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No.33886の一覧
[0] 【ゼロ魔×封神演義】雪風と風の旅人[サイ・ナミカタ](2018/06/17 01:43)
[1] 【召喚事故、発生】~プロローグ~ 風の旅人、雪風と出会う事[サイ・ナミカタ](2013/06/13 02:00)
[2] 【歴史の分岐点】第1話 雪風、使い魔を得るの事[サイ・ナミカタ](2012/09/30 14:52)
[3]    第2話 軍師、新たなる伝説と邂逅す[サイ・ナミカタ](2014/06/30 22:50)
[4]    第3話 軍師、異界の修行を見るの事[サイ・ナミカタ](2014/07/01 00:53)
[5]    第4話 動き出す歴史[サイ・ナミカタ](2014/07/01 00:54)
[6]    第5話 軍師、零と伝説に策を授けるの事[サイ・ナミカタ](2012/09/30 14:55)
[7] 【つかの間の平和】第6話 軍師の平和な学院生活[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:00)
[8]    第7話 伝説、嵐を巻き起こすの事[サイ・ナミカタ](2012/09/30 14:57)
[9] 【始まりの終わり】第8話 土くれ、学舎にて強襲す[サイ・ナミカタ](2012/09/30 14:58)
[10]    第9話 軍師、座して機を待つの事[サイ・ナミカタ](2012/07/15 21:07)
[11]    第10話 伝説と零、己の一端を知るの事[サイ・ナミカタ](2012/09/30 14:59)
[12]    第11話 黒幕達、地下と地上にて暗躍す[サイ・ナミカタ](2012/07/15 21:09)
[13] 【風の分岐】第12話 雪風は霧中を征き、軍師は炎を視る[サイ・ナミカタ](2012/07/15 21:09)
[14]    第13話 軍師、北花壇の主と相対す[サイ・ナミカタ](2012/09/30 15:03)
[15]    第14話 老戦士に幕は降り[サイ・ナミカタ](2013/03/24 19:47)
[16] 【導なき道より来たる者】第15話 閉じられた輪、その中で[サイ・ナミカタ](2012/09/30 15:05)
[17]    第16話 軍師、異界の始祖に誓う事[サイ・ナミカタ](2012/07/15 21:13)
[18]    第17話 巡る糸と、廻る光[サイ・ナミカタ](2012/07/15 21:13)
[19]    第18話 偶然と事故、その先で生まれし風[サイ・ナミカタ](2012/08/07 22:08)
[20] 【交わりし道が生んだ奇跡】第19話 伝説、新たな名を授かるの事[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:13)
[21]    第20話 最高 対 最強[サイ・ナミカタ](2012/09/30 15:06)
[22]    第21話 雪風、軍師へと挑むの事[サイ・ナミカタ](2012/09/30 15:07)
[23] 【宮中孤軍】第22話 鏡の国の姫君と掛け違いし者たち[サイ・ナミカタ](2012/08/02 23:25)
[24]    第23話 女王たるべき者への目覚め[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:16)
[25]    第24話 六芒星の風の顕現、そして伝説へ[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:17)
[26]    第25話 放置による代償、その果てに[サイ・ナミカタ](2012/10/06 15:34)
[27] 【過去視による弁済法】第26話 雪風、始まりの夢を見るの事[サイ・ナミカタ](2012/08/04 00:44)
[28]    第27話 雪風、幻夢の中に探すの事[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:18)
[29] 【継がれし血脈の絆】第28話 風と炎の前夜祭[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:19)
[30]    第29話 勇者と魔王の誕生祭[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:20)
[31]    第30話 研究者たちの晩餐会[サイ・ナミカタ](2012/08/12 20:20)
[32]    第31話 参加者たちの後夜祭[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:00)
[33] 【水精霊への誓い】第32話 仲間達、水精霊として集うの事[サイ・ナミカタ](2012/08/14 21:33)
[34]    第33話 伝説、剣を掲げ誓うの事[サイ・ナミカタ](2012/08/18 00:02)
[35]    第34話 水精霊団、暗号名を検討するの事[サイ・ナミカタ](2012/08/18 00:03)
[36] 【狂王、世界盤を造る】第35話 交差する歴史の大いなる胎動[サイ・ナミカタ](2012/08/18 00:05)
