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No.33468の一覧
[0] 【習作】 我が魔導を、鉄槌の騎士にささぐ。 【リリカルなのは】[はじっこ](2012/08/05 10:55)
[1] 【1】太郎「タイトルからして、作者はおそらく厨二だ。」[はじっこ](2012/08/04 22:45)
[2] 【2】太郎「甘いお茶には気をつけろ。」[はじっこ](2012/08/05 10:46)
[3] 【3】太郎「魔法戦闘?ムリ、ゼッタイ。」[はじっこ](2012/08/04 22:44)
[4] 【4】太郎「こちら古代遺物管理部遺失物保管室管財課」[はじっこ](2012/07/08 15:41)
[5] 【5】太郎「こちら古代遺物管理部遺失物保管室管財課」その2[はじっこ](2012/07/15 10:53)
[6] 【6】フェイト「休日の悩み相談」[はじっこ](2012/08/05 10:54)
[7] 【7】ヴィータ「私の罪」[はじっこ](2012/08/18 18:49)
[8] 【8】ヴィータ「私の罪」その2[はじっこ](2012/09/15 16:14)
[9] 【9】ヴィータ「私の罪」その3[はじっこ](2012/10/14 12:23)
[10] 【10】太郎「ただいま土下座の練習中」[はじっこ](2012/12/09 16:33)
[11] 【11】スーさん「あなたはどうしたいの?タロくん」[はじっこ](2013/01/27 13:00)
[12] 【12】ヴィータ「色のない空」[はじっこ](2013/01/27 12:55)
[13] 【13】はやて「かえして」[はじっこ](2013/03/03 18:50)
[14] 【14】シャマル「偽善者と最悪の手段」[はじっこ](2013/03/25 16:40)
[15] 【15】太郎「俺の“魂(すべて)”を紅の少女に…」[はじっこ](2013/03/31 13:55)
[16] 【16】太郎「俺の“魂(すべて)”を紅の少女に…」その2[はじっこ](2013/09/08 08:43)
[17] 【17】太郎「色のない心」[はじっこ](2013/11/08 18:50)
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[33468] 【4】太郎「こちら古代遺物管理部遺失物保管室管財課」
Name: はじっこ◆e894d58f ID:bc9a2cd9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/07/08 15:41
よぉ、ひさしぶしだな! いろいろあって管理局に就職した山田太郎だ。




――――――――え? 飛びすぎだって? うるせいやい!











もうすぐ夕刻を知らせるかのように、オレンジに染まり始めた日の光が窓を通り、部屋の半分を照らしている。 俺はそんな中、半透明のモニターとにらめっこなんてしてるが、全然楽しくない。 いや、仕事だし当然か。

「――…ふぁあああぁっ……!」


思わずデカイあくびをぶちかます。 何気に細かい上に単調な作業が多いから集中力が切れること切れること……。

両手でほっぺたをぱしぱし叩き、ムリヤリ意識を戻す。

「――うしっ! さっさと終わらすか!」


これが終われば定時で帰れるし。





     ・
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     ・







別に、管理局のことが嫌いなわけではないんだが、面接官も試験管もそろいもそろって俺を武装隊にぶち込む気満々なんだよ。

理由は言わずもがな、俺が魔力保持者だからだ。

でもな、たとえランクEだろうがFだろうが、みんながみんな戦えると思ったら大間違いなんだよ!

なんだよ、この「え?前のクラスも委員長やってたの?じゃあ今回も委員長おねがいね?」みたいなノリは!

俺は委員長になんかなりたくない! 図書委員がいいんだ!


あ、まちがえた。

とにかく俺は、山のような管理局の資料から安全そうな部署を地道に探すほかなかった。 もうこれでだめなら、管理局入りはあきらめる…。





……―――正直あきらめたくないです!!


まだ魔法もたいして使ってないのに。 ましてや飛行魔法すらまだやってないんだぞ!!

