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[0] 【一発ネタだったのに】クレイドルオンライン@勘違いモノ【続いた】[わるゐこ](2012/05/28 01:14)
[1] 第二話:続かないって言ったのにUSBを掘り返してたらまた黒歴史があったから、晒す。[わるゐこ](2012/05/28 02:15)
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[33246] 【一発ネタだったのに】クレイドルオンライン@勘違いモノ【続いた】
Name: わるゐこ◆2980b936 ID:7bf9f147 次を表示する
Date: 2012/05/28 01:14
世の中には不思議な事ってのがある物だ。俺や、身も知らぬ大勢の「クレイドルオンライン」のプレイヤーはそれを思い知ったことだろう。
三年前の事だ。よくあるラノベや変則的なTRPGリプレイのようなジャンルの話になるのだが、俺たちはゲームの世界に取り込まれてしまった。

笑える話だ。いや、笑えないか。

俺たちがプレイしていた「クレイドルオンライン」自体は何の問題もない、只のMMORPGだった。
まあ多少ゲームとしての設定の練りこみが他社より優れていたように感じたが、それ自体はなんら問題なく、むしろ歓迎すべき事柄である。
そして2025年現在の時点で、SFやラノベに昔から良くあるVRRPGなんてものは実用化されていない。

つまり、まぁなんだ。
詰まる所「クレイドルオンライン」は本当になんの変哲も無い只のゲームだったんだ。
パソコンのモニターの向こうで壮麗華美な現実感の無い武器防具を纏った美男美女が、豪華絢爛な殺し合いを演じる極普通のMMO。
何処にも何も、こんな超常現象に繋がるような胡散臭いファクターは無かったのである。

「それが、まぁ不思議なもんだな。」

背もたれのついた座椅子に深く腰掛けながら俺は一人ごちた。
石造りの広い部屋の中に無理矢理木を詰めて和室っぽくした部屋の中、行灯の薄ぼんやりした優しい光の中でまどろむ。
古めかしい廃城の中に居たモンスターを皆殺しにして、勝手に居座った俺はアイテムボックスから取り出した良くわからない酒を煽った。

現在俺はこの良くわからない、中途半端な大きさの城だか砦だか館なんだか解らない建物の主だ。
そしてこの城?・・・まぁ中世の実戦的な城のような建物の中に居たかなり上級のモンスターを単独で倒した腕利きの戦士であると言う事である。

そしてこの城を根城にしていた魔族だか吸血鬼だかは、よしとけばいいのに周辺の村や街を定期的に襲い迷惑をかけていたらしい。
国の派遣した討伐隊も何回か壊滅しており、国境付近に位置しているせいでアグ・テ国のみならず、
お隣さんのドノミ国にとっても眼の上のたんこぶだったようだ。

まぁなんだ。言って見れば俺はそういったアホの集団を単独で叩きのめした勇者として称えられた人間であり、
同時に迂闊に大きすぎる力をひけらかしたせいで周辺国家に取っての新たなる脅威としてマークされた「アホ」なのである。
そして現在はここのモンスターがかつて誇った勢力圏をアグ・テから任された領主でもあるのだった。

そう。聡明な読者諸君はお分かりだろうが一応言っておくと、恐ろしい獣も美味い餌を与えておけば大人しくしているだろう・・・と言う事なのだ。
また、この辺りの地形はかなり険しい山岳が多い地帯で、だからこそアグ・テとドノミの国境線でもある。
内陸を若干長細く走る領地で、一部は海岸線にも接している。だが、現在鉱山も無ければ耕作可能面積も小さい。
天然の城砦と言えば聞こえは良いが、険しすぎてドノミがこの領地のルートを通って進軍してくるとは考えがたい。

ぶっちゃけた話、アグ・テにとっては手放したところで今のところなんの損も無いのだ。
恐ろしいモンスターを単騎で屠る恐ろしい冒険者が、隣国のドノミに対する牽制になれば御の字と言った所だ。

