、この町は、他の町には到底比較にならないほどの、潔癖さと秩序を維持していると言えるだろう。
毎年、多くの《アヴァシニアン》達がこの地を巡礼のために尋ね、その身の信仰心と退魔の力を上げてゆく。
そして、この町の住民は他の町の状況を彼らから聞き知ることによって、自らの身の安全に感謝し、中には自分たちは選ばれた存在だという一種の選民思想を持つこともある。

しかし、このような最高に神聖な都市であってもやはり闇の部分という物は存在している。


「ぎゃははははははは!!」

「殺せえ!崇めろ!狂えぇぇ!」


品の無い叫びと、腹の底からのどす黒い笑い声が部屋一面を覆う。
そこはスレべインにある教会の地下に存在する一室である。
しかし、本来神聖であろうはずのそこに存在するのは、壁につりさげられた無数の多種多様な死体、人骨でできた食器、怪しき食糧に血濡れの装飾が付いた長机。
このイカレタ空間に存在するのは動物は、多種多様な息せぬ者(アンデッド)の群れに、汚れた仮面に黒いローブの集団。
その集団の騒ぎを煽り、指揮するは一匹の巨大な禍々しき異形。
すべての人が憧れ、羨む神聖都市、だがその地下はと言えば、まさしく邪教の温床になっているのだ。

そう、彼らこそが《スカースダグ教団》。
大天使が降臨する以前からこの世界の闇を牛耳る集団。
古代から彼らは悪魔《グリセルブランド》を讃え、崇拝し、悪魔《グリセルブランド》は彼らの献身に対して対価を与えるかわりに、信者を玩具のように扱う。
現在の彼らの目標はアヴァシン教の撲滅であり、そのために日夜計画を立て、また全国各地の黒魔術師の支援を行っているのだ。

さて、そのような狂気に満ちた一団から少し離れた壁際に、少し小柄な黒いローブをかぶった人物、そう、ニウがいた。
彼女は、彼女の黒魔術用の地下室とは比較にならないほどの、この醜悪な光景を冷めた目で見ていた。


「……訳の分からないほど無駄に高いテンション、狂ったような行動、何よりゾンビ特有のこのひどい臭い。
相変わらず、ひっでえ所だな。」


ニウは幼いころから何度か、この教会地下に訪れ、ここで行われる『黒ミサ』いや《暗黒の儀式》に参加したこともある。
しかし、彼女は結局この邪悪な宴の雰囲気を好きになることはなかった。
はっきりとした理由はない。
しかし、彼らの気の高まり、狂声、特にアンデッドのにおい、どれもが黒魔術師の醜い所を集めたもののように思え、又彼らの余裕のなさがはっきりと感じられるからかもしれない。
そして、彼らによって行われる《暗黒の儀式》で放出され高まっている『黒のマナ』から強い死の気配を感じるからかもしれない。

この世界では一般に知られていないが、魔術に必要となる《マナ》には5つの色とそれぞれを象徴する事象という物がある。
例えば、《アヴァシニアン》達が唱える《信仰の魔法》に必要な《白マナ》は正義と秩序を表し、土着の《シャーマン》達が唱える《シャーマニズム》に必要な《緑マナ》は自然と進化を象徴する。

さて、黒魔術で扱う《黒マナ》はというと、それは死や悲哀、狂気・野望の色なのである。
《黒マナ》はその地の死の香りが濃ければ濃いほどより多く集まり、狂気と恐怖を求めるものに力を貸す。
よって、生まれつきの才を別とすれば、《黒魔術》の使い手はその身に『狂気』を宿している、危険人物であることが多い。
もちろんこれは大げさな話ではあるが、彼らのうち大半が『利己主義』であるのは間違いないであろう。

……まあ、今彼女の目の前で行われている黒ミサも、その身に《黒マナ》をより多く集めるための、黒魔術を効率的に使えるようにするように、その身の『狂気』を高める修行だと考えれば悪くないものであるかもしれない。


「けど、教会の下なのにこれほどの狂気に、周囲の《黒のマナ》の高まりよう。
下手したら、いや、下手しなくても教会にばれるかもしれないだろ。馬鹿なの?」

「くくく。黒魔術を使う物ならば、このような行動や部屋の外装も、この黒マナの高まりも全然普通ではないか。
それにお前が黒魔術を使っているときに行っている行動も似たようなものだぞ。
内心に感じている、その嫌悪感、おそらくは『同族嫌悪』であろうな。」


ニウの呟きに対して彼女の胸元にいたネズミが声を発す。
ネズミの発言を聞き、少し心当たりがあったニウは、ここに来てから下がりっぱなしのテンションがさらに下がるのであった。




【ネタ】MTG転生物【TS転生物】 1-6 




ニウが壁に手をつきながら気持ちを静めている中、彼女に向かって一人の人物が近づいてきた。


「相変わらず辛辣だな、同士『N』よ。
……彼らも目の前で本物の《悪魔》様を拝見できて感動し、はしゃいでいるのだ。
あまりひどいことは言ってやるな。」

「……あんたか、《バーグ司祭》。
あんたはあの集団に混じんなくていいのかい?」

「なに、私は若い者とは違い、すでに何度か《悪魔》様、しかも主を見たこともあるのだ。
今更彼らのように感動することはない。
今は彼らの喜びぶりをじっくり眺めることにしておくよ。」