あと、士官学校入るための勉強とかも正直きつかった……。 でもあの時はクロノがわざわざ時間空けて勉強を見てくれた。 ホント助かった、ありがとうクロノ。


でもなクロノ、俺が配属部署に悩んでるからって、「なら、僕の知り合いに「遠慮します」――……そ、そうか。」って俺を航行部隊に引きこまんでくれ。 俺の身に余るし、俺が求めているのは安全だ。


とまあ、勉強の合間に資料と格闘し、クロノに勉強を手伝ってもらいながらも、無事に士官学校に入れたけど―――








======================



        ◆所属部署志望◆




・第一志望

   あんぜんなとこ

・第二志望

   たたかいたくないでござる

・第三志望

   (笑)


   ・志望動機

   ああああああああああああ
   ああああああああああああ。



======================





「―――――…真面目に書こ。」

士官学校にも慣れ始め、ちょうど半年くらい経った頃、俺は目の前のコピー用紙の形をした『AKUMA』と対峙していた。 

要提出、だそうだ……。


ここは士官学校の男子寮。 備え付けのデスクに向かい、脳細胞をフル稼働させながら、何とかごまかせんかな~と、ない知恵を絞っていた。


時刻は夜7時。 完全消灯は8時半なのでまだ一時間以上ある。 けれど、そんなものは俺の焦りを鎮める効果はない。


いや、このアンケート用紙のことではない。 明日の――――


「地獄めぐり―――じゃなかった、 説明会、なんとかならんかなぁ。」

明日は、管理局をあげての就職説明会があるのだ。 説明会、と聞いてあなどることなかれ。

なにせ、明日の正念場で俺の命運が決まるのだから。

この説明会の後、半年後の研修学習で、どの部署で研修を受けたいかを決めなければならない。

研修期間は一年。 でも午後だけ。 士官学校と両立とは……なかなかハードだ。

一応、建前としては「こんな部署あります。無料体験~。」って感じなんだが……


ところがどっこい、じつはこの研修で所属部署が決まってしまうのだ!


――――え? なんで?


いやね、研修した部署以外に入ったって話あんまり聞かないからさ、いろいろ調べたら、 なんと研修期間中もその部署があの手この手で勧誘してくるらしい。 入隊条件を変えたりなんてのはザラで、あるトコは美人のねーちゃんで釣ったり、サラダ油贈ったり、 賄賂―――は調べた限りはなかったが正直、ないとは言い切れないかもしれない。

まあ、それは俺が勝手に調べた内容で、実際はそこで仕事の基礎叩き込まれたりしてるから、研修生たちも慣れ始めた仕事変えたくない――ってのが本音だ。


俺もさすがにそれはメンドクサイ。


「もう贅沢言ってられんな。」


最悪、いくつか条件出して出動回数減らしてもらうしかないな。 おっしゃあ!警備隊だろうがイタリアンだろうがかかってきやがれ!!


もちろん、武装隊以外で!




     *****




―――決戦の日。











武装隊の勧誘率(エンカウント)パネェ!?




「はあ゛~……」

ここは士官学校の総合室内訓練フロア。 広さはだいたい東京ドームくらいか。

いつもは士官生徒と教官が、羊と牧羊犬さながらの集団訓練という名の『ひとり集団リンチ(“ひとり”が“集団”をリンチ)』が行われている。

が、今は訓練道具の類は片付けられ、今は長机が並べられており、管理局の各部署の局員たちが、フロアごとに分かれ説明が行われている。

俺はそんな会場の隅っこにある自動販売機に寄りかかり、一息ついた。


計8回。


武装隊局員に引き込まれそうになった。

5、6歩進むごとに声かけられるってどーなってんだよ!

「どこで知ったんだよ魔力持ちだってこと…」

事あるごとに「君、魔力保持者だね。」「うちの部隊に気なよ!もったいないよ!」って声をかけるアナタタチはそれをどこで知ったんですか? 俺のプライバシーは?


「―――にしても、すごいな本局。」


特に次元航行部隊の人気は異常だ。フロアの上の空間に半透明のモニターが浮いている。 プロモーション映像のように空戦試合の記録映像が流されている。 すげぇ、長蛇の列だ。