本来ならまともな政治など知る筈の無い、学の無い危険な階級筆頭の冒険者の支配下に置かれる領民はぶっちゃけ生贄であった。

意図が見え見えでしかも先方も隠す気がないのには萎えたものだが、
特に蹴る必要もないのも確かだったのでなし崩し的にここで俺は領主をやっている。

ここでこの話を蹴ると、金や利権で釣る事の出来ない困ったちゃんである。とますます警戒されるのだろう。
仕方なしにこの話を受けた俺は、今日まで極普通に平穏に暮らしている。

いろいろと嫌な噂も耐えない、プレイヤー組の中ではかなり恵まれている方なのだろう。

書類仕事は面倒くさいが、一点を除いて今の俺にはあまり不満は無い。
・・・・唯、一点を除いて。




・・・・・なんで俺は、ネカマなんてやってたんだろうな。
ああ、時を巻き戻せたらなぁ・・・。きっと超絶イケメソアバターでハーレムTUEEEEEが出来たのに・・・・。





★クレイドルオンライン~適当に異世界でネトゲプレイヤー達がTUEEEEEEする小説~★

作った奴:わるゐこ

一話:一話とは何故一番目にこない事が多いのか?プロローグとはつまり一話ではないのか?前書きとは脳汁と言い訳の垂れ流しの間違いではないのか?







古びた洋風の砦の一角、石造りの建物の中にわざわざ拵えられた木造の一角に彼女の執務室はある。
茫洋とした不思議な光と、石と木の落ち着いた調和。
不可思議なオリエンタルな雰囲気の部屋の奥。
香の煙の棚引くその奥に、タタミと呼ばれる草の板の上にザブトンなるクッションを敷いて座る一人の少女が居た。

私は、ゴクリと緊張の面持ちで平伏した。
顔を上げぬまま、緊張で震える手で、書類を読み上げる。

「アンズ様、現在領地内で平行試験されている各種政策の経過報告をお持ちしました。」

「そうか、平伏はいいから早く顔を上げろ。」

湯のみを傾けながら興味なさ気に呟く少女。
あまりに未成熟な体つきでありながら、漂う気品と迫力は正に王者のもの。
でありながら人形のような可愛らしい容姿。
そのアンバランスさに自分が何か禁忌に触れてしまったような背徳感すら感じる。

「どうした、早く読め。」

「・・・は、失礼致しました。」

清楚で凛としたたたずまいに、思わず見とれていた私はすぐに、本来の役目を思い出し奏上を開始した。
まず、アンズ様のお課しになられた政策の内劇的な効果を上げているものを上げる。


「現在、山岳地帯の「棚田」化ですが、かなり上手くいっておりまする。
去年の伸び率を見る限り、今年はさらに3倍以上の増収が見込めますこの分なら増え続ける人口を領内の作物のみで支える事も不可能ではありませぬでしょう。」

「亜人と邪教の前面受け入れですが、これも良い悪いはともかく予想以上に作用し領民は既に元の80倍近くおりまする。」

「海岸線から続く尾根を掘り下げた運河の設立ですが、これは設計段階ですが可能であると試算されています。」

「山間大橋計画ですが、既に2つの主要「都市岳」を結ぶ橋が完成しています。これまで以上に物流が活性する事でしょう。」

「小麦と米の代替政策ですが、来年度にはほぼ比重が入れ替わるでしょう。面積辺りの収穫量も増加傾向にあります。」


亜大陸と大陸の丁度境目の南半分に位置するこのアード・ラビの領地はその所領の9割強を険しい山岳地帯に占められている。
気候は穏やかで過ごしやすく、水資源が豊富でマナ許容量に優れている以外はまともに人が住めた土地ではない。