彼はここでは通称《司祭》と呼ばれる人物。
今ここにいる《教団》メンバー内で一番偉いとされる人物であり、《スカースダグ教団本部》でも、かなり高い位置にいるという話だ。
さらに言えば、この場所を提供している人物でもある。
そう、彼の表の顔は《アヴァシン教会》の『司祭』であり、今この場では『邪教』の司祭も務めるという男なのである。
本来なら、今のニウが『N』と呼ばれているように、教団内の多くの人が偽名でやり取りする中、彼だけが本名その他もろもろの個人情報を完全にこの場の全員に公開しているという珍しい人物だ。


「……今回、《悪魔》様の完全召喚の成功、感謝と祝福の言葉を贈ろう。
貴様の教団への助力、うれしく思う。」


司祭はニウに対して、自分の方がはるかに年上であるのに、まるで同格のモノに話しかけるような丁寧な口調でねぎらいの言葉を掛けた。
しかし、ニウの司祭に対する態度は、少し冷たいものであった。


「……まさか、そんなことを言うだけのために呼び出したわけじゃないよな?
私としては、早い所こんなひどい臭いのするところから出て行って風呂にでも入りたいんだが。」


今回ニウがこちらに訪れた表面上の理由は、『昔お世話になった雑貨屋夫婦に呼ばれたから』ということになっている。
そして、実際彼女はこの狂宴が終わり次第、すぐさま夫婦の家へと向かうつもりである。
しかし、今回彼女がここに訪れた真の理由は、彼女のこの前の依頼の詳しい報告であり、さらに証拠として、彼女にこの前契約した悪魔、《灰口の悪魔王》を召喚するように頼まれたのだ。

そう、今教団員の目の前にいる大きな異形とは、彼女が証拠として呼び出した《灰口の悪魔王》のことであった。
件の悪魔は、パフォーマンスのつもりだろうか、巨大な牡牛や動くズタ袋(中身については考えない方がよいのだろう)をその魔術を使い、宙に浮かせながら食べていた。
そして、さらにサービスのつもりか、周囲にはいつの間にか、《灰口の悪魔王》の部下と思われる小悪魔達が騒ぎ喚いている。
その悪魔の超常的身姿と喚く小悪魔達をみて、周りにいる教団員がざっとざわめき、歓喜していた。
その様子を冷ややかな目で見ているニウに向かって、バーグ司祭は返答する。


「もちろん、そんな訳はない。
しかし、今この時代に貴様のような、《悪魔》を召喚できるほどの腕の魔術師はめったにいないのだ。
しかも、あの悪魔様は我らが主《グリセルブランド》の盟友と聞く。
これほどの奇跡、そうはないだろう。」


バーグはそう言うと《灰口の悪魔王》を見つめた。
さきほど、そこまで喜んでいないとは言ったものの、その眼には明らかに《悪魔》を見れたことへの歓喜の様子が見え隠れしている。
そして、司祭が教団員達を見つめる眼はまるで愛しい我が子を見つめるような眼であった。
しかし、ニウは司祭の感情が(少し)理解はできても共感はできず、少し冷ややかな目で見てしまうのは仕方がない事であった。


「……あっそ。
でも、あんたもこいつではなくとも、別種類の《悪魔》を召喚できるって聞いたぞ?
そんなに悪魔がどうこう言うならあんたが日頃から召喚すればいいじゃないか。」

「……よく知っているなあ、確かにそれができれば楽ではあるのだろうが、そう簡単にはいかないのだ。
私の実力は『主』を召喚できるほどの力量はない上、対話すら困難だ。
それに、私が呼び出すことができる《悪魔》様は強力無比ではあるが、その契約はなかなか厳しいものがあるので、おいそれとは呼び出せなくてな。」


バーグの話す様子は少し物憂げであり、なんとなくではあるが《司祭》が契約している悪魔に心当たりがあるニウは、少し司祭を気の毒にも感じた。

さて、すでにお分かりであろうと思うが《ニウ》と《ジーグ夫婦》は《スカースダグ教団》の関係者である。

さて、ここで両者がどのように彼らと知り合ったか補足しておこう。
彼女が《スカースダグ教団》と知り合ったのは、《ジーグ》の雑貨屋が《クグリ商会》に入会したときである。
少し話がそれるが、実は《ジーグ》が、ニウを雇ったのは彼女が胡散臭いながらも効果ある、錬金術の知識を持っていたからというのが大きい。
昔、《ジーグ》は嫁が病気で倒れた際、その病気を治すために、藁をもすがる思いで様々な手を尽くした。
町中の医者の場所に行き、教会の司祭にも頼み込み、果てはこの世界に古くから存在する魔法、シャーマニズムにも頼り始めた。
しかし、町の医師やシャーマンでは手が付けられる状況ではなく、教会の司祭で病気を治せるもの腕を持つ者は希少、一介の商人である彼には到底手が届かない金額の《寄付金》が必要となってしまった。
(これは決して、アヴァシン教徒の腕が悪いというわけではない。しかし、アヴァシン教の本質は《退魔》であり、『化け物』の退治や『結界製作』を専門としているのだ。
《治癒》の力、特に怪我ではなく病気を治すような《治癒》の力を持つ者はそこまで多いわけではないのである。)
その時に《ジーグ》は《スカースダグ教団》、そう、黒魔術の力に頼ろうともした。
……しかし、彼自身一介の商人にしかすぎず、以上の試みはすべて失敗に終わった。

