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No.33454の一覧
[0] 【チラ裏から】高町なのはの幼馴染(全裸)[全裸](2014/11/12 02:33)
[1] 新人二人と全裸先輩[全裸](2012/06/21 09:41)
[2] 機動六課と雑用担当全裸[全裸](2012/07/02 14:42)
[3] 聖王教会と全裸紳士[全裸](2012/07/15 23:22)
[4] 狂気の脱ぎ魔と稀代の全裸[全裸](2012/07/15 23:23)
[5] 機動六課と陸士108部隊[全裸](2012/08/15 02:00)
[6] ツインテール後輩の苦悩と全裸先輩の苦悩[全裸](2014/11/12 02:33)
[7] オークション前の談話[全裸](2012/10/21 03:18)
[8] オークション戦線[全裸](2012/12/06 04:50)
[9] 女装系変態青年の宣戦布告[全裸](2012/12/06 04:47)
[10] ナース服と心情吐露[全裸](2013/12/07 14:05)
[11] 閑話[全裸](2014/02/01 01:52)
[12] 全裸と砲撃手[全裸](2014/04/15 19:24)
[13] 全裸と幼女[全裸](2014/08/19 01:07)
[14] 全裸と幼女とツンデレと機動六課という魔窟[全裸](2014/11/12 02:42)
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[33454] 機動六課と陸士108部隊
Name: 全裸◆c31cb01b ID:ae743e2c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/08/15 02:00
 リインフォースⅡが機動六課に出勤してからやることは、最近あった出来事を私的な勤務日誌にまとめることである。
 今日まとめているのは先の機動六課初任務の件で、実際に自分も現場に立ち会った身から主観的かつ客観的に任務内容を総括して振り返っていた。

「フォワードの子たちは順調……これからの成長が楽しみです……っと」

 フォワード組の活躍を思い返すリインフォースⅡ。
 長くコンビとしてやってきていたスバルとティアナは流石として、エリオとキャロの年少コンビもしっかりとお互いにフォローし合っていたことは収穫と言えるだろう。
 これからもフォワード組としてのコンビネーションはもちろん、プライベートでもコミュニケーションを深めていってほしい、とリインフォースⅡは願っている。

「なのはさんとフェイトさんは流石の貫録……新型ガジェットにも後れを取ることなく圧倒していました……あれでリミッターがかけられているのですから逆に怖くなるレベルです……っと」

 高町とフェイトにはあえて特筆するべきポイントもないだろう。
 始めから二人の実力を把握していたリインフォースⅡにとって、リミッターで能力が抑えられているとしても十二分のパフォーマンスをするだろうとは予想していた。
 今後もフォワード組の見本として活躍していってほしい、とリインフォースⅡは締めくくる。

「はやてちゃんたちロングアーチも奮闘……若い子たちばかりですけど実力と将来性は折り紙つき……機動六課の指揮系統として安定した活躍をしてほしいです……っと」

 リインフォースⅡはロングアーチが慌ててしまわないか不安に思っていたが、八神の貫録ある指揮とグリフィスの適切な補佐、シャリオを通信主任としたアルト、ルキノといった若手通信士もしっかりとついていったらしい。
 これからも機動六課を支える縁の下の力持ちとして頑張ってほしい、と期待を込めて称賛する。

「ヴァイス陸曹は生意気な面が目立ちます……ストームレイダーもリインをお子様扱いしている面が拭えません……それでもお二人の仕事ぶりは十分な評価に値します……っと」

 機動六課の兄貴分ともいえるヴァイスとストームレイダーには、リインフォースⅡの個人的な感情が駄々漏れだが、それとは別にヘリパイロットとしての実力はしっかりと評価していた。
 それに加えて、出来ることならヴァイスにも戦場に立ってほしい気持ちもあるが、彼が抱えている事情がデリケート過ぎて直接言うのも憚られる。
 この機動六課がヴァイスにとっての転機となれば幸いだ、と同僚への心配を書き綴る。

「賢一は最悪です……相変わらず意味不明な行動を取りますし……オブラートの使い方も間違っていますし……一緒に遊んでくれないしお姉さまを邪険にするし……一度説教する必要があるかもしれないです……っと」

 鳴海賢一には私怨全開だった。
 大半は彼の奇行や発言に対しての愚痴だったが、最後の方では構ってもらえない子供のような言い分になってしまっている。
 彼の性格というか生き様を改めさせるための決意をした、そんなリインフォースⅡだった。

「あれ、リイン曹長じゃないですか。どうしたんですか、こんなところで?」

 食堂にやってきた人物がリインフォースⅡの名前を呼んだ。
 その親しみのある朗らかな声音を持つ人物に見当をつけながら、リインフォースⅡは日誌から顔を上げる。
 そこにいたのはやはり、機動六課のロングアーチ通信主任兼メカニックのシャリオ・フィニーノだった。彼女は柔らかな笑みを浮かべながらリインフォースⅡのいるテーブルまで歩いてくる。

