春になり、トリステイン魔法学院は進級の時期を迎えます。
この時期行われる一大イベントと言えばなんといって召喚の儀式です。
二年に進級する際に生徒達がサモンサーヴァントという魔法でもって使い魔を召喚するのです。
それは魔法学院における絶対のルールでした。使い魔の召喚はいわばメイジの絶対の条件でも有るのです。
当然召喚の儀式も重要視され、春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールに優先するとすら言われていました。
そして、その重要な儀式が行われる当日。
その儀式を行う若い魔法使いたちは誰もがその心に期待と一抹の不安を持っていました。
なにせ使い魔召喚の儀式ではどんな使い魔が出てくるのか呼び出すその瞬間までわかりはしないのです。
自分はどんな使い魔を召喚するのだろう、良い使い魔が召喚したい、出来るだろうか、そもそも召喚が成功するだろうか。
そんな期待と不安の入り混じった思いを、誰もがその胸に押し込めていたのです。
そしてその中で特に不安を持っていたのはルイズでした。
何せ彼女は今までに一度だって魔法を成功させたことがないのです。サモンサーヴァントが成功できる可能性が一番低いのが彼女でした。
そして、そのルイズの次にその場で不安を感じていた人間。
それは他でも無い、テオフラストゥスその人でした。
「不安だ」
何時もの自信満々のテオとはうって変わって、今日のテオはとにかく自信なさ気にうなだれていました。
そんな不安そうな主人の様子に、エンチラーダは心配げに声をかけます。
「ご主人様、どうなさったのですか?いつもウザったいくらいに自信たっぷりですのに、今日に限ってまるで乙女のようにしおらしくなられて」
「吾とて、不安になることくらい有る。サモンサーヴァントが上手く行くか不安でたまらないのだ。」
「ですが、サモンサーヴァントでございますよ?スクウェアであるご主人様が失敗するとは思えないのですが…」
エンチラーダはそう言います。
彼女の言うとおり、過去サモンサーヴァントは失敗したものはおらず、メイジなら誰でも使える基本的な魔法”コモンマジック”であるとされる魔法です。
彼女の言うとおり、スクウェアであるテオは失敗するほうがむずかしいでしょう。
しかし、エンチラーダのその言葉に、テオは首を横に振りました。
「他の魔法であれば法則性がある。どうすればどんな魔法が出来るのか全て決まっているし予測が出来る。勉強や練習をすればまず間違いなく出来るようになる」
「はあ」
「しかしサモンサーヴァントは違う。何が出てくるのか全くもって予測ができない」
「はあ」
「しかもチャンスは一回。間違えたからと言ってやり直しがきかない・・・ああ、どうしよう。もう何か酷いものを呼び出してしまいそうな気がしてきた」
「その根拠のない被害妄想の誇大妄想はおやめください」
不安そうに頭を抱えるテオに、エンチラーダは諭すようにそういいます。
しかしテオのネガティブシンキングは止まりません。
「例えばだ。何かの間違えで羽虫とか、ナメクジとか、蟻とかを呼び出したらどうしよう」
「考えすぎですよ、ご主人様の実力ならばドラゴンを呼び出しても不思議ではありませんよ」
「そんなモノ解らないじゃないか。なんか酷いのを召喚してショボーンてなるかもしれないだろ?」
「そんなことはまず無いと思います。それにたとえ虫や小動物であっても、それは必ずしも悪いとは言い切れませんよ?たとえば学院長などの使い魔は小さなネズミですが、誰も学院長の能力を疑うことは有りません」
エンチラーダの言うとおり、魔法学院の学院長の使い魔はモートソグニルという名前のネズミでした。
しかし、そんな小動物を使い魔としていますが、学院長が高名なメイジであることは間違いなく、
使い魔の力が弱いからと言って、必ずしもその主人の魔法使いとしての資質が低いということにはなりません。
しかし、それでもテオの妄想は止まることは有りませんでした。