《ジーグ》の心が絶望に染まろうとした時、ニウが金と材料さえ渡せば、その病気を治せると言ってきたのだ。
嫁を溺愛する《ジーグ》はニウの言葉に藁をもすがる思いで信用した。
その材料は世間ではあまり手が入らず、《ジーグ》は《スカースダグ教団》からの伝手で手に入れ、結果的に《ジーグ》の嫁の病気は1年かけて完治するまでに至ったのだ。

その後、《ジーグ夫婦》と《ニウ》は表は《クグリ商会》の一員、裏としては《スカースダグ教団》の協力者として行動しているのだ。
そして、《スカースダグ教団》は昔からそのニウの黒魔術の才能を感知しており、幾度となく《協力者》ではなく《教団員》になってくれるように、ニウの事を勧誘しているのであった。

ニウはなんとなく教団との出会いを思い出していたが、そんなニウを見ながらバーグは話を続けた。


「しかし、いくら我らの知らぬ異界の悪魔と契約しているとはいえ、その若さでそれほどの実力。
貴様のような一流の人間には、ぜひ我が主に仕えてほしいと思うのだが……。」


そう、そして《スカースダグ教団》からニウへの勧誘は、現在でも続いているのであった。
しかし、彼女としては《アヴァシン教会》からも誘われている身としては、ここでまで勧誘されるのは勘弁というのが本音である。


「それって、嫌味か?
今回私があいつを呼び出すのに、軽く1時間くらいかけてるんだぞ?
それで一流なんて言われても信じられるかよ。」

「そんなつもりは……。」

「なら、あんたと私が戦ってみるか、たぶん、十回中八回くらい私が負けちゃうだろうけどな。
そんなわたしが一流なんて言えるわけないだろう?
反論あるか?」


そして、ニウの言葉に対して、司祭はため息をつき、ネズミは薄ら笑みを浮かべていた。

そう、ニウにとって今の自身はまだまだ発展途上であり、今の自分の実量ではこの世界で名をあげるとか言う以前に、一人で生きぬくことすら難しい《少民》であると確信している。
……ニウ自身が持つマナの量はこの世界の一般人のそれに比べてはるかに多いし、土地からマナを引き出す術もそこそこ上達した。
ニウ自身もこと黒マナを扱う技術に関してはそれなりの自信がある。
けど、彼女はそれができるだけでこの世界を完全に1人で生きていけると思うほどうぬぼれてはいない。

そう、強い魔術が使えるようになったからと言って、戦闘が強いとは限らないのは自明の理だ。

この前のゲンとの決闘。
あれは向こうが完全に魔術師らしい魔術師が相手であったため、単純な呪文合戦で勝負がついたが、実際の生死を賭けた決闘というのは違う。

例えば、熟練の吸血鬼の場合、多数の部下を連れながら、隼よりもはやい速度でこちらに接近し、魔法まで使ってこちらを襲ってくる。
一流の『シャーマン』は、目にもとまらぬ速度で家よりも大きい獣を呼び出し、本人も熟練の狩人であるという。
今の彼女では、彼らに対し手が出せないとまでは言えないが、正面から戦かって勝てるかと聞いたら、厳しいと言わざる得ない。

ニウは自身の弱点はいくつかあるが、その中でネックとなるのは肉体の速度と反応の鈍さであると思っている。
確かに今の彼女は町一つ、大混乱を起こせるような魔法を覚えている。
この世界において、多人数で行うような、いわば大魔術の域にあたるマナを大量に使う呪文であっても、時間さえあれば彼女は自分一人で成功させることができる。
しかし、そんな彼女も所詮はただの人間、ナイフで切られれば血が出るし、息ができないと死んでしまう。
そして、別に『兵士』や『聖戦士』でもないので肉体を鍛えているわけでもない、いわば普通の女子供と同じ肉体のスペックである。(単純な筋力なら強化呪文で上げることができるとはいえ)
この世界の、強力無比な化け物相手では、軽く撫でられただけで吹き飛んでしまうだろう。
さて、そんな彼女が、戦闘と称してそんな化け物たちと接近戦を繰り広げながら呪文をすらすらと唱えることができるどうかは、容易に想像できるであろう。

しかし、彼女の横にいる《バーグ司祭》、彼はこの世界でも珍しい、単身でこの世界中を渡り歩くことができる人物と言えるであろう。
彼は悪魔を召喚できるほどの黒魔術師であるのに、同時に《ガヴォニー》屈指の腕を持つ『聖戦士』でもある。
彼の前では、狼男、ゾンビ、吸血鬼が襲ってきたとしても、《アヴァシン教の秘術》を持って一撃で粉砕でき、戦士としても一流。
更に対人戦では、黒魔術を使い、さらには黒魔術の腕前はと言えば、すでに不老は手に入れているとまで噂されている。
彼のようなものこそが真の強者であり、それに比べれば自身は何と弱い事か。
ニウの頭によぎったその現実、それによりニウはため息を吐いてしまい、そして、気持ちを切り替えたかのようにバーグへと話した。


