………俺は、
俺は今まで、なのは達は住む世界の違う―――『アニメ』の世界の住人だと思っていた。
俺みたいな一般人とは遠く、遙か向こうにいる『ヒーロー』のような存在に思えた。
俺なんかみたいに、うじうじ悩んだり迷ったりしない。俺なんかと関わる事などあってはならない。
そう思っていたんだ―――。今の今まで、その瞬間まで。
ああ、認める。
俺は馬鹿だ。
俺は、ヴィータが助からないと聞いた瞬間に、ようやく気付いたんだ。
これは、『アニメの中の世界』なんかじゃない。
ふと気付けば、例外なく人が死ぬ、『現実の世界』なのだと。
そこに意志は無い。誰もがほんの些細なキッカケで不幸にも幸福にもなる。
俺はそれを『アニメの中のこと』として、脳内の片隅に追いやっていた。
世界の修正力?
神様転生?
テンプレ?
クソッタレが!!こんなのただの言い訳だ!!
認めるさ。俺は根本的なところで『彼女』と向き合おうとしなかったのを。
俺はアニメの『鉄槌の騎士ヴィータ』しか見ていなかったことを。
思い出せ。俺の目の前に立っている少女はどんな存在だった?俺から見た彼女は何だった?
「―――おさげの似合うかわいい子だな」
ベルカの騎士ってなんだ?プログラム生命体?知らん。俺の目にはただの女の子にしか見えないぞ。
アニメなんぞで得た外付けの情報なんて全くもって当てにならない。ただ純粋に目の前の存在を認めればいいだけだ。
たったそれだけだ。
本当に、本当に今更になってようやくわかったよ。
でも、でもな、
いくらなんでも気付くのが遅すぎだ馬鹿(オレ)。
―――12時56分―――
「………ふうぅぅぅああぁぁぁぁ~~~………」
「タロー殿、眠そうでござるな」
「…ん、ちとな。昨日夜更かししちまって」
「そうでござったか。だが夜更かしは身体に障るでござるよ。あとお肌にも良くないでござる」
「…俺、日ごろからエイジング気にしてる素振りなんてしてたか?」
昼下がりの休憩時間。もうすっかり保管課の休憩室に馴染んだ縦ロールモミアゲ少女、瑠璃と俺は二人で雑談をしていた。
ふわりとした入れたてのお茶の香りが部屋の中を満たし、ほのかなリラクゼーション効果があるんじゃないかとぼんやりと考える。
「―――そういえばタロー殿、折入って尋ねたい事が」
声をかけられ、慌てて瑠璃の方に向く。
「…んう、何だ?」
「ふむ、実は――――――………男性は皆、胸の大きい女子を好きこのんでいると聞いたのだが、その真意を知りたいのでござる」
「…っぶ!!!?」
あまりのことに飲みかけのお茶を盛大に吹き出す。
「げほげほっ!げほっ!……――ち、ちなみに聞いたって、誰から?」
「同じ訓練校の同僚からだ」
「瑠璃、それはセクハラだ。次ソイツにあったら鳩尾に一発入れておけ」
「御意に。で、どうなのでござる?やはり胸の大きい女性は魅力的に見えるものなのでござるか?」
あれええ?!さらにえぐりこむ??!
「そそ、それは、ひ、人によるんじゃないかな~」
「ふむ、そうか…そうでござるか。まあ人の好みなど千差万別でござるか」
ふい~。とりあえず納得してくれたみたいだ。
「ではタロー殿はどうなのでござる?やはり胸の大きい女性を好むのでござるか?」
第二形態だとぉお!!?
「…え、う、ええと」
「む、拙者のは他と比べるならそれなりの大きさなのだが…どこからが『大きい』の差異があるかわかりにくいでごさるからな」
瑠璃はそう言いながら腕を組むことで盛り上がった自分の胸を見て、首をこてんと傾けている。
そのしぐさだけ見れば、小動物みたいでかわいいなんて思えたけど、俺は押し上げられた事でその存在感を3割増した彼女の胸部に目が行ってしまう。
う、うん。前々から思ってたけど、この子身長は低いのに体付きとかがもう『女性』なんだよね。ほんとに13なの?