「しかしさすがに、例えばゲジとか、いやむしろゴキ・・・「ご主人様…ほら、気分転換に他の方のサモンサーヴァントをご覧になっては?何もしていないと悪い考えが浮かんできますので」
そう言ってエンチラーダは他の生徒を指さしました。
もはやテオに対して如何なる説得も意味が無いと悟り、せめて彼の注意を他に逸らすことにしたのです。
「あらテオ、こんな隅っこでどうしたの?」
ふと声をかけられたので、テオとエンチラーダが横を見るとそこにはキュルケがおりました。
「主人様の順番は一番最後ですので木陰で涼みながら順番を待っているのです」
「ふーん、ねえ、見て見て!私はサラマンダー!それも火竜山脈のサラマンダーを召喚したのよ」
そう言う彼女の足元にはトラほどもある大きさのトカゲがおりました。
それは火蜥蜴と言われる種類の動物で、鮮やかで大きな尻尾は確かに火竜山脈のサラマンダーであることを物語っています。
それは火蜥蜴の中でも特に上等とされるもので、火の属性のキュルケには相性の良い使い魔でした。
「キュルケはすごいなあ。キュルケはサラマンダーをつかさどっている、ぼくにはとてもできない」
テオはサラマンダーを見ると、いつもとは違う調子でそう言いました。
その言葉に、キュルケは戸惑います。
あまりにも普段のテオの反応とはかけ離れているのです。
「…ねえ、テオ何か変なもの食べた?いつもと様子が違いすぎない?」
キュルケはエンチラーダにそう聞くと、エンチラーダは首を振りながら答えます。
「いえ、ご主人様は常に変なモノを食べていますが、様子が違うのはそれが原因ではありません、ご主人様は自分がどんな使い魔を呼ぶのか不安なようで、今日はどうも調子がすぐれないようなのです」
「へえ…テオも緊張とかするのね?意外だわ?」
いつも自信アリげで偉そうなテオのイメージから、今日のテオの様子がとても奇妙に見えたキュルケはストレートにそういいます。
「失敬だな、吾だって人間だ、不安になったり心配になったりくらいする!万が一イワシとかヒラメとか召喚したらどうしよう、召喚直後に死亡確定じゃないか、今からでも桶と水を用意しておくか?」
「あなた土の属性でしょ?流石に魚は無いんじゃないの?」
そうキュルケが言います。
彼女の言うとおり、召喚されてくる生き物はその召喚主の属性に近いものが呼ばれることが多いのです。
キュルケの火蜥蜴のように、火の属性のメイジには火に関係する使い魔が。
魚は水生生物ですので、呼び出せたとしても、水のメイジが呼び出すべき使い魔です。
テオは一応土のメイジですので、土に関係する生物が呼ばれる可能性が高いのですが、テオはそうは思いませんでした。
「わからん、吾全系統が普通に使えちゃうから本当に何を召喚するのか自分でもわからんのだ、どうしよう、ハリガネムシとかカマドウマとか出てきたら」
「無いと思うけど…というか、ドットのメイジだってそんなの召喚しないと思うわよ」
テオの突飛な想像にキュルケは呆れた声を出します。
「ほら、ご主人様、他の方の召喚風景を見てみてください、誰一人として小さな虫など召喚してはおりません」
そう言ってエンチラーダの指の指す方では、まさに今、タバサが召喚を終えたところでした。
彼女はとても大きなドラゴンを召喚しており、彼女の周りは感嘆の声が響いています。
「ああ、ドラゴン召喚している奴が居る」
「へえ、あの子、凄いの召喚したわね」
「タバサ様ですよ、学年でもご主人様の次に魔法の才能の有る方です。彼女がドラゴンを召喚できるのでしたら、ご主人様は竜王を召喚しても何ら不思議はありませんよ?」
「そんな大惨事になりそうな奴を召喚したいとは思えんが…」
「私ちょっとタバサに声かけてくるわ、貴方たちも行く?」
タバサの友人であるキュルケはそうテオたちを誘いますが、
「いや、正直嫉妬の炎が炸裂しそうなので行かない」
「そ…そう」
テオが物騒な言葉を言うので、そのままテオたちを置いてタバサのところに行ってしまいました。
再度、エンチラーダとふたりっきりになったテオたちの視線の先では、次の生徒がサモンサーヴァントをはじめようとしています。
そして。
「ふむ。次はルイーズか」
サモンサーヴァントもいよいよ大詰めで、テオの一人前。
