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No.34356の一覧
[0] 【ネタ】単細胞からやり直せ!【SPORE二次/にじファンより移転】[大豆](2012/08/04 12:53)
[1] 細胞フェイズ2[大豆](2012/08/04 12:54)
[2] 細胞フェイズ3[大豆](2012/08/04 12:55)
[3] 細胞フェイズ4[大豆](2012/08/04 12:55)
[4] 細胞フェイズ5[大豆](2012/09/27 21:32)
[5] クリーチャーフェーズ1[大豆](2012/08/04 12:56)
[6] クリーチャーフェーズ2[大豆](2012/08/04 12:57)
[7] クリーチャーフェーズ3[大豆](2012/08/04 12:57)
[8] クリーチャーフェーズ4[大豆](2012/08/04 12:58)
[9] クリーチャーフェーズ5[大豆](2012/08/04 12:59)
[10] クリーチャーフェーズ6[大豆](2012/08/04 12:59)
[11] 集落フェーズ ここに在りて[大豆](2012/08/04 13:01)
[12] 集落フェーズ ここに在りて2[大豆](2012/08/04 13:01)
[13] 集落フェーズ ここに在りて3[大豆](2012/08/04 13:02)
[14] 集落フェーズ ここに在りて4[大豆](2012/08/04 13:03)
[15] ここに在らざるどこかへ[大豆](2012/08/04 13:03)
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[34356] クリーチャーフェーズ5
Name: 大豆◆c7e5d6e9 ID:1d79d764 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/08/04 12:59
 交配後のミズオの変化は、毎度のことながら劇的である。
 馬のような体は強靭に洗練されて、より馬らしくなった。分厚い筋肉の脈動は薄く蒸気を発するほどである。
 虫から得た遺伝情報は体の末端に発現し、手足の甲殻は黒く硬く、まるで蹄。首筋の皮膚は硬質化し、光を照り返す様は鱗のようであった。
 肌は緑色のままであったが、濃淡が付き、まるで迷彩柄である。
 さらに頭部は獅子虫から得た強面をしっかりと装備し、長かった頭蓋に合わせて引き伸ばされたそれはまるで龍のようだ。ユニコーンのように額から前に向かって反抗的に生えている二本の角が異彩を放っている。
 尻尾は退化したのかひょろひょろとしており、先に付いた爪も軟骨のように柔らかくなっていた。
 残念ながら目の下に合った発電器官はあまり使用しなかったためか退化して無くなってしまっている。

 その実態は強面の爬虫類でありながら、見た目は伝説上の生物、麒麟になっていたのである。
 肌が緑色な上にヒゲやたてがみが生えてないのでとても弱そうだったが、少なくとも前よりは強そうである。

 己と同じ姿である筈の、同じ時期に生まれた同属を観察し終わり、ミズオは満足そうに濃い鼻息を吐いた。
 どうやらツチノコもどきも交配と同時に同じ姿へと収斂されたらしく、違う姿の個体は見当たらなかった。

(悪くない)

 顔の迫力は最高だ。四肢に漲る筋肉も素晴らしい。ガツガツと蹄もどきで地を蹴って、蹄の堅さにさらに満足する。

(それにしても、随分と大きくなったな)

 顔をあげれば、その風景は今までとは一線を画していた。

 ミズオの視界を阻んでいた森林の下生えは、すでに顎の下にある。目算で三倍以上は大きくなっていた。
 お陰で遠くまで見渡せる。木々の向こうには、太陽が照らす広大な草原と緩やかに隆起する丘がある。白や黄色や淡い紫の花を緑の絨毯の中にチラホラと見つけることが出来た。

 森の中の風景はそれほど変わらない。大きくなったとはいえ、いまだ小さい生物であるということだ。
 ただ、以前は知恵を使って食べていた高さの実を、むしろ頭を下げて食べなければならなくなっている。
 以前獅子虫と競うように食べた薄桃色の実も、今は首の付け根ほどにあった。

 実を見つけると、途端に、腹が空いていることを思い出す。腹が減っているのはいつも通りだが、以前ほど、飢餓感に惑わされることも無くなっていた。
 丸い実を数個一度に口に含み、その甘さに陶酔しつつも、その感動は少なかった。残念なことだ。
 前回感じた様に、進化した後は、満足できていた実を食べても満足できなくなってしまっている。

(味は良いんだけどな)