[37]    第36話 軍師と雪風、鎖にて囚われるの事[サイ・ナミカタ](2012/11/04 22:01)
[38] 【最初の冒険】第37話 団長は葛藤し、軍師は教導す[サイ・ナミカタ](2012/08/19 11:29)
[39]    第38話 水精霊団、廃村にて奮闘するの事[サイ・ナミカタ](2012/10/08 19:31)
[40]    第39話 雪風と軍師と時をかける妖精[サイ・ナミカタ](2013/04/20 22:17)
[41] 【現在重なる過去】第40話 伝説、大空のサムライに誓う事[サイ・ナミカタ](2013/04/20 22:18)
[42]    第41話 軍師、はじまりを語るの事[サイ・ナミカタ](2012/08/25 22:04)
[43]    第42話 最初の五人、夢に集いて語るの事[サイ・ナミカタ](2012/10/08 19:38)
[44]    第43話 微熱は取り纏め、炎蛇は分析す[サイ・ナミカタ](2014/06/29 14:41)
[45]    第44話 伝説、大空を飛ぶの事[サイ・ナミカタ](2012/10/08 19:43)
[46] 【限界大戦】第45話 輪の内に集いし者たち[サイ・ナミカタ](2012/10/08 19:47)
[47]    第46話 祝賀と再会と狂乱の宴[サイ・ナミカタ](2012/10/08 19:47)
[48]    第47話 炎の勇者と閃光が巻き起こす風[サイ・ナミカタ](2012/09/12 01:23)
[49]    第48話 ふたつの風と越えるべき壁[サイ・ナミカタ](2012/09/16 22:04)
[50]    第49話 烈風と軍師の邂逅、その序曲[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:00)
[51] 【伝説と神話の戦い】第50話 軍師 対 烈風 -INTO THE TORNADO-[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:01)
[52]    第51話 軍師 対 烈風 -INTERMISSION-[サイ・ナミカタ](2012/10/08 19:54)
[53]    第52話 軍師 対 烈風 -BATTLE OVER-[サイ・ナミカタ](2012/09/22 22:20)
[54]    第53話 歴史の重圧 -REVOLUTION START-[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:01)
[55] 【それぞれの選択】第54話 学者達、新たな道を見出すの事[サイ・ナミカタ](2012/10/08 20:01)
[56]    第55話 時の流れの中を歩む者たち[サイ・ナミカタ](2012/10/08 20:04)
[57]    第56話 雪風と人形、夢幻の中で邂逅するの事[サイ・ナミカタ](2012/10/28 13:29)
[58]    第57話 雪風、物語の外に見出すの事[サイ・ナミカタ](2017/10/08 07:40)
[59]    第58話 雪風、古き道を知り立ちすくむ事[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:02)
[60] 【指輪易姓革命START】第59話 理解不理解、盤上の世界[サイ・ナミカタ](2012/10/20 02:37)
[61]    第60話 成り終えし者と始まる者[サイ・ナミカタ](2012/10/20 00:08)
[62]    第61話 新たな伝説枢軸の始まり[サイ・ナミカタ](2012/10/20 13:54)
[63]    第62話 空の王権の滑落と水の王権の継承[サイ・ナミカタ](2012/10/25 23:26)
[64] 【新たなる風の予兆】第63話 軍師、未来を見据え動くの事[サイ・ナミカタ](2012/10/28 21:05)
[65]    第64話 若人の悩みと先達の思惑[サイ・ナミカタ](2012/10/28 20:01)
[66]    第65話 雪風と軍師と騎士団長[サイ・ナミカタ](2012/10/28 20:58)
[67]    第66話 古兵と鏡姫と暗殺者[サイ・ナミカタ](2013/03/24 20:00)
[68]    第67話 策謀家、過去を顧みて鎮めるの事[サイ・ナミカタ](2012/11/18 12:08)
[69] 【火炎と大地の狂想曲】第68話 微熱、燃え上がる炎を纏うの事[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:02)
[70]    第69話 雪風、その資質を示すの事[サイ・ナミカタ](2013/01/26 21:14)
[71]    第70話 軍師は外へと誘い、雪風は内へ誓う事[サイ・ナミカタ](2013/01/26 21:10)
[72]    第71話 女史、輪の内に思いを馳せるの事[サイ・ナミカタ](2013/01/26 21:11)
[73] 【異界に立てられし道標】第72話 灰を被るは激流、泥埋もれしは鳥の骨[サイ・ナミカタ](2013/01/27 23:01)
[74]    第73話 険しき旅路と、その先に在る光[サイ・ナミカタ](2013/01/27 23:01)