特に、あれはデカイ。
制服の上からでもその大きさと形がわかるほどだ。なのに不自然に大きいとかではなく身体のラインにそっていてバランスがいい。それに最近は若干身長が伸びはじめ、鍛えている事もあり体つきも引き締まってきている。
俺は今まで、『ロリ巨乳』なんてもんは空想上の生き物だと思ってたよ…。
瑠璃―――……おそろしい子ッ!
「―――タロー殿?タローどの~?」
「おふ!?」
俺は慌てて視線を逸らす。
「タロー殿」
「へ、へい。なんでやんしょう?」
「…どうだったでござる?」
瑠璃は悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「ナニガデスカ?」
「…ふ、先程までじっくりと見てたではないか」
「…うぐ」
「くくくっ、タロー殿は正直でござるな」
含み笑いをする瑠璃の頭頂部に強めのチョップをこちんっと振り下ろす。
「思春期の男の子をからかうんじゃありません!」
「ふふ、以後気をつけるでござる」
くすりと笑うその顔は全然反省してるようには見えない。
「ったく。そういう話はソゥちゃんとでもしてくれ……いや、ソゥちゃんにその話題はマズイか」
「む?」
「まあ…瑠璃にはまだ言ってなかったが、ソゥちゃんこの手の話はあまり好きじゃあないらしい」
瑠璃は始めは首をかしげていたが、察しがついたのか「ああ」と声を出す。
「いわゆるコンプレックスというものでござるな」
「まあ、そうなるな。だからソゥちゃんの前では「ヒンニュー」とか「ペタンコ」とか「ツルペタ」とか「マナイタ」とか「ゼッペキ」とか「ナイチチ」とかいうワードは禁句だべらぶぼォーーーーー!!??」
突如、回転しながら横にぶっ飛んでいく俺。瑠璃さん曰く、「その時ミドリ殿の回し蹴りは中々様になってたでござる」だそうで。
逆さまで休憩所の壁に叩きつけられる。そんな中、蹴りを放った状態で水平に足を構えたままのソゥちゃんが見えた。ついでにパンツも見
「…ほげいぃ!?」
ソゥちゃんは追撃とばかりに近くにあったゴミ箱を投げ、それが見事俺の頭に被さった。
「たぁ~~~ろぉ~~~?」
ソゥちゃんはのそりのそりと俺に近づいてくる。
「おお。ミドリ殿か」
る、ルッチーさんや、ちっとはこちらの心配をしてほしいのですが?
「まったくさー、タローはなにいっちゃってるのかな~?」
「ままままままマテっ話を聞いてくれ!」
頭にゴミ箱をかぶったまま起き上がり距離をとろうと思ったが、すでに背中に壁が当たっていることに気付く。
「…ちなみにさぁ~」
「へ、へいっなんでやんしょう!」
「……色はわかった?」
「え、ええとたしか薄めのパープルでフリルが―――――――――――――――…………………………………………あっ」
「タローのエロバカあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「にゃんちゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??」
ソゥちゃんお得意のラリアットにより、ふたたび壁に叩きつけられた山田太郎であった。
「おおっ。これは『らっきーすけべ』でござるな」
なんとも場違いな瑠璃のセリフがこだますのだった。
*****
「まったくさ~みんな誤解してるよね~。だいたい胸なんてただのシボウだよ脂肪。キンニクを愛し、めでるものたちにとっては忌むべきテキだよ~?」
乱闘で散らかった休憩所を(俺一人で)片付けながらソゥちゃんはソファーでふんぞりがえりながら演説のように話していた。
「んなのしらんよ。そもそもそう思ってんならお前が怒る要素が見当たらないんだが」
「そーいうところがデリカシーないっていってるのにぃ~~~~!」
「わぷっ!わあったっ、わかったから!みかん投げんな!」
結局は俺が平謝りするしかなかったんで。
俺はソゥちゃんの投げたみかんをひとつづつ拾い、ほこりを払ってかごに戻す。
ソファーに座るソゥちゃんはぷりぷりしながらも、もりもりとみかんを食べまくっている。
「ふむ…………………ミドリ殿は胸が無いことを気にしているのでござるか?」
不意打ちで投下された爆弾に、俺はかごごとみかんを落とす。
「ちょーーーーーーーーーー??!!」
奇声を発しながらあたふたとする俺。ソゥちゃんはみかんを口に運ぼうとしたポーズのまま硬直していた。
「ルぅッチぃ~~~~?そんな子にそだてたおぼえはナイノニナァ~~~??」
「こ、こわいっす!!」
恐怖のあまりガタガタと震えだす俺。実録、笑顔で人は殺せる!!
