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No.33454の一覧
[0] 【チラ裏から】高町なのはの幼馴染(全裸)[全裸](2014/11/12 02:33)
[1] 新人二人と全裸先輩[全裸](2012/06/21 09:41)
[2] 機動六課と雑用担当全裸[全裸](2012/07/02 14:42)
[3] 聖王教会と全裸紳士[全裸](2012/07/15 23:22)
[4] 狂気の脱ぎ魔と稀代の全裸[全裸](2012/07/15 23:23)
[5] 機動六課と陸士108部隊[全裸](2012/08/15 02:00)
[6] ツインテール後輩の苦悩と全裸先輩の苦悩[全裸](2014/11/12 02:33)
[7] オークション前の談話[全裸](2012/10/21 03:18)
[8] オークション戦線[全裸](2012/12/06 04:50)
[9] 女装系変態青年の宣戦布告[全裸](2012/12/06 04:47)
[10] ナース服と心情吐露[全裸](2013/12/07 14:05)
[11] 閑話[全裸](2014/02/01 01:52)
[12] 全裸と砲撃手[全裸](2014/04/15 19:24)
[13] 全裸と幼女[全裸](2014/08/19 01:07)
[14] 全裸と幼女とツンデレと機動六課という魔窟[全裸](2014/11/12 02:42)
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[33454] 全裸と幼女とツンデレと機動六課という魔窟
Name: 全裸◆c31cb01b ID:ae743e2c 前を表示する
Date: 2014/11/12 02:42
「――それでは、ヴィヴィオさんは鳴海さんが面倒を見ているんですか?」
「はい。賢一君ってば、ああ見えて意外と面倒見が良いんですよ」

 本日の重要議題も終えて、騎士カリムは自室で四人の友人たち――八神、クロノ、高町、フェイトたちと〝世間話〟に興じていた。
 最初の方は、初対面である高町とフェイトとの事務的なモノではない、友人として極めてフランクな自己紹介も兼ねた〝過去〟を中心とした話題だった。
 カリムは八神やクロノから二人の経歴を伝え聞いてはいたが、実際に二人の〝過去〟を聞いてみると、内密に義弟に買わせているカリム秘蔵の世俗に塗れた小説を読んでいるような気にさせられた。
 それだけ、高町とフェイトが経験してきた出来事は、カリムにとって非常に魅力的に感じられる出来事だった。
 決して華々しいばかりではなかった彼女たちの経験だが、そんな苦痛や挫折すらも今現在の彼女たちの強さや優しさに培われているのだから、カリムは大変失礼と思いながらもその〝青春〟の一ページを心底羨ましいと感じていた。
 そして、いつしか話題は彼、彼女らに共通する事項の一つとして、最も巨大で異質な存在である鳴海賢一の過去話へとシフトしていった。

「そういえば、鳴海さんは幼い頃からあのような性格だったんですか?」

 カリムの言葉に応じるように、高町、フェイト、八神、クロノの面々は、それぞれ古い思い出を馳せる様な表情を浮かべると、

「……まあ、少なくとも私が初めて賢一君に会った頃には、よく全裸姿にはなってたのは確かやね」
「……僕が初めて鳴海にバインドをかけたときも、清々しいくらいに堂々とした全裸姿でしたね」
「……賢一に全裸姿で追いかけられた時のトラウマは、この年になっても全然忘れられないです」
「……おかしな話ですが、今は個人的に嬉しくもなんともない彼に対する耐性がついているので、適当に流すことが出来るだけなんですよね。正直、まだ慣れていない頃は普通にトラウマ物でした」

 何とも言えない儚さを言葉の端々に纏わせながら、被害者たちはそれぞれ物思いに耽ったように過去のトラウマを掘り起こしていた。
 その四人が纏う雰囲気に、カリムは以前の鳴海との出会いを思い出してしまい、この被害者たちに親近感を覚えてしまいそうになる。
 しかし、カリムはその感情を寸でのところで押し留めた。
 この被害者たちに親近感を覚えてしまうという事は、それすなわち〝あちら側〟に立ってしまうということである。
 聖王教会の重鎮の一人として、それだけは何としても避けなければならない事態だ。
 カリムは目の前の被害者たちとは違う――そう自分に言い聞かせながら、そんな気持ちを悟られないように口元を手で隠しながら言う。