はっきり言って、ドノミとアグ・テの暴税に苦しむ民が、まさしく苦し紛れに逃げ込んだ土地に過ぎないのだ。
しかもこの地が多少人工と生産力を身に付けたが故に、新たに税は課され、さらには濃いマナを好む魔族に魅入られるなどと言う不幸にさえ見舞われる。
しかし国は税を納めさせはするものの、討伐には適当な形だけの捨て駒を寄越すのみであった。
国は腐っている。
しかし力を持たない我々にはどうしようもない。
涙を呑み、歯を食い縛りながら耐えるほかなかった。
この地の民はこれまで支配者の暴虐にさらされ続けてきたのだ。

だが、異国・・・この地より遥か東に位置すると言う島国からこられた冒険者、アンズ様の出現により全てが変わる。
フラリと現れた一人の少女は曲がった刀身を持つ"カタナ"なる武器を手に瞬く間に魔族の群れを駆逐なさってしまった。

周辺の山村がその事実を知るのは、旧砦に生贄を捧げに来た時、出迎えたのが一人の年端も行かない少女であった時。
すなわち、事件が収束して4日後の事であった。

それからの三年、それは夢の如き日々であった。
アグ・テから領地から国に収める税の大幅な減税を勝ち取ったアンズ様は重税を撤廃した事実と吸血鬼退治の功績で歓声で持って領民に迎えられた。
(アグ・テとしてはその差額分を利権として与えたつもりだったのである。)

それからと言うもの、このアード・ラビはアンズ様と世界各地から召集された精霊の御使い様の手によって大小関わらず様々な発展を遂げた。
今では他の領地の領民から熱烈に羨まれる立場でさえある。
        
アード(苦)・ラビ(界)と呼ばれた地獄のような世界が今や亜大陸の最後の楽園とは。世の中とは解らないものである。


・・・等と考えながらも、全ての奏上を終えた私は再び平伏した。

良い点、悪い点と纏めて読み上げたが、どちらかと言えば良い点の方が圧倒的に多い。
本当に素晴らしい事だ。

アンズ様は顎に手を当て熟考する素振りをすると、すぐにこちらに向けて口をお開きになった。


「・・・ふむ。現住の民と流民の軋轢が増しているか。」

「ハッ!この上は、近頃狼藉を働く流民全てに対しに何らかの法的処罰を与えるほか無いと愚考いたします。」


しかし、そんな希望と光に溢れる地にさえ闇はある。

アンズ様のお慈悲は遍くこの亜大陸に生きる人だけでなく、亜人種、邪教徒の類、大陸の人間にさえ向けられるのだ。
この領地では流民の完全な受け入れを標榜しており、この地に辿りけた者達は等しく領民としてアンズ様の庇護の下に置かれる。
アンズ様は彼らに対し、住む場所を分け与えるだけではなく御自身の召し上がるものを制限されてまで下々にお与えになられるのである。

しかしその慈悲に縋って来る者たちのせいで領地に大小様々な衝突があるのも事実。
審査なしに全ての民を受け入れると言う事は、同時に犯罪者や他国の間諜を呼び込んでしまうと言う事でもある。
実際、治安はだんだんと悪化傾向にある。

今はまだ「アード・ラビの守護天使」のご威光のためか潜在的な脅威に比して犯罪率は異常なほど低い。
だがこれままではこの地が今度は闇と混沌の街と化してしまうのは明白。
これは一体どうして補えばいいものか。

この時、私は愚かにも厳罰と明確な差別化による治安の維持を考えたが、後にそれを正しく愚考であったと知る事になる。

「・・・だめだ。いや、むしろこれまで以上に流民には金と食料を分け与えろ。仕事を与え、文字を教え子はできるだけ保護しろ。
流民でも年寄りは労れ。そうすればその内治安も良くなる。」

この上尚、彼らにも慈悲を分け与えるだけでなく、更なる援助を行おうと言うその寛大なる精神はこの時私にはまさしく神の如く見えた。

「職業斡旋組織をもっと大きくしないとな。流民を効率よく捌いて出切るだけ全員職に付けろ。
幸いな事に、亜人は足腰が強靭な者が多い。棚田の整備を急がせれば食料はこまらないだろ。
どんな小さなことでも年寄りや子供にも無理なく出来る仕事はある。出切るだけ身の丈にあった職に付けられるようにな。」

