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No.34535の一覧
[0] 【習作】小悪党的なリリなのオリ主(仮)[“忘却”のまーりゃん](2012/08/20 21:00)
[1] 【習作】小悪党的なリリなのオリ主(仮)2[“忘却”のまーりゃん](2012/08/13 01:55)
[2] 【習作】小悪党的なリリなのオリ主(仮)3[“忘却”のまーりゃん](2012/08/14 21:10)
[3] 【習作】小悪党的なリリなのオリ主(仮)4[“忘却”のまーりゃん](2012/08/18 08:25)
[4] 【習作】小悪党的なリリなのオリ主(仮)5[“忘却”のまーりゃん](2012/08/19 21:11)
[5] 【習作】小悪党的なリリなのオリ主(仮)6[“忘却”のまーりゃん](2012/08/21 20:57)
[6] 【習作】小悪党的なリリなのオリ主(仮)7[“忘却”のまーりゃん](2012/09/05 01:18)
[7] 【習作】小悪党的なリリなのオリ主(仮)8[“忘却”のまーりゃん](2013/05/31 13:33)
[8] 【習作】小悪党的なリリなのオリ主(仮)9[“忘却”のまーりゃん](2013/06/02 16:15)
[9] 【習作】小悪党的なリリなのオリ主(仮)10[“忘却”のまーりゃん](2013/06/03 23:31)
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[34535] 【習作】小悪党的なリリなのオリ主(仮)
Name: “忘却”のまーりゃん◆5450c6a4 ID:09ed5be7 次を表示する
Date: 2012/08/20 21:00
 思いつきの習作です。完結予定はありません。

―――――――――――――――

 どこか覚えのあるこの世界に生まれ変わって、早くも10周年記念が訪れようとしている。
 生まれてすぐは、寝起きのような寝かけのような、頭がうまく回らない感じだった。それでもこの世界が自分の知るものであることや魔法の存在を知って喜んだものだったが、頭にかかった霞が取れた頃には素直に喜べなくなっていた。

 ラルフの生まれた世界はロクでもない世界だった。治安が悪いどころか、内戦の真っただ中。主義主張は詳しくは知らない。管理内世界のプランテーションと化しているだとか現政府を批判するテロリストもいれば、単純に利権を狙って難癖付けたり反体制派に支援をする世界政府登場以前の国もある。
 魔法なんて非常識なものがあるくせに、全く人のやることは変わらないというか、夢も希望もあったもんじゃない。

 まあしかしながら、そんな夢も希望もない世界でも力があればそれなりの生活が出来る。生まれてからここまで生きて来られたのは、今は亡き両親の奮闘もさることながら、ラルフ自身の持つ魔導師の才能のおかげに他ならない。
 いや、両親がランクは低いながらも魔導師であったことを考えれば、全てが両親のおかげであったと言えるのかもしれない。
 魔導師に生んでくださって有り難うございます、お父様、お母様。こんな世界で生きていけるのは貴方たちのおかげです。

 それはともかく。

 素晴らしきかな魔導師。デバイスはなくとも、小さなガキが大人以上の力を持つことが出来るのである。
 例えば身体強化魔法。
 これは単純に力を上げるだけではなく、身体能力を上げるとともに若干ではあるが頑丈さも増す。少年でも大人に立ち向かう度胸があれば、喧嘩して勝ことも不可能ではない。
 足の速さだって増すから、不利になったときに逃げ出すことも簡単だ。
 例えば魔力弾。
 ラルフが教えられたものは基本となる直射型の魔力弾のみだが、侮るなかれ。これでも一般人には十分脅威である。
 魔力を込めれば大人だって吹き飛ぶ。

 こういった両親から教わった数少ない魔法を駆使して、ラルフは賢しく生きていた。








「泥棒だ! 誰か捕まえてくれ!」

 市場の通りに突然響いた叫び声を聞いて、ラルフは走りだした。

 治安の悪いこの世界、通りに響くその声は珍しいものではない。
 金に困ればスリ、置き引き、ひったくりに万引き。大人からラルフより小さい子供まで、そういったことをやる人間は少なくないのだ。
 しかも、比較的表の通りであるここですらそうなのである。もう少し裏の方に入れば、死体が転がることも珍しくない。