「あっ、シャーリー。えっとですね、リインは個人的な日誌を書くことで、機動六課での日々を振り返っている最中なのですよ」

 誇らしげに小さな胸を張るリインフォースⅡに、シャリオは感心したように肯いた。

「へー、日誌かー。私って、そういうの苦手なんですよね。すぐに飽きて放り出しちゃうというか、終わりが見えないとやる気が出ないというか」
「シャーリーは忍耐力が無いんですか?」
「……えっと、そういう日々の積み重ねよりも、つい刹那的な興味関心に流されるというか」
「つまり、シャーリーは忍耐力が無いんですね?」
「――はい。そうです、私は忍耐力が無い飽きっぽい女です」

 シャリオは両手を上げて降参のポーズを取った。
 リインフォースⅡが放つ威圧感に屈した形である。見た目はそのまんま妖精サイズであるというのに、流石は八神家の末っ子であるというのか、なかなかに侮れない人物であるといえよう。
 リインフォースⅡは見た目と言動の子供らしさとは裏腹に、どこか世話焼きというかお説教好きという性格をしている。
 それは、傍から見れば子供が背伸びしているような微笑ましい光景なのだが、どこかの全裸へのツッコミで言動が段々と苛烈さが増してきているため、軽い気持ちでお説教を聞いていると思わぬ精神的ダメージを負うことが稀にあるようになった。

 ――あー、これって藪蛇を突いちゃった感じかな。

 シャリオは頭を抱えてしまいたくなる気持ちに駆られるが、このタイミングで逃亡を図ってもリインフォースⅡは追い掛け回してくるだろう。子供が玩具に夢中になるように、現在のリインフォースⅡはシャリオにお説教をしようとすることに夢中になりかけている。
 それなら、下手に動いて悪化の一途を辿るよりも、この段階でお説教を甘んじて受けることで被害を少なくすることに尽力しよう、とシャリオは頭を空っぽにして馬耳東風を再現することにした。
 そして、リインフォースⅡは「やれやれ」と溜息をつくと、友人兼同僚である眼鏡メカオタ娘に苦言を呈するように口を開く。

「そんなんですから、シャーリーは彼氏とも長続きしないんですよ?」
「ぶっ……!?」

 だが、リインフォースⅡの開口一番は、シャリオの予想を遥か斜め上にいく発言だった。
 シャリオはまるで視界の外からコークスクリューブローを鳩尾に叩き込まれたように呼吸が止まりそうになったが、なんとか呼吸を落ち着けてリインフォースⅡの発言内容について疑問を投げかける。

「ちょ、ちょっとリイン曹長。何ですかソレ、私には全くと言っていいほど身に覚えがないんですけど。というか彼氏なんて生まれてこの方出来たことないですし!?」
「とぼけても駄目ですよ。シャーリーは今まで両手の指でも足りないぐらいの彼氏と付きあった経験があるけど、その殆どが一週間経つか経たないかぐらいで決まってシャーリーから振るらしいじゃないですか。ちなみに、別れの言葉は「アンタじゃ私を楽しませられそうにないわね」――だそうですね?」
「何ですかその近年稀に見る悪女設定!? 私がそんな発言するように見えます!?」
「人は見かけによらないとはよくいったものです」
「勝手に納得しないで下さいよ! どこの誰ですかそんな馬鹿話流した人は!?」」
「え? 賢一ですけど?」

 リインフォースⅡが疑いを微塵も持っていない様子で主犯の名前を言った。
 それに対するシャリオはテーブルに両の手の平を叩きつけて抗議する。

「やっぱりあの変態全裸しかいないと思っていましたよ! ……っていうか、リイン曹長もそんな簡単に信じないで下さいよ!」
「で、でも賢一がいつも嘘をつくとは限りませんよ?」
「なんで普段から全裸・変態・奇行といった三要素を振りまいている鳴海さんを今回に限って信じちゃうんですか!? 露出してる地雷原をスキップで横断するレベルの不用心ですよソレ!」
「え、えーっと……そ、そうです、ああ見えて賢一にも意外と優しいところはあるんですよ?」
「確かにそうかもしれませんけど、あの人は同時に意味不明な行動と言動をするから相殺どころか被害の方が軽く上回っていますよ! 今回だって何で私にターゲットを絞ったのか分かりませんし、そういう役目ならなのはさんとかフェイトさんとか八神部隊長とかいるのに!」

 シャリオは天井を仰ぎながら自身の不幸を嘆いている。
 鳴海賢一という全裸の迷惑を被っている機動六課のトップスリーがいるにも関わらず、どうして自分が全裸の被害に遭わなければならないのか、そのことに本気で納得がいかないようだ。
 リインフォースⅡはシャリオの魂の叫びを聞いて、自分がようやく全裸の戯言に乗せられていたことを悟ったようで、シャリオの周りを飛び回って全力で謝罪を繰り返している。

「あー、シャーリー御免なさい御免なさい! リインが間違っていました賢一の言うことを真に受けたのが間違いでしたー!」
「いいえ、リイン曹長が謝る必要はありません! リイン曹長は確かに少しだけ頭が弱くて純粋無垢ゆえに騙されやすいというか簡単にオレオレ詐欺に騙されてしまいそうな感じですけど、あれもこれも全てはあの全裸が悪いんです!」
「そうです、そうです……って、今なんかさらっと酷いこと言われた気がします!?」
「そんな些細なこと気にしたら負けです! さあ、あの全裸を探し出して痛い目に遭わせてやりましょう、具体的には試作品デバイスの実験体とか!」
「そ……そう、そうですね! ここは一度賢一にも反省してもらう必要がありますね、ちょうど私もお説教しようと思っていましたし!」