「・・・・あと、税率はこのままでも問題ないな。」

「ハ、しかし公庫はただでさえ慢性的に空に近いです。それにこれ以上貧しくされるとアンズ様のお体に触るかと・・・。」

「貧しく?いや、私はこれで十分だよ。心配する事は無い。」

その言葉に私は内心臍をかむ気持ちだった。
同時に、雷に撃たれたかのようにその清廉な心に感動していた。

アンズ様はこれと言って贅沢を為さらない。それどころか病的なまでにストイックだ。
賭け事や芸術品の蒐集、その他様々な貴族の娯楽に一切興味を示されないどころか、お食事までも凡そ君主の食べるようなものではない。

毎食、凡そ焼き魚一本に汁物が一つ。それにご飯を一膳。それに菜っ葉の漬物を少々と言った所だ。
これに毎晩果物が申し訳程度に付く。それで仕舞いである。

これはそこそこ働き者の男を持つ家庭なら、この領地のどこの家庭でも食える程度の物に過ぎない。
それなりに大きな商家の人間や、領地内の地方公僕などもっと良い物を食べているだろうに。

酒と茶も多少嗜まれるが、はっきり言って一領主のとるお食事と言うにはあまりにもさもしい。

また着るもの、装飾品や宝石類等にも頓着されないので、進言しなければかなり質素・・・と言うより最早貧相な出で立ちをなさる事になる。

今更それが、君主として示しが付かない等とは言わない。
むしろそうした姿勢が、昨今のぶくぶくと肥え太った貴族達と対比して民にとって輝いて見えている事は解っている。

だが現実はそれほどまでに、公庫には金が無いと言うことなのだろう。
私は、この方に使えるためこの地に来て、まだ二年に過ぎない。
年齢・経歴・種族・宗教に関わらず優秀なものを貪欲に受け入れるこの地に救い上げられた形だ。

他の国、領地では私の身分では決して登用される事は無かった。いわば大恩あるお方である。
私にとっても、領民達にとっても。
それを、下手をすれば君主の方が下々の者よりも貧しい暮らしをしているなど言語道断である。

しかしながら、実際の所このような生活を強いるしかない現状が、私は悔しくてならなかった・・・。

「一国の主の生活の豊かさは、その国の民の豊かさに準ずる」とはアンズ様のお言葉である。

民が貧困に喘いでいる現状に心を痛めておいでなのだろう。

これを期に、私達の部署はこれよりさらに公僕として職務に邁進することを心に誓った。
聞く所によれば、他の部署でも同じように気炎を上げるものたちが大勢居ると言う。
一刻も早くこの国を豊かにし、アンズ様のお心を安んじるためにである。

私は、この国の未来は必ずや明るいものとなるであろう事を、革新していた。








ずずず、とこの地方で最近命じて開発させた緑茶を啜りながら俺は適当に書類を捌いていた。
ぶっちゃけた話公務なんて面倒極まりないので、実質日に三時間くらいしか公務の時間はとっていない。
のんべんだらりと茶を飲んだり、ダチとだらだらしゃべったりが主な生態である。

よく書類の山に埋もれているSSの主人公とかがいるが、あんなものは物好きかマゾがやることとしか思えない。
アレもコレも完璧を求めるから、そういうことになるのだ。
大体適当で良いやと思い定めれば、適当な政策案を適当な技能集団に丸投げしてはい終わりでいいのである。
そして更にその先に行くと、組織のおおまかな方針だけを決めて、政策すら丸投げと言う始末だ。

人間は馬鹿ではない。自分たちの利益のためなら、膨大な間違いの海の中から正解と言う宝をサルベージする苦行を屁とも思わない。
実際に今、この領地はこれほど住み難い山だらけの土地だと言うのに、それを為せるだけの活気に満ちている。