 何だ何だとざわめいて、辺りを見回す人々。広げた商品が巻き込まれないよう、下に引いた布ごと道から遠ざかろうとする商人。
 皆、慣れた様子で見物をしようと、あるいは被害を免れようと行動する。
 そんな中、人込みをかき分けラルフの方に向かって走ってくる男がいた。

「おい待て! 誰か! そいつを捕まえろ!」

 再び声が響く。
 その声を聞いて、仕方なくラルフは右手の人差し指の先に青い魔力弾を生成した。
 ピンポン玉ぐらいのサイズだが、当たり所が良ければ一般人なら十分意識を刈り取れるものだ。

 銃の形を手で真似て、銃口である人差し指の先を、走る男に向ける。

「捕まってたまるかボケ!」

 ひゅんっ! と、叫びながらラルフを追いかけていた男の顎を魔力弾が打ち抜く。
 前のめりに駆けていた男はのけぞって後ろに飛ばされ、物も言わず地面に転がった。
 そしてそれを横目に確認したラルフは、男から盗んだビジネスバッグを手に横道に入って人々の視線から逃れた。





 ラルフの住処は街の端に位置するスラム街のあまり人のいない地区にあった。
 砂を固めたような風合いの家が並ぶその地区は、昔テロリストが使っていた場所で、政権側の部隊によって家ごと吹き飛ばされた経緯がある。
 その中の1つ、半分崩れたような家の2階が住処だった。
 そこは崩れたせいで階段が瓦礫で塞がっており、上り下りするには小さく開いた天井の穴を抜けるしかない。
 隠れ住むにはもってこいの場所で、ラルフはそこを住処にしていた。

「さてさて、今日の戦利品は何ですかねーっと」

 逃げ切ったラルフは自分の住処へと帰ってきて、男から盗んだビジネスバッグから中身を取り出していた。
 そう、泥棒とは他でもない、ラルフのことだった。

 親が死んでしまった子供に出来ることなんて、そうありはしない。ゴミを漁ったり、盗みをしたり、まあだいたいそんなところだ。
 ラルフもご多分に漏れず、生きるために盗みを繰り返していた。
 遠い昔、警察官を目指していた純粋な子供はもういない。いるのは現実に適応しきってしまった小悪党である。

 本当のところ、ラルフのように魔導師の才能があればもっと他に出来ることはある。
 政府の施設に行けば、貴重な魔導師の戦力として保護してくれるだろうし、反体制派の方に行っても同じだ。
 ただし、どちらに行こうとも自由は確実に無い。というか、内戦で駆り出されることは間違いなかった。
 そしてラルフは人殺しなんぞ御免である。
 結果、今の状態に落ち着いていた。

「んー、やっぱビジネスバッグにゃ良いもん入ってないなー」

 開いた鞄の中にあった白い紙の束を見て、ラルフは愚痴る。

 それも当然、ビジネスに関する物を入れるからビジネスバッグなのである。
 男性はあまり鞄に財布を入れたりしないので、更に旨味は少ない。
 じゃあなんでそんなものを盗ったのかというと、単純に盗みやすかったからだ。
 少しの距離であっても鞄を置いてその場を離れるなんて、この世界では馬鹿のすることである。恐らくは地元の人間ではなかったのだろう。
 これも授業料、ああ俺ってなんて優しい……などと本気で考えているわけではないが、盗みやすいからといって盗んだあたり、相当汚れてきたなという自覚はあった。

 ごそごそとバッグから資料らしき紙の束を取り出す。

「なになに……? 次の、なんとかデバイス……これ何て読めばいいんだ? えっと、計画に提出する試作……?」

 書かれていたのはこの世界の言葉だったのだが、難しい言葉があるため全ては読めなかった。
 教わる前に両親が死んでしまったのだから仕方がないだろう。
 けれども、解る単語から意図するところは何となく読み取れた。