 リインフォースⅡとシャリオは結託し、段々と人が集まってきた食堂の真ん中で手を高く掲げた。
 その二人の姿を見ていた人だかりからは、「ああ、まためんどくさいことが起きるな……」といった視線が向けられていた。



「――ん」
「どうしたの、鳴海君?」
「いや、何か急に寒気が……誰かが噂話でもしてるのかも。ほら、俺ってば有名人だし」
「有名人というか……悪名高いというか……はあ」

 どこか鼻高々な服を着ている全裸を目の前にして、機動六課の医師――湖の騎士シャマルは溜息をついた。
 ここは機動六課の医務室で、シャマルは現在、鳴海賢一のカウンセリングを行っていた。医務室に二人きりというシチュエーションに若干の不安を覚えずにはいられないが、いかに変態を地で行く鳴海でも度を過ぎた蛮行はしないことは重々承知している。
 シャマルが不安に感じているのは、こうして二人きりでいるところを誰かに誤解されてしまわないか、といった一点に尽きる。

 ――最近の六課のノリって、少しでも油断したら大火傷を負いそうだし。

 だからこそ、一瞬の隙も見せてはならない。
 例えば、会話の語尾をうっかり噛んでしまうなんて以ての外だ。常識的な人物なら見逃してくれるだろうが、鳴海賢一という“毒”に感染している面々相手では軽く小一時間はそのネタで弄り回されるだろう。
 そんなシャマルの警戒心になんて気付くそぶりも見せず、鳴海はどこか不安げな調子で口を開く。

「ところでシャマルさん、俺ってばどんな感じよ?」
「え? ええ、はい……見たところ、特に回復の傾向は見られないわね。この前のカウンセリングから何も変わってないみたい」
「うわ、マジかー……やっぱり治らないのかな?」
「どうでしょう……鳴海君が自身のレアスキルで負ったペナルティが原因ですから。普通のソレとは症状が若干異なっているのかもしれないし、そもそも治療が可能なのかも不明だから」

 シャマルは一度言葉を区切った。
 不安げな表情を浮かべている鳴海は久しぶりに見たと思いながら、これで何度目になるのかも忘れた言葉を続ける。

「そのペナルティが肉体的問題を引き起こしているのならまだしも、精神的問題も誘発しているとなるとなかなか厳しいんじゃないかな――っと、数年前から同じことしか言えてないわね」
「いや、それは別にいいんだけど……こうしてカウンセリングしてくれるだけありがたいし。――ただ、あれから未だに一歩も進展していないのは、やっぱりちょっとテンションが下がるわー」

 鳴海は肩を落としてがっくりと項垂れた。
 普段から全裸・変態・奇行といった三要素をあらん限りに振りまいている鳴海賢一だが、そんな彼でもシャマルとのカウンセリングの際にはかなり大人しくなる。普段からこんな様子でいてくれるならそれに越したことは無いのだが、それはそれで鳴海賢一という人物の影が薄くなるのもどこか勿体無い気持ちもある。
 こんな彼だが、こんな彼だからこそ救われてきた場面も少なからずあるのだ。九割方は被害を受けることになるのだが、その大半はあの三人娘に及ぶことになるのでどうということはない。

「じゃあ、今回も同じお薬出しておくわね。用法、用量はキチンと守ってね?」
「はーい……ありがとうございましたー」

 鳴海は声のトーンも低いままに医務室を後にした。
 そんな彼の後ろ姿を見送ってから、シャマルは少しだけ過去を振り返る。
 シャマルが初めて鳴海賢一の姿を確認したのは、高町なのはのリンカーコアを抜き取った時だ。
 そんな戦場に、鳴海賢一はさも当たり前のようにそこに存在していた。
 いや、いつの間にか現れていた、といった方がより正しいのだろう。
 シャマルが自分の索敵にかからない存在を初めて認識した時の驚きといったら、シグナムやヴィータ、ザフィーラも一様に驚いていたことは今でも記憶に新しい。
 そして、改めて言うべきことでもないのかもしれないが、そんな戦場においても鳴海賢一は全裸でそこに存在していた。当時は幼い少年でしかなかった彼は、今と変わらない変態ぶりをいかんなく発揮して、魔導師と騎士との戦いにその身を投げ入れた。

「私はもちろん……シグナムやヴィータ、ザフィーラもどうしたらいいのかよくわからなかったみたいだし」

 シャマルは自分たちの呆然とした様子を思い出して、一人微笑みを浮かべる。
 鳴海賢一特有の感染力に堕ちてしまった具体例を述べるのなら、ここ機動六課が既にそうなっていると言えるだろう。
 鳴海賢一のことをよく知っている人たちが抑止力として働いてはいるものの、その浸食レベルはもはや取り返しのつかないところまで来ていると言っていい。
 そもそも、既に鳴海賢一の雰囲気に毒されている自分たちが、彼の抑止力として機能するはずがないという事は、皆が心のどこかで理解していたはずだ。
 だからこれは、鳴海賢一による被害を未然に防ぐというよりも、確実に起きる被害を最小限に抑えるといった意味合いが強い。管理局地上本部の実質的なトップ――レジアス・ゲイズ中将もそう考えて、彼を機動六課に押し付けたのだろう。
 言い方を変えれば厄介払いである。
 一方で、自らの胃を痛めつける馬鹿への処置としては、これ以上ない最適な選択肢だろう。

