◆挨拶
初めまして。ふと膨らませていたネタを投稿させていただきます。
初投稿ゆえ(それを言い訳にしてはいけませんが)不手際をお掛けするかもしれません。
また、この文、正直なところネタと勢いだけで書いたので至らない所ばかりだと思われます。
皆様の時間のほんの小さな暇つぶしにでもなれば幸いです。
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目を開けたら、そこは・・・・・バケモノ屋敷でした。
目の前に広がる、腐臭と饐えた匂いに満たされた澱んだ暗闇。
・・・WHY?
・・・WHAT?
・・・WHERE?
・・・WHEN?
・・・WHO?
・・・HOW?
混乱してたせいで、この間勉強したばかりの幾つかの英単語が出てきちまったぜ!
イカンイカン。
深呼吸して~落ち着いて~
1、2の、さん、ハイ!
・・・・・・・って。
いや、ここどこよ!?(WHERE)
俺、普通に寝ただけなのにいつこんなところに来たのよ!?(WHEN)
布団に入って寝ただけなのに、どうしてこんなと場所に居るのさ!?(HOW)
あと、視線が低くね!?俺、身長は175くらいはあるのに、それにしちゃやけに視線が低くね!?(WHO)
というか・・・なぜこんな訳解らん状況になっとるんだ!?(WHY)
―うん、混乱しただけだった。
まあ、一言で言ってしまえば。
・・・訳が分からないよ。(WHAT)
とにかく、もう一度クールダウン。
落ち着くために、さしあたって自分のことを再確認してみよう。
俺はどこにでもいる平凡な日本人中学生。
名前も特に珍しくも無い姓名だ。
容姿も、まあごく平均だったと思いたい。
背がやや高かったのが数少ない特徴の1つだ。
格別変わったところの無い、男子中学生。
それが俺だ。
・・けど、今はあきらかにそれとは違う。
何が違うかっていうと、自分の体を見下ろせば一目瞭然。
視線が低いってのは先刻感じた通り。
けど、問題はそんなとこじゃない。
まず、髪。
俺はどちらかというと短めに切ってた方だ。面倒がないから。
けど、今はむっちゃ長くて豊かな黒髪。
滑らかで、艶があって。まるで高級な糸のように真っ直ぐに流れてて。
腰を超えて、まだ伸びてる。
で、次に体。
明らかに華奢になってる。
硬さを感じさせる男のものとは反対の、柔らかさを感じさせる肉体。
その表面の肌も、白くて、繊細で。
最後に、服。
寝る前に来てたジャージでもなく、普段学校にいる時に着てる学ランでもない。
鋭角的なデザインで描かれた上服と。
下に纏っているのは・・その・・・・・スカート。
―結論。
女の子になっちゃった♪
・・・・ってヲィィィ!?
どうなっちゃってんの!?
落ち着くどころじゃないよ!ますます訳分かんないよ!
・・そういえば、このデザインの服、どっかで見たような・・
ってそれどころじゃNeeee!
どうして!?何故!?
誰か、教えてぷりーず!
そんな風に願った俺の願いを遂に神が聞き届けてくれたのか。
近くから声が聞こえたのはその時だった。
「どうやら、とんだハズレを引いたようじゃのう」
聞こえてきたしわがれた響き。
奈落の底から響いてくるような声に振り返れば、そこに居るのは―
―鄙びた肉体と禿頭の矮躯の老人。
落ち窪んだ眼窩と、その奥に爛々と光を放つ酷薄な瞳。
おぞましさと妖しさを一杯にまで詰め込み、そのまま人のカタチを取ったような・・
妖怪と呼ぶのが相応しい怪翁。
その足元に這いずるように詰め寄るもう1つの人影。
「どういうことだ・・!あんたの言う通りにしたじゃないか!?」
血を吐くような叫びを上げているのは・・青年、だろうか?