「つまり、何かの計画に出す試作デバイスの説明書……?」

 まさかと思って鞄を漁れば、何やら小さな箱があった。
 躊躇しながらも開けてみれば、そこにあったのは黒色の、メタリックに輝くカード。
 まごうことなく、デバイスだった。

「……マジで?」

 呆けた面でラルフが思わずそうこぼしたのも仕方のないことだろう。
 何せデバイスである。魔導師ならだれでも欲しがるものだ。
 しかしデバイスというのは、精密魔導機械の塊である。買おうと思えば当然高いし、そもそも浮浪児が買えるものではない。
 持っているのは政府側の軍や裕福な人間、もしくは反体制派の魔導師の一部だけだ。
 闇市場で売られている物も無くはないが、高い上に性能は良くない。
 そんなデバイスが、今この手にある――。

「え、えっと……せ――」

 正直、心躍っていた。
 これがあれば、今まで以上に魔法が使える。空を飛ぶことだってできるかもしれない。
 恰好を付けるようで、起動の言葉を言うのが恥ずかしかったが、頑張って絞り出す。

「――せ、セットアップ!」





『Error. Please enter a valid password.』

「えっ!?」








 泣きそうになりながらパスワードのヒントを探した結果、パスワードの書かれたメモがデバイスの入った箱に挟まれていたことに気付き、安心して結局泣いた。

「よ、良かった……本当に良かった……」

 起動に成功して稼働状態になったデバイスを抱くように握りしめる。
 デバイスはシンプルな短杖型。80センチぐらいの黒い棒の先に、ジェットエンジンのような円筒形を付けた形だ。欲を言うなら銃型とかもう少し恰好良いのが良かったが、デバイスが手に入ったのだからそんなことはどうでもいい。

 少しして落ち着いたラルフは、デバイスの説明書らしきものを読み進める。
 それによるとどうやらこのデバイスは、ストレージデバイスらしい。
 政府軍の次期主力デバイス導入計画に提出するための試作機だったらしく、全体の機能にバラつきがない万能型。高性能に纏まっているが、量産を視野に入れた物らしい。
 インテリジェントデバイスではないので自分から喋ったりはしないが、簡単な応答機能があるらしく、操作のサポートをするようだ。
 機体名はYFD-7だが、個体名はない。まあ、本来使用者が特定されないのだから、いちいち個体名を設定するわけにはいかないのだろう。

「えっと、YFD-7……?」

 話しかけてみても、答えはなかった。
 操作をサポートするのだから、何かしらの命令がいるのかもしれないと思い、あらためて話しかける。

「YFD-7って呼びにくいんだけど、お前に愛称付けることって出来ない?」
『Yes. Are you sure you want to change my name?』

 今度は答えが返ってきた。
 ちなみに、デバイスの言葉は何故かこの世界のものではなく、何を言っているのかは解っていないのだが、なにやら意味するところは解るのである。
 魔力が使われているので、恐らくは翻訳魔法みたいなものが使われているのだろう。

「イエスで」
『Please enter a name』

 YFD-7がそう言うと、突然目の前に薄く輝くディスプレイが現れた。
 「おおっ!」とラルフは驚いて、それを見つめる。これが空間ディスプレイというやつらしい。
 キーボードらしきものが表示されているので、恐らくはこれで入力しろということなのだろうが――

「ごめん、俺この言葉分からないんだけど、音声で入力できない?」
『Yes.Please enter a name』

 出来るようだ。ディスプレイが薄くなり、新しいメッセージが表示される。
 多分、音声認識とかそんな感じのことが書かれているのだろう。

 しかし、呼びにくいとは思ったものの、名前に関してアイディアがあったわけではない。
 さてどうしたものかと思い悩む。デバイスの名前としてぱっと思いつくのは、レイジングハートにバルディッシュだが、当然被ってるので却下。
 じゃあ何か良い名前はないかと考えてみても、思い浮かぶのは不知火だとか天照だとかそんなイタい感じのものである。自分の発想の貧困さが恨めしい。