「なんつー予算の無駄使い。」

その分、陸の局員たちは必死だ。 下手したらせっかくの人員を根こそぎ取られるんだからな。 ――…ヤバいあれは、狩る者の眼だ……。

「……――ん? あれは」

本局フロアのモニターの映像にどっかで見た顔が――……

「ああ、銀髪くんだ。」

えーと…名前忘れた。

試合の記録映像の中では、銀髪くんの踊るように空を飛ぶ姿が映し出されている。 ―――いいなぁ。 俺もあんな風に空飛びたい。  あ、カメラ目線でウインクした。

おおお、 なんかモニターの近くには局員から士官生と女子たちがモニターの銀髪くんに夢中だ。

キャーとか、ステキーとか、うっとりしながら見てるし。 まあ、確かにイケメンだが、俺はあまりいい印象がない。   断じて嫉妬ではない。断じて。


「―――――おぉ、タローじゃん!」


――と、ボーっとしてると女性特有の高めの声が俺を呼んだ。

「お?―――おお、『ソゥちゃん』か。」

声のするほうに顔を向けると、そこには深緑色の髪を短く切りそろえたクセッ毛の女の子が士官学校指定の制服に身を包んだ姿があった。

女の子―――ソゥちゃんは軽い感じでヒラヒラ手をふり、

「やほっ、ひさしぶり~…ってほどでもないかぁ。」

ほわん、とした声色が耳をくすぐる。

「なんでこんなとこに?タローってもしかして航空部隊きぼう?」

「ぬかせ、そんなん世界が崩壊したってありえん。」

「あははっ、だよね~。」

彼女の少しタレ気味の眼が笑みの形に細まる。

――と、ふいに彼女の視線がモニターのほうに向いた。 モニターの近くには未だ女性局員たちがワラワラいる。

「すごい人気だね~。」

「おうおう、ソゥちゃんはメンクイだなぁ。」

「ちがうよぉ~。私、ああいう“ナヨナヨ”したのニガテだもん。」

「ふ~ん、そんなもんか?」

わからん。





あ、この女の子は俺と同じ士官学校で同期のソゥちゃんだ。 ちなみに俺とタメ。

普段は、士官学校では女子と合同になることはないが、受ける講義によっては男女合同となることがある。そのときに一緒になったのだ。

でも、特にこれといった出会い方をしたわけではない。 単に座った席が隣同士だっただけだ。

ただ、自己紹介の場面で――――


「ソゥちゃんです。 すきなものは『筋肉』ですっ!」


なんてブチかましやがった。 教官も士官生も、みんながみんな口半開きでア然。―――コイツとんでもねぇ爆弾投下しよってからに!?     だが、それで黙っている俺ではない。

喰らえ! 俺のレジェンド!!


「タロウ・ヤマダです。好きな食べ物はハッピーターンの粉です。」


HAHAHAHAッ! さあ、どう来る!!


「あ~、あれおいしいよね~。」

「え?わかる?」

「うん!わかるわかる。」



――――――――ってな感じで意気投合したのだ。

それ以来、講義でよく一緒になったとき、いろいろ話している。

あ、ちなみに彼女は恋愛感情はないそうだ。 彼女いわく―――


「レジアス中将みたいなたくましい腕にだかれたい!」


―――だそうで……


それはさておき。




「そういや、ソゥちゃんは結局地上の警備隊志望?」

「ん~、まだかんがえ中~」

ソゥちゃんはそう言い、自動販売機の前でうんうん唸っている。

「でも本局はむりかな~。あんまりおうちかえれないし、船酔いしそうだし。」

「軽い軽い、理由が軽すぎるわ。」

むんっ、と彼女は自動販売機のボタンの一つを勢い良く押した。 ―――ガコンッ!と、取り出し口にお目当てのジュースが転がり落ちる。

取り出し口に手をつっこみ、ジュースを取る彼女。

「私、あんまりあたまよくないから、陸士隊もいいかな~っておもって。」

プルタブを開け、グビグビとジュースを一気飲み。

「おいおい、マジか?」

「―――っぷひぃ~! うんまぁ。なんか『君の頭でも上を目指せる!!』っていってたから。」

「遠まわしどころかストレートに馬鹿にされとるぞ!?」

「え? そーなん?――そぉいっ!」

そう言い、ソゥちゃんは離れた所のくずかごにすでにジュースのない空き缶をフルスイング。 お、ナイスシュー。

「お前、武装隊は『メンドそうだからムリ』とか言ってたじゃん。」

「ん~、でも…」

「でも?」


「説明してくれた局員さん―――ムキムキだった!」


――ゴンッ!!  あまりの衝撃に自動販売機に頭突きしてしまった。



――――なんじゃそら!?



