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No.33958の一覧
[0] 【習作】私はエルフ【エルソード TSもの】[メヌエット](2012/07/08 16:26)
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[33958] 【習作】私はエルフ【エルソード TSもの】
Name: メヌエット◆f61131b6 ID:5733c803
Date: 2012/07/08 16:26



「う……」



肌寒さに目が覚める。

眠気によって重い瞼を開けると、薄暗い森が広がっていた。

バッ、と飛び起きる。



……なんだここ、何でこんなところにいる!?



無理に飛び起きたせいで気だるい体を動かして周りを見渡す。
暗い、というのが真っ先に浮かぶ印象だろう。
心臓がバクバクとうるさいほど鼓動する。
生えている木々は今まで見たことがないほど大きいものもある。



なんだ、何が起こった!?
何でこんなとこで寝ていた!?



もう一度上を見上げてみれば多くの葉がうっそうと茂り、不安をさらに掻き立てた。



ガサリと、音がした。



!?



肩と心臓が大きく跳ね、勢いよく後ろを振り向きながら中腰になってバックステップする。


大きな、大きな樹が「居た」。


幹には不気味な顔のようなものがあり、その顔からは虚ろな目が覗いていた。
心臓がさらに速く鳴り、汗が噴き出る。

腕のように見える枝が大きくしなり、こちらに振り抜かれる。

弾かれるようににもう一度大きく後ろに跳ぶ。
ろくに後方確認をしないで跳んだせいで何かに躓き、転倒する。


空振った枝が地面に激突して、轟音を立てながら土飛沫を飛び散らせた。



もうだめだ、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。



じろりと、虚ろな目に睨まれた。



一目散に、後ろに向かって駆け出した。




声など出ない。振りかえることは出来なかった。後ろを向いてしまえば、奴がいるかもしれない。
そうなったら、心が折れてしまう。

心が折れたら――――死ぬ。


走る、走る、走る。


長くのびた黒髪がうっとおしい。
邪魔だ。長い髪の扱い方なんて知らないから、乱暴に後ろにはらった。


走る、走る、走る。


途中で何かに躓く。
しかし、転ばずにそのまま前転し、一回転するころにクラウチングスタートのような体勢から再び加速する。


走る、走る、走る。


何かが見えた。
暗い森の中でぼうっと光る、何か。

何かがいた。
ランタンをもった、まるでハロウィンに出てきそうな何か。
頭らしき部分は、かぼちゃではなかった。

何かがいた。
虫だ。自分と同じくらいの大きさの、蜂だ。
巨大な、蜂だ。


走る、走る、走る。


もう、なにも考えられない――――――。







光が見える。あそこに向かって走れば……。



突然、視界が開けて。

踏みしめるはずの地面は無くて。

激しく転がり全身を打ちつけながら。

水の中に、落ちた。












ぺちぺちと頬を叩かれた。



なんだ?



肩をゆすられる。
自分が寝ていたのに気が付いた。



目蓋を開く。
白い何かがいた。
でも、不気味ではなくて、かわいい、と思えるような動物だった。



「あ、起きた」



しゃべった。

きっと今の自分は目をまんまるにしているだろう。



「りんご食べる?」



すっ、と差し出された赤いリンゴ。
反射的に手を出した。ひっこめるのも気まずいのでそのまま受け取る。



ありがとうございます、と声を掛けようとして。

声が出ないことに気が付いた。

ひゅーひゅーと空気が出ていく音しかしない。
いつの間に痛めたのだろうか……。

仕方ないので会釈をして感謝の意をつたえる。


しゃり、と齧る。
甘くて、おいしい。


「大丈夫?オマエ、河原に倒れてたんだぞ」


しゃりしゃりとリンゴを齧りながら顔を白いのに向ける。


詳しく聞こうとして……声が出ないんだった。

喉に手を当てて声が出ないとジェスチャーをする。


「しゃべれないの?」


うなずいて肯定する。


「うーん、そっか、大変だな!オイラ、ウィリアム。よろしくな、黒いの」


黒いの?


言われて初めて自分が黒い服を着ているのに気が付いた。
フリルのついた、前の開いたスカートのドレス。大きく膨らんだ胸元。
緩くベルトの付いた、黒いチェックのミニスカート。白い足が見えた。
甲に青いバラの装飾の付いた手袋。フィンガーグローブ……中二か?
ガーターベルトの付いたオーバーニーソックスに黒いローファー。良いセンスだ。
そして、先ほどからちらちらと目に入る長い黒髪。



さて、いつから自分は女性のような体つきになったのだろうか?

声が出るならちょっと大きな声を出していたかもしれない。



「おーい?」


ウィリアム、と名乗った白いのに抱きついて。

俺は、激しく泣き出した。

声が出なくて、助かった。




獣臭い、うえぇぇ。


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