即ち、ルイズの順番が回ってきました。
◇◆◇◆
ルイスの順番が回ってきてからかなりの時間がかかりました。
彼女は何度も呪文を唱えますが、そのたびに爆発が起こるだけで、何も召喚されません。
興味津々で彼女の召喚を見ていたギャラリーも次第に飽きてきて、ヤジが飛び始めます。
すでに帰ってしまった生徒も居ます。
テオとエンチラーダもだんだんと飽きてきて、ヤジの一つも飛ばそうかという頃になってようやく、ルイズの召喚が成功しました。
爆発による粉塵の中、影が一つ見えました。
そして、粉塵が晴れると、その中からでてきたのは。
一人の青年でした。
「ルイズ、サモンサーヴァントで平民を呼び出すなんて」
誰かがそう言って、その場が笑い声に包まれました。
「ちょっと間違えただけよ!」
「何時も間違えてるじゃないか」
「さすがゼロのルイズだ!」
誰かがそう言い、そして周りは再度笑い声に包まれます。
その喧騒から少し離れて、テオは他の生徒達には聞こえない程度の声で言いました。
「人間だな」
そしてエンチラーダは答えます。
「ええ、人間です」
「古今東西、使い魔に人間が召還された例は…」
「伝説の中にそれらしいのが一件だけございますね」
「そして使い魔は召喚したメイジの属性によって変わる」
「即ちルイズ様の属性は…」
「「虚無」」
虚無。
それは、ハルケギニアで神として崇められる英雄が使っていた魔法。
今では誰も使えるものの居ない、伝説の属性です。
そして、
テオは突然体をくねらせ、まるで舞台役者のように言いました。
「ああ、運命と運命をとりまく衣裳は、人生を一幕の芝居にする。上演がすすむに従って、いちばん律義な人間も、ついには自己の意志に反して役者にさせられてしまう…か」
堂々としたそのセリフは、周りの笑い声にかき消され、エンチラーダ以外に聞くものはいませんでした。
「芝居にしては観客が騒がし過ぎますがね」
エンチラーダがそう言います。
「彼らは理解していなんだろ、この事実を。サモンサーヴァントで人間が呼び出されるという事実の重大さを。彼女の魔法と、この状況を見れば、少しぐらい疑問に思ってもおかしくないのに。誰も何も気づかない。大体だ平民だとしても人間というのは一番使い勝手のいい存在であるのに。その有用性が理解できておらんのだ、使いようによってはドラゴンよりも有効な使い魔だというのに」
そう言いながらテオは小さくため息を付きます。
彼の視線の先ではルイズが教師のコルベールに、サモンサーヴァントのやり直しを要求していました。
召喚された少年は状況が理解できていないのかキョロキョロと辺りを見まわしています。
「まったく、何が不満だって言うんだ、人間だぞ普通の。ゲジとかナメクジとかよりもよっぽどいいじゃないか」
「さあ、時に人は他人と違うことを嫌がりますので、自分が特殊な使い魔を召喚したことが許せないのではないでしょうか。まあ当然のように却下されておりますね」
「おや渋々ながらコントラクトサーヴァントをしたな」
コントラクトサーヴァント。
それはサモンサーヴァントで呼び出した物を使役する魔法です。
呼び出しただけでは、相手は使い魔にはなりません。
メイジはサモンサーヴァントの後にコントラクトサーヴァントをすることで初めて使い魔を得ることが出来るのです。
そしてその魔法ですが、他の魔法とは少しばかり違う特徴がありました。
普通の魔法は杖を持って呪文を唱えれば成功します。触媒を必要とすることもありますが、基本的に杖を振って口を動かす以外の行動はひつようありません。
しかし、コントラクトサーヴァントだけはそれに加えある行動をする必要が有るのです。
その行動とはキス。
即ちくちづけによって使い魔との契約を完了させるのです。
ルイズは呼び出した平民の男性にコントラクトサーヴァントを行い、そして契約がなされました。
サモンサーヴァントとは違いそちらは一回で成功したようです。
「相手が平民だから『契約』ができたんだ」
誰かが言いました。
「馬鹿にしないでよ!わたしだってたまには上手くいくわ!」