「うーん、何が良いか……」
『“U-n nanigaiika” OK?』
「ノ―で」

 そんな名前にしてたまるか。
 ……とはいえ、良い名前が思い浮かばない。
 だから、ふと思いついた両親の名前を付けることにした。

「アルメイ」

 父はアルバート、母はメイ。愛称を繋げただけの単純なネーミング。けれど、意外と良いような気もしてきた。

『“Al-May” OK?』
「おっけー」
『Change was completed.』
「おう。宜しくな、アルメイ」

 ――答えはなかったが、ラルフの物語は確かにここから始まったのだった。








 ところで、ラルフが目をそらしていた事実がある。



「ふざけるなぁっ!! き、きさっ! 貴様らは何をしとったんだ馬鹿者ぉっ!!」
『も、申し訳ございません!』
「謝って済むかアっ!! YFD-7は次期主力デバイスの候補なんだぞ!! それが盗まれたなどとっ! よくもまあその面を晒せるな!?」

 とある企業の社長室。小さな会社を大企業まで育て上げた男の気風を感じさせる、豪華とは遠いシンプルな装飾の部屋。
 その部屋に怒号が響いていた。
 怒号を響かせているのはこの部屋の主である社長。
 最近コレステロール値が高いのが悩みの穏やかな人物だったが、今回ばかりは心の底から怒りを発し、腹の底から怒号を発していた。

 怒りを向ける相手は、空間ディスプレイに映るひょろりとした男。
 ラルフに鞄を盗られた揚句、魔力弾を喰らって気絶した男だった。
 長く社に仕えてきた男で、面識もあり社長自身も信頼していた男だったのだが、今回のことでそれは考え直さなければいけなくなっただろう。

「護衛は何をしとったんだ!! 誰に盗られた!? まさかガキというわけではあるまい!!」
『はっ、いえ、その……』
「はっきり言え! 物理的に首を切られたいのか貴様!!」
『はいっ! ま、魔導師の子供です!! 追いかけたら魔力弾を喰らったので間違いありません!』
「――何? 魔導師の子供だと?」

 社長はその報告を聞いて、声を荒げるのを止めた。

『はい! 黒髪の10歳ぐらいの子供で、あまり綺麗ではない服を着ていました! その、顔は良く見えなかったのですが――』
「解った、もう良い。……貴様の処分は追って知らせる。現地で捜索を続けろ」
『はっ? それ――』

 男が言葉を続けるのも構わずに、社長は通信を切った。
 考えるのは、YFD-7を盗んだという魔導師の子供のことだ。

 子供であっても魔導師というのは重宝される存在である。
 どこの組織でも強力な戦力となる魔導師は欲しい――そして、非合法な組織ほど、子供の魔導師が欲しい。
 それは精神が未熟で扱いやすいからで、要するに洗脳しやすいということだ。実験体としても子供の方が優秀な部分が多い。

 つまりどういうことかというと――YFD-7を盗んだ子供は、どこかの組織に属している存在なのではないかということだ。
 魔導師の才能があるなら浮浪児になるわけがない。しかも護衛をすり抜けて盗みだすほどの腕だ、相当優秀な魔導師である。
 そして組織からの指示を受けYFD-7を盗んだのであれば、子供を探すことに意味はない。既に組織が回収しているだろうし、その子供から組織をたどるのも難しいからだ。

 YFD-7を狙う人間の心当たりはいくらでもある。例えば次期主力デバイス導入計画に参加する企業なら、ライバルのデバイスを盗むメリットはある。悪評が立つし、技術を盗むこともできるからだ。
 ともかく、素直に子供を探すのは愚策といえるだろう。
 子供の捜索はとりあえずあの男に任せ、妙な動きをしている企業がないか、確かめなければ。
 どちらにせよ、自由に動かせる口の堅い人間が必要だ。

 そう考えながら、社長は子飼いの諜報部隊に連絡を取った。





 まさか、魔導師の子供が本当に浮浪児であるとか――
 ――まして男が護衛と分かれて、ライバル企業にYFD-7を売ろうとしていたことなど、社長には思いもよらないことだったのである。





―――――――――――――――

 ちなみにもう少し進むとテンプレ化します。


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