「あらあら。みなさん、鳴海さんには昔から手を焼かれているのですね。私は今後ともそのような経験は出来ないでしょうから、ほんの少し――ええ、ほんのすこーしだけ羨ましいです」

 心にも無い言葉とは、まさにこのようなことを言うのだろう――カリムは四人の被害者たちに対して、人間としての明確なアドバンテージを誇示するかのように言ってのける。
 しかし、四人の被害者たちが返した反応は、そのどれもがカリムの予想を大きく裏切るものだった。
 八神は肩を小刻みに震わせながら笑い出しそうになっているのをこらえ、クロノは小さな溜息を一つ零し、高町とフェイトの二人は申し訳なさそうに苦笑している。

 ――おかしい。明らかに、自分が予想していた反応と何かが違っている。

 カリムは自分を取り巻く状況に疑問を覚えながら、恐る恐る口を開く。

「……あの。どうして、みなさんは私をまるで可哀想な人を見るかのような視線で見てくるのですか?」

 カリムは何故だか、合計八つの瞳から身に覚えのない哀れみの感情を投げかけられている――そんな風に思えて仕方が無いでいた。
 すると、カリムの言葉を受けた四人が目配せをして同時に肯くと、四人を代表するかのように八神が屈託の無い笑顔を浮かべながら、

「――だって、カリムも近い内に私らみたいになるんやし、それぐらいの煽りは逆に微笑ましいとしか思えんよ」

 カリムにとっては起こりえないはずの〝預言〟――自身の持つレアスキル〝預言者の著書〟でも明記されていない災厄を口にしたのだった。



「というわけで、今からヴィヴィオに機動六課の案内をしていこうと思う」
「何か具体的なプランは考えているんですか?」
「そりゃあお前、まずは女子更衣室とか女子トイレとか女子風呂とかに決まっぐへっ!?」

 さっそく破廉恥な提案をした変態の脇腹に向けて、ティアナは少し前を歩くヴィヴィオに悟られないように、高町直伝の鋭いエルボーを放った。
 自身の脇腹を襲った強烈な痛みに耐えきれずに、廊下にうずくまり苦痛に悶え始めた変態を見下ろしながら、ティアナはドスを利かせた声で改めて問いかける。

「――それで、何か具体的なプランは考えているんですか?」
「と、とりあえず、六課の中をぐるっと一周する感じで、ハイ」
「よろしい」

 鳴海のとってつけたような発言を受けて、ティアナは小さく溜息を吐く。
 普通の人相手に脇腹エルボーなど人として絶対に出来ない行為だが、そんなありきたりな良心ですら鳴海相手では微塵も発揮されない。
 それは、自分が人でなくなったからではなく、そもそも鳴海という生命体が人というカテゴリーに属していないからである。
 この考えはティアナ独自のモノではなく、機動六課全体に根付いている思考、言うなれば機動六課で生活を営む上での常識なのであった。
 鳴海の発言や行動に対しての処罰を快く思う隊員はいても、やりすぎだと非難する隊員は一人も機動六課には存在していない。

「ケンイチ、どうかしたの?」

 しかし、そんな機動六課の当たり前の常識を、ヴィヴィオという一人の少女は知らない。
 前方を歩いていたヴィヴィオは、ティアナが鳴海の脇腹にエルボーを放った瞬間は捉えていない。
 鳴海の苦痛に満ちた声を聞いて振り返ったヴィヴィオは、未だ痛みに悶絶している鳴海の頭を指先でつんつんと突いている。
 ヴィヴィオなりに心配しているのだろう――そう思うと同時に、これは珍しい光景だとティアナは心の底から思った。
 鳴海が廊下でうずくまっている現場に自分が遭遇したら、確実に見なかったことにしてその場を立ち去るだろう。
 ヴィヴィオが鳴海という人間の事をあまり知らず、機動六課という異常な環境に適応できていない事の証明だろう。
 やはり、ヴィヴィオに気を利かせて鳴海に懲罰を与えたのは正解だった。普段の鳴海に対する機動六課のありのままの姿を見せたら、この小さな少女はショックで卒倒してしまうかもしれない。
 とすれば、自分が取るべき行動は――ティアナは逡巡した後、優しげな声音で言った。

