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No.33886の一覧
[0] 【ゼロ魔×封神演義】雪風と風の旅人[サイ・ナミカタ](2018/06/17 01:43)
[1] 【召喚事故、発生】~プロローグ~ 風の旅人、雪風と出会う事[サイ・ナミカタ](2013/06/13 02:00)
[2] 【歴史の分岐点】第1話 雪風、使い魔を得るの事[サイ・ナミカタ](2012/09/30 14:52)
[3]    第2話 軍師、新たなる伝説と邂逅す[サイ・ナミカタ](2014/06/30 22:50)
[4]    第3話 軍師、異界の修行を見るの事[サイ・ナミカタ](2014/07/01 00:53)
[5]    第4話 動き出す歴史[サイ・ナミカタ](2014/07/01 00:54)
[6]    第5話 軍師、零と伝説に策を授けるの事[サイ・ナミカタ](2012/09/30 14:55)
[7] 【つかの間の平和】第6話 軍師の平和な学院生活[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:00)
[8]    第7話 伝説、嵐を巻き起こすの事[サイ・ナミカタ](2012/09/30 14:57)
[9] 【始まりの終わり】第8話 土くれ、学舎にて強襲す[サイ・ナミカタ](2012/09/30 14:58)
[10]    第9話 軍師、座して機を待つの事[サイ・ナミカタ](2012/07/15 21:07)
[11]    第10話 伝説と零、己の一端を知るの事[サイ・ナミカタ](2012/09/30 14:59)
[12]    第11話 黒幕達、地下と地上にて暗躍す[サイ・ナミカタ](2012/07/15 21:09)
[13] 【風の分岐】第12話 雪風は霧中を征き、軍師は炎を視る[サイ・ナミカタ](2012/07/15 21:09)
[14]    第13話 軍師、北花壇の主と相対す[サイ・ナミカタ](2012/09/30 15:03)
[15]    第14話 老戦士に幕は降り[サイ・ナミカタ](2013/03/24 19:47)
[16] 【導なき道より来たる者】第15話 閉じられた輪、その中で[サイ・ナミカタ](2012/09/30 15:05)
[17]    第16話 軍師、異界の始祖に誓う事[サイ・ナミカタ](2012/07/15 21:13)
[18]    第17話 巡る糸と、廻る光[サイ・ナミカタ](2012/07/15 21:13)
[19]    第18話 偶然と事故、その先で生まれし風[サイ・ナミカタ](2012/08/07 22:08)
[20] 【交わりし道が生んだ奇跡】第19話 伝説、新たな名を授かるの事[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:13)
[21]    第20話 最高 対 最強[サイ・ナミカタ](2012/09/30 15:06)
[22]    第21話 雪風、軍師へと挑むの事[サイ・ナミカタ](2012/09/30 15:07)
[23] 【宮中孤軍】第22話 鏡の国の姫君と掛け違いし者たち[サイ・ナミカタ](2012/08/02 23:25)
[24]    第23話 女王たるべき者への目覚め[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:16)
[25]    第24話 六芒星の風の顕現、そして伝説へ[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:17)
[26]    第25話 放置による代償、その果てに[サイ・ナミカタ](2012/10/06 15:34)
[27] 【過去視による弁済法】第26話 雪風、始まりの夢を見るの事[サイ・ナミカタ](2012/08/04 00:44)
[28]    第27話 雪風、幻夢の中に探すの事[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:18)
[29] 【継がれし血脈の絆】第28話 風と炎の前夜祭[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:19)
[30]    第29話 勇者と魔王の誕生祭[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:20)
[31]    第30話 研究者たちの晩餐会[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:20)
[32]    第31話 参加者たちの後夜祭[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:00)
[33] 【水精霊への誓い】第32話 仲間達、水精霊として集うの事[サイ・ナミカタ](2012/08/14 21:33)
[34]    第33話 伝説、剣を掲げ誓うの事[サイ・ナミカタ](2012/08/18 00:02)
[35]    第34話 水精霊団、暗号名を検討するの事[サイ・ナミカタ](2012/08/18 00:03)
[36] 【狂王、世界盤を造る】第35話 交差する歴史の大いなる胎動[サイ・ナミカタ](2012/08/18 00:05)