「んむう……拙者は別段気にした事はないのだが…」
「イヤミかこんにゃにゃ~~~~~~~~~!!!!」
ソゥちゃんは動きも言葉もネコのようになりながら反対のソファーに座ってた瑠璃に向けて蹴りを放つが、ひょいっと横に倒れるように避ける瑠璃。その状態から起き上がった反動を利用しソファーの上で前転と共に両手に力を込め空中で半回転しながら「しゅたっ!」、とドア付近に着地する。
瑠璃はそのまま部屋を出て廊下を走りながら「続きは訓練所でござるぞー!」とやまびこのような声で遠ざかっていく。
「じょーとーだぁ!きょうがニャンコのおさめどき~~~~!!」
「『年貢の納め時』な」
ソゥちゃんの言葉に一応突っ込んでおいたがもう本人は既に廊下を爆走していた。
な、なんといいますか。スーさんが1日休んだだけでこの有様って……。スーさん、俺に代役は務まりそうに無いです!スーさんカムバァーック!
「…」
しばらくすると先程の騒ぎが嘘のように、静かな雰囲気が休憩所に戻る。
俺は黙々と散らかった休憩所を片付け、それが終わるとお茶を入れてソファーに座り一息ついた。
「ふいっと」
通信用端末を開き、中身を整理しながらスケジュール機能を起こし予定を確認する。
お茶で喉を潤しながらただ静かに作業をする。
「……ん、んまい」
入れたてのお茶に舌鼓を打ち、作業が一通り終わるとする事がなくなってしまった。
お茶のおかわりを入れようと急須を持ち窓際のポットに向かう。
「……」
自然と、窓に映る景色が目に映る。
フェンスに囲まれた屋外訓練場だ。そこには警備隊の局員達がたむろしている。
視線が上に向けば、そこは一面の青空。
雲ひとつなく、真上にいる太陽だけがその空を自慢げに独占しているように見える。
すると、羽ばたく音と共に幾つもの通りすぎる影。鳩か何かだろうか。
鳥達は訓練所のフェンスを飛び越え、太陽を横切り、ただひたすらに果ての無い空へと消えていく。
「…」
俺は、その鳥達が見えなくなるまで空を眺めていた。
*****
―――16時33分―――
「仕事早っ」
「いや、なんなんすかその反応」
上司に今日の分を終わらせ、報告に行ったらねぎらいの言葉の前に言われた。
「キミ、本当にどうしてここにしたんだろうねぇ」
「そりゃー俺の座右の銘は「いのちだいじに」ですから」
「全然理由になってないから」
上司の突っ込みにぽりぽりと頭をかく俺。
報告をパパッと済ませ、今日の戸締りは上司の人がするから俺はさっさと退場するか。
「おお、タロー殿」
「タローおっす~」
と、廊下の向こうから瑠璃とソゥちゃんが来た。
「おお、おすー。どうしたんだ二人そろって?」
「にっしっし~。じつはね~…」
「うん、やっぱいいや」
「ぶぅー!きいてよぉ~!」
ソゥちゃんはふくれっ面で俺の肩をポカポカと殴ってきた。
「たははっ、冗談だよ。で、何だって?」
「ふむ。実はこの後ミドリ殿とクラナガンの付近を散策する予定でござる」
「『恋する乙女シリーズ』しんさく発売日だぜ~!」
オイオイそれって、いつぞやのパニック映画みたいな恋愛小説やん…。
「…ちなみにタイトルは?」
「んとね~…『恋する乙女は太陽を素手で砕く』」
「物騒すぎるわ!!」
「あとね~『恋する乙女の思いは月の引力を越える』っての」
その乙女ほっといたら本気で人類存亡にかかわるぞ!