 上から見下ろすと結構な頻度で見つかる実を食みつつ、フラフラと歩いていくと、その足は自然と以前獅子虫が飛んでいった方向へと向いていた。
 あの虫の集落に友好アタックをかけるのも良いかもしれない。

 特に目的もないミズオは散見する実を食みつつ思いつきのままに歩いて行った。













 隆々と聳える木々と、それを絞殺さんと絡み付く太い蔦。太い根の下は風雨で土が洗い流され、一種のトンネルのように風通りが良くなっている。
 そこが獅子虫たちの巣であった。

 獅子虫たちは「シャー」と鳴きつつ、樹にできた無数の穴に出入りする。帰ってくる個体はすべからく果実を咥えており、どうやら果実を収集しているようである。
 交配の時期に向けて準備しているのかもしれない。

 彼らは自らのテリトリーに踏みこんできたミズオに機敏に反応し、わらわらと集まってきた。
 仕事を放り出し、穴からカサカサとはい出して野次馬みたいに群がってくる獅子虫たち。その数は数十に登り、押し合いへし合い、仲間の頭を踏みつける勢いでこちらに寄ってくる。後ろの獅子虫はわざわざ飛びあがってミズオを観察するほどであった。
 ミズオは大きくなっているのでそこまでしなくても見えるのだが、足まで見たいのかもしれない。

 ここまで注目されるとは思わず少々引きながらも、パタパタと頭の翅を振ってこちらを凝視する虫たちに、ミズオは果敢に挨拶した。友好の基本は挨拶からだ。

「よぅ、いい天気だな」

――――――ッ!?

 獅子虫たちは、目を丸くして、一斉に飛びあがった。翅を必死に動かして穴へと舞い戻り、すぽっと頭から隠れてしまう。一つの穴に十もの虫が押し掛けるものだから、その細い足が入りきらずにカサカサと蠢いているところもあった。

(ビビりすぎだろ…)

 ミズオが何とも言えない気分になっていると、一際奥にある穴から、のそりと一体の虫が歩み出てくる。
 他の個体の1.5倍はあるその体躯。厳めしい顔。そして見事な頭の翅。

「シャー!」

(こいつがリーダーか!)

 紛うことなき群れの主であった。

 主は己の倍はあるミズオに向かって、悠々と歩みより、十歩先で立ち止まると、六本ある足の内二本を浮かせ、頭の翅を大きく広げて、ミズオが命名するところの、格好いいポーズをとった。
 流石リーダー。格好いいポーズも以前見た物よりキマっている。強面に浮かぶ血管がそのポーズの力の入りようを示しているかのようだ。おまけに怖い。
 こちらを見る瞳は、挑戦的である。

「シャー!」
「なかなかやるな……だが俺も負けてないぜ。うぉおッ!」

 ミズオは全身に力を入れた。強靭になった筋肉が過剰に緊張し、その体積が膨れ上がる。
 その姿、まるで岩のごとし。肌が緑色なので苔の生えた岩のごとし。
 だが、その方面に浮かび上がる血管がどくりどくりと、脈打って、今にも動き出さんばかりの迫力を見せ付ける。
 首筋の鱗が逆立ち、キチキチと硬質な音を上げる。歯を食いしばって歯茎をむき出しにしたミズオの目は血走って、なんだか普通に怖かった。

 しん、と空気が冴え渡ったような一瞬が過ぎ、ミズオと獅子虫の主は互いに力を抜いた。
 主が頭の翅を震わせながら、キッとこちらを睨みつける。

「シャー」
「ああ、今のは五分五分だ」

 互いを見つめるその目には、賞賛の光があった。だがそれだけではない。互いに負けず嫌いだということもまた、理解してしまったのだ。

「シュイアアアア!」

 主が大きく鳴くとともに、穴に引っ込んでいた虫たちが、集まってくる。
 彼らは主の後ろに降り立つと、見事な整列を見せた。

 そして始まる獅子虫たちの舞。一糸乱れぬその踊り。仲間とともに見せるシンクロナイズドダンシング。

「やるじゃねぇか――――――だがな」

 その素晴らしい動きでミズオの負けず嫌いに火がついた。強靭になった四肢は何も魅せるためだけにあるのではない。本分はむしろ踊りにて発揮されるのだ。

「勝負はこれからだ!」

 彼らのリズムに合わせ、ミズオもまた踊り始める。
 ぶつかる意地と意地。互いに文化の高さを競い合う中で、やがて彼らは絆を作り上げていった。
 異種族交流には、やはり言葉など必要ないのだ。