「鳴海君に毒されないように……とは思っているものの、もう手遅れなんだろうなぁ」

 シャマルは何度目になるかも分からない溜息をつきながら、鳴海賢一のカルテを読んだ。
 そこに記載されている診断結果は、十年前のクリスマスから何も変わっていない。



 いつになく低いテンションで廊下を歩いている鳴海を最初に発見したのは、朝の訓練を終えたばかりのスバル・ナカジマだった。
 スバルは個人訓練の担当であるヴィータからの“ありがたい指導(物理)”を頭の中で反芻していたのだが、機動六課で服を着ている全裸を初めて見たことで、つい声をかけてしまう。

「鳴海さーん!」
「んあ? ああ、機動六課の犬型マスコット二号のスバルじゃん。何か用か?」
「何ですかその犬型マスコットって……しかも二号って、一号は誰ですか?」
「そりゃもちろんザフィーラだろ。あの忠犬振りはお前の犬型マスコットとしての目標にするべきだ。ほら、お手」

 差し出された右の手の平に、スバルは自身の右の手の平を思い切り叩きつけることで応えた。
 ノリの良いリアクションを求めていた全裸には予想外の衝撃だったらしく、涙目になりながら右手に息を吹きかけている。

「いってーなこの熱血馬鹿! そういう過激なところだけギンガに似やがって……ふー、ふー」
「あっ、そういえば鳴海さんってギン姉と知り合いなんですよね?」
「知り合いっつーか元同僚っつーかよく殴られた記憶はあるっつーか軽いトラウマ?」
「あー……だって、鳴海さんってだらしないですもん。そりゃギン姉のターゲットになりますよ」

 スバルの姉――ギンガ・ナカジマ。
 スバルよりも一足早く管理局員となって、現在では父親のゲンヤ・ナカジマの部隊に所属している。イメージとしてはスバルの猪突猛進を生真面目で薄めたような性格をしており、規律正しくも優しく、大らかな包容力も兼ね備えている大人の女性だ。
 母親を事故で無くしているスバルにとっては、姉であると同時に母親ともいえる存在である。
 そんなギンガの目の前に全裸姿の変態がいるなら、あの姉が取るだろう行動はスバルにも何となくだが読めてしまえる。おそらく、説教からの武力行使が大半だろう。普段は優しい性格をしているが、ひとたび怒らせると際限なくエスカレートしていってしまうあたり、人は見た目では判断できないという事だろうか。

「そこまでだらしないかぁ? 俺なりに真面目な態度を取っているつもりなんだけど」
「鳴海さんに真面目云々を解説する資格は無いと思います」
「ぐっ……なんだかお前、ギンガみたいな口振りじゃねえか。トラウマが抉られるんで止めてもらえませんかね?」
「そう見えます? えへへ、実はギン姉から“鳴海賢一:扱い方マニュアル”をデータで貰ったんで、物は試しに実践してみたんですよ。ちなみに、ギン姉からの情報によると“鳴海賢一は意外と真面目な一面を二百五十五面のひとつぐらいに持っているので、正論で言論封殺するのも一つの有効な手”――だそうです」
「――ああ、そう」

 スバルが浮かべる爽やかな笑顔の後ろに、かつての同僚の感情が微塵も込められていない笑顔を幻視した鳴海は、大した反論もすることなく口を閉じた。どことなく不機嫌そうに唇を尖らせているあたり、変態行為を事前に封じられるとストレスがたまる性質なのかもしれない。
 それとも、同年代や年上から叱られることには慣れている鳴海でも、年下に真っ向から叱られることにはイマイチ慣れていないのだろうか。
 ただ、同年代や年上が皆相当の役職を持っているのにも関わらず、堂々と変態行為に興じる事が出来るその豪胆な性格にはどういった過去が影響しているのだろうか。
 スバルはそのことに関して少しだけ興味を持った。

「あの、鳴海さんってけっこう顔が広いというか、いろんなところに出没してる印象を感じるんですけど」
「ああ、まあ知り合いはかなり多いと思う……というかアレだな、スバルって俺のことをモンスターか何かだと思ってないか?」
「いえ、そこまでは……ないこともないかもしれません」
「こういう普通の会話で傷つけられるとかなりへこむんで勘弁してくれ。ただでさえテンションが低いんだよ……ああ、死にたい」