「いや~あれはみごとな胸鎖乳突筋だったぜいッ!」

プヒ~! と鼻息荒く、ソゥちゃんはいい笑顔で「ビシッ!」っとみごとなサムズアップを披露。

「……真面目に考えろや。」

「なにおうッ! 私のめに狂いはないよ~! 私のみたてでは大腿筋も―――」

「そっちじゃねぇッ!!」




     *****




「ハァ……――」


自動販売機の近くにある椅子に座ったまま、息を吐く。




休憩してたのに何でこんな疲れてんだろ…


あのあと、ソゥちゃんは本局フロアへ「ひやかしにいってくる~」と言ってわかれた。 俺の「ひやかすなよ……」というツッコミを置き去りにして。


(普段はタンポポみたいにふわふわしてるのに、なんだよあのテンションは。)


ほんとにいつもはカピバラ並に気性は穏やかなんだが、たまにあんな風に暴走するからなあ。 そして、なぜかいつも俺が彼女の暴走を止める、 という構図が出来上がっていた。 なんかあるたび「タロー!タローはどこだー!」「きょっ教官に取りついたぞ!早くひきはがせ!」「ぶぅぅわあっかもおぉぉぉぉぉぉん!!」「ぶ、部ちょ…じゃなくて、教官がブチギレたぁぁ!?」―――――って、俺を巻き込まないでほしい。   あれ? なんか混じってる??


「あいつ、戦闘訓練は太鼓判押されてるのに、なにがどうしてああなったんだ。」

あの教官ともサシで結構いいとこまでいってたし、今んとこ俺の知り合いで最強TOP3に入ってるし。(一位・教官 二位・クロノ 三位・ソゥちゃん   ※銀髪くんは除外)


「――ん?」

と、考えに耽っていると足もとにカラカラと空き缶が当たった。

誰か置いたままにしたんかな?

「――っしょ、と。」

空き缶を拾い上げ、その勢いで立ち上がる。

「………」

遥か彼方(数メートルちょい)にあるくずかごに標準をあわせて―――



「ぬぼんば!!!」



自分でもよくわからんかけ声とともに全力投球。 気分はメジャーリーガー。



――――カコンッ!!


「ありゃ?」

が、狙いを外しくずかごに当たり、空き缶が弧を描くように――


「……………………あ」


その落下地点には、局員の制服を着た男性が――――

「あっ!!?危な――…………」

あわや、頭にぶつか――――




―――ッパシ!




「―――――え?」

――――らなかった。



その人は、後ろ向きのまま右手で空き缶をつかんでいた、俺から見て左肩の上から手をのばして。

まるで、後頭部に目でもついてんじゃないかってくらい、自然に。


「あら?」

と、その男性が頭に疑問符を浮かべ、こちらに振り向いた。


「―――――――あ!」

そうだ!謝んないと!


「あ、あのすいませんその空き缶…」

「ああコレ? あなたが?」

「ごっごめんなさい! その、くずかごに入れようと……」

「――ああ、なるほどね。 べつにいいわよ。私は怪我してないから。 でも、次は横着しないでちゃんと入れなさいね。」

「はい、すみません。」



なんだろう、すげーいい人だ。 なんつーかこう、人間ができてるって感じ。 大人な女せ……じゃなかった、男性だ。  オネェ言葉が自然すぎる。


「あら?あなた士官学校の子?」

「え、ええまあ。」


この人、近くにいるとけっこう身長あるなあ。180くらいあるんじゃないか?

褐色の肌に紫がかった髪が目立つ。 肩にかかるくらいの髪を後頭部で結ってポニーテールにしている。 かっこいい、というより綺麗と感じる印象だ。 体格も細目だから女性と間違えそうだ。

「へぇ、そうなの。 もしかしてもう行くとこ決めてる?」

「幸か不幸か、まだなんす。」

「あらそう。 ねぇ、よかったら私のとこの部署の説明受けてみない?」




     *****




本局フロアの隅っこの………さらに端っこにそれはあった。

「えーと、ココっすか?」

「ええ。 周りとくらべるとあまり、ね。」

「…はは。」

い、いやその、一瞬入口の受付かと思った。 なんか学校の机を二つ並べたくらいのスペースに、椅子と立て看板があり、看板には『古代遺…管…部遺失物保管……財課』―――ってなんか所々文字消えてるし!