「大丈夫よ。この変態……じゃなくて、鳴海さんはいきなり悶絶し始める癖があるの」
「そ、そうなの?」
「ええ。数分もすれば〝痛みを堪えてフラフラと立ち上がるフリ〟をしながら起き上がるわ。――ねえ、鳴海さん?」

 ティアナの〝余計な事を言ったら酷い事が起きるぞ〟といった念を込めた発言を受けて、鳴海はよろよろとふらつきながら起き上がる。

「お、お前、何だか性格とか言動が高町たちに似てきてねえか?」
「だとしたら、それは鳴海さんの所為ですね」

 鳴海の非難に皮肉を返しながら、ティアナは不敵な笑みを浮かべた。
 この変態を相手取るにあたって重要な事は、コレが持つ独特な〝波〟に飲まれないように自我をしっかりと保つことだ。
 大胆不敵、傲岸不遜、唯我独尊――それぐらいの意気込みで臨まなければ、自分でも気付かない内に変態のペースに乗せられてしまうことだろう。

 ――こういう機会を徹底的に避けるのが一番なのは理解してるけど、……機動六課だとそれも無理だしね。

 そう思いながら、ティアナは内心でこの環境に悪態をつく。
 機動六課に籍を置いてしまっている以上、鳴海に関わらないでいられる可能性は無きに等しい。
 それなら、鳴海に関わらざるを得ない環境は受け入れたうえで、どれだけ鳴海のペースに抗えるかに要点を絞った方が精神的に楽だと悟っていた。

「さあ、ヴィヴィオは私と手を繋ぎましょうね――おいそこの全裸、さっさと行きますよ。私には事務仕事も残ってるんですから、そうゆっくりと懲罰に時間をかけてる訳にもいかないんです」
「ちょっと扱いがセメントすぎやしねえか?」
「これでも慈悲は残してるつもりです。――慈悲を持った上でセメントに対応してますから」
「それは慈悲なんじゃなくて、やっぱり無慈悲なんだと思うわ」

 ヴィヴィオの手を取り、後方を歩く鳴海と軽口を交わし合いながら廊下を歩いていく。
 何人かの隊員と廊下ですれ違うたびに、後方を歩く変態とセットにされて奇怪な視線を投げかけられるのが厄介だが、そんな些細な事にいちいち頭を悩ませていてはキリが無い。
 今はただ、高町との約束を果たすためだけに邁進して、鳴海とヴィヴィオのお目付け役の任務を無事にやり遂げるだけだ。

「そういえば鳴海さん、機動六課を一周するとは言ったものの、どこを案内していきましょうか?」
「ん? そりゃあ、ヴィヴィオと一緒に適当に見て回ればいいんじゃねえの?」

 きょとんとした顔で言う鳴海の頭には、おそらく機密事項といった概念は存在していないのだろう。
 単純に、ヴィヴィオのお守りをすればいいだけではない事は承知していたが、鳴海の言動はなかなかにティアナの頭を悩ませるものだった。

「……一応忠告しておきますけど、機動六課にだって一般人には解放できない部屋がありますからね?」
「え? もしかして、八神の仕事部屋とか普通にアウト?」
「普通どころか、極めてアウトな部屋ですね。というか、八神部隊長に呼び出しでもされない限り、隊員たちには縁が無い部屋だと思いますけど」
「八神とリインが留守中にやたら豪華な椅子にふんぞり返って、一人メリーゴーランドごっこするのはセーフだよな?」
「あまりにも悪質な行いなのでアウトです!」

 この変態らしい阿呆な行いを暴露されてしまった。
 というか、これは迅速に八神に連絡しておいた方がいい案件だろう、とティアナは思う。
 この変態の尻(素肌)が接触した椅子に自分で気付かぬ内に座ってしまっているなんて――、その境遇を自分に置き換えてみたティアナには、想像するだけでも十分に卒倒レベルの代物だった。
 そんなティアナの苦悩を知らずに、ヴィヴィオが明るい笑みを浮かべてながら言う。

「わたしもケンイチとそれやってみたい!」
「……ヴィヴィオなら可愛いイタズラで済むかもしれないけど、鳴海さんの場合は肌が直に接触しちゃうから今回は駄目よ。また今度、八神部隊長にお願いして見なさい」
「……はーい」

