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No.34356の一覧
[0] 【ネタ】単細胞からやり直せ!【SPORE二次/にじファンより移転】[大豆](2012/08/04 12:53)
[1] 細胞フェイズ2[大豆](2012/08/04 12:54)
[2] 細胞フェイズ3[大豆](2012/08/04 12:55)
[3] 細胞フェイズ4[大豆](2012/08/04 12:55)
[4] 細胞フェイズ5[大豆](2012/09/27 21:32)
[5] クリーチャーフェーズ1[大豆](2012/08/04 12:56)
[6] クリーチャーフェーズ2[大豆](2012/08/04 12:57)
[7] クリーチャーフェーズ3[大豆](2012/08/04 12:57)
[8] クリーチャーフェーズ4[大豆](2012/08/04 12:58)
[9] クリーチャーフェーズ5[大豆](2012/08/04 12:59)
[10] クリーチャーフェーズ6[大豆](2012/08/04 12:59)
[11] 集落フェーズ ここに在りて[大豆](2012/08/04 13:01)
[12] 集落フェーズ ここに在りて2[大豆](2012/08/04 13:01)
[13] 集落フェーズ ここに在りて3[大豆](2012/08/04 13:02)
[14] 集落フェーズ ここに在りて4[大豆](2012/08/04 13:03)
[15] ここに在らざるどこかへ[大豆](2012/08/04 13:03)
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[34356] 細胞フェイズ2
Name: 大豆◆c7e5d6e9 ID:1d79d764 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/08/04 12:54
巨大な生物が去った後、周囲に危険そうな生き物がいないことを確認し、ミズオは一息ついた。遠くの方にぼんやりと見えるたくさんの巨大な影は、気にしたら負けである。
それらの巨大な影は上下左右に見え、背景のようにぼんやりとかすみ、近いのか遠いのかもわからない。ゆえに気にしても仕方ない。
齧られた体はいつの間にか治っていた。
つくりが簡単なうえ、新陳代謝が速いのだろう。
『命』は相応に使われており、体は小さくなっていたが。


何故思考できるのか、何故見えるのか。
ミズオの頭ではぼんやりとしか考えられなかったが、自分の状態を不思議に思う。
見ることも考えることも相当の処理能力を求められることくらいは知っていた。
己の身は下等な生物のそれである。
つくりの簡単なこの身に、そのような器官、すなわち脳があるとも思えない。

しかしそれらは気にしても仕方がない。
何故自分が思考できるかなど、人間の時も理解していなかった。
そのようなことより、生きることについて考えた方が良い。
例えば……なぜこんなにもモヤモヤは美味いのか。

(うめぇ……脳汁出るわ……)

ミズオはモヤモヤを口にし、溢れ出る感嘆に身を震わせた。涙腺があれば涙は流れっぱなしだろう。
まぁ結局、何故美味いのかも分からないのだが。



モヤモヤから得られるのは感動だが、生きるためのエネルギーも得られる。
無心に食べ続けていると、ある時そのエネルギーの充足が限界を超えた。
ミズオの小さな体に収まりきらないほどのエネルギーが貯まったのだ。

(お? おお?)

モヤモヤを食べることで体にエネルギーが満たされ、体の縮小は止まる。
では、過剰に食べるとどうなるか。

破裂したらどうしようかと思っていたが、杞憂であった。
破裂する代わりに、体がぐぐぐ、と膨張したのだ。

(うぉおおお………ッ!?)

消化したモヤモヤの命を使い、瞬く間にミズオの体は二周りも三周りも大きくなった。
それに伴って眼球や、鞭毛も大きくなる。
エネルギーが体に飛躍的な成長をもたらしたのだ。

体の大きさに合わせて視界が広くなる。見渡せる場所が増え、ミズオは気づいた。


―――――――俺を食おうとしたゾウリムシもどきと、同等の大きさになっている!


正確にはまだまだこちらが小さいが、先ほどの絶望的な差から考えると渡り合える可能性が出てきたような気がする。
しかも体の感じからして、食べ続ければさらに大きくなる可能性は高い。

(勝てる……! これで勝てるぞ…! うぉおおおおおおおおおお! ……ウマイっ!)