「ごめんなさいね、散らかってて。」

「い、いえ…」

なんかこっちが申し訳なくなってくるよ…。 ゴメンナサイ。ちょっと小汚いって思ってしまいました。


「さ、座って座って。今お茶入れるから。」

「そっそんな、お気遣いなく。」

「いいのよ。好きでやってるし。少し待っててね。」

――と、裏のほうに入って行ってしまった。 俺は言われたとおり、おとなしく座るしかなかった。


待ってる時間ヒマなので、俺は今日もらった案内パンフレットを見てみる。 これはこの会場の地図のようなもので、これで目的のフロアに説明に行くのだ。 俺は全然決めてなかったので、今初めて開いた。

(――…えーと、ここが次元航行部隊のフロアで……たしか古代遺物管理部のとなり………)


あ、あった。


(―――小っさッ!!?)


あったけどさ、こんなんわかるか! よく見ないとただの黒点に見えるわ! ちっこい四角の中に、さらに小さい字で書かれてるが―――肉眼で見えるわけねえだろ!  目が悪くなるわ!


「はい、どうぞ。」

なんて、もんもんと唸っていると俺の前に温かいお茶の入ったマグカップが置かれた。

「あ、どうも。」

そう言い、俺はお茶を一口。――――ずずず~。

「お、美味い。」

「あら。気に入ってくれた?」

なんかウーロン茶を香ばしくした感じでなかなかいける。

「はい。ありがとうございます。―――――ええと…」

「ああ、ごめんなさい。 そういえば自己紹介もまだしてなかったわね。」

そう言い、向かいの椅子に座る。


「『アラニア・アマティスタ』。 陸曹だけど、今は堅苦しいのは無しでね。」

「わかりました。 タロウ・ヤマダです。よろしくお願いします。」

そう言い、俺はお茶をもう一口。 うん、美味い。



「えーと、それでここって…本局の部署なんですか?」

「ええ、そうなるわ。 『古代遺物管理部遺失物保管室管財課』一応本局の部署になるけど、地上本部に拠点をかまえているの。」


――――――地上本部に?

「地上に、ですか?」

「ええ」

なんでだ? たしか古代遺物管理部ってエリート中のエリートが集うトコじゃないのか?

「ウチは例外中の例外みたいでね。 まあ、見てのとおり。」

そう言い、おとなりの部署フロアに目が行く。 バスケコート並みの広さに長椅子がいくつも並べられ、それぞれ局員たちが対応している。 空いたスペースにはさっきの空中モニターの小さいバージョンが置かれ、映像や文章などの様々な情報が映し出されている。 ホントに同じ本局か?


「本局にとっては煙たがられてるみたいでね、人気がないの。」

「人気がない?」

これまた妙な話だ。

「本局だからって面倒な仕事はなくならないってことよ。」

「――なるほど。」

つまり、そのしちめんどくさいことを、全部この部署に丸投げしたってことか。 いや、もしかしたらそのために作られたのかもしれんな。―――いやはや。



「なんか、大変そうっすね。」

「あら、仕事っていうのは大概大変なものよ。」

「あ………そ、そりゃそうか。」


「ふふっ」とアラニアさんは気分を害した様子もなく、小さく笑う。

う、うああ。なんかスゴイ恥だ……俺、傍から見たら仕事ナメきってるチャラ男じゃん!!


「おかわりいる?」

「え?」

思わず頭を抱えそうになっていると、アラニアさんがお茶のお代わりをすすめてくれた。 ………手元のマグカップをのぞくと、見事に空っぽだった。

「………いただきます。」

もうこの人には頭が上がらないかもしれん。 でも、まずは緊張で渇いた喉を潤すのが先だ。




     *****



二杯目のお茶をいただきつつ、さっき俺が疑問に感じたことを聞いてみることにした。

「でもなんでわざわざ地上に?」


アラニアさんは「そうね…」と、言葉を選びながら答えてくれた。

「まあ、簡単にいえばウチの部署は資料管理みたいなものなの。 結構場所を取るから本局では無理みたいなの。」

「そんなにあるんすか?」

「まあ、広さだけなら航空部隊の訓練場が埋まるわね。」

「嘘ォ!?」


あそこ一度見たことあるけど、結構な広さだったぞ!?