隣に直立不動で控えるメイド(コイツも多分ネカマだ)・・・を極めんとするプレイヤー組の一人からお茶を汲んでもらいながら書類に目を通し決済印を押していく。

すると、コンコンと二回ノックの音が響いた。

───ああ、もうそんな時間だったか。


「ん、入れ。」

「はい。アンズ様、失礼居たします。」


入るなり平伏・・・まあすごく頭を低くする、土下座ではない感じのこの世界特有の最高礼だと思ってくれれば良い。
日本で言うところの土下座みたいなものである。
はっきり言ってオッサンにそんな事をされても凄く居心地が悪いので、俺はさっさと顔を上げさせた。

そしてなにやら、呆けたような顔をしていたので先を促すと弾かれたように喋りだす。
最近はこういう輩が多い。行動パターンが画一化しているというか、先が読みやすいのは結構なのだが少々うざったいものである。
ゴトリと湯飲みを桐の平台に乗せると、書類を受け取りつつ説明を聞く。


「現在、山岳地帯の「棚田」化ですが、かなり上手くいっておりまする。
去年の伸び率を見る限り、今年は3倍以上の増収が見込めますこの分なら増え続ける人口を領内の作物のみで支える事も不可能ではありませぬでしょう。」

「亜人と邪教の全面受け入れですが、これも良い悪いはともかく予想以上に作用し領民は既に元の80倍近くおりまする。」

「海岸線から続く尾根を掘り下げた運河の設立ですが、これは設計段階ですが可能であると試算されています。」

「山間大橋計画ですが、既に2つの主要「都市岳」を結ぶ橋が完成しています。これまで以上に物流が活性する事でしょう。」

「小麦と米の代替政策ですが、来年度にはほぼ比重が入れ替わるでしょう。面積辺りの収穫量も増加傾向にあります。」


うんうん、他のプレイヤー達が出した案は上手く行っている様だ。
まったく事こういうことにかけてはプレイヤーたちの行動力は凄い。

実際まるでどこかのSSの主人公のように書類に埋もれているものも居れば、軍事兵器の開発に延々とかまけている者も居る。
農業改革に、産業革命、蒸気機関の開発、新魔法の開発、経済機関の設立から間諜組織の設置に至るまで彼らのバイタリティには驚かされるばかりだ。

ぶっちゃけ、俺はなにもしなくてもいい。いやむしろやることなんて殆ど無い。
アード・ラビと言う「大国」の一地方。とは言え、小国の総面積に比肩するほどの土地と一定の公権力を手に入れてからは楽なものだった。
転移してきた彼らを大陸・亜大陸中から掻き集めてこの「山」しかないアード・ラビで内政TUEEEEEEをやって頂けばいいだけの話なのだから。

俺に要求されるのは彼らのまとめ役であり、この世界の社会で彼らの代表であると言う肩書きが殆どだ。
あとは、概ねの領地経営の方針さえキチンと示せばあとは勝手にやってくれる。
実に素晴らしいWIN-WINの関係であると言えるな。

ま、俺個人としては、この世界の住人なんて連中はは割りとどうでもいいのだ。
しかしご同輩の中でも実力の低い者(レベルもリアルスキルも低い連中)が不当に泣きをみる体制だけは何ともいただけなかった。
このアード・ラビと言う一つの組織が生まれた理由の一つは、それだ。

このアード・ラビは異世界組・・・つまりクレイドルオンラインのプレイヤーの相互扶助組織と言う性格が強い。
中でもこの亜大陸地方は日本サーバからの来訪者が多いらしく、その殆どが日本人だ。
ならばもしその手に力があったなら助けないわけには行かないのが人情と言う奴であろう。

ただ、その数が少々予想外で、この世界に来ている日本人は現在判明しているだけでも総数5000人に上る。
しかも隣接する大陸地方ではヨーロッパ系・アメリカ系プレイヤーも山と居り、
現在アード・ラビの噂を聞きつけてこの地方に集団で南下中であるとのこと。