「……確かにあんたの言う通り、正式に《教団》に入ったほうがいろいろと楽なんだろうが、すでに私は別の悪魔とぶっとい契約している。
その上、私が目指すのは、この世界で平和に1人でも生きられるほどの力だ。
地位とか名誉とか入らないし、集団を背負うほどの面倒事は勘弁だね。」

「くくく、それに我が契約主が真に実力を着ければ、おまえらもこいつを良くも悪くも無視できなくなるだろうなあ。
そうだ、今のうちに殺しておいた方がお得だぞ?」


《鼠》はわざわざ声を大きくしてまで会話に割り込み、二人に対してからかいを入れようとした。
初め、まだ鼠と知り合ったばかりのころの司祭は、《鼠》の軽口を真摯に受け止めようとしたり、それによって困惑させられたりもしていた。
しかし《鼠》の性格をすでに知っている現在の司祭は、その言葉に対し、ただ困ったように《鼠》に向けて作り笑いを向けるだけであった。
一方ニウはネズミを踏みつけようと足を振り上げた。
しかし、ネズミの方は「おお、怖い怖い」などと惚けながら、彼女の足撃をかわすだけであった。
そして、鼠は其のまま狂気の宴の中へと消えていった。
ニウが《鼠》を見送ったのを見届けた時、バーグは彼女に話しかける。


「さて、早速本題に入りたいと思う。
つい最近ステンシアまで行っておいてもらい恐縮だが、今ここに2つ貴様にやってほしい依頼がある。」

「……本当に急だな。
また遠出するのは、さすがに嫌だぞ。
あんたらからの依頼のせいで、教会から捕まったら冗談じゃ済まないんだぞ?
できればすぐに終わる類のモノだとうれしいんだが……。」

「ふむ、……残念だが片方の依頼は確実に長期間かかる任務だ。
済まないがね。」


ニウはわかっていながらも、その答えに渋い顔をした。

そう、大抵教団がニウに対して出す依頼は、すごく長期間かかるものか、高難易度のもの、又はどちらでもあるかだ。

良くやらされる依頼としては、裏切り者の始末や高難易度の魔導書の製作などがある。
前者の任務がなぜニウにやらせるかといえば、これらはいわば高難易度な任務であり、そして、同じ教団員同士がやると色々といざこざがあることが多いからだ。
さらに言えば、裏切り者の始末といっても、実際に殺すことはそこまで多いわけではない。
実際に裏切り者や脱教団者が出るたびに殺しに行こうとすると、その人の交流などからこの教団の存在がばれてしまうかもしれないからだ。
(また、どうしても殺されなければならないほどの派手な悪行を繰り返している奴は、大抵アヴァシン教の僧侶によってすでに殺されている。)
その点ニウはこの世界では珍しい《黒魔導師》であり、かつ《精神魔術》の使い手でもある。
洗脳や催眠は不得手ではあるが《記憶消去》や《記憶の探知》を得意としている。
それゆえ、彼女は教団の裏切者や教団から抜けたいと思っている者の所へ行き、物的消去、いや記憶の証拠すらも根こそぎ奪うことができるのだ、このような任務にふさわしいと言える。
しかも、この任務、大抵この町『スレべイン』ではないことが多く、いや下手したら、前回の任務のように《ガヴォニー》ですらない《ステンシア》や《ネフェリア》という、別の州にまで行かなければならないことがあるのだ。

さて、彼女がこの任務を今回いやがっているのには理由がある。
この世界の住人にとって、旅や旅行はあまり一般的とは言えない。
彼女は前回『まとまった金が欲しい』という言い訳で別の州に行ってきたばかりである。
それなのに、連続で遠出をするとなると彼女に対する疑いの目はますます強くなるのは自明の理だ。
できれば、楽な任務、そう、引きこもったままでもできる任務がいいと思っていたがどうやらうまくいかないらしい。

そんなニウの考えを察してか、司祭は話を続けた。


「安心したまえ。
今回の任務は別に遠出しなくてもよいものだ。
ただ少し面倒なのと、実力に似合う者が君ぐらいしかいなかったからという理由だ。
報酬も弾む。
今回の成功報酬は、以前から貴様が欲していたものだぞ?
それにもう一つ任務は簡単だ。すぐに済む。

……貴様が死ななければだがな。」


司祭がそういったか否かの瞬間、今まで騒いでいた集団の一角から、大柄の人型が飛び出してきた。


―――――!!!!!!


その人型は、大きく口をあけながらも、何もしゃべらずにこちらに向かって走りこんできた。
その体、まるで熊のように大きいが、その足の速さはまるで狼のように早い
それの頭、いや体中には多数の縫い跡があり、その肌の色は真っ青であり生気を感じさせない。
その両手には金属の手甲がしてあり、首の周りにも首輪を何倍にも大きくしたような金具がついている。
そしてその金板や体表には多数の《ルーン文字》が刻まれているのが分かる。

そう、これがゾンビでありながら、人の手によってつくられた創造物、不格好な生命、『スカーブ』である。
この世界のゾンビには二つ種類がある。
片方は『グール』、時折「神聖を汚す者」と呼ばれる、屍術的に動かされている屍であり、もう一つは『スカーブ』で、死体から錬金術的に構築された存在である。
『スカーブ』は『グール』とは違い、それを創ったり、使役するにはかなりの技術が必要となる。
しかし、その強さは『グール』に比べ頭一つとびぬけたものであり、グールを使役する『グール呼び』がその腕をゾンビの数で勝負するのならば、『スカーブ師』の腕は自身が使役する『スカーブ』の質でわかるというのだ。


