「天使になりたいと。」
「はい。」
「採用です。こちらに現在の住所をお書きください。あと身分証明書のコピーもさせていただきますね。」
「え、そんなに簡単に決まっちゃっていいんですか!」
「人手が足りないんですよね。あ、いつから働けます?」
「明日からでも…」
「では明日のこの時間にまた来てください。あ、身分証明書お返ししますね。」
「はぁ……」
こうして俺の天使道が始まった。まさか天使という職業が、天国界でもっとも過酷な職業であり、そしてブラック企業としてトップレベルをいくものであるかということも知らず入ったのが運のつきであった。
天使……10年以内での離職率99.999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999999%
地上で平々凡々にニートとして暮らしていた俺は、ある日風邪をこじらせて死んだ。飯もろくに食べてなかったし、風呂にもあまり入らなかったのが原因だろう。うわこの風邪かなりしんどいなと思っていたら死んだ。
死んだと思ったら瞬く間に天使が現れ、「とりま天国界にぶちこんどきゃいいだろ」という言葉と共に天国界へと放り込まれた。
俺みたいなのを天国に放り込んでいいのかと思いもしたが、天国界は至って快適だった。
科学技術も地上とは比べ物にならないほど発展しており、なんだかよくわからない力で、毎日を楽しめるというまさにヘブン状態な毎日が続いた。だがそれは長くは続かなかった。金が尽きたのである。
死んだ当時は、目の前に『20万クレジット』が置いてあり、それで生活していたのだが、どうやら天国で生きるためにはクレジットというやつがいるらしく、それがないと飯という名の「魔力」を買うことができず魂が消滅するらしいということを最近知り、就活をすることにしたのだ。
だが、天国界での就職でもやはり生前の経歴が重要になるらしく、中卒から20年近くニートをしていた俺を雇ってくれる企業はいなかった。親のすねをかじり続けたことで、まさか死んでからツケを払うことになるとは夢にも思っていなかった。
天国界の底辺と呼ばれる、「水商売の呼び込み」の面接からも落ちて途方に暮れていた俺は、ある日電柱に張ってあった『天使急募! 高給! 学歴不問! 生前の職業不問! 死後の経歴不問! 日払い可!』という張り紙を見つけた。そしてそこにかかれていた電話番号に電話したのだった。
そしてこの結果である。まさかこうまで一瞬で決まるとは……あぁでもとりあえず働きたくないな。そう思い、俺は床についた。
そして翌日。
「こちらが誓約書になっております。よく読んで拇印で結構ですから押していただけますか。」
「うちの給与形態はまず最初の1ヶ月はアルバイトとして日給10000で月28万クレジットとなっています。休日は2週間に1回ほどですね。まぁ休みは少ないんですけど、その代わり給料は高いですよ。1ヶ月終わったら今度は正社員となっていただき、月40万クレジット。その後は……普通に仕事されているなら月5万クレジットほど増えていきますね。それから、3年働くと休日が1週間に1回程度になりまして、10年働くと週に2回休めます。給与も、そのへんの人とは桁が違いますね。自慢ではないですが、私月給2000万クレジットでして。夢のある仕事だと思いますよ。いや、私もここまで長かった……」
「労働時間は1日28時間となっております。本来ならば1日は24時間なのですが、天使特権というやつで、天使は1日30時間分行動できるんですよね。ははっ。なんだその特権いらねえんだよクソガッ!! 殺してやろうか神!! あ、すみません…… まぁ1日28時間と言っても寝る時間は確保できますし、毎日寝れば健康体は維持できるので問題ありませんよ。仮に体調崩したり、重病を患ったとしても、天使特権ですぐに最先端技術の病院に連れて行かれて一瞬で治ってしまうので、ご心配なく。」
