<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.33160の一覧
[0] 【ネタ】検証結果が運ゲーだった。【二次】【ごちゃまぜMMO】[注位置秒](2012/05/25 17:30)
[1] 検証結果が『なりきり勢トップ』だった。[注位置秒](2012/05/25 17:31)
[2] 検証結果が二つ名持ちレベルだった。[注位置秒](2012/05/25 17:31)
[3] 検証結果が二人目だった。[注位置秒](2012/05/25 17:31)
[4] 検証結果が俺以上だった。[注位置秒](2012/05/27 22:28)
[5] 検証結果が小説よりも奇なりだった。【本編1】[注位置秒](2012/06/01 20:25)
[6] 検証結果がインチキだった。[注位置秒](2012/06/06 17:02)
[7] 検証結果がアオイが主役だった。【本編2】[注位置秒](2012/06/12 02:02)
[8] 検証結果の登場人物[注位置秒](2012/06/11 16:54)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[33160] 検証結果が小説よりも奇なりだった。【本編1】
Name: 注位置秒◆c2c13e9c ID:6f8ebee9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/06/01 20:25
いわゆる本編。ギャグ少なめ。
8割が東方成分で出来てきます。
================================
感想読んでいくらかの助言に従って

・風見幽香が登場しなければならなかった理由。
・作中ゲーム内での著作権関係。
・作中時代と使われている会話ネタの関係。

を主体に完結までのプロットを構築。
現段階では後6話で完結。7割くらいが東方成分。幽香が主役。
そんな感じになりそうです。

ただ方向性の急転換と、後付設定乱舞の結果、本編の雰囲気は今までと異なる感じになりそうです。下手したら別作品じゃね? って程度に。

ともあれ、本編進行中も、合間に今まで通りネタ傾向の話も投稿する(つもりな)ので今までのを楽しんでくれてた方も次回投稿をお待ちくださいな。
幽香が本編で主役な分、幽香の登場は少なめで、他のキャラが優遇されそうです。あと東方成分も少なめ予定。
(上記は感想板に書いておいたんだけど、良く考えたら此処に書かなきゃ駄目じゃんってなったので追記。あと本編読まなくても合間のネタ話では何も困らないので本編避けてネタだけ読んでもおk)
================================================================

 それを見つけたのは偶然だった。
 【アリーナ】に行った帰りにたまたまアオイと会って、そのままアオイとスキル関連について話がてら、適当に狩りをし、調節したスキルの様子を見るために、適当なエリアボスを狩ろうという話になったのだ。
 そして、向かったのは【博麗神社】。このMAPではMOBは24時間に1回のポップしかしない【ハクレイのミコ】のみの特殊なMAPである。エリアボス1匹であるため、横槍が入る心配がなく、新しく調節したスキル試しには丁度良い、と考えてのことだ。
 この特殊なMAPは他にも【グリーマレーヴ大聖堂】、【無限回廊第一層】、【エアフォルクの塔1F】、【瘴気ストリーム『?』】、【堕ちた都市レックス】など、似たようなMAPが存在する。それらに共通する点は『リポップが24時間のエリアボスのみが存在し、その奥に質問が書かれている』こと。

「先客が居るのか? 珍しいな」

「本当ですね。こんな辺鄙な場所に一体誰が?」

 しかし、そういった特別なクエストに関係しそうな気配は非常にするものの、ボスを倒してもドロップは何も無く、奥にある質問にはヒントが一切無く、一時期は攻略勢が調べまわったのだがそれでも一切のクエストやイベントに無関係であり『今後追加されるクエストの前倒しMAP公開だろう。今は無意味なMAP』という結論が出て随分と経つ。
 そのため、そうそう人など居ないのだが……まぁ、俺たちみたいな考えの人間が来てもおかしくない。もしくは観光かもしれんし。どちらにしても物好きである。折角なので顔でも拝んで、さっさとさほど遠くない【グリーマレーヴ大聖堂】にでも――――