疑問系になった原因は、彼の容貌。
髪の毛は全て白髪化しており。
至るところに罅が入ったかのような、血色を失った肌。
捩れた筋肉と、白濁した壊死した眼球によって凶相と化した左顔面。
そんな壊れてしまった表情に憤怒を浮かべる青年を、怪翁は煩わしげに見やる。
「お主がその程度であったというだけの話よ。所詮は付け焼刃であったということかの?」
そこで一転、笑い顔を浮かべる。
「確かに大外れの駒を引いてしまったかもしれんなあ」
親意など欠片もない、悪意のみの嗤いを。
「故に。諦めてもワシは一向に構わんのだぞ?・・お主にそんなことができれば、だがな」
「糞ジジイが・・!!」
青年が、唇を噛み締め、今にも飛び掛らんばかりの激情を見せる。
「おやおや。年寄りの心配りを無にするとはのう。まっこと親不孝な息子よ」
その青年の表情を見て。怪翁の顔が哂い、歪む。
他者の苦悶こそを悦楽とする外道。
狂気と外道。
2つの感情がぶつかり合う。
そんな中で、俺は、悟った。
さっきの言葉は、取り消そう。
すなわち・・・神なんて、いなかったんだよ!
Orz
オワタ。
最初に見た時から、どうも見覚えがあると思ってたんだよ。
この場所も、目の前のじじいとオジサンも。
まさかそんな筈があるまいとおもってたんだが。
ああ。そろそろ誤魔化すのはやめようか・・
せーの・・・・
Fate/Zeroぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?
怪翁―間桐臓硯と、青年―間桐雁夜。
臓硯ジジィと雁夜おじさんが出てきた以上、もう間違いない。
信じたくなんてなかったよ・・・
血も容赦もないハードフルストーリーに、なんで降り立たなきゃならんのさ・・。
こんなの絶対おかしいよ・・
と、そこで忘れていたことに気がついた。
そう、今の俺に関すること。
現在の俺の容姿・・これも、見覚えがある。
身に纏っている服を見て、既視感を覚えた先刻。
2次元の世界である筈のFate/Zeroの世界に、今俺はいる。
なら・・・他の2次元の要素も存在しても可笑しくない。
嫌な予感に冷や汗を流しながら、自分の容貌を確認しようとする。
そういえば今更気付いたが、今立ってる足の下は石畳状になってる。
磨かれているわけでは無く、擦り切れて古ぼけている床石。
沈鬱なこの部屋の概観が茫洋に映し出されている。
なら。自分の姿もそこに映っているはず。
雲って判然とはしないだろうが、それでも大まかな概観ならば分かるだろう。
そう思い、ちらりと床に視線を落とした俺は・・・打ちのめされる。
絹糸のように流れる黒い長髪。
涼しげに整っている目元と鼻梁。
凛々しさと可憐さをそのまま形にしたかのような顔の造形。
黒曜石のような瞳・・虚ろ目状態なのが少々気になるが。
そして、それらを彩っているのが。
感情の起伏の無い、無表情という名の仮面。
一分の隙も無い美しさは、けれどそれが故に他者を寄せ付けない。
凍て付くような美貌。
玲瓏なる美少女が、そこに居た。
曇った古石の照り返し上越しなのに、それでも判然としている美。
今は自身の体なのに、思わず胸が高鳴っても可笑しくない・・というより、間違いなくそうなってただろう。
・・通常の状態であれば。
うん、今はそれどころじゃないんDA!
この外見、心当たりがあり過ぎます。
この、クールビューティーな美少女は・・・
この子は・・この娘は・・・
ほむほむぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?