「……!っち」


彼女スカーブが自分の方向に向かって突撃してきていると知ると、すぐさまそれに向かって腰に下げていた《刃のブーメラン》を投げつけた。
しかし、件のスカーブは飛んでくる《刃のブーメラン》の方向に腕を伸ばし、その手についている手甲であっさりとそれをはじいた。

そして今の一連の動作で、こちらに迫ってきている『スカーブ』、ニウははっきりと確信したわけではないが、おそらく一流の者の手によってつくられたのだろうと推測した。

『スカーブ』はその死体の質や臓液の純度など材料の良しあし、そして、ルーン刻みや修繕などの製作した人の腕の二つによって大きくその強さが変わる。
そして、今回のスカーブはその体に刻まれたルーンの量とそこから発せられる魔力光の輝きの強さ、あっさりと《刃のブーメラン》を止めれるだけの固さ。
なにより、手甲を使い防御したという、『ゾンビ』にあるまじき頭の良さと反射神経。
おそらく夜道でいきなり至近距離から奇襲をかけられたら、あっという間に挽肉へと変えられていたかもしれない。
しかし、それほどの強敵がこちらへ襲ってこようとも、ニウは全く動じずにその『スカーブ』を見据えながら呟いた。


「……けど、残念だったね。
今回ここは私にとって、絶好の環境。
影よ、わが怨敵の身の自由、絶対に許すな。《闇の掌握》」


彼女が呪文ともいえないくらい、短い詠唱をする。
すると、スカーブの下にある、石の床の隙間から、黒い影が伸びてきた。
その影は『スカーブ』と方へと延びてゆき、そして、まるでヘドロのように地面から黒いゲル状に何かが湧き上がる。
それらはあっという間に、スカーブの体へと絡みつきスカーブの進行は止まった。
スカーブも何とかそのしがらみから抜け出そうとするも、どうやら力が足りないらしい、振りほどけないようだ。


「やっぱり相当強いな、あのゾンビ。」


ニウはそう言いながらスカーブの様子を余裕をもって観察していた。
なぜなら、ここは教会地下の《黒ミサ》、いや、《暗黒の儀式》の最中。
周囲には大量の《黒マナ》が漂っており、彼女が呪文を唱えるには絶好の環境。
その上『スカーブ』はご丁寧に目立つように遠くから現れてくれたという、好条件が彼女の心に余裕を生んだのだ。

そうこうしている間に、ニウの目の前でその黒い影は、何かの呪いであろうか、元々死体からできているはずのスカーブの身をさらに腐らせていき、スカーブの体はどんどんボロボロの穴あきとなっていった。
呪文の効果が切れ、呪文により立体化していた影が地面へと帰っていく頃には、スカーブの体は地面へと倒れこみ、体にはたくさんの穴があり、四肢などのいくつかの部位は完全に腐りきって千切れて落ちていた。

ニウはその『スカーブ』が動かなくなったのを確認するとニウは司祭の方を睨みつけた。


「ったく、いきなり何してくれるんだ。
どう云う事か説明してくれるよな?」

「ふむ、説明してやってもいいが……。
それはその《スカーブ》を殺しきってからだな。」


司祭の言葉を聞いたニウが、再びスカーブの方を振り返る。
すると、なんということだろう、スカーブの体に刻まれていたルーン文字が青白く光り輝いていた。
その体についていた腐った部位は、体から零れ落ち、さらに体の穴が増えた。
もぎ取れていた四肢は体から出てきた青い体液がそれらを胴体へと繋ぎとめる。
さらには、体の中に隠されていたのだろう、体表部には、多数の鋼の刃やトゲなどが皮膚から突き破り、むしろ外見だけで言うならば、そのスカーブはそれ以前よりも凶悪になったように感じられる。
そうして、そのスカーブはその身に多数の穴をあけながらもその二つの足で立ち上がり、むしろ倒す前よりも強くなって、復活してしまった。


「げっ、あそこまで壊してもと通りに復活できるのか。
……衰弱系の呪文で復活するってことは《再生》能力とかじゃないな。
まさか《不死》能力持ちのスカーブ?
これは文字通り『執拗なスカーブ』ってことか。」


彼女は焦りながら、そう呟いた。
目の前にいるスカーブは先ほどの傷などなかったかのようにこちらへ向かって走ってきている。

ニウの得意とする衰弱の呪文の弱点、それは前述した通り、純粋な体力が高すぎて効かない場合であるが、それ以外にもう一つ弱点がある。
それは、どんなに致死の傷を負ったとしても、瞬時にその傷を治せる《再生》能力持ちは殺すことができっても、一度死んでからもよみがえることができる《頑丈》や《不死》能力持ちには、効果が薄いという物である。