ミズオのフードファイトが今始まった。



**************************************



体が大きくなることに伴って、見えるものが多くなった。
今まで認識できていなかった物がこれほど多かったのか、と思えるほどである。

水中に縦横無尽と張り巡らされた数珠繋がりの節状の生き物。
その隙間を縫うように流れるモヤモヤの群生。

成長によって眼球が色を見ることができるようになっており、モヤモヤが緑色であるということをミズオは知った。
緑色は光合成を行う器官の持つ色である。ということはモヤモヤは小さな植物なのだろう。そういえば、藻のようにも見える。

そしてモヤモヤを食べたり押しのけたりしながら泳ぐ生物たち。
ミズオの知る微生物と違い、彼らは総じて目玉を持ち、外界を映像として認識しているようだった。
見たところ、生物はモヤモヤを食べる「草食生物」と動物を食べる「肉食生物」の二種類に分けることができる。

前者は鞭毛やヒレなどを多く備えていて足が速かったり、棘などの自衛のための手段を持っていたりする。
彼らは酷く臆病で、近づくとピャッと反応し素早く逃げていくのである。
後者、肉食生物は獲物を食べるためのアゴやクチバシを持ち、獲物の自衛手段を突破するための武器を備えている場合もある。
ミズオを襲ったゾウリムシもどきはこっちである。
どちらとも判断できない個体もいたが、それはさておき。

これらに比べると、鞭毛だけのミズオはなんと弱弱しく、カモになりやすい存在であろうか。
しかしミズオは思考することができたし、人間として学んだ知恵と、経験があった。
それだけで、生き抜くには有利なのである。
肉食生物と言えど近づかなければ襲ってこないことに気がついたミズオは、周囲に気を配り、他の草食動物を見習って他の存在が近づく前にさっさと逃げることにした。
戦う必要はない。体を成長させるのに必要な時間とモヤモヤを確保できれば、いずれは大きくなってこの水中で優位に立つ生物となれるだろう。
ありがたいことにモヤモヤの密度はかなり高く、大きくなってエネルギーをさらに欲する体の欲求を簡単に満たすことができた。

モヤモヤを次々と食らってミズオはかなりの勢いで体を大きくし、大きさがゾウリムシもどきを追い抜いたころ。
不思議な物体と出会った。

それは細長い物体であった。

(何だコレ……分からないけど……欲しい……!)

久しぶりに衝動を強く感じた。残念なことにモヤモヤを食す感動は食べるごとに薄まってきていたのだ。
しかしこれほどの衝動の強さ、初めてモヤモヤを見たとき以来である。
体が明確に欲するそれを、ミズオは躊躇わずに吸いこんだ。
えも言われぬ天上の喜びがミズオを襲った。

(ぁああああああああッ!)

自分の意思とは無関係に、鞭毛がぶるぶると痙攣している。

(こ、これは―――――)

体が細長い物体を吸収した途端、情報が思考を埋め尽くした。
閃光のような情報の奔流が、何度も何度も襲い来る。

(これは……生き物の情報……ッ!)

ミズオが口にしたのは細胞の奥に大事にしまわれているはずの、生物の情報を刻まれた物体の、大きな塊のようであった。
死んだ生き物の染色体がバラバラにならずに残ったものだろうか。
それがミズオのDNAへと転写されたのだと、体の奥底が発する熱をもってミズオは確信した。
モヤモヤのエネルギーと同じく、これも体が欲しているのだろう。
衝撃の強さから言って、こちらの方が優先されるのかもしれない。

とはいえ、ミズオの体に変化は起こらない。
体が欲していたのなら、変化が起こっても良いのに。

(………まだ足りないということだろうか…………ん?)

気もそぞろに泳いでいたためだろうか、ゾウリムシもどきが近づいているのをミズオは見落としていた。
彼の横をミドリムシのようなちいさな生き物が凄い勢いで泳ぎ去ったことでミズオが周囲に気を向けた時、すでにゾウリムシもどきは逃げられない距離まで近づいていた。
ゾウリムシもどきは眼球をくるくると動かせ、アゴを開閉しながら近づいてくる。

(なんッッ……!)