「――――【四季のフラワーマスター】? どうしてこんな場所で」

 アオイが俺の疑問を口に出してくれた。
 そこに居たのは幽香だった。【ハクレイのミコ】と戦っており、こちらに気づいた様子は無い。アオイが反射的に身を隠し、俺も一緒に隠れたのが原因であるような気もするが。
 ともあれ、俺もアオイと同じ疑問を抱いている。正直、ここには寂れた神社とそのミコ(っぽい奴)くらいしかない。幽香が好む綺麗な植物があるMAPではないため、わざわざ来ないと思うのだが……
 そんなことを思ってるうちに、幽香は危なげなく【ハクレイのミコ】を倒した。そして奥の寂れた神社に向かう。多分、質問を確認しに言ったのだろうが……攻略勢が総出で掛かって投げたのだ。質問に答えることなど出来ない、と思うのだが。
 そして、【賽銭箱】の前で立ち止まる。確か【博麗神社】の質問は【賽銭箱】に刃物か何かで刻まれた様に書かれてるんだっけ。

「……***」

 幽香が何事かを言った。
 直後、転送のエフェクトと共に幽香が消えた。

「……うん?」

 即座にチャット欄を確認。この距離なら耳で聞き取れなくても、チャット欄には書かれる筈。
 そこには、風見幽香の名前と、その発言として「れいむ」という単語が書かれていた。

「『れいむ』ですか……?」

「……行くぞ。これ、もしかしたら此処の質問の解答かもしれん」

「解答って、あの質問はヒントも無しに解けるようなものじゃ……」

「詳しくは俺も知らないよ」

 ともあれ、質問文を確認すること自体は別に構わないだろう。
 そう思い、アオイを置いてさっさと【賽銭箱】を確認しにいく。アオイも置いていかれては堪らないとすぐに後を着いて来たが。

「質問文は……あった。これか」

 【賽銭箱】に刻まれた文字は『博麗の巫女の名前を答えよ』と書かれている。
 博麗の巫女。【ハクレイのミコ】、か。あのMOBには名前があるらしい。となると、それが『れいむ』なのか?

「……これは、答えたら転送されるのでしょうか?」

「多分な」

 さっきのワードが正解の解答なのだろう。だとして、追うべきか? 幽香はどうやったか知らないが、どうにかこのクエストだかイベントだかの答えを探してきたんだ。PTに誘われたならともかく、そうでもなく後を追うのはな……

「…………な、何ですか?」

 ……かと言って、この隣で行きたそうにウズウズしてるアオアオが居るようじゃなぁ。下手したら一人で行きそうだ。いや、まぁ、最近の言動を見るに、お互い中の人的には仲が良いみたいだから、もしかしたら幽香も大して怒らない気もするけど……
 ――――うっかり幽香が怒るようなら矛先が俺に向いた方が後々を考えると楽か。

「良し。とりあえずは答えてみよう。それが転送のトリガーならトリガーだ。その先に幽香が居ても不可抗力。ってことにしよう」

「え、ええ。そうですよね! それに、【四季のフラワーマスター】が一人でこんな所に居たなんて、また悪巧みを考えていると言ってるも同然。私が見逃す道理は無いのです!」

 道理が云々言ってるが、そう言うのは無理で道理を押し通すって言うんだ。まぁ、別に良いけどさ。幽香とはまた違ったベクトルでこの人も大概アレだよなぁ。

「じゃあ試すから合わせろよ? せーのっ」

「「れいむ」」

 転送エフェクトと共に、視界が歪んだ。

 †    †    †

「――――此処、は……?」

 転送されて出てきた場所は、ドーム状の建物の中だった。周囲には空中を漂う複数の『少女祈祷中……』の文字。そして、床や壁には花の模様。これは、蓮の花か?