[75]    第74話 水精霊団、竜に乗り南征するの事[サイ・ナミカタ](2013/02/17 23:48)
[76]    第75話 教師たち、空の星を見て思う事[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:03)
[77] 【今此所に在る理由】第76話 伝説と零、月明かりの下で惑う事[サイ・ナミカタ](2013/04/13 23:29)
[78]    第77話 水精霊団、黒船と邂逅するの事[サイ・ナミカタ](2013/03/17 20:06)
[79]    第78話 軍師と王子と大陸に吹く風[サイ・ナミカタ](2013/03/13 00:53)
[80]    第79話 王子と伝説と仕掛けられた罠[サイ・ナミカタ](2013/03/23 20:15)
[81]    第80話 其処に顕在せし罪と罰[サイ・ナミカタ](2013/03/24 19:49)
[82] 【それぞれの現在・過去・未来】第81話 帰還、ひとつの終わりと新たなる始まり[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:03)
[83]    第82話 眠りし炎、新たな道を切り開くの事[サイ・ナミカタ](2013/04/20 22:19)
[84]    第83話 偉大なる魔道士、異界の技に触れるの事[サイ・ナミカタ](2013/06/13 01:55)
[85]    第84話 伝説、交差せし扉を開くの事[サイ・ナミカタ](2013/06/13 01:54)
[86]    第85話 そして伝説は始まった(改)[サイ・ナミカタ](2018/06/17 01:42)
[87] 【風吹く夜に、水の誓いを】第86話 伝説、星の海で叫ぶの事[サイ・ナミカタ](2013/06/13 02:12)
[88]    第87話 避けえぬ戦争の烽火[サイ・ナミカタ](2013/06/13 01:58)
[89]    第88話 白百合の開花と背負うべき者の覚悟[サイ・ナミカタ](2013/07/07 20:59)
[90]    第89話 ユグドラシル戦役 ―イントロダクション―[サイ・ナミカタ](2013/09/22 01:01)
[91]    第90話 ユグドラシル戦役 ―閃光・爆音・そして―[サイ・ナミカタ](2014/03/08 00:04)
[92]    第91話 ユグドラシル戦役 ―終結―[サイ・ナミカタ](2014/05/11 23:56)
[93] 【ガリア王家の家庭の事情】第92話 雪風、潮風により導かれるの事[サイ・ナミカタ](2014/03/08 20:19)
[94]    第93話 鏡の国の姫君、踊る人形を欲するの事[サイ・ナミカタ](2014/06/13 23:44)
[95]    第94話 賭博場の攻防 ―神経衰弱―[サイ・ナミカタ](2014/07/01 09:39)
[96]    第95話 鏡姫、闇の中へ続く道を見出すの事[サイ・ナミカタ](2015/07/12 23:00)
[97]    第96話 嵐と共に……[サイ・ナミカタ](2015/07/20 23:54)
[98]    第97話 交差する杖に垂れし毒 - BRAIN CONTROL -[サイ・ナミカタ](2016/09/25 21:09)
[99]    第98話 虚無の証明 - BLACK BOX -[サイ・ナミカタ](2017/10/08 07:42)
[100] 【王女の選択】第99話 伝説、不死鳥と共に起つの事[サイ・ナミカタ](2017/01/08 02:09)
[101]    第100話 鏡と氷のゼルプスト[サイ・ナミカタ](2017/01/08 02:14)
[102]    第101話 最初の人[サイ・ナミカタ](2017/01/08 17:42)
[103]    第102話 始祖と雪風と鏡姫[サイ・ナミカタ](2017/01/22 23:14)
[104]    第103話 六千年の妄執-悪魔の因子-[サイ・ナミカタ](2017/02/16 23:00)
[105] 【王政府攻略】第104話 王族たちの憂鬱[サイ・ナミカタ](2017/03/06 22:52)
[106]    第105話 王女たちの懊悩[サイ・ナミカタ](2017/03/28 23:10)
[107]    第106話 聖職者たちの明暗[サイ・ナミカタ](2017/05/20 17:54)
[108] 【追憶の夢迷宮】第107話 伝説と零、異郷の地に惑うの事[サイ・ナミカタ](2017/10/08 07:46)
[109]    第108話 風の妖精と始まりの魔法使い[サイ・ナミカタ](2017/10/08 07:47)
[110]    第109話 始祖と零と約束の大地[サイ・ナミカタ](2017/06/09 00:54)
[111]    第110話 崩れ去る虚飾、進み始めた時代[サイ・ナミカタ](2017/10/28 06:35)
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[33886]    第16話 軍師、異界の始祖に誓う事
Name: サイ・ナミカタ◆e661ea84 ID:d8504b8d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/07/15 21:13
「わしは夕飯食って風呂入ったらすぐに寝るぞ」