「まあ、ウチにいても警備出動がないから、上を目指す子達には不人気なのよね。 特に魔力持ってる子は武装隊に引き抜かれるから。」

「ああ~、それはわかります。さっきも武装隊の局員に―――………」







―――――――……あれ?   チョイまち。



「―――? どうかしたの?」

俺は石像のように固まっていた。 とりあえず手に持ったマグカップをゆっくり置き、深呼吸。 言葉を間違えないように慎重に口を開く。


「あっあの、さっき、なんて言って……?」

やべえ、声震えてる。

「え? ええと、魔力持ってる子…」

「その前。最初のほうです。」



「ん??? 『ウチにいても警備出動がない』 ってトコ?」



















「…」


「―――あれ?どうかしたの?」

心配そうな表情で、アラニアさんはこちらを見ている。

俺は無言でゆっくり立ち上がり、アラニアさんのほうを向く。

アラニアさんはまだ困惑している。

「え? え?」

「…」

そして俺は―――――――





「これからお世話になりますッ!!!」

ビシィィッ!! と、45度の見事なお辞儀をした。






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     ・




「……―――――くぅうあああぁ~ッ。おわったぁ~。」


俺は大きく伸びをして、ガチガチの背筋を伸ばした。

「―――おおう。真っ暗やん。」

窓に目が行くと、もう日が沈んでいた。 あれ?室内の電気はついてるけど。 誰かつけてくれたのか?

「タロくん、おつかれさま。」


――と、俺の前にこうばしい香りが漂うマグカップが置かれる。


「――あ、『スーさん』。お疲れです。 あと、いただきます。」

そう言いアラニアさん――――『スーさん』の入れてくれたお茶をもらう。

「仕事熱心なのはいいけど、ちゃんと明かりつけないとだめよ。誰も居ないと勘違いして鍵閉められることがあるから。」

「あはは、すいません。気をつけます」

ずず~…、うん、スーさんの入れるお茶は相変わらず美味いなぁ。

「あ、あとココ間違ってるわよ。二度打ちしてる。」

「………スンマセン。」





     *****



俺とスーさんが最後みたいなので、戸締りチェックして廊下に出る。 窓の外を見てみると、まだわずかに夕日が出ており、黄昏色の空にわずかな光源が浮かぶ光景は、なかなか幻想的だ。 写メっとこ。


「もう遅いけど、タロくんはこのあと『訓練場』に?」

と、スーさんは戸締りを終えたようだ。この後、鍵とかをロビーの人に預けるみたいだ。

「いえ、もうさすがに遅いんで、このまま帰るつもりです。」

「そのほうがいいわ。最近は治安が良いなんて言うけど、絶対に安全ってわけじゃないから。 気をつけてね?」

さすがに心配かけるわけにはいかんな。今日は寄り道せずに帰ろう。

「はい。 じゃあ、お疲れ様です!」

「ええ、また明日ね。」

スーさんにそう言い、今日の仕事を終えた俺は足早に男子寮へ向かう。




さて、明日も頑張るべ!





     *****








もうすぐ日が完全に沈む。 黄昏。 昼でも夜でもない、曖昧な空。

夜の闇は、その二階建て一軒家を覆うように、夜の訪れを知らせる。先ほどまで太陽の光を浴びていた庭の青草も、夜の色に染まる。 

庭に続く扉は開け放たれ、そこに小さな影が座っている。 部屋の電気は点いていないので、その姿ははっきり見えない。

「ここにいたか。」

凜。――とした声が反響する。 声とともに部屋に明かりが灯る。 声の主――ピンク色の長い髪をポニーテイルに結わえ、女性らしい起伏に富んだラインをした体つきをした彼女。