さて、以上のことを踏まえて、改めて情報を整理しよう。
そのスカーブと自分との距離は結構縮まってしまい、その走行速度は先ほどよりも早い。
流暢に長い詠唱の呪文を唱えられるほどの暇はないだろしう、詠唱がほとんどないような呪文であっても、3いや、2回が限度。
その身の強さは、ぱっと見でも大型の獣よりは確実に強い、殴られたら一撃で殺される。
この前ゲンが召喚したような小悪魔レベルのクリーチャーでは、一瞬で跳ね飛ばされてしまうのが眼に見えているし、《ネズミ》などでは壁にすらならないだろう。
さらに《不死》性を有しているので、もう一回倒してもさらに強くなって復活するかもしれない、いや、何度殺せば死んでくれるかもわからない。
その上、奴に対して衰弱の呪文は決定打となりえない。
奴を完殺するには、復活できなくなるまで殺し尽くすか、倒れたところで死体を焼くなどで焼却処分するしかない。
当然、ニウは火の魔法は使えない。


「(あれ、これってもしかしなくても、本当にやばくない?)」


ニウは若干の生命の危機を感じながらも冷静に目の前の障害を倒す方法を考える。

いくつか候補の案は考え付くも、どれもあまり採用したくない物ばかりだ。

まず一つ目は、眼の前にいる奴同様に《不死》であり、奴よりも強い力を持つと思われる、《灰口の悪魔王》に倒してもらうように命令することだ。
既にこの黒ミサの主賓として《灰口の悪魔王》は呼びだしているので、呪文の詠唱も必要ない。
流石に契約しているので、命令一つですぐさま真っ直ぐこっちまで駆け寄り、あのにっくきスカーブを殺し尽くしてくれるであろう。
……そう、あの悪魔絶対に文字通り、そう目の前にいる《教団員》など気にせず、『まっすぐ』突っ切ってこちらまでくるであろう。
一瞬、こんなことに巻き込んだ原因が教団員達であるのなら、この策は術師とスカーブどっちも葬れるので一石二鳥であるとか頭に浮かんだが、さすがに《スカースタグ教団》を敵に回してしまうだろう、この方法は却下。
二つ目は《突き刺す苦痛》の呪文で『スカーブ』を足止めした後、その間にこいつに勝てるだけの強いクリーチャーを呼び出すこと。
これも却下、このスカーブ、本当に《突き刺す苦痛》の呪文の効果で止まってくれるのか?
痛覚があるかどうか不明だし、あったとしても弱点を攻撃した苦痛ぐらいでは止まりそうもない。
逃げる、司祭に泣き付く、論外。
弱みを見せたら、骨までしゃぶりつかれるぞ。

結局いくつか案は浮かんだものの、最終的に採用できそうな戦法は一つだけであった。
それであるなら、万が一この策を失敗しても、すぐに別の策へと変更することができると考え、ニウは心は決まり、迫りくるスカーブへと眼をやり、呪文を唱える。


「息が詰まるなら吸い取ってやろう、《最後の喘ぎ》」


ニウの放った呪文の効果だろうか、《執拗なスカーブ》の後方の空間が歪み、そこから何者かの手がはいでてきた。
そして、その腕は紫色にうっすらと発光しながらは《スカーブ》の体へと巻き付いた。
その手は明らかに人間のモノではなく、長い爪、青い色、不気味な刺青とあまりいい予感をさせない物であった。
しかし、そのような腕に掴まれても、スカーブの進行は止まらず、多少は歩みが遅くなった程度のモノ。
依然真っ直ぐニウの方へ向かっており、すでにスカーブとニウの距離はもう目と鼻の先であった。


「やっぱ、このくらいじゃ止まらないか。
まあ、さっきの呪文よりも弱いから当たり前か。」


ニウはそのスカーブの依然変わらず活発な様子を忌々しげに見ながら、今回の作戦の要となるクリーチャーを呼び出した。


「気が進まないけど、しゃーないか……。
我が呼びかけに答えよ。塵山の精霊《屑嗅ぎ鼻》」


ニウが詠唱が完了すると同時に、ニウの体からスカーブの方へと浅黒い魔力が飛び出し、その黒い靄状の物体が、次第に姿を変え、体を形成する。
そして、ニウとスカーブの騒ぎに気づき、こちらの様子をうかがっていた《教団員》達はニウが呼び出した『精霊』を見て、思わず声を上げた。

その顔は豚。
この世界においても豚は一般的な動物であり、愛嬌のある顔で知られている動物である。
しかし、ニウが呼び出したその化け物の顔は『豚』でありながら、一片の生気も感じさせず、白い眼をむき、なぜか頭に生えているそのピンクの触覚はただただ不気味としか思えない。
その体は、蠕虫。
その背は紫色の体表をしており、節に分かれている。
そこに並ぶ丸い斑点、多数の細長い突起物が気持ち悪さを助長させる。。
体長は成人男性ほどもあり、いやにでかい。
さらには、足なのだろうか、その腹には一面のピンク色の触手、間接や規則性が見つからない。
イソギンチャクのようにびっしりと生えていながら、やけに太くうねうねと動いていた。
《屑嗅ぎ鼻》、それはまるで醜いという言葉をそのまま体現させたかのような精霊であった。

普通の人間なら、見ただけで逃げ出したくなるような化け物ではあるが、今回の相手はスカーブ。
そう、『ゾンビ』は『知性』はあったとしても『理性』はない。
《執拗なスカーブ》はニウへの進行を邪魔する障害、そう《屑嗅ぎ鼻》に向かって攻撃をした。
それに対して、《屑嗅ぎ鼻》も黙ってやられるわけではない、足代わりの触手を器用に使い、《執拗なスカーブ》に突撃した。
《執拗なスカーブ》はその腕力を持って、《屑嗅ぎ鼻》はその体の触手を使い、両者を攻撃する。
《執拗なスカーブ》の腕が《屑嗅ぎ鼻》の背をつぶし、《屑嗅ぎ鼻》の触手が《執拗なスカーブ》の体により多くの穴をあける。
そして、二匹の衝突が止まった。


