<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.34356の一覧
[0] 【ネタ】単細胞からやり直せ!【SPORE二次/にじファンより移転】[大豆](2012/08/04 12:53)
[1] 細胞フェイズ2[大豆](2012/08/04 12:54)
[2] 細胞フェイズ3[大豆](2012/08/04 12:55)
[3] 細胞フェイズ4[大豆](2012/08/04 12:55)
[4] 細胞フェイズ5[大豆](2012/09/27 21:32)
[5] クリーチャーフェーズ1[大豆](2012/08/04 12:56)
[6] クリーチャーフェーズ2[大豆](2012/08/04 12:57)
[7] クリーチャーフェーズ3[大豆](2012/08/04 12:57)
[8] クリーチャーフェーズ4[大豆](2012/08/04 12:58)
[9] クリーチャーフェーズ5[大豆](2012/08/04 12:59)
[10] クリーチャーフェーズ6[大豆](2012/08/04 12:59)
[11] 集落フェーズ ここに在りて[大豆](2012/08/04 13:01)
[12] 集落フェーズ ここに在りて2[大豆](2012/08/04 13:01)
[13] 集落フェーズ ここに在りて3[大豆](2012/08/04 13:02)
[14] 集落フェーズ ここに在りて4[大豆](2012/08/04 13:03)
[15] ここに在らざるどこかへ[大豆](2012/08/04 13:03)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[34356] ここに在らざるどこかへ
Name: 大豆◆c7e5d6e9 ID:1d79d764 前を表示する
Date: 2012/08/04 13:03




――――――空が青かった。

 どこまでも突き抜ける蒼穹は、一週間前にあった戦いの余韻などどこにも残していなかった。
 雨でも降ればまだ慰められただろうか、と益体の無いことを思い、マザーは頭を振った。そう言えば昨日降ったばかりだ。お陰で地面には血の跡もない。

 マザーを肩に乗せたベーコが、果物を墓に置いている。傍らに雄牛の杖が突き立つ石の墓だ。

 ベーコは置いた果物を撫でながら、墓を見つめている。
 足を失った者、目を失った者、様々な悲劇はあった物の、奇跡的に死者は一名であった。
 だが、最も失ってはいけない者を失ったかもしれないと、マザーは思う。

 マザーはこの一週間、ようやく眠りが少なくなってきている。産卵以前の調子に体が復調しつつあった。否、休んでいる暇が無くなったというべきか。
 ミズオと言う支えを失ったミズオ族の支柱となれるのは、今のところ残念なことにマザーくらいだ。
 もう一人の候補であるムラサメは、己だけ生きていることを悔いており、頼りにするのは酷であった。

「ホントはねぇ。戦って、疲れて帰ってきたミズオを驚かすつもりだったんだ」

 唐突にベーコが語り出した。

「ここに二人の子供が! ……なんてさ。驚いて、凹んでいる暇なんか無くなるだろうって思ってさ」

 ベーコもまた、深く己を悔いている。同じ場所で戦っていれば最後の特攻にも付いて行けたのに。そして――――――。

「深く眠っちゃう果物を渡して、密かに襲っちゃったりなんかして。馬鹿だよね。ちゃんと告白すれば良かった」
“まぁ……ベーコが色々と切羽詰まっていたことは認めよう”

 人間のころなら犯罪である。

 ベーコの腹はこの一週間でだいぶ膨らんできていた。
 卵を作っているのだ。産み落とす日も近いだろう。
 ミズオとの卵だと、マザーにだけ教えてくれた。マザーが寝ている横でミズオを襲ったとか何とか。
 やってくれる。

「ねぇマザー。ミズオは、この子に生まれ変わったりしないかな」
“……どうだろうな”

 マザーは端的に応える。慰めの言葉はもう、尽きていた。
 進化が一段落してから死んだ者はおらず、しかしマザーは子どもにミズオの意識が宿ることは無いだろうと何となく思う。

 そんなことよりも。昨日思い出したことがある。

“そう言えば”
「?」
“ミズオが死ぬ前に久しぶりにテレパシーというのか? 遠くに居るはずのミズオの声が聞こえたよ”
「!」

 こちらを見るベーコの視線を感じながら、マザーはあの時のことを思い出す。
 死の間際に放たれた強烈な声。しかし内容は、何ともミズオらしい。


―――――歌と踊りの日々が戻ってきますように。


“と、言っていた”

 マザーが言うと、ベーコは顔を複雑に歪めて、あはは、と泣きながら笑う。
 しばらくしてから、乱雑に拭って顔を上げた。

「じゃあ……歌って踊らないとね。――――――苦手だったけど、たくさん練習して、この子にも教えなくっちゃ」

 そう語りかけるように、ベーコは膨らんだ腹をさするのだった。











 集落フェーズ:END
 NEXT:文明フェーズ


前を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.022217988967896