ルイズがそのに突っかかります。
「ぐわ!ああああ!」
平民が突然叫びながら悶え出しました。
おそらくルーンが刻まれる際に痛みが体に走っているのでしょう。
その横で他の生徒達はルイズをからかい、そしてルイズは顔を真赤にしながらそれに反論をしていました。
生徒たちはただ騒がしく、罵ったり、誂ったり、怒ったりするばかりです。
その様子を遠目にみながら
「騒がしいなあ」
と、テオはつぶやきました。
「皆、まだまだ若いのです。騒がしいのは致し方無いかと」
「仮にも貴族だろうに落ち着きが無いのは貴族として失格であるぞ」
テオがそんな事を言っていると、
「さあ、ミスタ・テオ貴方の番ですよ」
教師のコルベールがテオにそう言いました。
その言葉に、テオはわかりやすく慌てます。
「いや…失礼ミスタ、吾はまだ心の準備が…」
「もうすぐ日が暮れてしまう。ほら、もう影がこんなに長くなってしまっているじゃないか。直ぐに始めなさい」
にべもなくコルベールはそう言います。
「ではご主人様サモンサーヴァントを」
「まて、まあ、まて。何とかほら、後日にならんか?せめて心の準備が出来るまで…あ、そうだ吾用事があったんだ、吾の部屋にある」
テオは落ち着きなくそんな事を言いますが、エンチラーダは容赦なく彼を庭の広い所に連れていきます。
誰もが彼に注目しました。
彼は誰からも馬鹿にはされていましたが、同時にその魔法の腕が一番であることも、誰もが認めるところだったのです。
ですから、学年の誰もが、彼がどんな使い魔を召喚するのか、興味津津だったのです。
生徒たちの注目の中、テオは誰に言うでもなくつぶやきます。
「ええっと兎に角、容姿が悪すぎないのを、何でもいいから、良いの、良い奴、良い子をお願いします」
祈るようにそう言ってから、テオはサモンサーヴァントの魔法を続けます。
「……我が名は『テオフラストゥス』。五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし、"使い魔"を召還せよ」
テオがそう唱えると、輝かんばかりの光が彼の目の前に発生します。
そして光が収まったとき。
そこに居たのは。
一人の小さな女の子でした。
周りはざわつきました。
「また平民だ」
「出来損ないな奴はきっと平民を呼ぶようにできているんだよ」
「しかも今度は子供だぞ」
「ハアハア」
コレにはテオも驚きました。
何が出てくるか予想がつかないとは思っていましたが、まさか自分も人間を呼ぶとはそれこそ予想外だったのです。
「エ・・エ・・・エンチラーダ、吾凄いことになっちゃったかも。そうなると吾の属性って?」
「イ…イエ。ご主人様は間違いなく普通の属性です、と…思います…が、流石にこの状況は予想外でした」
そう言って二人は再度召喚された少女を見ます。
金髪の小さい少女。
周りをキョロキョロと見ながらも怯えた様子でした。
無理もありません、魔法学院の真っ只中に呼び出されれば、普通は怯えます。
ましてや相手は少女です。人形のような可愛らしい子供なのです。
むしろ泣き出さないだけ立派というものでした。
「これ…吾どうすれば良い?」
「どうするもこうするも……どうしましょう?」
「何をブツブツ言ってるのです?ほら、早くコントラクトサーヴァントをしなさい」
二人で話をするテオとエンチラーダに向かって教師のコルベールがそう言います。
「…つまり、ミスタ、吾にこの子とチッスをしろとおっしゃるか?」
「というか、コントラクトサーヴァントだよ」
「………………
…………
……
…
…犯罪だろ?」
さすがのテオも幼女に対してキスをするのには抵抗がありました。
「しかし、ご主人様こう言ってはなんですが、ナメクジや羽虫とするよりはマシなのでは?」
「ま、そうなのだが…しかしなあ」
確かにナメクジや羽虫や、ましてや台所をカサカサと走る網翅目の虫とキスをするよりは、よっぽどマシなのですが、しかしさすがに幼女にキスをすれば、テオは何か大事なものを失うような気がしました。