 鳴海は肩を落として項垂れた。
 機動六課に来て早数ヶ月、鳴海賢一とも知り合って数ヶ月目になるが、こんなテンションの彼を見たのが初めてなスバルにとって、かなり衝撃的な光景だった。鳴海賢一から変態行為を取るとここまで普通の男性になってしまうのか……しかも服を着ているので警戒心を抱くことが出来ない。
 ただ、そういった鳴海賢一を果たして“鳴海賢一”として正しく認識できるかというと、スバルには自信が無かった。高町を始めとする彼の古くからの知り合いはどうなのだろう、全裸でもなければ変態でもない鳴海賢一を、彼女たちは果たして“鳴海賢一”と呼べるのだろうか。

「うーん……これは難しい問題だなぁ」
「何を一人で勝手に唸ってんだ?」
「い、いえ、特に何でもないですよ。それより、なんだか本当に元気ないですね……どうしたんですか? 服も来てるし」
「一身上の都合によりって感じ。残酷な現実を再確認しただけだった」
「鳴海さんでもそういったテンションになることがあるんですねぇ。てっきり年中ハイテンションを貫き通すのかと思ってました」

 真顔で驚いた様子のスバル。

「お前は俺を一体何だと思ってんだ……それより、そっちは朝練だったのか?」
「はい、個人訓練という事でヴィータ副隊長からのご指導を受けてました」
「ああ、ヴィータの個人訓練ね……気持ちよかった?」
「……えっと、前後の文章が全く繋がっていないんですけど」
「いやー、俺もよくヴィータにフルスイングされてるんだけど、最近あの刺激に目覚めたっぽくてな。俺の中ではフェイトの電撃に次ぐ第三位にランクインしてる」
「……正直聞きたくないんですけど、ちなみに第一位にランクインしてるのは?」
「そりゃあお前、高町の砲撃だろうが。あの圧倒的な絶望感の裏にある背徳的な感覚は病み付きになること必死だぜ。スバルも一度砲撃してもらえば理解できると思うけど」
「それを理解したら人間終わりだと思うんですけど……」

 スバルはげんなりした様子で顔をしかめる。
 この数ヶ月に渡る機動六課での生活の中で、鳴海賢一という変態の在り方をある程度は理解出来たつもりでいたが、どうやら目の前の変態の底はまだまだ深いようだ。その深淵を理解できる頃には、自分もあの隊長陣のように染まってしまうのだろうか、とスバルはぼんやりと思う。
 その時、廊下の先から声を上げて爆走してくる二人組が現れた。

「あっ、いました賢一です!」
「ここにいましたかこの変態! 無意識に全裸姿の変態を探していたから無駄に手間取りましたよ! さあ、この試作デバイス“ナノハ・タカマチ”の威力をとくと見せてやりましょう、リイン曹長!」

 こちらに向かって走ってくるのは、シャリオと普通の子供サイズにまで大きくなったリインフォースⅡだった。シャリオは鳴海賢一に指を向け、リインフォースⅡは初めて見る形の大筒デバイスを脇に抱えている。
 リインフォースⅡが大きくなっている姿は初めて見たスバルだったが、ここ機動六課では日常的に目の前の変態が闊歩しているので、初見でも特に驚くようなレベルではなかった。
 ティアナ辺りはそんな自分の境遇に頭を悩ませることになるのだろうが、そこまで思いつめない性格のスバルは割と臨機応変にその場その場で対応していける。この場で自分が取るべき行動とは、こちらに向かって走ってくる二人と鳴海賢一とを結ぶ直線上から退くことだと本能的に悟った。

「あ? 何を廊下で騒いでんだあの二人?」

 鳴海が他人事のようにそうのたまった。
 普段は動物的な危機察知能力を発揮して、自ら嬉々として飛び込んでいくのだが、今の心理状態ではその本能も発揮されないらしい。つくづくその場のノリで生きてる人だ、とスバルはむしろ感心した。

「リイン曹長、チャージは完了しましたか!?」
「もう少しです! 十……五……完了しました!」
「よっしゃ! 発射ぁぁぁぁぁっ!」

 シャリオの掛け声と同時に、リインフォースⅡが抱える大筒デバイスから雪のような白い閃光が砲撃された。
 その閃光は一直線に突き進み、呆然として動けないままの鳴海を呑み込んだ。肉が焼けるような生々しい音が聞こえ、鳴海の言葉にならない悲鳴が廊下に木霊している。
 鼻先を掠めた閃光に冷や汗を垂らしたスバルは、目の前の惨劇から目を背けるようにシャリオとリインフォースⅡの様子を窺うことにした。

「よし、命中! 試作品でもこれだけの威力が出せるなら十分です!」
「ふわぁ……まるで、なのはさんみたいな砲撃魔法ですー」
「ええ、魔力資質があれば誰でも気軽にエースオブエース並みの砲撃魔法を撃てる、それをコンセプトに開発したのが試作品“ナノハ・タカマチ”ですから! ちなみにAIは非搭載ですが、完成品にはなのはさんみたいなAIを搭載したいと思っています!」
「それは随分と尖ったコになりそうですね!」
「砲撃特化の性格に調整してみせますよぉ! っていうか砲撃以外は出来ないようになってますしね!」

 和気藹々としている二人の会話を聞いて、スバルは改めて状況を整理することにした。
 鳴海賢一は高町なのはクラスの砲撃魔法を浴びた――以上。
 スバルは鳴海賢一が気絶している姿を見て、普段は絶対に思わないであろう事を呟いた。