―暁美ほむら。
アニメ作品、「まどか☆マギカ」の登場人物。
この作品のもう1人の主人公とも言える少女。
通称まど☆マギと呼ばれたこの作品、かなりの人気を博し、決して少なくないファンを獲得した。
かく言う俺もその1人で、放送時間である深夜には視聴を欠かさなかった。
練られた設定に嵌り、インターネット上の考察を見て回ったり。
最終回まで見たときは、この作品を最後まで見た興奮と、物語が終わってしまう寂しさに包まれていたっけ。
その中で個人的に一番気に入ったのが暁美ほむらだったわけだ。
・・・けど。
断じて、ほむほむに成りたいなどとは思ってねええええ!
ははははHA・・
取りあえずまとめると。
化け物入り乱れるFate/Zeroの世界に。
暁美ほむらの外見で、サーヴァントとして降り立った、と・・。
・・・\(^o^)/オワタ
もう、ど~にでもな~れ♪
なんかの間違いであってくれればよかったんだが。
さっきから頭の中に流れ込んでくる情報が、今この状況が間違いではないことを教えてくれる。
自然と情報が伝わってくるという超常と、人の脳では処理できないほどの膨大なデータを平然と受理してるという現状況。
サーヴァントは現界に際して、必要な情報を聖杯から与えられるんだっけ。
まだ細かいこととか、解らないことは多いが・・
間違いなく、俺はサーヴァントとして顕現しているということに間違いはないらしい。
足掻くな、受け入れろってか・・・
悄然として足元に視線を落とせば、床面に映った美人顔が目に入る。
今の俺の顔が。
・・しっかし。ホントに表情動かないね。
俺、今結構落ち込んでるんだけど。微塵も動かない顔面からは、そんなことを僅かでも推し測ることはできないだろう。
この調子だと、さっきからの俺の動揺や動転も全く外面に表われてないな。
全ては無表情の下に、か。
便利と言えば便利だけどさあ・・。
で。極め付きがこの瞳。
ハイライトが消えたような目―虚ろ目。
原作ほむほむはクールビューティーではあったけど。
決してこんな‘死んだ,目はしてなかった。
―全く、どうなっているのやら。
これから、どうしよう。色んな意味で。
何しろ。
世界観・舞台はFate/Zeroで。自分の外見はまどか☆マギカ。
この2作品。
どちらにも、あのUROBUCHIさんが深く関わっている。
両作品とも道中悲惨さと絶望のオンパレード。
エンディングも素直なハッピーエンドとは言い難い内容と成っている。
その両方の要素の下にいる俺って・・
そんな思考の渦に落ち込んでた俺に、声が掛かる。
「色々と思うところはあるかもしれんが、とりあえずは此方を認識してくれんかの」
声を掛けてきたのは、臓硯ジジィか。
さっきからなんか話しかけてたのかもしれんが、全く認識してなかった。
こっちは一杯一杯なんでござるよ。
そんな煩わしさを感じて、視線を上げる。
できればもう少し放って置いてくれませんかねえ・・・とは言えない。
だって・・怖いでヤンス。
いや、マジで。
皺だらけの妖怪面とか、体から醸し出してる妖気とか・・ハンパなく怖ぇぇぇぇぇ!
体がブルッちゃいそうです。泣きそうです。ヘタリそうです。
しかし、それを微塵も出さないのがほむクオリティ!
全く本心が表に出ません!
外面上は、眉1ミリすら動かさぬ無感情のまま。
・・でも。
いやなものはいやなんじゃぁぁぁ!
無理無理!これ以上こんな妖怪と相対してたら、俺、色々キツイって!
だから。
とっとと去ねやクソじじぃ!
・・。
・・・。
・・・・嘘です。
チキンハートな俺にそんなこと言えるわけがないです。
と、とりあえずだ。
早く、この場を立ち去ってくれると、嬉しいなって・・・
そんな遠回しな要望を視線に込めてみる。
・・すると、臓硯じいさんは一歩下がった。
を?ひょっとして、俺の意思が通じたのか?