「以上の説明をご納得の上、うちで働いてもらいたいのですが、いけるか?」
目の前にいる、全然顔が天使っぽくない天使の怒涛の説明を聞きながら俺は思った。ブラックだー!と。でもまぁ、正直俺の手元には100クレジットしかなかったので、受けざるを得なかった。例えブラックと言えども、地獄界の職業よりはましだろうと思っていた。
曖昧に頷くと、目の前のおっさん天使は笑顔になった。
「よし、じゃああそこにいるぴーすけ……じゃなかったピラリフの横について仕事覚えてもらうから。おい、ぴーすけ。こっち来い。」
おっさんがそう発言するとぴーすけとやらがこちらにテレポートしてきた。
「なんですか。今案件2億個抱えてて多忙なんですが。」
「2億ならいけるな。こいつつけるから仕事教えて。」
「えーーーーーーーーー!! またですか? 無理ですって。店長じゃないんですから」
「その発言中に俺なら1億個案件片付けられるぞ。無駄な行動は慎め。手当てつけるから。な?」
「手当てより休日が欲しいんですが」
「天使に……」
「安息の日は訪れないってやつですね……いいですよ。その代わり手当ては弾んでもらいますからね。」
「おう。じゃあ任せた。じゃあこのピラリフについて学んで。あ、ぴーすけ! ちゃんと教えろよ?」
「了解~ じゃあ君、こっち来て。」
わけのわからないままぴーすけに連れられる俺。案件2億個を抱えるってなんなんだ。はじめて聞いた。
「まず天使の仕事について簡単に説明するから。やることは簡単。死んだ生物を天国界か地獄界にふりわけるだけ。振り分けると言ってもよほどの重罪人じゃなかったら天国界でいいから。まぁほかにもあるけど、最初はそれだけでいいかな。とりあえず俺がやるからそれ横で見てて。」
「はい。」
そしてどこかへテレポートする俺たち。目の前にはカエルが。カエルの前には『捕食1000。同属殺し0』の表示が浮かび上がっていた。
そしてぴーすけ天使は「とりま天国界にぶちこんどきゃいいだろ」と発言し、なにやらよくわからない機械の操作をし、カエルをどこかに飛ばした。
「こんな感じだ。『とりま天国界にぶちこんどきゃいいだろ』ってのは『天国界に行きたいですか? 行きたいのならばYesと発言してください。』の省略形だな。昔はそうやって言ってたみたいなんだが、なにぶん最近死ぬ奴が多くてな、『とりあえずまぁ天国界にぶちこんどきゃいいだろ?』でNoじゃなければ天国界に飛ばすって仕組みだ。まぁ自分から地獄界に行きたい奴なんてそうそういないし、現状はこれでいい。」
「な、なるほど」
なんとも適当な感じだ……
「じゃあお前、やってみろ。『とりま天国界にぶちこんどきゃいいだろ』って言えば天使特権で飛ばせるようになってるから。尤も、お前の場合まだ天使特権(仮)だけどな。」
ぴーすけはそう言うとまたどこやらかにテレポートし始めた。
目の前にはミミズが。「捕食200。同属殺し2」の表示。俺は『とりま天国界にぶちこんどきゃいいだろ』と発言する。ミミズが一瞬で天国界へと飛ばされたようだった。
「ん、まぁ『遅い』けど最初にしてはいい感じだな。もっと早口で言え。」
「はい。」
そんなこんなで何度も繰り返す。ハエから微生物から鳥までありとあらゆる生物が出現し、その度ごとに『とりま天国界にぶちこんどきゃいいだろ』と言うだけの簡単なお仕事。でもこの振り分けって、全部天国界に送るんだから必要あるんだろうか。そう思っていると、目の前に人間が現れた。
「種族人間。捕食2万。同属殺し3万」の表示。
目の前に現れたのはニートの俺でも知っていた、日本のシリアルキラーであった。2012年に突如現れたこの凶悪な犯罪者は爆薬テロから細菌テロじみたことまでする、人類史上最悪の犯罪者であると言われた男であった。そんな男が俺の目の前に立っていた。どうやら先日死刑になっていたらしい。昨今の死刑廃止の流れに逆らって、日本どころか世界中で『死刑にするべき人間』と言われ世間を賑わしていた奴だ。