「――鳴海さんも、けっこう苦労してるんですね」

 これが鳴海賢一の自業自得だと確信している上で、スバルはそんなことを思わずにはいられなかった。



「――ん。賢一君がなのはちゃんの砲撃魔法で撃たれた気がする」
「それはまた随分と具体的な内容だな、八神」

 陸士108部隊の部隊長室。
 そこに居合わせているのは機動六課の部隊長こと八神はやてと、陸士108部隊の部隊長ことゲンヤ・ナカジマだった。
 こうして二人が顔を合わすのは、今さっき話題に上がったばかりの馬鹿の出向許可を頂きに八神が訪ねて以来である。
 あの時には近いうちに飯でも奢ってもらうと約束をしたのだが、機動六課設立に伴い忙殺されていた八神の都合上、未だそういった機会は訪れていない。
 ゲンヤは気前がいいというか、親分肌な気質を持っているので、自分が遠慮すると逆にランクの高いところに連れて行こうとする。そのことを知っている八神は、飯に誘われるタイミングがやってきたら誠心誠意の遠慮を見せようと心に決めていた。
 八神はそんな胸の内を明かすことなく、あの馬鹿の名前を出されたことで反射的にげんなりしているゲンヤに苦笑する。

「あはは。……まあ、機動六課が設立して少しですけど、彼と一緒の部隊にいると嫌でも察知してしまいまして。――ああ、また馬鹿やってるんやろなぁ、って感じに」
「そうなるともう終わりだな。近いうちに今度は胃痛が襲ってくるようになる。ちなみに、わざわざ言うまでもないだろうが俺の体験談だ」
「それは聞きとうない体験談ですわ。私はまだ十九そこらの小娘ですよって」
「十九そこらの小娘が一部隊を率いる長やってんだから、そりゃもう大したもんじゃねえか。あのヒヨッコ同然だったお前さんがここまで立派になるなんて、研修を担当した俺にしてみれば鼻高々だぜ」

 純粋に褒めてくれているであろうゲンヤに対し、八神は謙遜するように身体を縮こませる。

「いやいや、私なんか希少技能持ちの特例措置が、自分が思う以上に上手い具合に転がってくれただけですよ。まだまだ、周りからは認められているなんて思っていませんから」
「何を一丁前に謙遜なんかしてんだ。そういうのはもう少し歳食ってから覚える処世術で、お前ぐらいの年齢は無謀ともいえるぐらいに無茶してナンボだろ」
「――それも体験談ですか?」
「――さてな」

 八神からの問いかけに、ゲンヤはわざとらしく肩をすくめて言った。
 そんなゲンヤの態度を見て、八神は自分にはこういった余裕が足りないのだろう、と思わずにはいられない。単なる歳の差で片づけるわけにはいかない、そこには今までに潜ってきた経験の差が如実に表れていた。
 今回の機動六課が立ち向かう事案を通して、自分も少しぐらいは目の前の先輩に近づけるように成長出来たらいい、と八神は思う。
 そんなかつての教え子の真剣な眼差しを茶化すように、ゲンヤは軽い調子で言った。

「それで、さっさと主題に移ろうぜ。結果が分かりきっていると言っても、こういう形式的な仕事はやることに意味があるんだからな。――機動六課部隊長八神はやて、陸士108部隊に何の用があって来た?」
「――結論から言わせてもらうと、そちらの人員を貸してほしいんです。しかも、腕利きの捜査官を数名ほど」
「その理由は?」
「ミッドチルダに張り巡らされた違法物品の密輸ルート、その捜索を得意としている知己の部隊が108部隊だからです。機動六課が追っているロストロギア“レリック”の捜索に、陸士108部隊にも協力してほしいと考えています。――まあ、ぶっちゃけますとナカジマ三佐には個人的なコネがあるんで、それを有効に活用させてもらおうかと」
「俺はお前のそういう正直な性格っつーか、歯に衣着せない物言いは結構気に入っているんだよな。――まあ、ぶっちゃけるとどんどん使ってくれて構わねえぞ」

 笑みを浮かべながら本音を吐露した八神に対して、ゲンヤは自身の懐の広さをアピールするように優しげな微笑みを返した。
 ともあれ、これは二人にとっては結果が分かりきっている、そんな交渉の余地も無い形式的なやり取りだった。
 八神はゲンヤ・ナカジマと陸士108部隊というコネを頼り、ゲンヤは後輩からのコネ要請に快く応える。ロストロギア“レリック”という両者にとって共通の密輸品をターゲットにして、両部隊が協力体制を敷くことは機動六課が設立される以前より、既に決まっていた事だった。
 だから、このやり取りは二人がお互いの気持ちを再確認するための儀式、といった見方が強い。ミッドチルダどころか次元世界までも揺るがしかねない“レリック”という代物、それに加えて八神とゲンヤがレリック事件の背景に存在していると睨んでいる“闇”に対して、改めて真っ向から立ち向かう意思をお互いにぶつけ合ったわけだ。
 そして、その再確認も滞りなく完了した。両部隊の長は、どちらも逃げることなく戦うことを選択した、そういうことだ。
 八神は規律正しくしていた姿勢を崩し、ソファーに全身を委ねるように身体の力を抜いた。対面を見れば、ゲンヤは既に偉そうに足を組んで煙草に火を点けようとしている。年下の役目として火付け役でもしようかと思ったが、そもそもライターなんて持ち歩いていないし、そういうある種のゴマ擦りに似た行動をゲンヤ自身が嫌っていることも知っていた。
 八神は結局動くことなく、ゲンヤが煙草に火を点けるのをぼんやりと見ていた。煙草に火が付き、煙が部隊長室の天井に昇っていく。ゲンヤは煙草のフィルター部分を右の人差し指と中指で挟むようにして持つと、吸った煙を天井に向けて吐き出した。対面に座る八神に煙が行かないようにした当然の配慮である。