[37]    第36話 軍師と雪風、鎖にて囚われるの事[サイ・ナミカタ](2012/11/04 22:01)
[38] 【最初の冒険】第37話 団長は葛藤し、軍師は教導す[サイ・ナミカタ](2012/08/19 11:29)
[39]    第38話 水精霊団、廃村にて奮闘するの事[サイ・ナミカタ](2012/10/08 19:31)
[40]    第39話 雪風と軍師と時をかける妖精[サイ・ナミカタ](2013/04/20 22:17)
[41] 【現在重なる過去】第40話 伝説、大空のサムライに誓う事[サイ・ナミカタ](2013/04/20 22:18)
[42]    第41話 軍師、はじまりを語るの事[サイ・ナミカタ](2012/08/25 22:04)
[43]    第42話 最初の五人、夢に集いて語るの事[サイ・ナミカタ](2012/10/08 19:38)
[44]    第43話 微熱は取り纏め、炎蛇は分析す[サイ・ナミカタ](2014/06/29 14:41)
[45]    第44話 伝説、大空を飛ぶの事[サイ・ナミカタ](2012/10/08 19:43)
[46] 【限界大戦】第45話 輪の内に集いし者たち[サイ・ナミカタ](2012/10/08 19:47)
[47]    第46話 祝賀と再会と狂乱の宴[サイ・ナミカタ](2012/10/08 19:47)
[48]    第47話 炎の勇者と閃光が巻き起こす風[サイ・ナミカタ](2012/09/12 01:23)
[49]    第48話 ふたつの風と越えるべき壁[サイ・ナミカタ](2012/09/16 22:04)
[50]    第49話 烈風と軍師の邂逅、その序曲[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:00)
[51] 【伝説と神話の戦い】第50話 軍師 対 烈風 -INTO THE TORNADO-[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:01)
[52]    第51話 軍師 対 烈風 -INTERMISSION-[サイ・ナミカタ](2012/10/08 19:54)
[53]    第52話 軍師 対 烈風 -BATTLE OVER-[サイ・ナミカタ](2012/09/22 22:20)
[54]    第53話 歴史の重圧 -REVOLUTION START-[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:01)
[55] 【それぞれの選択】第54話 学者達、新たな道を見出すの事[サイ・ナミカタ](2012/10/08 20:01)
[56]    第55話 時の流れの中を歩む者たち[サイ・ナミカタ](2012/10/08 20:04)
[57]    第56話 雪風と人形、夢幻の中で邂逅するの事[サイ・ナミカタ](2012/10/28 13:29)
[58]    第57話 雪風、物語の外に見出すの事[サイ・ナミカタ](2017/10/08 07:40)
[59]    第58話 雪風、古き道を知り立ちすくむ事[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:02)
[60] 【指輪易姓革命START】第59話 理解不理解、盤上の世界[サイ・ナミカタ](2012/10/20 02:37)
[61]    第60話 成り終えし者と始まる者[サイ・ナミカタ](2012/10/20 00:08)
[62]    第61話 新たな伝説枢軸の始まり[サイ・ナミカタ](2012/10/20 13:54)
[63]    第62話 空の王権の滑落と水の王権の継承[サイ・ナミカタ](2012/10/25 23:26)
[64] 【新たなる風の予兆】第63話 軍師、未来を見据え動くの事[サイ・ナミカタ](2012/10/28 21:05)
[65]    第64話 若人の悩みと先達の思惑[サイ・ナミカタ](2012/10/28 20:01)
[66]    第65話 雪風と軍師と騎士団長[サイ・ナミカタ](2012/10/28 20:58)
[67]    第66話 古兵と鏡姫と暗殺者[サイ・ナミカタ](2013/03/24 20:00)
[68]    第67話 策謀家、過去を顧みて鎮めるの事[サイ・ナミカタ](2012/11/18 12:08)
[69] 【火炎と大地の狂想曲】第68話 微熱、燃え上がる炎を纏うの事[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:02)
[70]    第69話 雪風、その資質を示すの事[サイ・ナミカタ](2013/01/26 21:14)
[71]    第70話 軍師は外へと誘い、雪風は内へ誓う事[サイ・ナミカタ](2013/01/26 21:10)
[72]    第71話 女史、輪の内に思いを馳せるの事[サイ・ナミカタ](2013/01/26 21:11)
[73] 【異界に立てられし道標】第72話 灰を被るは激流、泥埋もれしは鳥の骨[サイ・ナミカタ](2013/01/27 23:01)
[74]    第73話 険しき旅路と、その先に在る光[サイ・ナミカタ](2013/01/27 23:01)
[75]    第74話 水精霊団、竜に乗り南征するの事[サイ・ナミカタ](2013/02/17 23:48)