必死に鞭毛を振って逃げようとするが、やはり速度は向こうが速いようだ。
簡単に追いつかれ、尻を齧られる。

(こ、こいつ……! 簡単に行くと思うなよ! あの時の俺じゃないぞ!)

事ここに至って、ミズオが何もせずに食われる訳が無かった。
素直に差し出してやるほど彼の命は安くない。

(こっちが逆に食ってやるぅああああああああああああああああ!)

心で絶叫しつつ、体を捩って振り返る。体が大きくなったためか、相対しても怯みはしない。
アゴを開いてこちらの横腹を食い破るゾウリムシの頭にこっちも喰いつく。
ゾウリムシもどきの表皮も柔らかく、歯のないミズオでも簡単に齧る事が出来た。

(いける…!)

身を捩る相手に、ミズオは気炎を吐いた。
ミズオの方が体格は有利だが、向こうは武器の鋭さがある。
動き回り身を齧り合うミズオとゾウリムシもどき。
泥仕合であった。

(この、クソ! いい加減に……!)

勝負を決めたのは、徹底して同じ場所を狙ったミズオであった。
先に敵の体内へと到達し、何がしかの器官を傷つけた時、ゾウリムシもどきは動きが遅くなり、やがて止まった。
力なく浮かぶゾウリムシもどきの繊毛が流れになびき出す。

しかしミズオに勝利をかみしめる余裕は無かった。
ミズオの体も今まさに死にゆかんとしていたからである。

(ぬ、あ…ああ……死にたくない……!)

目も前のゾウリムシもどきの肉片を食べるが、エネルギーを取り込めた気がしない。
流出するエネルギーの量はそのままで、体の傷は回復する様子を見せない。
代謝の限界が来た――――どこかでそう冷静に考察する自分がいる。
つまり、ゾウリムシとの戦いはきっかけで、彼を脅かしているのは彼の寿命なのだ。
小さな体に見合った、短い一生が終わろうとしている。
しかし、とても納得できるものではない。

(死にたく、ない………ッ!)

生への執着がミズオの体の見知らぬ器官を揺り動かし、ミズオは表皮を高速で震わせて音波を発した。

ォオオ―――――――ン……!

それは呼び声。
同属を呼び寄せ、命を紡ぐための機能である。

…………ォォォ―――ン……

遠くから、同じ音波を発する影が近づいてくる。
ゆっくりゆっくりと動く影は、死にかけのミズオの前で止まった。
眼球でミズオをじろじろと観察してくる。

(な、なんだ…?)

その個体はとても自分に良く似ていたが、ミズオの持っていない器官をもっていた。
両目の上にチョウチンアンコウのような、光る球体を触覚の先にぶら下げていたのだ。
他にも鞭毛が二本あったり、ミズオより少し小さかったり、些細な違いはいくらでもあった。

その個体は、やがてふい、とミズオから意識をそらし、傍らのゾウリムシもどきの死体に気がついた。

『!?』

驚いた気配がテレパシーのように伝わってくる。
個体の頭の上にある光る球が激しく明滅していた。その気配がまるで女の驚いた声のようだ。

(なんだ? どうなっている……? な、おい! やめろ……!)

困惑するミズオに目の前の個体(メス?)から管が伸び、ミズオの体に突き刺さる。刺さった管がミズオの中を探るように伸びていく。
ミズオは訳が分からず、ほとんど動かせない身を捩る。
何故か知らないがテレパシーで喜びの感情が伝わってきて、それがミズオをさらに混乱させる。

『…ッ! …ッ!』

管からは何かが送り込まれてきた。まるで命の塊のような、凝縮されたエネルギーを感じる。
ミズオは唐突に悟った。

(まさか……子孫を残そうとしているのか……?)

―――――こいつは死にかけの俺を使って、子をなそうとしているというのかッ!?