つまり、アード・ラビにはそれだけの人間を召抱える事の出来る巨大な市場規模が要求されるのである。
まったく、元はといえば山と森いがいに何も無い地域に無茶を言うものであった。
前世の地球ではまず間違いなく大きく発展などするわけも無い地域であり、人間すらまばらに住むばかりの筈。

だが、このゲーム内の腐った政治事情とパワーバランス、それと世界観が絶妙にマッチしそれらはこの地の大開発に結びついていた。

これらの冒険者の動きは厄介話でもあり、「知的労働力」兼「軍事力」の獲得と言う意味ではまったく歓迎すべき事態であった。
言い方は悪いが、異世界に来て肥大化した野心をもつようになった冒険者は非常に多い。
そして彼らの欲望を満たすためには、彼らの下にこの世界の人間が最低一人当たり100人程度は必要だった。
そしてこの地の経済的・農業的・工業的発展をゴリ押しするためにもその程度の人員は必要なのだ。

つまる所、このアード・ラビの民は膨大な数の冒険者の胃袋と欲望を養うためだけに集められたと言える。
いや、まぁ減税したら勝手に集まってきたのだが。

・・・・。

その後も文官の奏上を聞き続けるにあたり、特に今回の定期報告も目立った変化は無い。
(つまりほぼ全ての部門が指数関数的な上昇を見せている)ようだった。
だが、その中で少々不穏な件が混ざっている事には流石の凡愚たる俺でも気付く。


「・・・ふむ。現住の民と流民の軋轢が増しているか。」

「ハッ!この上は、近頃狼藉を働く流民全てに対しに何らかの法的処罰を与えるほか無いと愚考いたします。」


・・・暗に、この文官は今後入ってくる流民を差別しろ、と言っている訳だ。
まぁそんなつもりではないのだろうが、言っている事は変わらない。
だが、はっきり言ってそれは治安に対しては逆効果も甚だしい。
ありとあらゆる歴史的事実がそれを証明している。

そもそも、我が領では奴隷を認めていない。
むしろ全面的に禁止で犯罪行為として取り締まってさえいる。

で、ある以上は発言力の無い人間層を作る事は不可能だ。
ならばここはいっそ、彼らにはさらなる支援が必要であると思われた。
彼らを安価な労働力(つまり奴隷)として搾取しつくすのも経済のカンフル剤としては有効だろうが後が怖い。

危険な階級の人間や、スラム街を作らないことは膨張を続けるこのアードラビの山岳都市群では最も大事な事だ。

現状ではプレイヤーは設定上、精霊の化身に宿った異世界の戦士の魂であると言うことなので、
もしこの世界の法則がまったくゲームのものであるとしたならば寿命の問題は不可避である。
そして寿命で死ぬ事が無いのなら、ここでアード・ラビ100年の禍根を残すわけには行かないのであった。


「・・・だめだ。いや、むしろこれまで以上に流民には金と食料を分け与えろ。仕事を与え、文字を教え子はできるだけ保護しろ。
流民でも年寄りは労れ。そうすればその内治安も良くなる。」


そんな事は通常、こんな振興の一地域に過ぎない所でで出来るわけが無い。
ないのだが・・・凄まじいまでのチートを連発する頼もしい日本人プレイヤー達のひしめくこの領地ならば、"可能"だ。
経済部の試算では経済が低迷していたのは最初の半年だけで、そこからは増え続ける難民の量にもかかわらず常に経済は上向きである。
この世界特有の成長の早い作物と、農業チートがジョグレスした結果として食料もギリギリ足りる。

人口比が3年前に比べて80倍と言うのも可笑しな数字だが、元が素寒貧のいい所なしの領地だったのだからある意味当然だった。
原住民と流民と言う区分も寒々しいもので、元々の住人が80分の1しかいないのなら、どれが原住民でどれが流民なのやら。
下手をすると一ヶ月前に流れてきた人間がこの地の原住民という事になりかねない。