「もちろん俺は地獄行きだろ?」と、そんなニヤついた顔をして俺のほうを見ていた。『とりま天国界にぶちこんどきゃいいだろ』などと軽い言葉で済ませるわけにはいかない。俺は先輩天使であるぴーすけを見る。
するとぴーすけはにっこり笑って俺に告げた。
「なにもたもたしてるんだ!!!!!!! 早く天使界に飛ばせ!! お前には今日だけであと5千万人やってもらうんだからな! 俺の仕事増やす気かっ!」
「え、え、えええええええ?」
俺がうろたえているとぴーすけは『とりま天国界にぶちこんどきゃいいだろ』と発言して、さっきのシリアルキラーを天国界に飛ばした。
「お前の気持ちはよくわかるけどな。あいつはたかだか3万人殺しだろ? そんなんで俺たちの業務が滞ると大変なんだ。あれくらいのレベルを地獄に飛ばしてクレームつけられたらまた仕事が増えるし、俺たちの業務が滞ると10億程度の魂が異界に吹っ飛ぶ。でもどれくらいが重罪人なのか言わなかった俺も悪かったな。すまん。とりあえず同属殺しが兆を超えたら俺に言え。いいな?」
「はい。」
正直あぁいうレベルの罪人を天国界に飛ばすのはどうかと思ったが、しばらくするとそんな考えは吹き飛んでいた。
『とりま天国界にぶちこんどきゃいいだろ』と連呼する。目の前に表示される「同属殺し」が尋常じゃなく多くなければ即『とりま天国界にぶちこんどきゃいいだろ』と発言する。慣れてきたのか、0.5秒ほどで1人を処理することが出来るようになってきた。
1時間で7200人を飛ばしている計算だ。だが、この計算で行くと、20時間でも14万4000人しか天国界へ飛ばすことはできない。一体どうやって28時間で5000万人も天国界へ飛ばすことができるのか。そう思っているとぴーすけが声をかけてくる。
「遅い! まだ1万人しか処理できていないのか! この分だと今日の分処理するだけで10年かかるぞ!」
「すみません!!!」
わけがわからないがとりあえず謝る。無理だろ。あれは人間には無理だろ。どうやってやるんだ。おい。
「まったく……ん? ていうかお前なんで『分身』してないの? 分身しないでこの案件こなせるわけないだろ! さっさと分身しろ!」
「は?」
なんだよ分身って。そんなのできるわけないだろ!
「え、ひょっとして分身できないのか? まじかよ……店長もひどいやつ採用したもんだな……いくら人手が足りないからって……ったく。」
「ど、どうやってやるんでしょうか……」
「こうしてこうやるんだ!」
「な、なるほど……」
分身を習得した俺は再び天使のお仕事に戻った。隣でぴーすけは怒涛の速さで生物たちを天国界へワープさせている。
俺も分身を使って全力で天国界へ飛ばすことに励んでいた。やっているうちに分身を更に分身させることができるようになったせいか、1秒に600人処理できるほどに俺は成長していた。1時間に216万人を処理する計算である。28時間かけると6104万人を処理できるので、初心者にはこれぐらいがちょうどいい荷だとあとでぴーすけから教えてもらった。
そして仕事開始から14時間後。普通の生物なら既に退社して「おつっした~わらわら」とか言いながら近所の居酒屋でがやがややっている時間である。
だが俺はまだ14時間仕事をしなければならなかった。1日で、3日分以上働くとは、生き地獄である。
「おう頑張ってるみたいだな。最初はなんだこいつって思ったけどやればできるじゃないかお前。飯にしようぜ。奢るぞ?」
そう言ってぴーすけはどこからか飯を取り出す。なんでも異空間配達即時システムと言って注文後数瞬でなんでも届く天国でも画期的なシステムらしい。ただし値段は高いらしいが。
「何がいい? なんでもいいぞ。俺の最近のオススメはグレータードラゴンのリゾットだな。」
「じゃ、じゃあそれで。」