「二冊同時に購入すれば特典がもらえるでござるよ」
「って、えっ!?瑠璃も読んでんの!?」
「ふむ。ナンバリングシリーズも外伝も読み応えがあるでござるよ。タロー殿もどうでござるか?」
「え、遠慮するよ…」
なんつーか、たくましすぎるぞミッドの女性達!
「そんでねー、タローもいっしょにどうかなーって」
「俺?」
いまいち意味がわからず首をかしげる。
「つまるところ、拙者たちとクラナガン観光に洒落込もうということでござる」
「にもつもち兼、デートだよ~!美少女ふたりもはべらしてタローも罪なオトコだね~」
どちらかというと荷物持ちのほうが主体となりそうだけどな。ってか、自分で美少女って言っちゃってるし。
「んー…………わり」
「「???」」
「今日はちっと大事な用があってな、行けないんだ」
「えぇ~~!」
「……」
ソゥちゃんはわかりやすいくらい落胆している。ただ、瑠璃は一瞬顔を強張らせたように見えたが、本当に一瞬だったため俺は気付かない。
「悪いなせっかく誘ってくれたのに。埋め合わせはするからさ」
「…うう~ん、しゃ~ないか~。ハッピーターンで手を打とうではないか~」
「ははぁー」
ソゥちゃんと軽くふざけあい、「んじゃ」と挨拶し彼女達を通り過ぎ、着替えるためロッカーに向かう。
「―――――………っ、タロー殿!!」
急に呼ばれ、驚く中思わず声の方に振り返る。
声の主である、瑠璃……ルティエラが不安そうな顔で俺を見つめていた。彼女のこんな姿は初めてなため、隣にいたソゥちゃんも驚いている。
「…どうした?」
俺は、なるべくやさしめに声を抑えた。瑠璃はまだ不安そうにしていたが、
「……いや、何でもないでござる。急に引き止めて申し訳ない」
「ん、大丈夫」
「…それでは、タロー殿………お気をつけて…」
何だったのかな?と思いつつも瑠璃の顔からは見た感じ不安そうな雰囲気は感じられなくなった。
「……おう、“じゃあな”」
『別れ』の挨拶を交わし、俺はロッカーに向かった。
「…ルッチー?」
「…」
「どしたのルッチー。なんかあった?」
「いや、大丈夫でござる。ただ…」
「ただ?」
「―――拙者も未だ、生意気な小娘だというだけのこと…」
*****
―――17時47分―――
クラナガン総合医療施設。
もう既にあたりは夕日によってオレンジに染まり、空の彼方から夜の空が顔を出し始める時間となった。それはココ、クラナガン総合医療施設も例外ではない。ココの白い外壁もすっかり夕日によってオレンジに染まっていた。
そしてこの場所に用事がある少年は入り口付近をうろうろと徘徊していた。
「…わーお」
念のために生垣から隠れて入り口付近の様子を見れば…
「…シグナムさん、お勤めご苦労様です」
案の定、入り口の柱あたりに背を預ける一人の女性がいた。遠目でもわかるピンクの髪をポニーテイルにしているヴォルケンズの『ミス・ブシドー』こと烈火の将シグナム。
まるで何かを待っているかのようにじっと舗装された道の向こうを見ている。少なくともデートの待ち合わせとかじゃないのはわかった。
ザフィーラの姿が無いのはありがたいかも、ニオイとかで気付かれるかもしれんし。
でも言わせてくれ。何でいるんだよ。ある意味最強の門番じゃん。
まあここは大人しくシャマルさんが指定してくれた別のルートを使わせてもらいますか。
「残念ですが阿修羅はお呼びじゃないですよ~と…」
ゆっくりと生垣から離れようとしたとき、
「―――!!」
シグナムが何かに気付いたかのように柱に預けていた背中を離す。
(――気付かれた!?)
やばばばばばヤバイ!!山田太郎、絶体絶命!!シグナムは正面を見据えたまま動かない。これじゃ動いていいかもわからん!
だが、そんな俺の心配は無駄に終わった。
生垣の間、つまりは舗装された正道を一人の少年が通り過ぎる。
(あれは…?)
どっかで見たようなオッドアイに輝くようになびく銀髪。あとイケメン。
(って、おまえかぁーーーーいッ!?)