[76]    第75話 教師たち、空の星を見て思う事[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:03)
[77] 【今此所に在る理由】第76話 伝説と零、月明かりの下で惑う事[サイ・ナミカタ](2013/04/13 23:29)
[78]    第77話 水精霊団、黒船と邂逅するの事[サイ・ナミカタ](2013/03/17 20:06)
[79]    第78話 軍師と王子と大陸に吹く風[サイ・ナミカタ](2013/03/13 00:53)
[80]    第79話 王子と伝説と仕掛けられた罠[サイ・ナミカタ](2013/03/23 20:15)
[81]    第80話 其処に顕在せし罪と罰[サイ・ナミカタ](2013/03/24 19:49)
[82] 【それぞれの現在・過去・未来】第81話 帰還、ひとつの終わりと新たなる始まり[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:03)
[83]    第82話 眠りし炎、新たな道を切り開くの事[サイ・ナミカタ](2013/04/20 22:19)
[84]    第83話 偉大なる魔道士、異界の技に触れるの事[サイ・ナミカタ](2013/06/13 01:55)
[85]    第84話 伝説、交差せし扉を開くの事[サイ・ナミカタ](2013/06/13 01:54)
[86]    第85話 そして伝説は始まった(改)[サイ・ナミカタ](2018/06/17 01:42)
[87] 【風吹く夜に、水の誓いを】第86話 伝説、星の海で叫ぶの事[サイ・ナミカタ](2013/06/13 02:12)
[88]    第87話 避けえぬ戦争の烽火[サイ・ナミカタ](2013/06/13 01:58)
[89]    第88話 白百合の開花と背負うべき者の覚悟[サイ・ナミカタ](2013/07/07 20:59)
[90]    第89話 ユグドラシル戦役 ―イントロダクション―[サイ・ナミカタ](2013/09/22 01:01)
[91]    第90話 ユグドラシル戦役 ―閃光・爆音・そして―[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:04)
[92]    第91話 ユグドラシル戦役 ―終結―[サイ・ナミカタ](2014/05/11 23:56)
[93] 【ガリア王家の家庭の事情】第92話 雪風、潮風により導かれるの事[サイ・ナミカタ](2014/03/08 20:19)
[94]    第93話 鏡の国の姫君、踊る人形を欲するの事[サイ・ナミカタ](2014/06/13 23:44)
[95]    第94話 賭博場の攻防 ―神経衰弱―[サイ・ナミカタ](2014/07/01 09:39)
[96]    第95話 鏡姫、闇の中へ続く道を見出すの事[サイ・ナミカタ](2015/07/12 23:00)
[97]    第96話 嵐と共に……[サイ・ナミカタ](2015/07/20 23:54)
[98]    第97話 交差する杖に垂れし毒 - BRAIN CONTROL -[サイ・ナミカタ](2016/09/25 21:09)
[99]    第98話 虚無の証明 - BLACK BOX -[サイ・ナミカタ](2017/10/08 07:42)
[100] 【王女の選択】第99話 伝説、不死鳥と共に起つの事[サイ・ナミカタ](2017/01/08 02:09)
[101]    第100話 鏡と氷のゼルプスト[サイ・ナミカタ](2017/01/08 02:14)
[102]    第101話 最初の人[サイ・ナミカタ](2017/01/08 17:42)
[103]    第102話 始祖と雪風と鏡姫[サイ・ナミカタ](2017/01/22 23:14)
[104]    第103話 六千年の妄執-悪魔の因子-[サイ・ナミカタ](2017/02/16 23:00)
[105] 【王政府攻略】第104話 王族たちの憂鬱[サイ・ナミカタ](2017/03/06 22:52)
[106]    第105話 王女たちの懊悩[サイ・ナミカタ](2017/03/28 23:10)
[107]    第106話 聖職者たちの明暗[サイ・ナミカタ](2017/05/20 17:54)
[108] 【追憶の夢迷宮】第107話 伝説と零、異郷の地に惑うの事[サイ・ナミカタ](2017/10/08 07:46)
[109]    第108話 風の妖精と始まりの魔法使い[サイ・ナミカタ](2017/10/08 07:47)
[110]    第109話 始祖と零と約束の大地[サイ・ナミカタ](2017/06/09 00:54)
[111]    第110話 崩れ去る虚飾、進み始めた時代[サイ・ナミカタ](2017/10/28 06:35)
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[33886]    第34話 水精霊団、暗号名を検討するの事
Name: サイ・ナミカタ◆e661ea84 ID:d8504b8d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/08/18 00:03
 ――静かな湖畔で友情の宣誓を行ってから1時間ほどが経ち、ひと段落ついた頃。突然、太公望がおかしなことを言い出した。