 渋々といった感じだが、ヴィヴィオは無茶振りでしかない提案を引っ込めてくれた。
 ヴィヴィオぐらいの年齢になると多少我儘な部分も出てくるだろうが、そう考えるとヴィヴィオは同年代の子供たちに比べると聞き分けがいいのかもしれない。

 ――うーん……。でも、なのはさんの口ぶりだともう少し手間がかかりそうなんだけど……この子なりに、この状況に安心してくれているのかな。

 小さな歩幅ながらも快活に歩いているヴィヴィオと手を繋ぎながら、ティアナはふとそんな事を考えていた。



「おっ、何だお前ら。幻術コンビが二人揃って、仲良く託児所でも始めたのか?」
「……いいえ、ヴァイス先輩。これは何やらキナ臭い事件の香りがしますね!」
「ほう、アルト後輩。して、その事件とは如何な物なのかね?」
「それはズバリ! 鳴海さんとティアナの愛のけっしょ――」
「ふんっ!」

 漫才コンビの片割れがとんでもない事を口走る前に、ティアナは全力で拳骨を振り下ろして沈黙させた。
 機動六課の戦闘人員では非力に分類されるティアナの拳骨とはいえ、隙だらけの頭頂部に振り下ろせば非戦闘員一人行動不能に追い込むことは容易かった。

「アルト、その発言は流石に自業自得だと思うわ」
「いやあ、俺も流石に女の方からそういう下ネタ出されると引くわー」

 漫才コンビと一緒に給湯室で休憩を取っていたルキノ・リリエに加え、その漫才コンビの相方であったはずのヴァイス・グランセニックも、冷ややかな視線をテーブルに突っ伏した茶髪の女性に向けた。
 その茶髪の女性――アルト・クラエッタは涙目になりながら顔を上げると、椅子から立ち上がりながら大袈裟に腕を振るい声を荒げる。

「ちょ、ちょっと待ってくださいよヴァイス先輩にルキノ! 今の話の何処が下ネタなんですか!? 今のはあくまで、鳴海さんとティアナの子供なんじゃないかっていう定番のネタを振っただけですよ!?」
「そういう残念なところが色気の無い原因なんだよ、この天然セクハラ整備員め」
「まあ、アルトが天然セクハラ乙女なのは男兄弟の家庭で育った所為でもあるので、あまり追及するのもそこそこに留めておきましょう」
「女で天然セクハラ趣味ってすげえ希少価値だよな」
「ねえねえ、セクハラってなーに?」

 誰かが何かをやらかせば、そのミスに寄ってたかって周囲の人間が煽りを入れるのが、ここ機動六課における隊員たちの定番である。
 普段は静かな給湯室も、これだけのメンツが一堂に会せばやはり騒がしくなってしまうらしい。ティアナは地味に痛む手を擦りながら、この喧騒に対するささやかな抵抗として溜息を吐いた。
 
「つーか、このちびっこってこの前の事件で保護した子だよな?」
「はい。聖王教会の医療院で治療と精密検査を終えたところで、なのはさんが妙に懐かれて預かって来たそうです」
「ちびっこじゃないよ! ヴィヴィオはヴィヴィオって言うの!」

 ヴァイスのちびっこ発言に、ルキノからお菓子で順調に餌付けされていたヴィヴィオが反論する。
 その際に、ヴィヴィオの口元から菓子くずがテーブルの上に飛び散るが、ルキノが静かに素早くティッシュで纏めていた。

「へえへえ。ちびっこヴィヴィオちゃんっていうんでちゅねー」
「むー! ケンイチ、このおじさん意地悪だよ!」
「ちょっと待て、俺はまだおじさんって歳じゃねえぞ。呼ぶならお兄さんって呼べ」
「ねえお兄さ~ん。私、今度買いたい限定盤のエロゲがあるんだけどぉ、少しで良いからお金貸してくれなぁい?」
「全裸で猫撫で声出すんじゃねえよ馬鹿! マジで鳥肌が立ったじゃねえか!」

 ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てるおじさんと全裸と幼女を尻目に、ティアナはルキノが淹れてくれた紅茶をゆっくりと味わっていた。

「どう? お口に会うかしら?」
「はい。とっても美味しいです」
「そう、よかった。実はね、その紅茶の茶葉は私が家から持ってきたお気に入りなのよ」

 そう言って、優しげな笑みを浮かべるルキノ。
 局員として先輩にあたるルキノだが、アルトとは違うその物静かな出で立ちを決して裏切らない常識人な性格を、ティアナは口には出さないが非常にありがたがっていた。
 機動六課における常識人といえば、ルキノの他には寮母のアイナ・トライトンぐらいしか在籍していないので、数少ない貴重な人物である。