◆◇◆◇◆











 獅子虫とミズオは互いに認め合い、遺伝子情報を交換する。
 非常に有意義かつ楽しい交流が終わった後、ミズオは一度巣に戻った。
 仲間で団結してダンスを踊る獅子虫たちが羨ましくなったために、ついてきてくれる仲間を募集するためである。

 巣には二十体ほども同属がいて、ゴロゴロと寝そべったり、一心不乱に他の個体を舐めまわしたり、

“ミズオだ”
“いい匂い”

 帰ると同時に数体仲間が寄ってきて龍のような顔のでかい鼻の穴を近づけてきて、ふんふんとミズオの臭いを嗅ぐ。
 いい匂いがするのはたくさん果実を食べたからかな、と思い、自分でも体臭を嗅いでみた。
 そして、己の失策に気づく。

(何時からだ……!?)

 ミズオの体から不自然な甘い匂いが漂っている。まるでマーキングでもされたかのように。
 違う、マーキングをされたのだ。その証拠に耳を澄ませば、押し殺した呼吸音が頭上から聞こえてくる――――

(一体何時から、尾行されていた…!?)

 ざわり、とミズオの肌が泡立った。

「――――――逃げろッ!」

 焦燥に駆られて叫ぶのと、視界の上から次々に影が降りてくるのは同時であった。
 巣に敷き詰めた枯れ葉を舞いあがらせつつ地面に降り立ったのは、いつか巨人のような生物に食われていた黒い生物である。
 下半身が極端に小さい人型である。硬そうな黒い外皮は昆虫の外骨格のように硬質で、指が三本ある大きな手には禍々しい鋭さの爪がある。

(でかい…!)

 対峙してみると、成長したミズオが子どもに見えるほどの大きさであった。
 それが四体。
 彼らの目は肉を食う衝動に染まり、だらしなく開かれた口からは唾液がとめどなく溢れ、その姿を見たミズオは本能から震えあがりそうになった。

 だがその足で、逃げ遅れた一匹の同属が踏まれているのを見て、ミズオの意識は沸騰した。

(――――――ふざけんなッ!)

 恐れよりも怒りが勝った。
 何と言う屈辱か。こいつらはミズオ一匹を食べるより巣に案内させて、根こそぎ食べつくすことを選んだのだ。その犠牲が踏まれている同属だ。
 ここでミズオが逃げ出すという選択肢は存在しなかった。

 徹底抗戦である。決断は瞬きの合間に完了し、ミズオは即座に行動を起こす。

 ミズオの足に付いた蹄もどきが地を抉り、筋肉が収縮し、膨張し、ミズオは砲弾のように飛び出した。狙いはもちろん、同属を踏みつける奴である。

 歯を噛みしめ、同時に首の筋肉が最大限まで緊張し、ミズオは一本の柱となった。
 額の角が唯一の武器と言う訳ではない。その筋力、その突進力こそが無二の武器。

「―――――――返り討ちにしてやるぁあああああああああッ!」

 ミズオは太い叫びを上げつつ、額の角を深々と黒い生物に突き立てた。肉を貫く感触がミズオの頭蓋を通して体に響く。黒い生き物の体が痛みによってぎゅぅと緊張する。
 ミズオの勢いそのままに黒い生物の体がくの字に折れ、ミズオともどももんどりうって地に倒れた。

「おらぁ! 帰れや!」

 角を引き抜きすぐさま起き上がったミズオは、執拗に足の蹄で顔を踏みつける。
 だが体格がそもそも違うのだ。わっしとミズオの背は万力のような手でつかみ上げられ、持ち上げられる。

「チクショウ! 放せッ!」

 持ち上げたのは転ばせたものとは違う個体。宙に浮いた足で必死に蹴りつけようとするが、不安定な体勢で力が入れにくく上手くいかない。ついには後ろ脚も掴まれて、身動きができなくなる。
 絶望的な状況で打開策を探すうちに、先ほど突き倒した奴が起き上がり、痛みと、それを上回る食の喜びに顔をゆがませて、ミズオの肩に噛みついた。

 ぶつり、と皮膚が千切れ、血が飛び散って、肩の肉がえぐり取られる。

(いッッッってぇええええええええええっ!)

