※この作品は『神咒神威神楽』及び『Dies irae』の作品世界観を流用している二次作です。
『座』それは即ちこの世の在り様を定める宇宙の基点。
座はこの世界の総てであり、この世を統べる神が座す場である。
座は人の渇望が外界に向き、狂気と言って差し支え無き妄念に至った者が座す。
座に至れば己の渇望により生まれた異界で以ってこの世を塗り潰し、己の望む絶対法則を世に敷く事が出来る。
しかし、座を手にする事が出来るのは常に唯一人。
二人以上の神が生まれればこの世総てを己の色に塗り替えるという特性上互いに殺し合い、相手の領土を汚染し合い、どちらかが磨り潰されて消滅するまで争いは続く。
渇望には外界に向けて発せられる『覇道』というものがあり、これが己の望む異界を外向きに永続的に展開し続けるようになればそれを以って『流出』もしくは『太極』と呼び、万象を己の色で塗り潰す。
これを覇道神と呼び、座を手にする事の出来る神格であるとされる。
対して己のみに異界を永劫展開するに至った者を『求道』の神、即ち『求道神』と呼び、彼等は永劫不滅の存在となり、世界から完全に離れた存在となる。
こちらは己のみで自己完結してしまっているが故にこの世に一切干渉が出来ず、座を握った所でこの世の法則を変えるは出来ない。
以上が我等が世界を構成するこの世の真理。
我等の宇宙ではその神の交代劇が既に五度に渡って起こっている。
我等の宇宙の神は今代までに六柱。
最初の神は自身の犯した罪過に押し潰されぬために己が殺した者は総て殺すべき邪悪であったという二元論に逃げ込み、この世の人間を善と悪とに別った女だった。
第二の神は第一の神が産み出した世界の善側の王であり、悪を滅ぼし切れぬ己を嘆き、悪を滅ぼす為に皆が一介の悪を持つ事を望んだ王であった。
第三の神はその潔癖さ故に人が罪を犯す事を許容出来ず、人の悪性を抜き去る事で楽園を築き上げた『明星』を冠する男であった。
第四の神は座の機構に飲み込まれた神であり、己の望む至高の死を求めるが故に永劫の既知に囚われた『水銀』を冠する男だった。
そしてその第四の神の自滅因子《宿主(神)を喰い殺す存在(神殺し)》は己の全力を以って万象を愛する為に闘争と再生を繰り返す地獄を求めた『黄金』を冠する男であった。
第五の神はあらゆる万象を慈しみ、遍く総てを抱き締め来世の希望を約束した『黄昏』を冠する女であった。
そして第五の神の属神はその女を愛し、女が産み出した世界を守り抜こうと誓った永劫静止の地獄を生み出す『刹那』を冠する男であった。
第六の神は自己愛の極限を具現し、己以外の万象総てを滅殺しようとした至上最悪の邪神であり・・・・・・・・・
我等が前代の罪の証。
我等の前代は第五の神の治世において神の抱擁を拒絶し、汚らわしいと厭いその治世を塗り替える為に第六の神を産み出してしまった。
その結果、この宇宙が滅びに瀕するという事態を招いてしまった。
故に我等の前代は邪教と罵られ、謗られ憎まれて然るべき者共なり。
そして我等こそ、その邪教の残党なり。
黄昏を滅ぼした下劣畜生は滅ぼされ、終わるかに見えた宇宙は無事存続し、観測者は次の滅びまで休眠に入った。
だが我等邪教と蔑まれし者達は違う。
前代の我等は黄昏を嫌悪するあまりこの世に存在を許してはならない下劣畜生を生み出してしまった。
もう二度とあんな間違いは犯すまい。
もう二度とあんな外道を生むまい。
故に我等は前代の知り得た旧世界の神をもう一度自身で知覚していった。
前代が知り得た事は碑文だけでは伝わらない。
我等は自身でもって旧神達の理を知らねばならない。
故に我等は神域に潜った。
戦乱に疲弊し、罪過の責を他者に置いた弱き女の二元論
善が悪を滅ぼせぬ事に嘆いた王の堕天奈落
人が罪を犯す事に耐えられなかった潔癖な男の悲想天
唯一つの結末を求めて永劫を流離った枯れた蛇の永劫回帰
愛強き黄金の獣の修羅道
慈愛溢れる断頭台の女神の輪廻転生
女神を守り抜くと誓った男の無間地獄
己のみになる事を求めた我等が前代の生み出してしまった最悪の神、天狗道
そして今代の座、曙光。
これまでの神は全て知った。
だがそれでも我等は完璧な神を見出せない。
全ての座に言えた事だが、やはり全ての座に陥穽は在る。在ってしまう。
我等の前代は黄昏を貶める為に新たなる神を産み出そうとしたが為に、許されてはならぬ外道を産み落としてしまった。
我等はその過ちを認め、決して今代の神を貶める為に神を産み出そうなどと考えまい。
我等は陥穽無き神を生み出そう。
座を巡る争いを我等の手で終わらせて見せ、それを以て前代の侵した罪の購いとしよう。
この宇宙以外に存在する神を知る事でいずれ来るであろうこの宇宙の滅びの時までに我等は真の神を創世するのだ。
さぁ、完全なる神を産み出すためにこの宇宙以外の神を記していこう。