「暗号名(コードネーム)で行動するゥ!?」

 夏期休暇突入と同時に開始する、例の『冒険』期間中は、本名を一切明かさずに行動するというこの通告に、全員が驚きと批難の声を上げた。

「どうして!? それじゃ、意味がないじゃないのよ!」

「ヴァリエールの言う通りよ! 暗号名を使ったら、名を上げられないわ」

「わたしもそう思うわ。せっかく立てた手柄を自慢できないなんて、面白くないもん」

「まったくだぜ!」

 と、真っ向から反対するルイズ、キュルケ、モンモランシー+デルフリンガーの全4名。彼らの言い分は、ある意味当然である。ところが、

「ぼくは暗号名に賛成だな」

「俺も!」

「ぼくも、そのほうがいいと思うね」

「わたしも賛成」

 彼らとは対照的に、タバサと残る男子生徒陣は暗号名の採用に賛同した。

「ふむ。では、賛成側にまわったものは、順番に理由を言うのだ」

「下手に本名を使うと、不都合が生じる可能性があるからね」

 太公望に促され、最初に答えたのはレイナールだ。

「不都合って、たとえばどんな?」

「着手する『任務』によっては、身分を明かしてはいけない、あるいは貴族であること自体が逆に枷になることがあると思うんだ。依頼人が萎縮してしまうかもしれないし、現場の領主とモメるようなことがあったりしたら大変だろう?」

「確かに、それはあるかもしれないわね」

 モンモランシーがしみじみと頷いた。父親が起こした不祥事を思い出したのだろう。そこへ、今度はギーシュが自分なりの補足を加えた。

「ぼくの家は、国内でも有数の軍閥貴族だからね。家名に泥を塗るような真似は絶対にできないのさ。『命を惜しむな、名を惜しめ』が家訓のグラモン家の男が、いったい何を言うんだと思われるかもしれないが、できれば保険をかけておきたい――というのが正直なところなんだよ」

 さらに、タバサが意見を述べた。

「名前を隠すことによる利点もある」

 その言葉に、全員が注目した。

「どういうことかしら? タバサ」

「本当の名前を隠すことによって『家名』に頼らず、実力のみを見てもらえる。あの家の人間なのだから、この程度できて当たり前、逆に、あんな低い家柄の者にできるわけがない。そう思い込まれる可能性がなくなるということ」

「ああ、なるほど」

 と、反対側にいた者たちが納得しかけたその時。太公望が、さらなる追撃をかけた。

「家名に頼らないということは、すなわち『実力の証明』となる。それは、おぬしたちにとって大きな自信に繋がるであろう。だからこそ、わしは暗号名採用を推すのだ」

「そっか。そういうことなら理解できるわ」

 家名やコネに一切頼らず、己の<力>のみで問題を解決する。それは、まさしく自分の手で掴み取った栄光だ。暗号名の採用に不平を述べていた者たちも、この説明を受けて完全に納得した。