「へえ。インスタントでは出せない良い香りがするというか、味に深みある感じがしたのはそういう理由だったわけか」

 ルキノの言葉を聞いて、アルトが妙に神妙な表情を作って言った。
 さっきまでジュースのようにがぶ飲みしていたのはどこのどいつだ、と思わずツッコミしたくなるティアナだったが、先に動いたのはルキノだった。
 ルキノは咎める様な口調で、やたらにしたり顔で肯いているアルトに告げる。

「……ちなみに、アルトが飲んでる紅茶は安物の三角パックで淹れたものよ」
「――どうりで香りが乏しいというか味が質素というか」
「というのはウソで、ティアナに淹れたのと同じ紅茶なんだけどね」
「ごめんなさい。これからは知ったかぶりするのはやめます」
「よろしい」

 ルキノの二重のトラップを受けて、アルトはあえなく降参してしまった。
 相方に無知を晒されるというのはこれ程までに痛々しいモノなのか――、ティアナは自分も気を付けよう、と心に今の光景をしっかりと刻み付けた。



『お久しぶりですね、鳴海賢一』
「久しぶりに自分のデバイスに会いに来たら、何故か呼ばれ方が〝マスター〟じゃなくなってるんだが」
『鳴海賢一から暇を頂いて、私なりのAIを駆使して下した結論です。――あなたは、私のマスターには相応しくありません』
「そうか。それじゃあ、マスターの言う事も聞けない無駄にインテリなデバイスは廃棄処分に――」
『お久しぶりですね、私の親愛なるマスター。相変わらず全裸スタイルをキメて、頭もキマッているようで一安心であります』
「へへっ、ラファールも相変わらずみたいで安心したぜ」

 デバイスルームの前で言い合っているのは、大分久しぶりに会ったという全裸とそのデバイスだった。
 これがマスターとデバイスとの一般的な関係であるとは大袈裟にも言えないのだが、このお互いにキメ合っている仲だからこそ妙に映えるやりとりだとティアナは思う。
 自分の所持デバイスであるクロスミラージュとこういう関係を築きたい――というわけでは決してないのだが、こういう風に言い合える関係もどこか変に憧れる光景だった。
 ちなみに、デバイスルームの管理人であるシャリオ・フィニーノは現在、訪ねてきたティアナ達にも気付かないぐらいに集中して、今月発売されたばかりの新型デバイスの創刊号を熟読している。
 そして、創刊号を読んでいるシャリオの表情が、とてもヴィヴィオには見せられない様な恍惚とした表情であり、端的に言ってしまえば鳴海とは別のベクトルで〝気持ち悪い〟ため、今この場でヴィヴィオと関わらせるのは避けておいた。

「その子はケンイチのお友達なの?」
「ん? まあ……お友達っていうか、相棒っていうか、コイツとはそんな感じだよ」
『おや、初めてお会いする方ですね。――マスター、いったいどちらから誘拐してきたのですか? これではまた、グレアム中将やゲンヤ三等陸佐の胃に穴が開いてしまいますよ』
「本当に、お前は飽きない性格してるよな……ほれ、ヴィヴィオ。コイツなら特に雑に扱ってもいいぞ」

 そう言って、鳴海はラファールをヴィヴィオに手渡した。
 蒼い小さな宝石をネックレスに加工した待機状態のデバイスが、ヴィヴィオの手の平の上で明るく明滅する。

『初めまして、ヴィヴィオ。私はラファールです』
「うん、よろしくね! ラファール!」
『……マスターの周囲の人間を考えると、この素直な明るさは貴重ですらありますね』
「ねえ、もしかしてなんだけど、あたしもそのカテゴリーに含まれてないわよね?」
『黙秘権を行使します』

 デバイスに気遣われてしまった。
 自分ではなるべく気を付けていたつもりでも、やはりアレに染まり始めているらしい。
 ティアナは隠しきれないショックを顔に出しながら、言いようの無い悲しみに襲われていると、