「――ふぅ。悪いな、非喫煙者の前で吸っちまって」
「気にしないでください。制服に臭いが付いたらクリーニング代は貰いますけど」
「これ以上の出費は勘弁してもらいもんだ。――最近、ギンガのやつが家計に厳しくなってきてな? 無駄遣いを節制するところまでは理解できるんだが、仕事帰りにキャバクラにちょろっと寄って泥酔して帰宅すると、決まって玄関で仁王立ちしている愛娘からボディーブローを食らって、胃の中を強制的にリセットされるようになったんだよ。これって反抗期か何かなのかね?」

 真顔で首を傾げたゲンヤに対して、八神は苦笑をカモフラージュにして内心でギンガに同情していた。父親が夜遅く泥酔してキャバクラから帰ってきただなんて、年頃の女性なら粗雑な扱いに出ても何ら不思議ではないだろう。
 八神にはそういう経験は無いし、今後も訪れることの無い光景である。
 しかし、仮に自分がギンガの立場にいたなら、少なくとも一週間は口を利かないだろう。十代女子の父親に対する潔癖を理解していないが故に起きる、典型的な意思疎通の齟齬だと八神は思う。

「まあ、そんな暴力過多な愛娘でも、鳴海の馬鹿野郎とは比べるべくもないんだけどな。あの馬鹿はもう駄目だ、あいつの行動指針は常人の想像を遥かに超えやがってて、まともに対応出来やしねえ」
「それには激しく同意しますわ」

 ゲンヤの言葉に肯きながら、八神は以前より感じていたことを内心で思う。
 ゲンヤは鳴海賢一のことを厄介払いしたがっているが、彼の事をげんなりとした表情で語る一方で、その頬が緩んでいるのは一体何故なのか。
 そして、八神はこう思っている。
 ゲンヤはおそらく、鳴海賢一のことを手のかかる息子のように思っているのではないだろうか。
 あの馬鹿と同じ部隊になったことで、八神はある一つの想いを鳴海賢一に抱くようになった。
 それは、常に馬鹿ばかりしでかす彼を何となく放っておけない、といった感情だ。
 ところ構わずボケ倒す鳴海に対しては、その全てを無視することが基本にして最も賢い対応だが、八神は自分でも気づかない内についツッコミを入れてしまう。たまに過激なツッコミにまで発展することはあるが、鳴海は性質の悪いことに肉体的苦痛を求めるタイプのマゾなので、そこまで発展してしまう時点で八神は鳴海に負けてしまっているのだ。

 ――もしかして、私って結構な“お人好し”なんかなぁ。

 ふと胸の内に芽生えた“お人好し”というキーワードによって、八神は内心にある不確かな気持ちを納得させた。
 だからこれは、そういった性格から来る当然の衝動なのだろう。
 あるいは、自分と鳴海との間のツッコミとボケの関係が異常にマッチングしているという事なのだろうか。
 八神はそう考えて、そこまで考えてようやく戦慄を覚えることが出来た。アカン、といった言葉が波となって胸に渦巻いている。自分と鳴海には芸風に相違がある、どちらかといえば高町やフェイトの方が彼との芸風にマッチしているだろう。高町は見ての通りだし、フェイトは脱ぐことに定評がある魅惑のナイスバディだ。全裸を一つの芸とする鳴海には似通っている節がある。
 だから、きっと自分とゲンヤは似た境遇にあるのだろう、と八神は思う。
 鳴海賢一は馬鹿で、奇人で、変態で、少しでも目を離すと好き勝手に暴走してしまうから放っておけない。お人好しであるが故に、彼に構わないという選択を取ることが出来ずに、嫌々ながらもツッコミに回ってしまうのだ。
 そして、そんな彼の周りには八神を含めて多くのお人好しが集まっているのだろう。
 八神がそう結論に入ろうとした時、部隊長室のドアをノックする音がした。

「部隊長、ギンガ・ナカジマ陸曹です」
「おう、入っていいぞ」
「失礼します」

 ドアを開けて入ってきたのは、八神にとっては顔見知りの女性だ。
 ギンガ・ナカジマ。ゲンヤの娘でスバル・ナカジマの姉である。

「お久しぶりです、八神二等陸佐」

 ギンガは八神を見ると、深く一礼した。
 彼女は規律正しいというか礼儀正しいというか、とにかく生真面目な性格をしているのが特徴である。スバルと比較するとその特徴はより顕著となるだろう。スバルは猪突猛進で場面に応じて物事の切り替えを得意としているが、ギンガは理路整然としてどんな場面にも理性的に対応するのを得意としている。
 八神は相変わらずのギンガの振る舞いを懐かしく感じながら、一礼したままのギンガに軽い調子で声をかけた。