「――シグナムか。」

小さな影――――ヴィータは、けだるそうにつぶやく。

「もうすぐ主も帰る。電気ぐらいは点けたらどうだ。」

シグナム、と呼ばれた女性はヴィータに言う。

「ああ…。」

だが、どこか上の空でヴィータは答える。

「どうした?『鉄槌の騎士』ともあろうお前が、何を呆けている。」

少し棘を混ぜた言い方になってしまったが、それは彼女もヴィータのことが気がかりだからだ。

「…………なあ、シグナム。」


「…ん?」





「あたしって、なにができるかな……」






「ふむ………………………………お前の真価は近接戦闘による一撃必殺と強固な鉄壁の防御だからな。だが中距離もこなせるオールラウンダ―の要素から見ても遠距離からあぶりだす戦法も悪くない。高町との模擬戦の時も防御に徹した高町を追い込む術としていいかもしれん。アイツは一度足が止まると、なかなか動き出せんからな。ふむ、そうなると次のテスタロッサとの模擬戦も見直さんといかんかもしれん。最近は高機動に飽き足らず射撃魔法の腕も上げたようだからな、こちらもうかうかしてられんな。が、お前のような力押しは私には向かないみたいだからな、しかし、だからといってスタミナ切れで追い込めるほどテスタロッサの奴も甘くないからな。こちらとしても嬉しい限りだが。そういえば高町の奴も最近は、なかなか手ごわくなったな。射撃精度も針に糸を通すような鮮やかなものになりつつある。この間の模擬戦で私の頬をかすめた時は、さすがに肝が冷えた。まあ、結局私が勝ちを取ったがな。あそこで防御を選んだのは失敗だったな。――――」


「…」

「―――ん?」

「―――…ハァ。」

ヴィータの口から鉛のように重いため息がもれる。

「どうした?ため息などついて。主の話では幸せはため息をつくたびに減っていくそうだが。」

「お前のせいだよッ!!!」

両手をブンブン振り上げ、『私、怒ってます!』を全身で表すヴィータ。




「コイツに聞いたあたしが馬鹿だった……」

ゼーゼーと息を切らす中、シグナムはポロッと一言

「そうなるとその馬鹿は私も入るのか?」

「自覚ないんかい!!」

ヴィータのツッコミを涼しい顔で流すシグナムは先ほどの雰囲気から一変、『烈火の将』の顔つきになった。 シグナムは静かに口を開く。

「まあ、冗談は終わりだ。」

「…」

「あの『ヤマダ』という男のことだろう?」

シグナムも事情はだいたい知っていた。 彼女が蒐集で、彼にけっして癒えない傷を負わせたこと。彼女はそれに苦悩し、罪悪で潰れそうなことも。 主も、他の騎士たちも彼女を気にかけていた。  (特に、シャマルの奴なんか目に見えて落ち着きのないこと……――だが、それを料理に失敗した理由にしないでほしいがな。)



「こればかりは、私がとやかく口出しして解決できるほど、軽い問題ではないだろう。私から言えるのは『お前のできることをやれ』くらいだ。」

が、『烈火の将』からの助言は、どこか突き放したような言葉だった。

「投げやり。」

と、呟くようにヴィータはぼやく。

「世情に疎い私だけに聞いても答えは出んぞ。私だけでなく、高町やテスタロッサ、それに主にも協力を仰いだほうがいい。一人でも多いほうがいいだろう?」

「――ん、わかった。」

少しだけ納得したような返事をする。




「―――ただいまぁ~。」

しばらくして、玄関から聞きなれた主の声が聞こえた。

「ほら、行ってこい。」

「ん、ああ。―――――あんがとな。」


そう言い、ヴィータは玄関のほうに駆けていく。


その後ろ姿をシグナムは静かに見つめる。


(――――…私から口出しするつもりはない。が、それが『鉄槌の騎士』としてのお前の出す答えなのか、 それとも―――――………)


静かに、シグナムはただ静かに見つめ続ける。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


お久しぶりです。 ハッピーターンを伏せ字で出すべきか悩んだ、作者です。

今回は二人もオリキャラが出てしまいました。 本当はチョイ役のつもりだったのに、いつの間にか濃いキャラになってしまった……キャラ作りって難しい。


そして、何気に今回も登場せず、リリカル主人公。――――ゴメン、ゴメンヨ。


感想を書いてくれた読者の皆様には心より感謝。 (結局、side標示なくしました。  自分でも書きづらかったことに気づく。←オイ)




次は太郎の日常みたいのを出します。なにとぞよろしくお願いします!




まだ修正できずスイマセン……


【次回】


太郎「こちら古代遺物管理部遺失物保管室管財課」その2


ついに主人公、魔法を使う!?



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