一瞬目が見えなくなるほどの怒りを覚えたミズオだったが、すぐにその感情はしぼみ、納得だという感情が体を支配しだした。

(もうすぐ死ぬんだ……次世代に何か残せるなら、それも良いかもな……)

少なくとも、自分が生きたという証は残るだろう。
短い間とはいえ必死に生きた。何も残さずに死ぬよりは少しだけ慰められる。
諦めとともにミズオはそのように思ったのだった。

そう思うと、透明な管を通じてミズオの体の中に何かを送り込んでいる彼女が少し愛しくなってくる。
鞭毛で軽く体をさすってやると、テレパシーを通じて嬉しそうな感情が伝わってきた。

(せめて強い子であればいい…)

何かを送り込んで来ると同時、ミズオの体も勝手に何かを送り返していた。
二つは同じものであり、また違う物でもある。そのようにミズオには感じられた。
まぁ死ぬ運命にあるこの身に何をしようが勝手である。


―――――――カチリ。


送り込まれたものが、何かを送り出して出来た隙間にはまり込む。
欠けていたピースが埋まり、ミズオの体が震えた。

(―――ッ!?)

突如として、ミズオの思考に情報の奔流がやってくる。
さっき感じたものの何倍もの長さと密度である。

(………い…ぎ…ッ!)

『…!』

目の前の個体も同じものを感じているのだろうか。その身を捩り、テレパシーで苦悶の感情を伝えてくる。
その個体の体が、見る見るうちに変化している。
額から二本の角が生え、鞭毛が抜け落ちて代わりに吸盤のような物――――――それは移動に使う物だとミズオには分かった――――――が生えた。
そしてエネルギーを大きく消費したかのように、その身がとても小さくなったのだ。

そしてその変化はミズオにも同じように起こっていた。
額を突き破り、白いとがった骨格がにゅ、と突きだす。攻撃に使えそうな頼もしい存在だ。
色々とお世話になった鞭毛は抜けて吸盤もどきが生える。
違うところがあるとするなら、額に生えたチョウチンアンコウのような器官――――おそらく思念の送信器官―――が生えたことである。
さらに言えば、先ほどまで感じていた寿命の終わりを感じなくなった。代わりに、まるで生まれたてのような爽快感を感じる。

(何という全能感……ッ!)

ずいぶんと小さくなった身で、ミズオは理解した。

―――――さっきのは、互いを進化させるための遺伝情報の交換か!

『…ッ! ……ッ!』
(うぉ、危なっ)

目の前の彼女はなぜかとても喜んでいた。角の生えた頭を振りつつ、尻の器官で動き回っている。
鞭毛の代わりに生えた吸盤のようなソレは、たわんで水を孕んだ後急速に縮んで中の水を押し出し、大きな推進力を得ることができる器官のようだった。
まるでクラゲの傘のような動きをするそれが二つも生えたため、ミズオの動きは大きく変化するだろう。
斜め後ろに付いたソレを片方だけ動かせば、旋回することも容易なはずだ。

(しかしなんでツノ…? 目の前の奴にも生えてなかったし……あ!)

ミズオの脳裏に先ほど吸収した細長い物体が浮かんだ。
どちらにも無い器官が身に現れた理由は、あれしか思いつかない。
なるほど、体が喜ぶはずだ。
その身を進化させるものなのだから。


とはいえ、目の前の個体がいなければ成しえなかった進化でもある。

額(?)に生えた送信機を使って感謝の心を伝えると、向こうからも嬉しそうな感情が伝わってきた。
互いに有意義な交配だったようである。
彼女はミズオの周りをフワフワ泳ぎまわって嬉しそうにツノとツノをぶつけると、やがて名残惜しそうに去って行った。
互いにまだまだ弱者であり、固まって行動することの無意味さを知っているのだろう。
モヤモヤもたくさんあるとはいえ有限だ。

ミズオも少々の寂しさを覚えつつ、納得した。
そして思う。

(ひょっとして、童貞を捨てたことになるんだろうか……)

それとも処女? などとくだらないことを思いつつ、ミズオはモヤモヤへかぶりつくのだった。



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