「ところで……才人は、何故賛成にまわったのだ?」

「えー! だってさ、コードネームってなんか響きがカッコイイじゃん!!」

「おぬしに聞いたわしが間違っていた」

「閣下ひでえ!」

「いや、いまのはきみが悪い」

 ――と、まあこんなやりとりがあり、気持ちのよい湖畔で暗号名を考えてみようという、いまいち噛み合わないシチュエーションの中、太公望がひとつの提案をした。

「そうだのう……できればで構わないので、その名前を聞いたら、いったい誰を指すのか。それが仲間内で、すぐわかるようなものが望ましいのだが」

「二つ名みたいなものかしら?」

 ルイズの質問に、その通りだ! と答えた太公望。と……ここで才人がふと閃いた。

「なあ、みんなの『二つ名』か系統を、俺の国の言葉に直すっていうのはどうだ?」

「ふむ、具体的には?」

「そうだな……たとえばルイズなら『コメット』。これは『箒星』の別名なんだ」

 別名というか別言語なのだが、そのあたりはさすがに伏せる才人であった。

「あら、可愛い響きじゃない? それ」

 笑顔でそう言ったルイズに、だろう? と、得意げな表情でもって応えた才人は、続いてタバサに目を向けた。

「あとは、そうだな。タバサなら『スノウ』とか。これは『雪』って意味」

「悪くない。わたしはそれでいい」

 このやりとりに、残る全員が面白そうじゃないか! と、食いついてきた。

「なるほど。サイト、それだとぼくの『青銅』はどういう名前になるんだね?」

「『ブロンズ』だな」

「あたしの『微熱』はどうなのかしら?」

「キュルケの『微熱』はちょっと難しいなあ……どっちかっていうと『フレア』とかのほうがカッコいいかな。太陽の炎のことをそう呼ぶんだけど」

「あら、それいいじゃないの! あたしの系統や情熱の象徴に、太陽の名は相応しいわ」

 実際には炎ではなく、太陽で起こる爆発現象のことを指すのだが――才人は、わかっていてもあえてそこには言及しないことにした。説明すると、ややこしいことになるからだ。

「ぼくは、風と火の両方が使えるんだけど」

 レイナールの申し出に、才人は難しそうな顔をして答えた。

「それだけだと難しいな、他に何か特徴ないんか?」

「<魔法剣>の腕なら、クラスで一番だよ」

「お、マジか! 今度手合わせしてくれよな……と、それなら『ブレイズ』とかどうだ? 火炎と、刃(ブレイド)をかけてるんだけど」

「あ、それちょっとかっこいいかも」

 レイナールはその名前について、真剣に検討し始めた。

「わたしはどういう名前になるのかしら?」

 期待に溢れる顔で聞いてきたモンモランシーに対しては。

「モンモンでいいんじゃないか?」

「ちょっと! それはひどいんじゃないの!?」

「冗談だって! ええっと『香水』はなんだっけかな……あ、フローラルな香りなんてよくテレビとかで聞くから『フローラル』とかどうかな?」

「てれ……なんとかはよくわからないけど『フローラル』は悪くないわね」

「ちなみに、わしの場合はどうなるのだ?」

 才人は首を捻った。たしか、こいつの二つ名って『腹黒』とか『悪魔』とか、ぶっちゃけヤバイのばっかりだったような気が。まさか『魔王』とか『閣下』って呼ぶわけにもいかないし……なら系統が安全かな。才人は地雷原を避け、無難なほうへ流れることにした。

「それなら『ウインド』かな」

「<風>の初歩魔法そのままじゃないか」

「わしはそれでもかまわぬのだが」

「まぎらわしいから却下」

「まあね、ちょっと混乱するかもしれないわね」

 これまで順調にきていたにもかかわらず、思わぬところで躓いてしまった。

「えっと……それじゃあ、閣下がいちばん気に入ってる『二つ名』って何だよ?」

「それなら決まっておる。『太公望』だ」

「ああ、そうなんだ……って、ええええええ!」

「ちょっと待って!それ『二つ名』だったの!?」

「ずっと名前だと思ってたんだけど……」

「わたしも聞いてない」

「普通に本名だと」

「ぼくもそう思っていたよ」

 大騒ぎをする生徒たちを相手に、太公望は頭を掻きながら説明した。

「召喚された時に、ちゃんと『太公望』呂望と名乗ったはずなのだが。まあ、わしはこの二つ名以外にも名前が沢山あってな。全部並べると、とんでもなく長くなってしまうので、師匠からいただいたこの二つ名を、普段から名乗りの際に使っておるのだよ」

 厳密には『二つ名』ではないのだが、意味合いは同じようなものなので、そのように説明する太公望。名前については「呂望」の他に「王奕(おうえき)」「伏義(ふっき)」さらに「羌子牙(きょうしが)」というものもあるのだが、それらについては割愛する。

「『太公望』というのはどういう意味?」

 タバサが発したその質問に、太公望は答える。

「わしが同盟軍に所属したのは、師匠の肝煎りだという話はしたと思うが」

「覚えている」

「今から10年ほど前のことだ。わしの師匠が、公国の老いた大公さまから『将来的に、軍事や政治などの面で息子を補佐できる者を紹介して欲しい』という依頼を受けたのだ。それと例の敵対派閥の件があり――白羽の矢を立てられたのが、このわしだったのだよ」