「同じく」

 ハルケギニアの常識では考えられないほどの強行軍で、トリステイン魔法学院へと戻ってきたタバサと太公望のふたりは、一旦部屋に戻って上着だけを替えると、その足でアルヴィーズの食堂へと向かった。

 『約束』を守るためとはいえ、さすがに無理をしすぎた。今日のところはもう何も考えず、ゆっくりしたい……そんな思いでいっぱいだった太公望の期待を最初に裏切ったのは、食堂の入り口に立った瞬間に飛んできた、少女の金切り声だった。

「あ、あ、あんた、い、い、今までどこ行ってたのよーっ!!」

 ――それは、約束の相手。ルイズによる魂の叫び声。

「まあ落ち着け、ルイズ」

「お、お、落ち着けるわけ、な、な、ないでしょう!?」

 わたしがどれだけ気をもんでいたか――そう口にしようとしたルイズを制し、太公望は喉の奥から心底疲れ切った声を絞り出す。

「例の件であろう? ちゃんと覚えておったから、こうして急いで帰ってきたのだ。約束は守る、だから今日のところは静かに休ませてはくれんかのう」

 そう言われてよくよく太公望の姿を見たルイズは、彼が羽織っているローブと一体化したようなマント以外が微妙に薄汚れており、さらにその顔には深い疲れの色が刻まれていることに気がついた。そして、それは傍らに立つタバサにも当てはまっている。

 タバサに関係することで、何か急な用事でもあったのか。にも関わらず、ちゃんと約束を覚えていてくれた。そんな相手に、これ以上何かを言うのは、貴族の子女としてあるまじき態度だろう。

 一言謝罪の言葉を述べたルイズは、その後――周囲の注目を集めてしまったことにようやく気がつくと、顔を真っ赤にしたまま着席する。

 その後、早々に席についたタバサの元には、キュルケが近寄ってきた。

「あなた、その格好はどうしたのよ? ずいぶん疲れてるみたいだから、今日のところは何も聞かないけど……たくさん食べて、早くお休みなさいな」

 そう言って、自分の料理の一部――タバサの大好物であるハシバミ草のサラダと、鳥のあぶり焼きを、青髪の少女の前へと押しやる。

「ありがとう」

「いいのよ。そのかわり、落ち着いたらいろいろ聞かせてもらうから」

 そう言ってウィンクしたキュルケの心遣いに、タバサは心から感謝した。

 ――そして夕食が済み。食堂から出ようとしたふたり……正確には、太公望に声をかけてきた者がいた。コルベールであった。

「ミスタ・タイコーボー。お疲れのところ大変に申し訳ない! ですが、取り急ぎお話をしなければならないことがありまして……その、学院長を交えて」

「それは何名で、かのう?」

 太公望はまずコルベールを見、次いでタバサに目をやった後……再び視線を目の前に立つ男に戻す。

「ミス・タバサには申し訳ないのですが、3人で」

「……わかった。タバサ、先に戻っていてくれ。もしやすると遅くなるやもしれぬから、そのときは窓だけ開けておいてくれればよい」

 コクリと頷いたタバサは、側にいたキュルケと共に寮塔へ続く廊下へと歩き出す。その後ろ姿を見送った太公望は、ふっとため息をつくと、コルベールに向き直った。

「では、参りますかのう。学院長室へ」

 くだらない用事だったら、ただじゃおかんぞあの狸ジジイ。と、いう内心の声を必死で抑えながら。

 ――その後、学院長室で聞いた話は……確かに急いで耳にいれておくべき内容だった。ただし、善悪に関係するようなものではなく、明日の『約束』に関連した、非常に有益な情報だったからだ。

 一時間ほどそれらについて学院長たちと話し合った太公望は、ようやく念願の入浴を果たすべく、まずはタバサの部屋に戻ろうとした。だが、今度は扉の前で才人が待ちかまえていた。

「さっき帰ってきたって聞いてさ! なあなあ、例の武器の件だけど……」

 興奮してまくし立てる才人をとりあえず落ち着かせると、さっき食堂でルイズにしたのとほぼ同様の説明を行い、休み明けの昼に改めて聞かせてもらうから今日はもう……と、自室へ帰らせた。

 それから30分後。これでようやく休める――そう呟きながら、軽い入浴を済ませて部屋に戻ってきた途端、窓から飛び込んできた茶色い羽根の伝書フクロウ――おそらくフーケが寄越したものであろうそれを見た太公望は、この世界に来てはじめて、本気でハルケギニアの『始祖』とやらを呪い、そして誓った。