今世紀最大のジョークである。


「職業斡旋組織をもっと大きくしないとな。流民を効率よく捌き出切るだけ全員を職に付けろ。
幸いな事に、亜人は足腰が強靭な者が多い。棚田の整備を急がせれば食料はこまらないだろ。
どんな小さなことでも年寄りや子供にも無理なく出来る仕事はある。出切るだけ身の丈にあった職に付けられるようにな。」

「・・・あと、税率はこのままでも問題ないな。」


適材適所は重要な事である。爺さんや女子供でも軽工業にくらい関われる。
職があるなら食っていける。あとは福祉がしっかりしていれば危険な階級の総数はぐっと減らせるだろう。

現在アード・ラビの経済形態はフロンティア経済とでも言えばいいか、この領地の経済は棚田の開墾を基本にほぼ領地内だけで回っている。
いずれは大々的に貿易にも乗り出したいところなのだが、プレイヤーの設立した経済戦略研究所の話では、
現在はまだ領地内だけで回した方が効率的らしい。

専門家に言われたのなら仕方が無い。その通りにするのが一番だ。
なので無駄な事はせず考えず、今日も今日とて俺は執務室(と銘打った私室)でまったり茶を啜るのである。


「ハ、しかし公庫はただでさえ慢性的に空に近いです。それにこれ以上貧しくされるとアンズ様のお体に触るかと・・・。」

「貧しく?いや、私はこれで十分だよ。心配する事は無い。」

・・・・?
なにか可笑しな事を言う文官である。いや、近頃プレイヤー組でない文官や武官たちはどうもウチは金が無いと勘違いしている節があるようだ。
確かに書類上は3年前から殆ど公庫の量は増減していないが、実際は領地内で常に循環しているからで、実質的な公庫は唸るほどあるのだが・・・。

まぁ、この手の事をこの世界の連中に理解させるのは難しいのは身に染みて解っている。
コイツはこの世界の人間の中でもかなり先進的な考えをする人間だったのだが、そのコイツでもこのレベルなのである。
義務教育とは如何に素晴らしいものか、最早我々は元の世界に足を向けて寝られないな。どの方角に元の世界があるのか知らないけど。

と言うか、貧しくした覚えなど欠片も無いのだが、本当にこの文官は何を言っているのだろうか?
飯は元の世界では最高級の扱いである無農薬(と言っても無農薬が一概に言い訳でもないのだが)作物に海産物は常に取れたての旬の味。
同郷の有志たちが作った有機味噌の味噌汁に豆腐や漬物。それに美味い米。

それが三食出るのである。日本食をこよなく愛する自分としては夢のような食卓だ。ちなみに調理は横に居るこのメイド。
このメイド、中々味な真似をしよるもので、毎食毎食微妙に味付けや違った趣向をこらした繊細な料理を作ることに定評がある。
盆の中に作られた小さな芸術は、こいつも異世界生活の中で趣味を堪能しているなと思わず唸る一品だ。

服?元々お洒落敗残者の俺に何を期待しろと?ははっ。








「アード・ラビの守護天使」の話を聞いた事があるだろうか?
あるいは、「慈悲の陽光」「山の女神」の名でも知られている彼女を。
おそらく、このガラク・イラ亜大陸及び北海大陸の人間でその名声を聞いた事の無い人間は居ないだろう。
もし知らぬのならば、君はおそらくクレイドルの世界のの外から来た人間なのだろう。

亜人の守護女神であり、奴隷の解放者であり、技術者の守護者である彼女の伝説的逸話は枚挙に暇が無い。

今後はかつて彼女が作り出した最後の楽園の栄光とその伝説的戦果を語っていこうと思う・・・・。


今日の豊かで素晴らしい大国、アグ・テ国を作り出すその礎となる地。
偉大なる伝説の地。多くの精霊の住まう山の国、アード・ラビの地の話を・・・・。









あとがき


USBを掘り出したらなんかあったから晒す。
後悔はしていない。

MMO迷い込み+内政TUEEEE+勘違いモノ+TS+社会風刺+群像劇+作者の脳汁=狂ったオンライン。


・・・・・どうしてこうなったのだろう。



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