 わしの師匠と既にお亡くなりになられた大公様は、旧知の間柄だったのだ。そう説明を入れつつ、太公望は先を続ける。

「師匠の弟子の中で、わしは<術者>としての実力は中の上程度であったのだが、軍学や政治学を専門に学んでいたことと、わしと大公さまのご子息――つまり、今の国王陛下が性格的に合いそうだというのが、選ばれた理由らしい。わしはまだ師匠の元で学んでいたかったので、一度は断ったのだが……」

「ああ、それで『受けなければ破門』だと言われたのか」

「なにそれ! ほとんど強制みたいなものじゃないのよ」

 ギーシュの言葉に、モンモランシーが眉を顰める。同じくこの話を聞いていなかったルイズとレイナールのリアクションも似たようなものだ。

「でだ、結局は師匠の命令に従うことにしたわけだが……」

 太公望は、珍しく生真面目な表情で続けた。

「その際に、師匠から『今後は大公が望む通りの者となれるよう、研鑽を続けよ』という意味で『太公望』という名を与えられ、以後そう名乗るよう命じられた。これが、わしの『二つ名』の由来なのだ」

 ――この説明は、9割方が嘘である。何故、太公望がわざわざこんな偽りを述べているのかというと……例の『惚れ薬事件』の際に漏らしてしまった「国王がわしに文句を言えるはずがない」という強烈な発言を打ち消すためだ。それと『薬』でおかしくなった自分を気遣ってくれていた者たちに対するフォローも兼ねている。

「ああ、なるほどね……やっと理解できたわ」

「同じく」

「わたしも」

 そういうことならば『二つ名を常に名乗る理由』として納得できる。そして、彼が王族ではない(らしい)ことがわかった。太公望の説明により、今まで色々な意味で心臓に負担がかかっていた者たちは、少しだけ気分が楽になった。

 それにしても、と、タバサは思った。今から10年前ということは――つまり彼は、17歳で王宮に出仕するようになったということだ。わたしは今15歳だけれど……2年後は、いったいどうなっているのだろう。彼女は、珍しく自分の将来について思いを馳せた。

 そんな中。この話を聞いていて、頭の隅に引っかかりを覚えた者がいた。それはもちろん才人である。地球上の歴史に残る『軍師』とよく似た二つ名。偶然にも程があると彼は思った。と、そんな才人の思考を中断するような形で、太公望から声がかけられた。

「のう才人よ、こういう場合はどうなるのだ? そもそもわしは、職を辞した上で、身分も捨て、大陸を渡る風のように気ままな旅を続けていた『風の旅人』だ。いわば世捨て人、隠者といっても差し支えないのだが」

「あ、ああ、そうだな……悪い、ちょっと考えるから待ってくれよ」

 ある意味絶妙なタイミングで発せられた質問により、思考の淵から無理矢理釣り上げられた才人は、本来の役目であった『太公望に合いそうな暗号名』を再検討し始める。

「うーん……旅人だと『トラベラー』でなんかイマイチだし、世捨て人だとよくわかんねーし……って、隠者!? ああッ、そうだ確か……!!」

 ふいに、才人の脳内に閃いた名前。これはある意味、彼にぴったりだと思った。

「『ハーミット』とか、どうだろう? 『隠者』のことなんだけど、これには『隠れる者』以外に『助言する者』とか『迷い人を正しい道へ案内する賢者』っていう意味もあるんだ」

「彼にぴったりの名前」

「わたしもそう思うわ!」

 即座に賛成するタバサとルイズ。他の者たちも「いいんじゃない?」といった感じで、賛意を示している。言われた太公望本人はというと、

「いや、それはちと格好が良すぎるというか……」

 などと、珍しく照れたような表情をしていたりしたのだが、結局全員に押し切られてしまい。暗号名は『ハーミット』で確定してしまった。

「ところで、おぬし自身の暗号名はどうするのだ?」

「……あ!」

 これに答えたのは、キュルケであった。

「ヴァリエールの『盾』にして『剣』なんだからそこから考えてみたらいいんじゃなくて? いつも、つきっきりで守ってあげてるでしょう? サイトは」

「ちょ、ちょっと、えと、あの」

「あ、いや、ちょっと、待って」

 真っ赤になってゴニョゴニョと何かを言おうとしているふたりを「これは今後からかい甲斐がありそうだわ」と、思わぬところで、遊んだら面白そうなおもちゃを発見した子供のように、ニヤニヤ笑いを続けながら見守るキュルケ。