 もしも顔を合わせることがあったなら……『打神鞭』の最大出力でもって、次元の彼方へ吹き飛ばしてくれるわ――と。


○●○●○●○●

 ――明けた翌日、虚無の曜日。

 学院から馬で15分ほどの距離にある、周囲を背の高い木立に囲まれた平原。その中央に、彼らは集っていた。

 この場にいるのは、太公望をはじめとしたタバサ、ルイズ、才人、ギーシュ、キュルケという、例の模擬戦騒ぎの一件で、ルイズの『約束』を知る者たち。そして、コルベールと学院長のオスマン氏。

 オスマン氏が<錬金>で作った簡素な教壇風の台座を前に、太公望とオスマン学院長、そしてコルベールが立ち――その向かい側、1メイルほど距離をあけた位置に、これまた魔法によって作られたベンチが並んでいる。そこに生徒たちが座る姿は、端から見ても、特別な課外授業といって差し支えないものであった。

 教壇から『生徒』たちを見渡した太公望は、教鞭のように『打神鞭』を――もしも先端に『太極図』がついていなければ、まさに教鞭そのものな形をしているのだが――振るいながら、説明を開始した。

「さて、ここに集まった者たちは、わしがこれからルイズが魔法を<爆発>させてしまう件について、独自の技術的観点から調査を行うことを知っておる。それを前提として話を進めていくわけだが、その前に……」

 太公望は、横に立つコルベールに弁を向ける。

「昨夜、こちらのコルベール殿から、大変に興味深い話を伺ったのだ。これは、ルイズの魔法だけでなく、それ以外の者たちにとっても非常に有益、かつ画期的なものであったため、学院長殿の立ち会いの下、特別に公開してもらいたいと思い、同席を依頼した」

 そう言って演壇を降りた太公望。学院長がわざわざ立ち会うようなレベルの話を、他の生徒を差し置いて優先的に聞ける。期待に胸を膨らませるメイジ達の前に、コルベールが立った。

「ミス・ヴァリエールとミス・タバサ、そしてサイト君については、すでに聞いている内容となってしまいますが、まずはそこから話をしないと、何故この発見に繋がったのかがわかりませんので、簡単にですが説明させてもらいますぞ」

 と、前置きしたコルベールは、以前太公望が行ったように<サモン・サーヴァント>が、いかにとんでもない魔法であるのかについて説明した――もちろん、異世界云々の話は除いて、だが。

 汎用(コモン)とされている魔法が、実は『無意識に空間を接続する』という、とてつもない<精神力容量>と、広大な空間を把握するための『感覚』を必要とする技術であったこと。その話を聞いたコルベールが、日頃簡単に扱っている<コモン・マジック>というものについて改めて着目したこと。そして――。

「私は、ついにその記述を見つけたのです。3000年前の魔法書から。そして知ったのです。なんと当時、コモン・マジックは……<念力>と<サモン・サーヴァント><コントラクト・サーヴァント>の3つしか存在しなかったことを!!」

 ――一瞬の間を置いた後。

「ええええええぇぇぇぇええええええ―――っ!!!」

 平原に、驚愕の大合唱が響き渡った。

「ど、どういうことなんですかっ」

「<光源(ライト)>とか、後からできた魔法なんですか!?」

「昔は手で<施錠(ロック)>していたんですの!? ヴァリエールみたいに」

「一言余計なのよあんたはっ!」

 はいはいはい! と、手を挙げながら、指される前に我先にと質問する――一部例外はあったものの――生徒達を前に、してやったりといわんばかりの笑みを浮かべたコルベール。太公望とオスマンも実に満足げである。

「皆さんの疑問は当然だと思いますぞ。私も、そう考えました。そこで、次は今現在コモンとされている魔法が、かつて存在したのかどうかを確認するため、改めてその魔法書を紐解いてみたのです」

 ゴホン。と、咳払いをしてコルベールは先を続ける。

「結論から言うと、今あるコモン・マジックは、全て<系統魔法>の初歩の初歩の初歩として扱われていました。たとえば<光源>。これは<火>の系統魔法のページに記されており……<ロック><アンロック>は<土>に属する魔法というように」

 驚きのあまり声も出ない生徒を尻目に、コルベールの演説は続く。

 曰く『流れ』を探知・分析する<魔法探知(ディテクト・マジック)>は<水>に属すること。

 曰く<固定化>の魔法と同様、土系統の『スクウェア』メイジが強固に施した<ロック>を<アンロック>で解除するのが、別系統のメイジにとっては非常に難しいことを例に挙げ、また、さらに古い魔法書でも同様の扱いがなされていたことから、これはほぼ間違いのない事実。歴史的な大発見である……と。なお、

「<風>の初歩の初歩の初歩とされる魔法は存在しないのですか?」

 と、いうタバサの質問には、

「<ウインド>がそれに相当するらしい……のですが、書物によってはそれが<レビテーション>だったり<魔法の矢>であったりと実に曖昧でして。残念ながら、確定までには至りませんでした」