「……相打ち?」


誰の言葉かはわからないが、その頃場が部屋の静寂にやけにはっきりと響いた。
《スカーブ》は膝をついた後に地面に倒れ、《屑嗅ぎ鼻》はその半身をつぶしながら横たわった。


「どうした、このままいたちごっこを続けるつもりか?」


両者が倒れたのを見計らい、司祭がニウに向かいそう挑発的に話しかける。
《屑嗅ぎ鼻》はどう見ても背中から体がつぶれてしまい、再起不能であろう、その体はぼろぼろと崩れ、《黒マナ》へと還って行っているのが素人目で見てわかる。
一方スカーブの方は、その体のルーン文字が光っており、このままであるとまた復活してしまうのが眼に見えている。
しかも、死ぬたびにニウの『衰弱』に呪文の効果が解除され、不死性によってより強くなって甦ってしまう。
しかし、ニウはそのような状態を知ってか知らないか、スカーブや司祭の方には目を向けず、《屑嗅ぎ鼻》へと最後の命令を下す。


「さあ、今だ!喰らえ《屑嗅ぎ鼻》」


―――ピギイイイイィィィ!!


ニウの命を受けた《屑嗅ぎ鼻》は、最後の一声とばかりに大きな鳴き声を上げ、その身を崩しながらも、スカーブの上へとのしかかる。
そして、その豚の顔の口を大きく開け、スカーブの頭にかみついた。


―――ガリッガリッ、ボリッボリッ


《屑嗅ぎ鼻》の咀嚼音が部屋に響く。
《屑嗅ぎ鼻》の体はつぶれた部分からどんどん魔力へと戻っていき、黒い煙のようにその身が消えていく。
しかし、その食べる勢いは一向に衰える様子を見せることなく、スカーブの体はみるみるなくなっていく。
初めは、それぞれ歓喜の声やら悲鳴やらを上げていた《教団員》達であったが、今や静かになり、全員が《屑嗅ぎ鼻》のおぞましき食事風景をただただ呆然と眺めていた。
……そう、《屑嗅ぎ鼻》は力はそれほどないものの、その死に際、辺りにある塵や死体を喰らってから消えるという性質を持っているのである。

そう、これがニウが出した答え。
《執拗なスカーブ》が何度も復活してしまうなら、死んでる間に《屑嗅ぎ鼻》に喰わせてしまおうという物であった。


―――ガツガツ、ゴリリ!


《スカーブ》の体を大方食べつくしてしまった頃には、《屑嗅ぎ鼻》の身もすでに頭しか残っていなかった。
そして、最後の一噛みと言わんばかりに、大きく口を開き《スカーブ》にかみつき、《屑嗅ぎ鼻》の体は完全に消え去り、《スカーブ》の体もいくつかの金属片を残して、この世から姿を消してしまった。
あまりの光景の異様さに、《教団員》達はただ呆然とするばかり、《悪魔》と《小悪魔》は歓声を送り、《司祭》は感心した様子でニウに話しかけた。


「ほう、まさかこのような方法で倒すとは。
おそらく貴様なら倒せるとは思っていたが、まさかこんな短時間で、しかもこのような方法で倒すとは。
私の予想をはるかに超えていたぞ!さすがと言っておこう。」

「その褒め言葉、火や信仰の魔法を使えない私への嫌味にも聞こえないこともないけど、今回はその言葉、素直に受け取っておくよ。
……で、結局今のこれはなんだったわけ?
私にこいつを仕留めさせたいのはなんとなく察した。
しかしこの依頼とやらはどういう意味があったんだ?
あんたは何がしたかったんだ?」


ニウはそう言いながら、司祭を睨みつけた。
もし教団が真面目に彼女を殺したいのなら、彼女はすでに《司祭》に殺されているだろうし、それはない。
あの《スカーブ》がニウでなければ倒せなかったからこのような依頼を頼んだのか?
彼女の横にいる《司祭》は悪魔を召喚できるほどの黒魔術師であると同時に《ガヴォニー》屈指の腕を持つ『聖戦士』。
そんな《退魔》専門者がこの程度のやつを殺せないわけがない。

以上の事からニウ自身、何を目的に司祭がこのようなことをしたかは、なんとなく予想はついていたがそれでも聞かずにはいられなかった。


「……すまないな。こんな実力を試すようなことをして。
私自身、貴様がこいつを倒せるくらいの実力があることはわかっていた。
しかし、依頼主が『こいつを倒せるくらいの実力がなければ、我が依頼を受ける資格がない』の一点張りであってな。
さっ、出てこい。」


司祭がこちらの様子をおどおどと見つめている《教団員》達に向かって呼びかける。
すると、その中から小柄な人影が歩み出してきた。
その大きさはニウよりも小さく、おそらくまだ10もいっていないであろうことが分かる。
ほかの団員同様に黒いフードとマントに覆われているため詳しい容姿は不明ではある。
その子供は司祭の横に立ち、ニウの方をじっと見つめた。