「ミスタ・テオフラストゥス。呼び出した以上は彼女は君の使い魔だ、幸い前例もさっき出来た。それに使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールに優先するのだよ、彼女に、さあ、彼女にコントラクトサーヴァントを」
そう言ってコルベールはテオにコントラクトサーヴァントをするように促します。
「ご主人様、とにかくコントラクトサーヴァントをしなくてはいけません。進級がかかっておりますので。無理にでも彼女には使い魔になってもらわなくてはいけません。
更に言うのならば、こういったことは初めが肝心です。
あまり弱気な態度では後々舐められます。特に子供は態度に敏感ですので。ココはすこし強気に対応したほうがよろしいかと」
「うむ、そうだな」
テオはそう言うと、改めて少女の前に立ち、そしてこう言いました。
「少女よ。お前は今から吾の使い魔となるのだ。それは決定事項であり覆ることがない。泣こうが喚こうが変わることはないのだ。
更に、使い魔となるからには吾と一緒に居なくてはいけないのでもう帰れない。
お前は吾の使い魔になるのだから四六時中吾のために働かないといかんぞ!吾の目となり耳となり秘薬の材料を探すこともしなくてはいけない。そして、たとえどんなにお前が嫌がってもお前は吾の命令を聞くしか無いのだ、恨むなら恨め」
そこまで聞いて少女は怯えます。
どんなことをさせられるのか、少女は完全に理解してはいませんでしたが、テオの様子から何やらただならぬものを感じたからです。
「当然ワガママは許さんし、生活は厳しい。
オヤツは一日一回しか駄目だ。まあ、偶には一日二回の日があってもいいかもしれんが…。
睡眠時間は一日10時間までだ。昼寝は一日1時間まで。ゲームは一日1時間。育ち盛りのお前には辛いだろうが、しかし泣き言は許さん。
あと仕事もしてもらうぞ。
秘薬の材料としてそこらへんの苔でもとってもらおうか。硫黄とかは危ないところにしか無いからな、別にいらん。
それをしっかり守るのならば、定期的に家に帰ってもいいし、というか、吾が旅行がてらお前の故郷まで送ってやらんこともない。あと、当然だが無給だ。まあ、頑張って仕事をするのならばたまにお小遣いをあげないこともないがな。
それと、部屋にクックベリーパイが用意されているから、これが終わったら食べさせてやる。だからコントラクトサーヴァントが痛くても泣くんじゃないぞ!」
すこし顔を赤くしながらそういうテオの言葉を聞いて、
先ほどまで怯えていた少女はこう思いました。
…この人、実はすごく優しい? と。
「ご主人様、もう、十分ですから」
額を抑えながらエンチラーダがそう言います。
「ふむ、まあ、吾も最初だから少し怖がらせすぎたかもしれんが、吾の言うことを聞いているぶんには悪いようにはせん」
そう言いながら彼は杖を持ち、コントラクトサーヴァントの準備をします。
「と…その前に聞いておこう。幼女、お前の名は?」
テオの問い。
その問いに対して、少女は自分の名前を答えます。
「わたし…エルザ」
そう言って彼女は誰にも見えないくらいに小さく、笑うのでした。
◆◆◆用語解説
・羽虫
羽の生えた虫
・ナメクジ
カラのないカタツムリ
・蟻
第一級隔離指定種に認定されている虫
NGLにデカイ巣がある
・ショボーン
(´・ω・`)←こいつ
・ゲジ
すごく早く動くムカデ
・ゴキ
台所の黒い悪魔
・キュルケはすごいなあ
テオは不安のため、無理やり書かされた感想文のような口調になることがある。
・ハリガネムシ
寄生虫、良くカマキリとかバッタの尻から出ているアレ。
・カマドウマ
羽のないキリギリスのような虫、別名便所コオロギ。
・竜王
1、天龍八部衆の八大竜王。ナーガのこと
2、世界の半分をくれる太っ腹大王。気に入られるとちゃん付けで呼ばれる上にリュウちゃんと呼べるようになる。
・ゲームは一日一時間
ハイブリッジ名人の名言である。
ただし、これは良い子に向けてのメッセージなので大人には関係ないのだ。
・エルザ
ゼロの使い魔の番外編である「タバサの冒険」に登場。
原作を読んでいる諸兄らはすでにご存知だろうが、詳しい正体は次回。