 と、答えた。

「と、いうことでしてな。昨日、これをミスタ・タイコーボーにお話ししたところ、ミス・ヴァリエールが練習する魔法を、まずはコモンの基礎である<念力>に絞るべき、という意見で一致しました。また、この発表は学院長立ち会いのもとで行うべきとのことで、今日このような機会を持たせていただいたわけです」

 発表内容を締め、演壇から降りたコルベールに、集まった生徒達は惜しみない拍手を送る。照れたように頭を掻くコルベールに、オスマン氏が笑みを浮かべながら右手を差し出した。その意味に気がついたコルベールは、嬉しさを隠しきれないように、その手を強く握り返した。

 場が落ち着いたところで、再び太公望が教壇の前に立つ。

「では、基本的な方針が決まったところで、いよいよ実験に入りたいと思う。一旦全員こちらへ来てくれぬか? ……オスマン殿」

 全員が立ち上がって教壇の側へ近づいてきたのを確認すると、太公望はオスマン氏へ向き直って頷く。すると、先程まであったベンチが全て消え去った。

「オスマン殿に立ち会いをお願いしているのは、実はもうひとつ理由があるのだ。これからわしがしようとしていることは、ハルケギニアでは『異端』すれすれである可能性があると聞いてしまってのう」

 『異端』という言葉を聞いて、タバサと才人を除く全員がビクリと身体を震わせた。

 ハルケギニアに住む人間たちの間では、かつてこの世界に魔法をもたらしたとされる『始祖』ブリミルが『唯一神』として広く崇められ、人々の信仰を集めている。女神や巨神などの伝承も存在するが、それらはお伽噺として語り継がれているに過ぎない。

 実質無宗教に近い日本で育った才人にはいまいち理解できないことなのであるが、この『ブリミル教』と呼ばれる一神教の世界ハルケギニアにおいて、その教えから外れる行為、つまり『異端』認定されるのは、重大な『罪』であると考えられているのだ。

 それに関しては、一神教の概念どころか神話そのものからやって来た太公望にとっても同様なのであるが、ハルケギニアの歴史を学ぶ過程で、

「そういう考え方があるのか」

 というレベルで理解していた彼は、魔法とは必ず『杖』と『魔法語』を組み合わせて用いるものであり、それ以外は『異端』とされ、最悪の場合、迫害されることを知り得た結果、何らかの<力>を行使する際には必ず『打神鞭』を取り出していたし、また、魔法らしく見せかけるためわざわざルーンを覚えることまでしてのけている。

 タバサについては、幼い頃から過酷な運命を強いられ続けてきたせいで、ブリミル教に対する信仰心が非常に薄く、神の存在自体についても否定的だ。もっとも、聡い彼女はそれを表立って表明するようなことはないが。

「そういうわけで、学院長の『異端ではない』という承認があれば、理屈をつけて通せる。うっかり口を滑らせた者については……」

 ――どうなるかわかるよな? そう言いたげな顔で全員を見る太公望。

「有用性については、学院長としてこのわしが保障する。わしらは昨日のうちに実際に見せてもらっているのじゃが、これを利用すれば、君たちのメイジとしてのランクアップがほぼ間違いなく望める。それだけの価値があるものと判断した」

 最初の言葉で及び腰になりかけていた者も、そうでない者も――オスマンの言葉を聞いて表情を変えた。メイジとしてランクアップできる……つまり『ドット』なら『ライン』に、『トライアングル』なら『スクウェア』への近道が示されるということだ。

「才人よ、さっきから自分には関係ないといったような顔をしておるが、これはおぬしにとっても役に立つことだからな。しっかり見て、覚えておくのだ」

「え、俺は魔法使えないのに……って、もしかして!」

 期待に顔を輝かせた才人であったが、

「残念ながらおぬしが『魔法を使える』ようになるわけではない。その逆で『使えない』からこそ、見て知っておく必要があるのだよ」

 その言葉で、奈落へ叩き落とされかけた。だが、それでも見て知っておけとは、いったいどういうことだろう? 持ち前の好奇心のおかげで、才人はすぐに復活を果たす。

「それでは、始めるとしようかのう」

 そう言って太公望は、懐からコインが詰まった革袋を取り出す。その中から1枚の銅貨をつまみ取ると、台座の中央に置いた。

「それ、わしの銅貨なんじゃからな。あんまり消費せんでくれよ」

 哀願するオスマンに。

「ダァホ。学院長ともあろうものがケチくさいこと抜かすでないわ! それに、その言葉はわしではなくルイズに言ってくれ」

 やっぱり失敗前提にされてるー! ウガー!! と、興奮するルイズをなだめつつ、太公望は全員に台座から数メイル横へ移動するように指示すると、自分はそこから見て90度――台座を時計の中心と見立て、その針の位置でいう6時の位置にルイズたち、3時の場所に太公望が行ったと考えていただきたい――の場所へ移動すると、半跏趺坐(はんかふざ)の形で地面に座り込む。