 結局『ナイト(盾から連想)』は騎士と混同されるといろいろと不都合なため『ソード(剣)』と、いうシンプルながらもそれっぽい名前に落ち着いた。なお、この名前にはデルフリンガーも満足した。まるで俺っちと一体化しているみたいじゃないか、相棒に相応しい……と。

 そして、彼らがどう呼び合うようになったのか。以下はその一覧表である。

 ・太公望『ミスタ・ハーミット』
 ・タバサ『ミス・スノウ』
 ・ルイズ『ミス・コメット』
 ・才人『ソード』(メイジではないため、ミスタがつかない)
 ・キュルケ『ミス・フレア』
 ・ギーシュ『ミスタ・ブロンズ』
 ・モンモランシー『ミス・フローラル』
 ・レイナール『ミスタ・ブレイズ』

 以上、彼らが任務についている際に名乗る『暗号名』だ。

 全員分の名簿をまとめ終えた太公望は、にっこりと笑って頷いた。

「ふむ、これで『冒険前』の準備はほぼ整ったな。あとは、ちょうどラグドリアン湖に来ているので、おぬしたちにあることを教えておけば完璧であろう」

「あること……と、いうのは?」

 タバサの問いに、太公望は改めて全員を見回しながら答えた。

「前に、タバサには話したことがあるのだが……ここ『ラグドリアン湖』は『霊穴』と呼ばれる<力>の溜まり場なのだ。しかも、ここは特に強い<力>が溢れている。この場所で、あることをすることによって<精神力>の最大量を増やすことができるのだよ」

 ――少しの間を置いて。

「えええええっ!」

「精神力の最大量が増やせる!?」

 タバサは大騒ぎしている仲間たちを見て、驚くのも無理はないと思った。自分も、初めてそれを知ったとき、驚愕したのだから。でも、どうして今、ここでそれを言い出したのかがわからない。彼のことだから、何か理由があるのだろうけれど。

 そんなご主人さまの思いをよそに、太公望は説明を続けていた。

「タバサには既に教えてあることなのだが、わしの国に伝わる『瞑想』という技術を使うことにより、ただ眠るよりも圧倒的に早く精神力を回復できるのだ。さらに、それを応用することによって<精神力の器>の最大量を1.5倍……修行を積めば、より多くの<力>を溜め込むことができるようになるであろう。念のため確認するが、教えてもらいたい者は手を挙げよ」

 太公望の問いに、才人とタバサを除く全員が手を挙げたのは言うまでもない。

「よしよし、おぬしたちはメイジとしての修行をきちんと積んであるから、1時間もあれば『回復』と『循環』の両方ができるようになるはずだ。ところで……ギーシュよ」

「な、なんだね?」

「おそらくだが。これを覚えることによって、おぬしは『ドット』から『ライン』へランクアップできるであろう。既に、壁を破る直前まで到達しておったからのう」

 おおーっ! と、全員から声が上がった。ギーシュは嬉しさのあまり、喜びを全身で表すかのように、その場でぴょんぴょんと飛び跳ねている。それも当然だろう、メイジにとってランクアップとは、進路の選択肢を増やすことに繋がるからだ。

 より露骨な話をしてしまうと……ランクさえ高ければ、多少身分が低くても、位の高い家へ『婿入り』できる。「魔法を以て貴族の精神となす」彼らメイジにとって、魔法の才能と実力は、身分の壁を打ち壊すほどに重視されているのだ。封建貴族の嫡男ならばまだしも、継げる領地のない四男坊のギーシュにとって、これは大変に喜ばしいことなのだ。

「ちなみに才人。おぬしもこれを覚えておくといい。『瞑想』は、精神を落ち着かせ、かつ体力の回復にも役立つことなのだ。もちろん、おぬしには基礎から教えるからな」

「もしかして<気>のコントロール、ってやつか!?」

「そうだ。よく知っておるではないか」

「……ひょっとして<気弾>が出せるようになったり、しちゃったり、して?」

「その<気弾>とやらのことはよくわからぬが……どれ、ちとやってみせようかのう」

 全員、少しの間、静かにしていてくれ。そう断りを入れた太公望は、湖のほうへ向き直って座り込むと、両手で印を結び、体内の<力>を集中させる。そして、湖面の一点へ向け気合いを発する。