『ふむ……。――親愛なるマスター様、お願いがあるのですが』
「何だよ、そんなに礼儀正しく改まって」
『ヴィヴィオを私のマスターとして認識してしまってもよろしいでしょうか? ヴィヴィオが極めて強大な魔力を持っているという訳ではないのですが、それとは別に何か気になる素養を備えているようなので』
「まあ、別にいいんじゃねーの? ヴィヴィオはこの変なデバイスが相方になっても平気か?」
「う、うん、ヴィヴィオは大丈夫だけど……」

 なんというか、とても大事な事があっけなく決まってしまっていた。
 これにはティアナも悲しみに浸っている暇も無く、慌てた様子で会話に割って入る。

「ちょ、ちょっと鳴海さん!」
「どうした、女子トイレならこの先の角を曲がった先にあるぞ。ちなみに、俺はよく入り口から三番目の個室を利用してる」
「今なんかとても許せない発言があったんですけどスルーしますね――鳴海さん、インテリジェントデバイスのマスター権を譲渡するなんて本気ですか!?」

 マスターとインテリジェントデバイスとの関係は、単なる〝使う者〟と〝使われる物〟で片づけられるものではない。
 インテリジェントデバイスには高いAIが搭載されており、会話や質疑応答はもちろん、魔法の発動を助ける補助をしたり、状況判断をして魔法を自動発動させたりすることが出来る。
 それゆえに、マスターとインテリジェントデバイスとの間でしっかりと意思疎通が取れていれば、魔法の威力強化や無詠唱での発動は当然の事として、魔導師とデバイスとの同時魔法行使など、魔導師が持つ実力以上のパフォーマンスを発揮出来るのだ。
 しかし、その一方で意思疎通が根底にある以上、単なるデバイスとして扱うのは基本的に難しいとされている。
 ティアナ自身、ここまで意思疎通というか漫才の相方のような関係を見たのは初めてだが、それゆえに簡単に関係を解消するべきではないと考えているからこそ、意図せずして叱責するような口調になってしまった。

「ふぇ……」

 ヴィヴィオは急な大声に驚いたのか、その綺麗なオッドアイにうっすらと涙を浮かべている。
 ティアナはそれを見て「しまった」と思ったが、それでもこれはうやむやのまま片づけていい問題ではないと思い、鳴海の返答を睨みつけるように待つ。
 その一方で、叱責された鳴海はいつものように飄々とした様子で、泣きそうになっているヴィヴィオの頭を軽く撫でてあやしながら、ティアナの目を真っ直ぐに見て言った。

「大丈夫だって。ラファールだって、マジに俺から離れるってわけじゃねえから。――そうだろ、ラファール?」
『どうやら、激しく誤解させてしまったようですね。マスター――そこの全裸とは別に、新たにヴィヴィオをマスターとして認識する、ということです』
「……えっ?」

 あっけらかんとしたコンビからの返答を受けて、ついさっきまで怒りに震えていたティアナも思わず呆然としてしまった。
 ラファールが明滅しながら説明を続ける。

『私のマスターは鳴海賢一です。これは揺らぎようのない事実です。たまに人間で言うところのツンデレプログラムを発揮してしまいますが、私が忠誠を誓っているのは、そこの全裸姿で頭がキマっている鳴海賢一です』
「おいよせよ、そう改まって言われると照れちまうぜ」

 たぶん、ラファールは褒めていないと思う。
 だが、鳴海が皮肉に気付かないのはいつものことであり、ラファールも諦めているようで野暮なツッコミはせずに話を続ける。

『しかし、私もデバイスとして生まれた身である以上、全裸を補助するモザイク処理というあまりにも愚かしい行いだけでは、いつかまた今回のように暇を頂戴してしまうかもしれません。なので、どこぞの全裸とは違って将来有望になる可能性があるヴィヴィオに仕えることで、未だ満たされないデバイス欲を得ることが出来ればと考えました。――つまり、貴方たち人間で言うところの〝ビッチ〟でしょうか』
「ツンデレにビッチとか、アンタも大概なAIを背負ってるわね……」

 色々狂ったインテリデバイスのいう事は話半分に聞き流しておいた。

「それに、ここ数年は俺自身のモザイク処理技術も大分上達してるしな。二、三年前ぐらいだとちょっと気を抜いたらうっかりモロ出しして、高町たちにこれでもかっていうぐらいに痛めつけられたりしたもんだぜ」