 そして『打神鞭』を構えたまま、声を出す。

「ギーシュ。まずはおぬしから始めるぞ。実験については聞いておるな?」

「ああ、聞いているよ。だから今週はできるだけ<精神力>を温存しておいたのさ」

「気が利くのう! 実に助かる。よいか、これは必ずおぬしの役に立つものとなる。よって、しっかりと『感覚』を掴むのだぞ!」

 ギーシュの細やかな気遣いに、こやつは思わぬ拾いものだったかのう? と、内心の評価を上げた太公望は、全員に聞こえるように注意点を述べる。

「さて……今からわしが行う『あること』によって、おぬしたち全員が一時的に、これまで『見えなかった』ものが『視える』ようになる。だが、これはわし自身も相当な集中力を必要とする<技術>なので、静かに見守ってもらいたい。うっかり声を出しそうな者は、前もって手なりなんなりで口を塞いでおいてほしい。特に、才人に背負われた剣」

「へへ……わかったぜ」

 カチカチと鍔を鳴らすデルフリンガー。そして全員がそれぞれ納得したと見て取ると、太公望は精神を集中する。

 と……太公望を中心に、ぴん――と、空気が張り詰める。そして『それ』は、輪のように広がっていった。

「ではギーシュよ……一歩前へ出るのだ」

 言われた通り、ギーシュは黙って台座の方向へ一歩進んだ。

「わしが『始め』と言ったら<念力>で、台座の上の銅貨を1メイルほど上まで持ち上げるのだ。キーワードは自由だ。ただし、できるだけゆっくりと唱えてもらいたい」

 黙ったまま頷くギーシュを見て、同じように頷き返した太公望。そして。

「始め!」

 その言葉と共に、ギーシュは<念力>をできるだけゆっくりと紡ぎ始める。すると……彼の周囲に、うっすらと光の靄(もや)のようなものが立ち上がる。それを驚きの目で見守る観客たち。

 その靄は薔薇の『杖』の先に集まり、まるで一本の糸のようにすっ……と、銅貨目指して伸びてゆく。そしてそれは魔法の完成と同時に銅貨に到達すると、その周囲をまるで繭(まゆ)のように包み込んだ。

 ふわりと宙に浮かぶ銅貨。だが――傍目には、それはまるで『杖』の先から出た一本の<糸>によって、支えられているようであった。

「よし。そのまま、今度は50サントほどゆっくりと下へ降ろしてみてくれぬか」

 言われた通りにギーシュは<念力>を続ける。と、<糸>が繋がったそのままに、銅貨がゆるゆると降りてゆく。上下の動きを何度か繰り返した後、太公望はギーシュに銅貨を台座へ戻し、魔法を止めるように伝える。

 ギーシュが<念力>を使い終えると同時に<糸>は霧散するように消えた。

「うむ、では次に……」

 太公望がさらなる指示を出そうとした、だがその前に。

「ちょっと、何なの今の!」

「なにかがぼくの身体から伸びて」

「おおー、魔法ってあんなふうに<力>が出てるんだ」

「おでれーた!」

「あたしも! あたしにもやらせて!!」

「わたしも興味ある」

「だーっ! だから黙ってろと言うとっただろうがっ!!」

 ――大声を上げながら駆け寄ってきた彼らの為に、作業は中断を余儀なくされた。

「ようは、おぬしらの<力>を『感覚』で捉えることができるような<フィールド>を周囲に作り出していたのだ。目に見えるように思えたであろうが、実際にはそうではなく『感覚』がそのように受け止めておっただけのこと」

 また張り直さなければならん、まったく面倒な……そう、グチグチと文句を垂れながら太公望は説明する。どういう理屈でああなるんだ、との問いには、これは自分たちの国の特殊技術の結晶で、それらを基礎から全て学ばねば実現できない。そもそもすぐに教えて理解できるような内容では絶対にない! と答えていた。

「まあよい。タバサとキュルケについても、ルイズと比較するために同じことを試してみよう。ただし、今度同じことをやらかしおったら、わしは帰るからな」

「お願いだから、それだけはやめて!」

 珍しく半泣きで懇願するルイズに、タバサと才人、そしてイジリ大好きなキュルケも、名指しで注意されていたにも関わらずうっかり声を出してしまったデルフリンガーもさすがに悪いと思ったのだろう、きちんと謝罪する。