伊達に齢食ってないな、ジジイ。
ちょっとした仕草から他者の感情を読み解くことぐらいは造作も無いってことか。
口を開かなくてもこっちの言いたいことを読み取ってくれるのは楽でいい。
やるじゃないか妖怪蟲じじい。
評価を上方修正した俺に対し、爺は聞き捨てならない言葉を放った。
「対話など必要ない、か。腐っても狂戦士のクラスというわけじゃな」
ちょっとマテや。
俺が表情を変えないわ、言葉を発しないわで会話を望めないと判断したか。
いや違うって。話したいんだって。
ずっと口を開こうとしてるんだって。
でも。
口が動かないんだよぉぉぉ!
確かに俺は元々口数の多いほうでは無く、会話も得意ではなかったけど。
ここまで無口ってことはないぞ!
必要最低限のことは話すようにしてた。
けど、このボディはそれすら出来ない。
これもほむスピリットの影響か?
って。
いやいや。いくらほむほむでもここまで無言にはなってなかったぞ。
はてさて。なんでこうなってるんだ?
渦巻く疑問に対する回答を探るため、思考する。
・・そう言えば、何か忘れてるような・・
―腐っても狂戦士のクラスというわけじゃな―
・・・って。
俺、バーサーカーじゃんよ!
原作知識あるんだから、第4次聖杯戦争の間桐陣営に召還されてる時点ですぐ気付けっつーの!
己の抜けっぷりには呆れるが、これで疑問の答えは推測できるな。
バーサーカー。
狂戦士のクラス。文字通り、狂化の属性を付与したサーヴァント。
基礎能力を大幅に底上げする代わりに、理性を失う。
強力ではあるが燃費が非常に悪く、制御も難しい。
運用の負担が尋常では無い、マスター殺しとも通称されるクラス。
一方で、平時は自意識をほとんど露わにしないという特徴があったはず。
徹底した無口っぷりはこれが原因ではないだろうか。
ただ、そうすると別の疑問が浮かぶ。
・・・俺、別に狂ってないよな?
理性を失うのがバーサーカーみたいだけど、出来の良し悪しは別としてさっきから思考はできているし。
・・解らん。
あんまり上出来じゃない俺の頭じゃ、この辺りが限度か。
これ以上考えても深みに嵌るだけな気がする。
思考を切り替えよう。
夢なのか現実なのか解らないが、俺は今、第4次聖杯戦争に立ってる。
そんな中での最優先目標は・・何はともあれ、生存だな。
仮にこれが夢だとしても、死ぬのはいやだし。
さしあたっては自分の能力を確認するとしよう。
あんま変なのが付いてないといいんだが。
そんなことを思いつつ、ステータスを確認する。
=ステータスを表示します=
CLASS:バーサーカー
マスター :間桐雁夜
真 名 : ?
性 別 :女 性
属 性 :中立・中庸
筋 力 : E 魔 力 : D
耐 久 : A+ 幸 運 : E
敏 捷 : D 宝 具 : ?
クラス別能力
狂 化(偽):詳細不明
保有スキル
夢人の写し身:?
クラスや知名度による補正の影響を受けない。
自身への精神干渉系能力を完全に無効化する。
死人の瞳 :?
意思という光を灯さぬ瞳。
自身へ向けられた魔眼系能力を完全に遮断する。
また、自身よりも低位の相手を高確率で行動不能にする。
ただし判定に成功しない限り意思疎通が成立しない。
単独行動 :A+
マスター不在でも行動できる。
このランクになると宝具の多用乱発のような行為を行わなければ単独で戦闘可能。
心体分離 :B
精神と肉体が何らかの手段で分離状態にあり、身体の耐久性が高い。
被ダメージ軽減能力を大きく高め、HPの減衰を大幅に抑える。
????
????
宝具
詳細不明
=ステータス情報以上=
・・。
・・・。
・・・・。
こ れ は ひ ど い !
突っ込みどころ満載ではないか。
まず最初に、基本ステータス低っ!
耐久が極高なのはありがたいが、それ以外がほぼ最低ランクじゃんか。
これじゃ、サーヴァント最弱と呼ばれるキャスターよりひどいんじゃね?