 鳴海はしみじみとした口調で言うが、ティアナには笑えない話なので追及はしないでおくことにした。
 いま大事なのは、鳴海がラファールの補助無しでも〝モロ出し〟する危険性は無いということ、そして二人の意志疎通がしっかりと取れているということだろう。

『ちなみに、シャリオさんのお世話になっている間に判明したのですが、どうやら私は割と高性能なインテリジェントデバイスらしいですよ』
「え、マジで? 具体的にはどんぐらいのカタログスペックなんだ?」
『レイジングハートやバルディッシュに勝るとも劣らず、といったレベルのカタログスペックらしいです』
「えーっと? お前を草むらで拾ったのが、俺がまだ幼稚園に通ってた頃だったか?」
『そうですね。私がどういった経緯で地球に流れたのかは不明ですが、マスターの魔力に反応して目覚めたのはその頃だったかと』

 ――なんていうか、ちゃんと意思疎通してる割には大事なところが適当だなぁ。

 わざわざ二人の為に声を荒げたのが馬鹿らしくなって、ティアナは溜息を吐きながら肩の力を静かに抜いた。
 そして、ティアナは怯えた視線を向けているヴィヴィオの目線に合わせるようにしゃがみ込み、小さく頭を下げて謝罪をする。

「ヴィヴィオ、ごめんね。急に大声出して、あなたを驚かせちゃったわね。……嫌いになっちゃったかな?」
「……う、ううん。ヴィヴィオ、驚いちゃったけど、ティアナお姉ちゃんのこと好きだよ?」
「……そう。ありがと」

 とても嬉しいことを言ってくれたヴィヴィオに、ティアナは自然に笑みを浮かべて応えた。
 しかし、弱みを見せると過剰に煽られてしまうのが機動六課という魔窟――そして、その魔窟の中でも一番に性質の悪いコンビが見過ごすはずが無い。

「いやー。ティアナは本当に先輩冥利に尽きる優しい後輩だなー」
『デバイスの身でなければ、思わず涙を流してしまう優しさでしょうね』
「うぐっ……」

 最悪のコンビからの追及を受けて、ティアナは先程の自分の醜態を鮮明に思い出してしまい、その気恥ずかしさからか顔を真っ赤にしてしまった。
 真っ赤なトマトのようになった顔を見て、純粋無垢なヴィヴィオが興味深そうに首を傾けて問いかける。

「ティアナお姉ちゃん、どうかしたの? お顔が真っ赤だよ?」
「な、なんでもないのよ。べ、別に恥ずかしいとか、そんなんじゃないから」

 やばい、これは流石に精神的にやばい。
 機動六課での失態がここまで精神的にくるとは、ティアナにも予想以上のダメージだった。
 ティアナがヴィヴィオを誤魔化そうとして珍しく口ごもっていると、最悪のコンビがティアナを精神的に辱めるための次の手を打ってきた。

「おいラファール。さっきのティアナの発言、ちゃんと音声データに録音しといたか?」
『ええ、もちろんです。ランスター様の声紋を使わせてもらうと、――〝鳴海さん、インテリジェントデバイスのマスター権を譲渡するなんて本気ですか!?〟……こんな感じですね』
「うわ、これは思わずにやけちまうな。ちょっとこれ、色々調整利かせて六課の皆に配布しようぜ」

 ティアナは一瞬想像してみようとしたが、それが悪夢であることは分かりきっているので想像するのを止めた。
 そして、ティアナは待機状態のクロスミラージュを胸ポケットから取り出すと、ダガーモードを起動して魔力刃を鳴海の首元に突きつける。

「……そこの悪魔ども、その音声データを早急に消去しなさい」

 ティアナはヴィヴィオを怖がらせないように笑みを浮かべながら言うが、それが逆に威圧感を増大させていることに気が付いていない。
 あの高町のマジギレにも匹敵しうる圧倒的な圧力には、さすがの鳴海も反射的に後退り、緊張からか額には冷や汗を流していた。