「……その子は?」

「ああ、もう一つの依頼として、君にはしばらくこの子を君の家で預かってほしいのだよ。
なお、拒否権はないものとする。」


わけがわからない。
正直、どこの親が子供を黒魔導師に預けるのか?
そもそもどんな任務なのか?様々な思いが交差する中、とりあえず、ニウは曖昧に言葉を返す。


「……ハア、私は救貧院や託児所になった覚えはないぞ?
子守りの依頼なら別の所に頼んでくれ。」


ニウは司祭にそう呆れたかのように言った。
しかし、子供の方はニウの言葉が気に入らなかったのだろう、強く反論した。


「俺はもう10は超えている、ガキじゃない。
それにお前だって、アイツを倒せるくらいには腕が立つようだけど、それでもガキじゃないか。」

「……はいはい、私が悪かった。ごめんごめん。
で、結局どういうことだ?本気で私に子守りをさせるつもりじゃないよな?」


子供の言葉に適当に対応し、司祭へと話しかけるニウ。
子供の方は自分がぞんざいに扱われていることに腹を立てるが、ニウは一向に対応する気配を見せなかった。


「詳しいことは後程話すが、そいつは実は、若手の《スカーブ師》だ。
とは言っても、未だ《スカーブ》一匹作れない未熟者だがな。
さて、君には彼と協力して、やってほしい任務がある。
何、短期の小遣い稼ぎのようなものだ、頼めるか?」

「……いったいどんな内容な事やら。
まあ、聞くだけ聞くよ。」


その後、ニウと司祭はその任務の大まかな概要を話し合い、結局しばらくこの子供をニウの家で預かることに決まった。
ニウは、しばらく無視されたからだろうか、少しすねた感じの子供に向かって話しかけた。


「……さて、紹介が遅れたな。
私の名前は「N]、偽名だ。
本名は後程教えるが、君をしばらく預かることになった者だ。
しばらくの間よろしく頼むぞ、ぼうず。」


「……ポール、偽名だ、よろしく。
後俺はもう10を超えた、子供扱いはするな、女。」


その子供は不愛想にニウに向かって挨拶をした。
どうやら彼は、ニウに子ども扱いされたのがよほど苛立ったらしく、懲りずに訂正してきた。
彼のその言動が、より彼を子供っぽく感じさせられるのは言わぬが花というやつであろう。
さて、今回司祭から言われた任務、断れないからやるとはいえ相当めんどくさい任務であった。
やっぱり今回は無理をしてでも、この集会に来ない方がよかったかなあと後悔し始めているニウであった。







★★★★★★★★★★

暗黒の儀式  (黒)

インスタント

あなたのマナ・プールに(黒)(黒)(黒)を加える。

儀式は影からの声で終わりを迎えた。不吉な力を持つ、大きな声で。
――― 祭影師ギルドの魔道士、ケフィームボウ.


★★★★★★★★★★



★★★★★★★★★★

執拗なスカーブ  (3)(青)(青)

クリーチャー — ゾンビ(Zombie)

執拗なスカーブを唱えるための追加コストとして、あなたの墓地にあるクリーチャー・カードを1枚追放する。

不死(このクリーチャーが死亡したとき、それの上に+1/+1カウンターが置かれていなかった場合、それを+1/+1カウンターが1個置かれた状態でオーナーのコントロール下で戦場に戻す。)

4/4

★★★★★★★★★★



★★★★★★★★★★

屑嗅ぎ鼻  (2)(黒)

クリーチャー — エレメンタル(Elemental)

瞬速

屑嗅ぎ鼻が戦場を離れたとき、いずれかの墓地にあるカード1枚を対象とし、それを追放する。

想起(黒)(あなたはこの呪文を、その想起コストを支払うことで唱えてもよい。そうした場合、戦場に出たときにこれを生け贄に捧げる。)

2/2

★★★★★★★★★★





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


うい、どくいもです。
前回は更新が遅くなると言いいましたが、予想よりも早く投稿できました。
とりあえず近くの店に「ラヴニカ」を再入荷してくれたおかげでモチベもモリモリです。

……はい、正直ここまで沢山いただいた感想にビビり、急いで書き上げました。
しかも、自分のお気に入りサイトで、自分のこのssが紹介されていて2度びっくりしました。

ここでお礼を申し上げておきますが、誤字脱字の指摘や感想、実にありがとうございます。
自分の文章のレベルは決して高いとは言い難いですが、精一杯面白いと思われる文章を書けるよう、精進していきたいです。


さて、次回の更新ですがかなり遅くなることが予想されます。
個人的な事情により遅れることが予想されます。
早くても11月の真ん中、遅いと1月初め位になるかもしれません。
まあ、予定はry)

では、また次の更新で会いましょう!では




おまけ


自分がMTGを始めたのは、部活の先輩、同学の友達両人に勧められたからでした。
その時は、自分のカードを持っておらず、友達や先輩にカードを借りて遊んでいました。
しかし、親切な先輩が40枚デッキ一個ぽんと私にくれたのを覚えています。
そして、その内容を一枚漏らさず覚えています。


ありがたい老修道士×20枚
平地×20枚


……本当にウレシカッタデス。
ウソジャナイヨ、ホントダヨ。


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