原作でのランスロットさんはあんなに優秀だったというのにorz
というか、バーサーカーって基礎能力を増大させてるはずだよね。
なのにこの数値。
一体なぜ・・と言いたいところだが。
今回は大体の答えの見当は付く。
夢人の写し身とかいう保有スキルの効果。
クラスや知名度による補正の影響を受けない―
多分だけど、コイツの効力のせいだろう。
バーサーカーというクラスの特性―デメリットである理性の消失を受けない代わりに、メリットである能力の底上げも受けない、と。
マスターとしての立場からすれば残念だろうが、俺からすれば有難いスキルだな。
理性を失って暴れまわるなんてごめんである。碌な最期が思いつかないぞ。
おまけに精神干渉完全無効ってことは、操られたりとかは絶対にされないということだ。
で、まあ。それはいい。
問題は・・・詳細不明ってなんだよぉぉぉぉぉぉぉ!?
何だよ狂化(偽)って!?
スキルの情報も幾つか開示されてないし!
肝心の宝具なんて全く解らないじゃん!
ふざくんな!
自分で自分のステータスが解らない(笑)とか。馬鹿なの?死ぬの?
で、最後。
・・・・・・死人の瞳(笑)。
・・・・ウェヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!
・・もう笑うしかねぇ・・
確かに虚ろ目だけどさあ・・スキルとして発現しなくてもいいじゃないか・・
便利な効果ではあるけどさあ・・
何だよ、判定に成功しないと意思疎通ができないってのは・・
そんなに俺をぼっちにしたいのか・・
・・・・泣いちゃうんだからっ!
はあ・・
お先真っ暗な気がしてきた。
ただ、多少の救いはある。
単独行動・・これ、ほんとはアーチャーのクラス別能力じゃなかったっけ。
などという突っ込みは無しにして。
これだけの高ランクのものならば、大抵の行動は1人でこなせるだろう。
マスターからの魔力供給は最低限でいい。
死に掛けの雁夜おじさんに、徒に鞭打つような真似はしなくて済むってことだ。
無論、それでもかなりの負担を強いてしまうことになるだろうが、本来のものに比べれば優しいモンだ。
原作だと、酷かったからな・・・。
魔力供給するだけで激痛を感じるのに、そこにバカみたいに魔力をガバガバ喰らうバーサーカーとは・・アレは拷問以外の何物でもない。
ジジイは最初からそれを狙っていたというんだからマジ外道である。
で。もう1つ。
心体分離・・読んだそのまま、心と体が別々。
間違いなく、このボディの由来―まど☆マギの設定から来てるな。
魔法少女まどか☆マギカ。
この作品で中核-テーマの1つを成しているのは魔法少女という存在である。
響きだけならファンシーで心が和むような微笑ましい魔法少女という言葉。
ただ、この作品においては・・とても重々しい設定。
どんな願いでも1つだけ叶えて貰う代わりに契約を結び、授けられた魔法の力で絶望や呪いから生まれた存在である魔女と戦う・・それが魔法少女。
どのような魔法能力を得るかは千差万別だが、共通なのは非常に高い身体能力を得るということだ。
常人ならば死亡に至るような重傷でも速やかに再起する。極端な話、心臓を撃ち抜かれようが脳を損傷しようが、果ては高層ビルが直撃しようが死なない。
これにはカラクリがあって、契約時に魔法少女は魂を肉体から摘出され、ソウルジェムと呼ばれる物質にシフトされる。
言わば物質化された魂であり、魔法少女の本体。
そして魂を抜かれた肉体は抜け殻と化し、魔力を付随して外付けのハードウエアとなる。
こうしてソウルジェムが無事である限り、理論上は不死身の肉体を得るわけだ。
あくまで肉体はオプション。本体のソウルジェムが無事である限り、どのようなダメージでも蘇る。
端的にいってしまえば、ゾンビのようなものだろう。
このソウルジェムというシステムが、聖杯戦争のスキルとして発現したのが心体分離というスキルなんだろう。
まあ、流石にサーヴァントとして現界している以上、従来通りの不死性は持ってないようだが。
それでも、桁外れの耐久性を所持していることは疑いが無い。
・・・
そういえば、ほむほむは左手の甲にソウルジェムが付いてたはずなんだけど・・
・・・無いね。
同じく、左手に装備しているはずの盾も無い。
どういうこっちゃ?