「天使特権で睡眠は不要になったらしいが、飯はどうも現代技術でも不要にはできなかったらしくてな、まぁ不要にしてくれたらたまったもんじゃないが。ちなみに天使としての格が上がれば、こうやって食いながらでも話しながらでも案件を処理できるようになる。お前にはまだ早いだろうからゆっくり飯食っといたほうがいいぞ。」
「はぁ……」
「まぁ俺もまだ天使になって1年経ってないから偉そうなことは言えないけど。でも給料はいいんだぜ。特別手当がわんさか入るからな。この前家買ったし。まぁここ3ヶ月ほど帰ってないけどなははは……はぁ……」
「けど家買えるぐらいならこの仕事やめてもいいんじゃないですか?」
「そうなんだけどな。俺初等魔法学院でも落第したし、ここやめたら職ないんだよ。天国にいると寿命って概念が無くなるだろ? でも3年ここで働くと、『社畜精神』とやらを認められてほかの会社でも雇ってもらえる確率が高まるらしいからそれまではやるつもりだ。実際、俺の先輩なんてクソみたいな経歴だったけど転職できてたし」
「はぁ……てか魔法学院ってなんですか?」
「知らんの? 俺が通ってたのはクレコリウス系銀河の中央部に位置する……まぁ初等学院の三流校だからな……でも魔法学院は知ってるだろ。魔法習うとこだよ。お前が住んでたとこでは違う名前だったかもしれないけどな」
「クレコリウス系銀河ってどこですか?」
「はぁ!? お前どこの原始人だよ!?」
「え、いや自分太陽系の地球ってとこ出身ですけど。」
「あぁまだ自分たちの惑星からも出てない原始人だったわけか。太陽系の地球って……どんだけ自分中心の名付け方なんだ」
「原始人って……」
「まぁ気にすることは無い。俺だって昔は自分はそこそこ文明人だとは思ってたけど、最近はかなり発達した文明からきたやつも見かけるからな。そういうやつらの中でも特に技術者だった奴は割と天国でも重宝されてるし」
「へぇ……」
「よし、じゃあ後半戦行くか! お前も飯食い終わったら早く『飛ばせ』よ。まぁ今のペースなら5000万人は余裕だけど、なるべくたくさんできるようになった方が昇給、昇進しやすいから手を抜かないほうがいいけどな」
「はい。」
グレータードラゴンのリゾットやらを口にしながら返事をする俺。味はかなり格別だった。地上で食べていた飯がゴミに思えるほどの味を普通に味わえるとは、やはり天国はすごい。そう思った。
だが仕事後半、地獄が始まる。
次々と天国界に振り分けていく俺に、あるとき、『No!!!!』と発言する者がいた。え、天国に行きたくないのかよ。と思ったが、Noと言われたらどうすることもできないので、とりあえずぴーすけに指示を仰ぐことにした。
「あの、ピラリフさん。『とりま天国界にぶちこんどきゃいいだろ』って言ったらNoって言われちゃったんですけど……」
「え!? 何お前Noって言われちゃってんの!? めんどくさいことすんなよ!!!!!! 言うのが遅いからNoとか言われるんだぞ!! あぁ……書類書かなきゃいけないんだぞクソ!」
「す、すみません。」
「しゃーねぇな。あいつか? 言った奴は?」
「そうです。」
「とりあえず説得だな。書類はめんどくさい。」
「はぁ……」
「俺のやり方見とけよ」
「はい……」
「えぇと、クタラクタラ星から来たタヌ山タヌ吉さんでしたっけ。Noということはあなたは地獄行きとなってしまうんですが、よろしいんですかね。」
「もちろんです! 地獄とか! とってもファンタジーじゃないですか!」
「天国も十分にファンタジーだと思いますが」
「天国がファンタジックだなんて! ご冗談を! そんなことはありえません!」
「それはまたどうして。」
「我々の聖書に書いてあったのです!」
「そうなんですか? えぇと……けどその聖書を書いた人は天国はファンタジーだと言ってますよ」
「聖書を書いた人と、聖書そのものは違うんです! 聖書を書いた人の当時の考え方が聖書であり、筆者がどうとかそういうことは一切関係ないんです!」