ここでまさかの銀髪くんの登場だぁ!!(←名前完全に忘れた)
銀髪くんがズンドコ進むたびにシグナムの顔はより一層険しくなっていく。
(や、やめとけ銀髪くん!さもないとシグナムさんが阿修羅を凌駕する存在になっちゃうーーー!?)
もちろん俺の心の声は届かない。一応念話できるけどそんなことしたら気付かれちゃうし。
で、結局どうにもならず二人は対峙する形となってしまった。
「よ――――ム!寂――――っ――?」
「失―ろ」
うん。聞こえにくいが会話の内容は容易に想像できるや。
「な―は―――夫―?俺―――――て―――――た――?」
「――無―」
「あ――――。―前―――――――――ろ―グ―ム」
「……―――黙―」
さて、銀髪くんは全く気付いていないようだがシグナムさんの顔はドンドンやばくなってきた。本気で阿修羅超えるかもしれん。
銀髪くんは度胸があるのか、それとも鈍感力が高いのか、ただ単にバカなだけなのか…。最後の可能性が高いがせめて二番目であってほしい。
と、現場に進展あり。
「場―――――う。―――――と――い」
「そ――、――っ―。言――――事――――」
シグナムと銀髪くんが入り口から離れ、俺は物音を立てずに生垣の奥に隠れる。
生垣を挟む正道を通り過ぎ、二人の姿は見えなくなった。見た感じだと銀髪くんはラブレターをもらった男子学生みたいに浮ついていたのに対し、シグナムは紙一重の真剣勝負をする前の武士のような殺気を放っていた。ここまでアンバランスだと逆に笑うべきか引いたほうがいいかわからん。
ま、とりあえずは、
「…銀髪くん。キミの犠牲は無駄にしないぞー」
大して気持ちのこもってない感謝の言葉を述べ、門番のいなくなった入り口を注意深く探り、まんまと通り抜ける事に成功したのだった。
その一時間後にどこかの空き地で想像を超えた戦いが繰り広げられたらしいが、それは俺にはあまり関係の無いことだ。いやー最近物騒だしねー。
*****
なんとかエントランス付近にまで来れた。
と、簡単に言っているが実は病院内はザフィーラが巡回していたのだ。多分最後の砦的な。
エントランスに入られないように回っていたので、まずはニオイで悟られないように全身にファブ○ーズ(トイレにあったヤツ)をかけ、さらにザフィーラの回っているところから少し離れたところにまだ俺のニオイが残っているコートを置いて、ザフィーラがコートの置いた所に走っていくのを確認してダッシュで取り抜けた。
途中、仮眠室みたいなところで二人分の寝息…はやてとフェイトが寝ている所を、静かに通り過ぎる。
サーチャーっぽいのはなかった。まあ病院だしココ。
「ココまで来ればあとは、えーと…エントランス抜けたトコで―――」
ザフィーラがおとりに気付く前にシャマルさんのいる安全地帯(昨日の集中治療室)に行かないと。
「……タロー?」
「ほぉあちゃぁぁ!!?」
突如後ろからかけられた声に飛び上がる。
「さっささささぁあせんしたあぁぁぁ!!ほんの出来心なんで―――」
「ちょっちょっと!?落ち着いて!」
振り返り様に土下座を食(?)らわせてやるぅ!!―――と、最近聞いた憶えのある声に俺は振り返る。
そこにいたのは淡い金髪の少年だった。
大人しい雰囲気を感じる碧眼の少年だ。服装は緑のパーカーの上から茶色のコートを羽織っている。
ただ、彼の左の頬は白いガーゼによって覆われていた。僅かにあざのようなものが見えることから殴られた痕だとわかる。
「…ユーノくんかえ?」
「えーと、そうです」
少年、『ユーノ・スクライア』はおずおずと答えるのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
とりあえずルッチー達のフラグをクラッシュ(?)。作者です。
場面切り替わりで(作者が)こんがらがりそうなので分割して投稿しますた。続きはまだ執筆中。
と言うわけでユーノくん初登場。…実は作者、素で存在を忘れてしまってました。(・・;)
ユーノ「………」
とっとととりあえず次回予告!
【次回】
太郎「俺の“魂(すべて)”を紅の少女に…」その2