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No.33425の一覧
[0] 【習作】思いついたから書いてみた・ネギまっぽい転生もの【断片】[ファンデルワールス欲](2012/06/11 23:05)
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[33425] 【習作】思いついたから書いてみた・ネギまっぽい転生もの【断片】
Name: ファンデルワールス欲◆01609790 ID:7c346544
Date: 2012/06/11 23:05
「お姉ちゃん」
何もかも失った小さな男の子は今にも消えてしまいそうな弱々しい声で私を呼んだ。
その姿からは以前の快活さを全く感じられない。
泣く事さえ思いつかないという様な全く現実味を帯びない表情。
そこには生きたいという渇望も、死んでしまいたいという絶望もなく、ただひたすら困惑し、助けを求めて私を見る。
救ってほしいと...私を見る。

「もう寝ましょう」
私は男の子が安心するように微笑みながらそう言って男の子をベッドに寝かす。
素直に横になった男の子に汚れてしまった毛布の代わりに私の外套をかけてやる。
後ろめたい気がしない訳ではない。 ただ私にこれしか出来ない。
「まだ眠くないよ?」
男の子が不安そうに私を見て言う。
なんとなく、私のやることを分かっているのかもしれない。
太陽はまだまだ正午を抜けてすぐと言った所だろうか。
「大丈夫、今日は天気がいいからすぐに眠れますよ。 それに、今から私がよく眠れるようにリュートを弾いてあげるから」
そう言ってリュートを構えて見せる。
男の子は会話に不自然さを感じた様で不思議そうにしていたが、一応納得しておとなしく目をつむった。
リュートを弾いて音を確かめる。
静かな音が一つ、二つ、と部屋に響く。
曲にさえなっていないただの音が、私の体にしみこんで、小さくふるえる。
ただそれだけであまり楽器に詳しくない私にも、これが二つとない名器だと解ってしまう。
そして前生ではリュートなんて触った事さえなかった私がこの男の子の為に弾いてあげられる曲は、神に教えてもらったこれ以外になかった。

指で弾かれた弦が低い安定したリズムを刻み、辺りにまろやかな重みを与える。
男の子は目をいっぱいにつむって頑張って寝ようとしていたが、曲のおかげか疲れが溜まっていたのか、すぐに顔の力が抜けて寝顔になった。

そのうち彼の生命力を体に支えていた何かがくずれ、しに生命力が床に流れ落ちる。
そうして生命でなくなったそれ、その魂は己を引き止めていた何かを失い、地球の引力に逆らって上へ登っていった。

目の前で見る見るうちに伸びていく植物達と朽ちて既に骨となった男の子を見ながらそんな事を想像していた。 生者の落とした命がこの植物群を育てているのだろうかと。
既に屋根まで到達した蔓や蔦が窓から飛び出し、ベッドを埋れさせた草花のあちこちに男の子だった乾いた骨がちらばっていて、私の外套などはもうどこに行ったかもわからない。

私は緑の光が差し込む部屋で少し考えにふける。
小さな考えが現れては消える。
彼は私を怨んでいるだろうか。
少なくとも彼は安らかに逝ったはずだ。
どうだろうか。 私は彼の寝顔の安らかなのを見てそう思っているに過ぎない。
...考えても仕方ない事だ。
私は彼を送った事を後悔していない。 私がそうしたくてしたのだ。 そこに彼の意思は関係ない。
ただ、こんな事しか出来ない私を許してほしいと思う。 勝手だが。

彼の家を出る。
大戦の長引く今、私は死者も生者もどれだけの人間を送らねばならないのだろう。
村で死んだ者達に曲を捧げながら思った。
曲はいつもと同じ、死にゆく者へ贈る曲。
小さな火の玉が無数に村を舞う。
この火は死者の情念が燃えているのだと聞いた。
鬼も悪魔も人間も、苦しみ叫んで死ぬのだろう。

この村の火は、ここに住んでいた人達の数よりずっと多い。




ここまで読んでくださりありがとうございます。
初めましてファンデルワールス欲です。
今回初投稿になります。
以前からノートに書いてはいたんですが、やはり投稿してみると短いですね。 いつも作者さん達がどれだけ頑張って書いているか少しですがわかりました。
これからも何か思いついたら書こうと思います。
これからよろしくお願いします。

何か気がついた事がありましたら感想掲示板で教えて下さい。
ありがとうございました。


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