「あっそ」
そう吐き捨てるとぴーすけは俺を引っ張ってこう言った。
「コレの説得は無理だ。狂人くさい。かと言って洗脳なんかしたら天国界警察がごちゃごちゃうるさい。仕方ない……書類書くか……めんどくせぇ」
「はい。」
「書かなきゃいけないのはあいつの個人認証番号、つまりIDだ。IDを確認してここに書く。そして地獄行きと書くだけだ。簡単だろ?」
「え、それだけでめんどくさいんですか?」
「ばか!!!! お前、1つの宇宙だけでもどんだけ生物がいると思ってんだ!!!! 俺たちが管轄してる宇宙ってのは1つどころか無限に近い数なんだぞ! どんだけIDが長いと思ってるんだこのバカ!!」
タヌ吉とやらのIDを見ようとすると、目の前がID番号で埋め尽くされた。
「それ書くんだぞ……お前、よかったな。初日でこれやれるなんて……運がいいのかもな。無理なら説得しようとしてもいいんだぞ……まぁ俺的には、書いたほうが早いと思うけどな……」
IDは目の前を埋め尽くし、刻一刻と移動していく。目の前が数字に埋め尽くされるだなんて、なんという経験だろう。
「あぁお前、10進数でID見てるけど、10進数なんかで書いてたら死ぬまで書いてても終わらないぞ。2の2乗の2乗の2乗の2乗2乗の2乗の2乗の2乗の2乗を2乗回繰り返したものを掛ける進数ってのがあるから、それで見るようにしとけ。それからスペルミスするなよ。死ぬぞ。じゃ、じゃあな。がんばれよ」
ぴーすけはそのままどこかへ行ってしまい、俺はタヌ吉の目の前に取り残された。
「どうされたんですか! 早く地獄に連れて行ってください!!」
殺してやろうかと思いながら俺はIDを書き始めることにした。この手の輩を説得するのは至難の技だ。
そして数時間後。
書けた!!!! ようやく書けた!! あとは地獄行きと書くだけだ! よし……よし……はい。地獄行き……と。しかし、
『エラー! そのIDは間違っています。そのID保有者は既に天国にいます。』という表示が。
なにいいいいいいいいいいいい! 何度も何度も見直しながら書いたのに、どうして間違ってるんだ……ふざけてるだろ。ふざけてるだろ。
そしてまた数時間後。
『エラー! そのIDは間違っています。そのID保有者は存在しません。』という表示。
なにいいいいいいい!
そうして格闘していると、本日の仕事が終了した。
「おう。ノルマ達成できたかお前。ってまだこいつ地獄に飛ばせてなかったのかよ……あぁ……スペルミスか。俺もよくやったからわかるけどさ……」
「すみません……」
「とりあえずノルマ達成できなかったわけだから店長に報告しとくわ。まぁお咎めとかは無いけどな。新人のノルマはあくまで目標だからな。」
「すみません……」
「気にすんな初日なんだから。まぁ正直お前は天使の素質無いけど、頑張ってたと思うぞ」
「ありがとうございます。」
「おう。あぁじゃあこれ給料な。1万クレジット。んで明日は……って言っても2時間後だけど……まぁ今日と同じことするだけだな。ちゃんと来いよ~」
「あはは……まぁお金ないんで来ますよ……にしても働くってキツいですね。それも28時間も連続で。こんなに働いたのって初めてですよ。」
「まぁな。でも1年頑張れば1日27時間勤務に減るし、有給つくからな。代わりに休日出勤とかあるらしいが……でもだんだん楽になっていくってのはやっぱ腐っても天国界の天使って感じだな。俺もあと1ヶ月頑張らなきゃだわ。今は月給85万で手当てが15万ついてるとはいえ、休日は寝るしかしてないっていうのは正直キツいものがある」
「あはは……」
「じゃあな!」
ぴーすけと別れて俺は岐路に就く。帰る途中に思ったが、通勤時間が30分なので、実質1時間しか家にいれないことに気付いた。1時間も寝れないとは、どういう生活なんだと思ったが、天使に睡眠は必要ないらしいので、働けないことはないらしい。
天使に安息の日は訪れない。