 肉体を持ってから初めて味わう肉の痛みだ。脳髄が絶叫に支配され、まともに物を考えるのも難しい。
 黒い生物がミズオの肉を咀嚼し、嚥下し、二口目を食べようと口を開く。
 痛みを知ったミズオにとって、その口に生えた牙はギロチンの刃のようであった。

 生きたまま食われる地獄の苦しみを味わうのか、とミズオが諦めかけた時、助けは意外なところからやってきた。
 いや、ミズオの行動からして意外ではなかったかもしれない。
 どうもミズオの種族は頭が悪いらしい。強者に対して、逃げを選択しないあたり、本物だ。

“ぬぁー!”
“はなせー!”

 どすりどすりと、ミズオを掴み上げる生き物に仲間が角を突き立てる。
 痛みに引きつる生物の手がミズオを取り落とし、ミズオは解放されてからもちょっと呆けてしまった。

「お前ら……」

 仲間は一匹も逃げだしていなかった。
 群れは、四匹の肉食生物に向かって果敢に角を向けていたのだ。黒い生き物は戸惑っていた。ここまで強固に団結し、反撃してくるとは思わなかったのだろう。
 囲まれ角でつつかれてむしろ窮地に陥っているのは向こうの方だった。

「ハッ―――」

 ミズオは思わず笑っていた。これが俺の仲間だと、世界に向かって胸を張りたい気持ちであった。
 肩の傷も何だか痛くなくなった気がする。

「よぉし、一気に追っ払うぞッ!」
“うぉー”
“うぉー!”
“しねー!”

 麒麟もどきの同属たちは、ミズオの号令と同時に突進し、黒い生き物の足に、腕に、腹に、背に、包囲を狭めてぐさぐさと角を突き立てる。
 ミズオも肩から血を流しつつ、突進した。
 地面を踏み切り、高く跳躍し、最高到達点は身長の二倍近くである。
 ミズオの角はちょうど人型の顔面へ突き刺さった。

 肉食生物たちはたまらず飛びあがり包囲を脱すると、キーキーと喚きつつ、逃げて行く。

「うぉぉー! 二度とくんなッ!」
“おぉー!”
“帰れー!”
“なんかおいてけー!”

 同属たちは口々に叫び、勝利に高揚した心のままに、数分は叫ぶのを止めなかった。
 肩の傷は痛いし、肉食動物と闘うのは二度と御免だが、こういう一体感は悪くないなぁ、とミズオは思った。















 それから、数日。
 体のサイズに対して食物が不足したためにもう一度巣を移動してから、ミズオたちは三回目の交配をした。
 ここまで進化しても相変わらず雌雄両性の体であり、相変わらずミズオは襲われる側でモテモテだったが、交配という名の大乱交は無事終わり、新しい巣にはたくさんの卵と、生殖を終えて死んだたくさんの死体が残った。

 そして孵化したミズオ達は、己の変化に瞠目する。
 手が生え、羽が生え、しかし足は四本あり、つまりはケンタウロスのような生物となっていたからだ。
 ただし肩甲骨からは羽が生えていて、顔は獅子である。
 カブトムシの足のような指が三本ついた手は、もう少し関節が器用になれば道具の使用すら可能かもしれないと思わせてくれる。
 蹄もどきは完全に蹄となり、大地を踏み締める感触が頼もしい。
 体はさらに以前の三倍ほどになり、かつて巨人のように思えた人型の生物とも、正面切って張りあえるほどになった。

 そして何よりの変化は、仲間の内にミズオのように思考できる個体が登場したことである。
 彼らは何故だかミズオが好きで好きでたまらない様子であり、ミズオは居心地の悪さを感じたが、そう悪い気分でもない。
 ある意味夢のハーレムである。

 ミズオの群れは順調にこの地を生きぬいていく。
 仲間は増え、食物を集め、異種族と交流し、時には肉食動物を撃退し。

 いつしか、己の進化も終わりに近づいているな、とミズオは思い始めた。体の成長限界が薄ぼんやりと感じ取れるのだ。
 まだまだミズオ達より大きい生き物はいる。ミズオ達の遥か頭上を覆う森林のさらにその上に頭がある様な巨大な生き物だっているのだ。
 しかし元の人であった頃の体のサイズに近づいているせいだろうか、これ以上大きくなる必要はないのではないかと、思えた。

(次が、多分最後だろうな)

 進化への喜びと、それが終わってしまうことへの寂しさを抱えつつ、ミズオたちは最後の交配に向けて果実を集め始める。

 ナッツと再会したのは、そんな時である。






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