「ほッ!!」

 ――と、それまで静かだった湖の水面に、いきなりに高さ数メイル程度の水柱が、まるで噴水のように勢いよく立ち昇り、その後バシャン! と音を立てて潰れた。

「……と、まあこういう<術>なのだが」

「うは! <水遁の術>!!」

「な、ななな、なに今の」

「ま、まさか先住魔法!?」

 怯える生徒たちを落ち着かせると、太公望は改めて説明を開始する。

「これは体内を巡るもうひとつの<力>、人間だけではない、全ての生物が宿す<気>というものを利用した術だ。狩りなどで、よく『気配を消す』と言うであろう? あれは、この<気>を一時的に断つことで、相手に存在を気取られぬようにしておるのだよ」

 おおーっ! と、感心の声を上げる参加者たち。タバサにも、覚えがある。なるほど……あのとき、わたしや『彼女』は、無意識にその<気>を扱って、敵の気配を探ったり、身を潜めたりしていたのか……。

「魔法と違い、こうして<印>を結ぶだけで展開可能だ。杖も、ルーンも、精霊との契約も必要ない。ただ、ハッキリ言うが、見た通りたいした威力は期待できない。おまけに習得には<気>を扱うセンスと、長い修行時間が必要である割に対費用効率が悪い。それなら、魔法を使ったほうがよいであろう? わしらの国でも、この術を覚える者はほとんどおらぬ。わしが扱えておるのは、単なる師匠の趣味だ」

 まあメイジ以外の者が、これを利用して土煙を発生させれば、逃げたりする時に便利かもしれぬが。そう補足した太公望の発言を受けた才人が「<木の葉隠れ>とか<土遁>もできるんじゃないか!? コレ」などと、ひとり興奮している。

「ちなみに、才人にこれを教えるのは、体力の回復を早めることと、敵や味方の気配に敏感になってもらうことが目的なのだ。<術>に関しては難しすぎて、そうそう簡単に習得できるものではないぞ? わしだって、数年かかってようやくあの程度なのだ」

 その言葉に、がっくりと落ち込みかけたた才人であったが、逆に、時間をかければいつかできるようになるという意味だとわかると、真面目にやってみようという気になるから不思議なものだ。

「ねえ。これって、もしかしてわたしに魔法の感覚を教えてくれたときの……?」

「その通りだルイズ。あれは、あくまで流れだけだがのう。だからあのとき『ルイズは特別な感覚を持っているから、掴める。他のメイジには意味がない』と言ったのだよ」

 やっぱり、ミスタ・タイコーボーは『ハーミット』ね。ルイズは、彼をこの地へ呼び寄せてくれたタバサと『始祖』ブリミルに、心から感謝した。

「では、さっそくやりかたを教えよう。だが、さっきも言った通り、タバサには既に教えてある内容なのだ。よって、タバサは少し休憩していてくれ」

 太公望はそう告げて、タバサを除く全員に水際まで移動するよう伝える。生徒たちが揃って水辺付近へ向かうのを確認した後、タバサへ向けて小声で囁いた。

「タバサ。<遍在(ユビキタス)>は何体まで出せる?」

「まだ2体」

「よし。よいか? <遍在>2体を彼らに見られないように出し、その<遍在>と自分自身の内に『瞑想』によって<力>を蓄えるのだ。そして絶対誰にも気取られぬよう、付近の森に待機させておけ」

「つまり、これは」

「そうだ、例の件が動き始めている。だからこそキュルケにここへ来るよう誘導してもらったのだ。決行は明日の夜。心のほうは落ち着いているか?」

「みんなのおかげ。だいぶ、落ち着いた」

「よし。ここでの『瞑想』は、魔法学院で行うよりも遙かに効果が高い。<遍在>2体と自分の中に<力>を蓄えておくことで、このあと動きやすくなる」

「わかった」

「では、わしは向こうの者たちに教えてくる。おぬしは」

「瞑想しながら、待っている」

 ――頷き合ったふたりは、それぞれの準備をすべく立ち上がった。


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