「久しぶりやね、ギンガ。――そういうかたっくるしい挨拶は終わりにして、とりあえずソファーに座ってくれへんかな? 首を上げっぱなしで疲れてもうた」
「――依然と変わらない様子で安心しました、八神二佐」

 ギンガは表情を柔らかくして微笑むと、ゲンヤの隣に腰を下ろす。
 ゲンヤとギンガ。二人を並べると実に際立つのだが、この父親と娘は本当に似ていない。ギンガの目、鼻、唇、その他のパーツにゲンヤの要素は微塵も存在していなかった。
 既に他界していると聞いた母親に似たのだろう、と八神は思う。
 同時に、ギンガやスバルがゲンヤに似ていなくて心の底から神に感謝していた。

「うん。やっぱり美少女は正義やな!」
「本当に相変わらずですね」

 八神の唐突な気持ちの吐露にも、ギンガは優しげな微笑で応じてくれる。
 これが機動六課であったならば、自分はすぐさまレズ疑惑を向けられてしまうだろう。鳴海賢一の度重なる暴走をキッカケに、機動六課の職員の中にも容赦の無い人材がどんどん出てきている。あまり上下関係を気にしない八神の方針でもあるから仕方ない面もあるが、一つの失言が自分の首を絞めかねない、そんなボケに厳しい雰囲気が機動六課には満ち始めている。
 その点、ギンガは普通だ。素晴らしく普通な状態である。
 だからこそ、八神はギンガの事が欲しくて堪らない。

「機動六課と陸士108部隊が協力体制を敷くんやけど、ギンガもそのことは聞いとるよね?」
「はい。昨夜、キャバクラ帰りで泥酔した父親から冗談交じりに伝えられました」
「このオヤジ本当に最低やな」

 さっきのフォローが丸っきり裏目に出る結果となってしまった。
 八神とギンガは冷たい眼差しを隣のゲンヤに向けるが、ゲンヤは我関せずとばかりにそっぽを向いている。勝ち目の無い勝負は受けない、そういった判断なのだろう。
 ギンガは視線を合わそうともしないゲンヤから八神に向き直る。
 それを確認したゲンヤから「よっしゃ、勝ったぞ! テクニカルKOってやつだな!」という声が挙がったので、ギンガは言葉ではなく物理的に黙らせる方針をとった。脇腹への鋭い肘鉄である。急に叩きつけられた激痛に身体を折るゲンヤだが、二名の女子は少しも気にする素振りを見せずに話を続けた。

「ギンガには近いうちに機動六課に出向してもらおうと考えてるんやけど、それは別に構へんかな?」
「はい、私もそのつもりでしたし構いません。むしろ、個人的には願ったり叶ったりです、巷で人外魔境と呼ばれる機動六課に出向するなんて、きっと自分にとっての良い経験となると思いますから」
「ああ、最近の査察は厳しいからなぁ。賢一君が全裸で歩いとるだけで怒り出すんやから、あの人にはカルシウムが足りないんやろなぁ」
「普通、そんな変態がいるとなれば怒りたくなるモノですよ?」

 ――あれ? 私って結構取り返しのつかないところまで来とるんちゃうやろか?

 真顔で反論してきたギンガの表情を見て、八神は自分の発言に遅ればせながら疑問を覚えるに至った。
 鳴海の持ち芸の一つに全裸があり、彼はよくその芸を披露しながら機動六課を悠然と闊歩している。股間にはステルス魔法を応用したモザイクがかけられており、猥褻物を直視することはない安心設計だ。男性局員のみならず、最近では女性局員すらも鳴海の全裸芸を気にしたりする素振りを見せなくなっている。
 それどころか、鳴海が持つ特有のノリに触発されたのか、彼を中心とした和気藹々としたコミュニケーションが展開されている光景も偶に見かけるようになったぐらいだ。
 そういった光景を目にしてきたことで、自分でも気づかない内に感覚がマヒしていたのかもしれない、と八神は思う。口では散々に鳴海をコケにしていても、その実は鳴海が奔放に振る舞う様を当然の事として認識していたのではないだろうか。

「うわぁ……アカン、賢一君の“毒”に感染しとるわコレ」
「ショック療法ですが、こう自分の鳩尾に重い一撃を入れれば正気に戻りますよ?」
「嫌やぁ……そんなショック療法は堪忍してぇ……。というか、何でそんな真顔で物騒な発言しとるんやこの美少女……」
「私も鳴海さんの“毒”に対抗していた人間の一人ですからね。そのおかげで、効率よく鳩尾に一撃を入れる技術が身に付きました」
「それってもう、ギンガも大分おかしくなっとるやん……」

 八神は思った。これは人選を間違ったのかもしれないと。
 これから先、機動六課に巻き起こる更なる波乱を予感せずにはいられない、八神はやて部隊長だった。


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