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No.33278の一覧
[0] 【習作】世界を巡る竜(ドラゴン)【ソフトハウスキャラ・TS転生・最強】[懐中時計](2012/05/28 18:45)
[1] Prologue[懐中時計](2012/05/28 22:04)
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[33278] Prologue
Name: 懐中時計◆68be628a ID:db5e5b3e 前を表示する
Date: 2012/05/28 22:04
 その少女は、広い草原に立っていた。

 大きく開いた両の目は形良く。小柄な顔の中央に位置する鼻は高く、筋が通っている。
 薄く桃色に色付く唇は艶(つや)やかで、雪の様に透き通った白肌は、万人が憧れる芳潤さを誇っていた。

 背丈は然程高くはなく、また胸も僅かに膨らみを帯びる程度で、一見すると幼く見える様でありながらも、引き締まった腰の括れや細くも丸みを帯びた二本の脚は如何にも女性らしく、見る者を魅了する色香に溢れている。

 吹き曝(さら)す風に、銀色の髪が揺蕩(たゆた)う。腰まで届くその髪は、日の光を受けて煌々と輝く。


 それは人が夢想する美の極致。その体現であった。


 アンバランスであるにも拘わらず神憑り的なまでの美しさを誇る少女は、宝石の如き輝きを発する紅の瞳で遥か彼方を見やる。
 その双眸に映すのはただ一面に広がる草原のみ。しかし少女の脳裏には全く違う風景が投影されていた。

 思い巡らすのは昔の風景。“この世界に自身が生まれるよりも前”の記憶。現在の世界では有り得ない、コンクリートで固められた高層の建物が立ち並び、機会仕掛けの鋼鉄が高速で走る光景。狭い空に、冷たい壁。無機質な日常に、表面だけの家族。

 少女にとって最早それは夢幻の如き、特別な感慨も抱かない記憶でしかないが、それでも“彼”を構成する原風景である事には変わりない。
 “彼”が形成されたのは間違いなくその中でであるし、“種族”と“性別”が変わろうとも、確として培った自己と価値観は容易には崩れない。

 故に――きっと今生で恋をする事は無いだろう。もしかすれば自己が変質する事はあるのかも知れないが、少なくとも当面は有り得ない。
 少女はそう確信する。

 だから、今はやりたい事を――



 ◆ ◆ ◆



「――レティーシア様ー!」

 私を呼ぶ声が聞こえる。
 声のする方を見てみると、赤い髪を振り乱しながらこちらへ駆けてくるクーさんがいた。

 連隊長として何かと忙しいだろうに、わざわざ呼びに来てくれるとは。彼女には世話になってばかりだ。

「はあ、はあ、やっと……見つけました……」

 目の前で止まったクーさんはゼイゼイと息を切らせ、両手を膝について呼吸を整えている。
 少しの間そうしていたが、徐に顔を上げてこちらの顔に視線を向けてきた。

「ふう……。レティーシア様、一体どうされたんですか?」

 それは当然の疑問。
 昨日までは両親や巣の誰かに付き添われてでしか外に出ず、大人しく過ごしていた筈の小娘が、唐突に巣を飛び出したのだから。

 だから私は、正直に話す。

「ただ、外に出たくなったんです」
「……はい?」

 クーさんは全く意味が分からないと言いたげに首を傾げた。
 その様子が随分と可愛らしくて、思わずクスリと笑みをこぼす。

「ねえクーさん。前に頼んでおいた大陸の国の近況と世界の主な都市の調査結果、報告してくれましたよね」
「え? あ、はい。確かに報告しましたが、それがどうか致しましたか?」
「――――それが理由ですよ、クーさん」
「……んんん?」

 さらに首の角度を深めるクーさん。
 そして降参の意を示すように両手を上げて首を横に振る。

「すみません、レティーシア様。私には意味がさっぱり……」
「……でしょうね。恐らく私以外には理解出来ないでしょうし、私も言葉にして説明は出来ません」

 ――だって、物心が付いた頃から決めていた事だから。
 口には出さず、思う。

 どうやら詳しく話す気が無いことを悟ったのか、それ以上踏み込んでは来なかった。

 私がクーさんの好きな所は、相手の内心を察して進退の分水嶺を見極めてくれる所だ。とても有能で得難く有り難い人だと思う。
 だから私はギュンギュスカー商会の大佐としても商売云々を抜きにしても、ついついクーさんに相談事を持ち掛けたりして頼ってしまう。

 鍛錬場にしてもそうだ。
 両親にはあまり見られたくはなかったから、クーさんに無理を言って秘密の大部屋を造って貰った。
 そしてフェイさんやユメさん、エーファさんやラルさんに人間形態での武器の扱い方や戦い方を教えて貰った。

 ――まあ、私が竜族にしては幼く、加えて混血である為に力が制御出来てないせいで勝てた例(ためし)は無いけども。

 そしてこれまたクーさんに無理を言って、人間の世界の事を学ぶ為に秘密の勉強部屋と書庫を造って貰った事もあった。
 そこでは一人で勉強する他、クーさんや僧侶のマイムさん、そして現役で政治を執り行っているルクルさんが時々遊び(セックス)に来る度、様々な実例を紹介して貰いながら培った知識を教えて貰った。
 子供達の教育に関しては世話役に一任している為、ルクルさんは『自ら教師の真似事をするのは新鮮だ』と楽しそうな表情で言っていた。

 私が実に竜らしくないのは自覚している。

 竜族は他種族を路傍の石ころ程度にしか思っていないのが普通だ。
 竜族の女は特にそれが顕著で、自らが認めた男でなければ同族でさえも、虫けらか、奴隷程度にしか扱わない。

 今はそんな気配は無いが、お母様――リュミスベルンも昔はやはり随分と高慢で傲慢だったらしい。お父様――ブラッド・ラインによく苦労話ついでに、『お前は照れ隠しに相手を半殺しにしたりするんじゃないぞ』と言い聞かされたものだ。
 昔を思い出す度、過去のトラウマが蘇るのか顔色が悪くなって微妙に身体を震わせるお父様を見ると哀れな小動物を見ている様で少しおもしろ――――


 ん、思考が逸れた。

 ――巣のみんなには、本当に頭が上がらない。
 兎にも角にも、私は色々な事を教えて貰って、様々な事で助けてもらって。

 だけど、もうそれも終わり。

「クーさん」
「はい」

 琥珀の瞳を確(しか)と見据える。
 ――これは新しい私への第一歩。


「学園への――――グリンスヴァール学園への入学手続きをお願いします」



**********

推敲めんどい。
その内続きます。
期待しないで待っててください。


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