ひょっとしてではあるが、再現されているのは高い耐久性だけで、ソウルジェムという形態は顕現していないのか?
魔法少女はソウルジェムを物理的に破壊されると死亡する。
そのソウルジェムが無いということは・・・弱点を無くし、その上で凄まじい防御力を所持しているという良いとこどりになるので有難いが・・
あと盾。
これを使ってほむほむは時間を操作してたけど・・
それが無いってことは、盾の使用なしで能力―時間操作を使えるのだろうか?
・・・
・・・・
そういうことにしておこうか!
これ以上考えても解らないし!面倒くさいし!
なによりこれ以上雁夜おじさんをほっとくわけにはいかんし。
そう思い、視線を回す。
・・
・・・
・・・・いや、だいじょぶなの、雁夜おじさん(汗)
雁夜おじさん、床に倒れこんで呻いてるし。
すごい苦悶してて、見てるこっちまで苦しくなってくるわ。
サーヴァントの召喚の儀式ってかなり消耗するらしいからなあ。
まして、身体中を蟲に食い荒らされて衰弱してる雁夜おじさんじゃなおさらだろう。
こんなとこで寝かせとくのは可哀想だし。
ここはサーヴァントとしての務めを果たしますか!
そう思い、雁夜おじさんに近付いていく。
「・・お、前は・・」
こちらを向いて言葉を出そうとしてる雁夜おじさん。
無理しないで、ゆっくり休みましょうね~・・・などとにこやかに笑いかけようとしたのだが・・・
声出ねぇぇぇぇぇ!
表情うごかせねぇぇぇぇ!
こんな時ぐらい解除されろよ、ほむスピリット!
それともバーサーカーだからか!?
人間関係構築の第一歩は、自然でにこやかな表情からだというのに・・orz
ま、まあ後で考えればなんとかなるよね!
とりあえずはおじさんを運ばにゃ・・
「お、おい」
両腕をおじさんの身体の下に回し、そのまま抱え上げる。
俗に言うお姫様抱っこというやつだ。
性別や年齢を考えれば逆の立場の方が絵的には映えるだろうけど・・
中学生ぐらいの少女に抱き上げられる成人男性、か。
なかなかシュールな眺めかもしれない。
しっかし、さすがはサーヴァントの身。
体格差を全く問題にしていない。
衰弱のために痩せてはいるだろうけど、おじさんを持ち上げても羽のように軽い。
筋力:Eだとしてもそれはサーヴァントとしての枠の中での最低ランクってことで。
やっぱ人間が及びもしない怪物だというのがよく解った。
さて、とりあえずはおじさんを寝かさないと・・
どこで休ませればいいんだろうな。とりあえずジジイに聞くか。
・・あれ?いねえ?
いつの間に消えたんだろう?
全く失礼しちゃうもんである。
何も言わずにいなくなるとは・・
まあ、あの面を見なくて済むのはありがたいけどね!
けど、どうしようか。
こうなったら家中全部回るかな。
そう考えていたら、抱き上げてるおじさんが声を掛けてきた。
「・・あっちに回ってくれ、バーサーカー」
やせ細った腕を上げて、指で方向を示す。
ふむ。あっちに寝室があるのかね?
とりあえず、マスターの指示には従いますよっと。
おじさんを抱えたまま、俺は歩き出した。
これからどうなるんだろうという不安も抱えながら・・