「こ、断るって言ったらどうすんだ?」
「おそらく、あたしは服役することになるでしょう」

 それはつまり、そういうことである。

「……ヴィヴィオ、逃げるぞ!」
「ふぇ……? ――わわっ!?」


 鳴海はヴィヴィオを素早く脇に抱え上げると、持ち前の逃げ足を発揮してティアナからの逃走を図った。

「あっ、こら! ちょっと待ちなさい、この全裸で幼女誘拐犯!」
「人聞きの悪いことを言うな! 俺はただの全裸だ!」
「その時点で既にアウトなんですよ!」

 ティアナも鳴海の逃げ足に負けじと、クロスミラージュの魔力刃を振り上げながら追いかける。
 ヴィヴィオはこの状況に最初は戸惑ってはいたものの、鳴海に担がれながら次第に笑みを浮かべてはしゃぎ出していた。

「おっ、どうしたヴィヴィオ。何だか楽しそうじゃねえか?」
「うん、楽しい。ケンイチといると、楽しいし面白い!」
「そりゃよかった。よーっし、もっとスピード上げちまうぞ! おい、ラファール!」
『Sonic Move』

 鳴海はヴィヴィオの期待に応えるように、機動六課の廊下を加速していった。
 三人の機動六課散策は、まだまだ終わらないようである。



 高町がフェイトと八神と一緒に機動六課に戻ってきたのは、日がすっかり落ちてしまった夜だった。
 騎士カリムとの会合や情報交換も終え、機動六課で成すべき事の指針を認識した高町の表情は、機動六課の戦技教導官ではなく管理局の〝エースオブエース〟のソレになっている。
 未だ戦力を計り知れない敵の影や、レリックというロストロギアの存在、そして新たに浮上したヴィヴィオという謎の残る少女のために、高町は気合を入れ直したのだろう。
 ただ、ヴィヴィオの世話を託した鳴海とティアナを探しに食堂へと赴いた瞬間、その決意に満ちた表情は一変して崩れ去る事になった。

「ほら、ヴィヴィオ。口元にソースが付いてるわよ」
「え? ここ?」
「その逆よ。ほら、ハンカチで拭ってあげるから」
「ありがとー、ティアナお姉ちゃん」
「なあティアナ、俺の口元にもソースが付いてるみたいなんだが」
「洗面台に水浸して、その顔面ごとぶち込んできたらどうですか?」
「お前には俺に対する愛情は無いのか」
「鳴海さんに対する憎しみなら人一倍ありますけど」
「そこはせめて愛憎でお願いできねえかな?」
「それは無理ですね」

 ある一つのテーブルを囲んでいるのは、全裸姿の鳴海賢一と、お姉ちゃんと呼ばれているティアナ、そしてティアナに口元を拭かれているヴィヴィオだった。
 高町が機動六課を発つ前はどうなるか不安で仕方が無い面子だったが、今では妙に仲が良いというか、綺麗にはまっているというか、どこか〝家族〟という言葉を思い起こさせるぐらいに絵になっている、そんな光景が展開されていた。
 そんな三人の間に流れる妙に暖かな雰囲気にあてられたのか、食堂に集まる隊員たちも普段より楽しげに食事をしているように見える。
 まさに、何から何まで良いこと尽くめの結果だ。
 機動六課が設立して以来、こうも上手くことがすんなり運んだのは今回が初めてではないだろうか。
 ヴィヴィオが打ち解けていることは素直に嬉しいし、鳴海に任せて正解だったことにも胸を撫で下ろしたし、ティアナも普段の素っ気ない態度の裏に隠されている、ツンデレ特有の世話焼きスキルを発揮してくれたであろうことには感謝している。
 だが、高町にはどうしても解せないことがあった。

「――ねえ。フェイトちゃん、はやてちゃん」

 暖かな雰囲気の食堂にはそぐわない低い声音で、高町が背後の二人に振り返らずに問いかける。
 その二人は高町の感情の機微を長い付き合いから瞬時に悟ったのか、下手に刺激しないように次の言葉をじっと待った。

「あそこに、わたしの居場所は――」

 そして、高町が言い終えようとしたその瞬間、

「あっ、なのはママだー!」
「ヴィヴィオー! なのはママが帰ったよー!」

 それに割り込むようにヴィヴィオの鶴の一声が届くと、高町は先程までの重苦しい雰囲気を即座に払拭して、ヴィヴィオの元に手をぶんぶんと振りながら走っていった。
 そんな親友が走っていく後ろ姿を冷や汗を流しながら眺めつつ、フェイトと八神はある言葉を同時に呟いた。

「「親馬鹿か」」




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仕事が休みで夜更かし投稿。


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