 ……そして、実験は再開された。

 キュルケ、タバサの順に行われたその結果。キュルケについては、ギーシュの3倍ほど厚い靄が身体の周囲に立ちのぼり、杖の先から出たのは<糸>ではなく『荒縄』と形容すべきものであった。

 タバサについては、キュルケよりもさらに大きい――ギーシュの5倍程度の量の靄と、<糸>ではなく『紐』……ちょうどギーシュとキュルケの中間程度の太さのそれが確認された。

 今度は自らフィールドを解いた太公望が、全員に向けて解説を始める。

「この結果わかったのは」

「あたしの実力がスゴイってことよね」

 得意げに髪を掻き上げたキュルケであったが。

「この中で、ギーシュが最も巧みに<力>を扱えているということだ」

 太公望の言葉に、彼女はええーっ! と、不満の声を上げた。

「どうしてなの? どう見てもあたしがいちばん力強かったじゃないの!」

 キュルケの意見に異を唱えたのは、オスマン氏であった。

「皆全く同じことをしているのに、君の<力>がいちばん強かった。つまり、それだけ<精神力>の使い方に無駄があるということじゃ。これで間違いないかの?」

 オスマンの言葉に、太公望が頷く。

「そういうことだ。キュルケよ、おぬしより上の<精神力量>があると思われるタバサの<糸>が細かったことから考えても、それは一目瞭然。つまりだ、<力>のコントロールという意味において、3人のうち最もセンスがあるのは、現時点ではギーシュということになる」

 自分よりも圧倒的に<力>が上であると思っていたふたりよりもセンスがある。そう言われたギーシュは、まさに天にも昇る心地であった。逆にキュルケはがっくりと肩を落とす。そんな彼らに、太公望は苦笑しつつ声をかける。

「もともとギーシュは、ゴーレムの複数操作などというとんでもない技能を持っておったからのう。これについては別の機会に説明するが……キュルケ、それにタバサ。逆に考えるのだ。コントロールさえ身につければ、今よりもさらに手数が増やせるということなのだから、落ち込む必要などないのだと」

 ――言われてみればその通り。異端すれすれと言われたこれは、確かにランクアップへの近道だ。それを悟ったキュルケとタバサは、思わずぎゅっと拳を握り締めた。

「さて、それではいよいよ本番……ルイズ、おぬしの<力>を見せてみるのだ」

 頷くルイズ。だが、その手が僅かに震えているのを見て取った太公望は、彼女にまず深呼吸をさせて落ち着かせる。

「緊張するな……と、言われても、正直まあ難しいであろう。よいか、ルイズ。いつも通りにやればよいのだ。失敗してはいけない、などと余計なことは考えるな。ただ、思ったままに魔法を使うのだ。いつもと同じようにやる、それだけを心がけるのだぞ」

 そして、ふたりはそれぞれの位置についた。

「では……始め!」

 そして、ルイズは<精神力>を集中しはじめた……のだが。

 ――でかい。太公望の顔が引きつった。正直、内心の動揺を隠すだけで精一杯であった。これは……崑崙の幹部クラス――いや、最高幹部『崑崙12仙』並だと……!?

 ルイズから立ち上った『それ』は……例えるならば1本の大樹。先程試した3人のそれとは比べようもないほどに強大なもの。昨日見たコルベール、そしてオスマンですら比較にならないレベルの<力>。

 太公望は、内心で頭を抱えてしまった。前に見たときは、そこまで注意を払っていなかったとはいえ……これほどの<力>を感知しきれなかったとは、我ながら寝ぼけていたのではあるまいかと。

 あえて言い訳をするならば、そもそもの<力>の根幹が<精神力>と<生命力>で異なっていたためだという理由がつけられるかもしれないが、それにしても――。

 いっぽう太公望以外の面々はというと、こちらは驚愕のあまり声が出ない状況であった。だが……オスマンとコルベール、そしてタバサの3人は、そんな中あることに気がついた。もちろん太公望も。

 ――ルイズの杖から<糸>が出ていない。その代わり、銅貨のある位置に<光の玉>と形容すべきモノが出現している。

 その光は、魔法が紡がれるたびに大きくなってゆき――そして、終了間際、いっきに収縮を始めた。太公望の顔色が変わる。

「そ、総員待避―――ッ!!!!!!!」

 一斉に逃げ出す関係者。そして。

 ドッゴオォォォォォォォォォオ……ン。

 轟音とともに、銅貨であったものは砕け散った――。


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