「【四季のフラワーマスター】は居ない様ですね。多分、あの扉のどれかを進んだのでしょうが……【立て札】がありますね。見てきます」

 俺とほぼ同時に転送を終え、周囲を確認したアオイが口に出す。アオイが言っている扉は……全部で11。【立て札】は、壁際に立ってるアレ1つだけか。
 アオイが【立て札】を見るなら……【メニュー】を開いてMAP名の確認でもしておくか。

「え、っと。【東方の間】……? つまり、あれか。【西方の間】とか類似した場が存在する可能性は高いな。【博麗神社】に似た特殊性のある【グリーマレーヴ大聖堂】や【無限回廊第一層】なんかを考えると、まず間違いは無い、か」

 東方。十二支では卯。八卦では震。五行では木。四季では春。四神では青竜。四象では少陰。両儀では陽。
 重要そうなのは五行と四季と三精だろうが、残念ながら、三精だけはいくら調べても出てこなかったので、多分独自設定だと思う。
 ともあれ、東という情報から出てくるのはこの程度。対木と対春だけは装備変えて100%にしておこう。どちらも対応した属性だから両方を100%にするのは簡単だし。
 三精は……四象と両義から、対日を比較的高めにしておけば良いかな。

「これは……なるほど、本気でかかる必要がありそうですね」

 ちょっと来てください、とアオイに呼ばれ、【立て札】を読んでみれば、なるほど。アオイの言うことも分かる。
 その【立て札】には、題目として一行目に太字で『ゲームとリアルの境界』と書かれており、この先のMAPでは死ぬ=キャラロストとなっている旨が書かれている。『コンティニューなど出来ませんわ』とか、中々にえげつない。というか、PC死亡=キャラロストとか見たこと無いぞ。マジか? マジなんだろうなぁ。わざわざ注意書きされてるってことは。ウィザードリィかっての。
 また、『夢と現の境界を知りたいのなら、全作の証を集めなさい。証は6ボスが持っているわ』とも書かれている。何だよ6ボスって。連続ボスバトルか? 『魔王決戦』ではあったらしいが、逆に言うなら連続ボスバトルなぞ『魔王決戦』だけだった筈。だとしたら、難易度は最高クラス。いや、キャラロストの危険性を含めるなら、難易度は最高、か。

「どうしますか? 流石に事前情報無しに、ましてや準備も無しに『死』の危険性を冒すのは抵抗がありますが、【四季のフラワーマスター】は進んでいるようですし……」

「擦れ違うのも怖いし、幽香がいつから此処に来てるのかは知らないが【ハクレイのミコ】撃破からこの【東方の間】に来るまでの迷いの無さ。俺らがすぐに追いかけたのに、その時にはもう進んでるっていう手馴れた感じ。この二つから考えるに、多分、幽香は俺たちより此処について情報を持ってる。お前の言う『死』……つまり、キャラロストのリスクを考えるなら、合流しない手は無いな。つまり、待つぞ」

 その間に調べることもあるし、と言いながら既に調べ始めている。
 物理系スキルの発動の確認。問題無く発動。消費MPも変化無し。魔法系スキルの発動の確認。物理系スキルと変わりなく問題無し。回復アイテムの使用の確認。回復量含めて問題なし。ディレイも変わらず。転送系アイテムの確認。……発動不可。
 面倒な。と思ったら、【ワープスクロール】ならMAP内移動は問題無し。MAP外を試してみたが『別サーバーへの移動は出来ません』となるようだ。この【東方の間】を含めた特殊なMAPは、俺の【ホーム】や通常のタウンなどが在るMAPとは別サーバーで動いてるらしい。多分、特殊なイベントMAPなどに分類されているのだろう。
 他にも色々な確認を行った。アイテムの使用確認は当然。自然回復速度の確認や空腹度の低下速度、スキル値上昇。果てには【壁】や【少女祈祷中……】を攻撃し、破壊不能オブジェクトか否かの確認。一応言っておくと、破壊不能オブジェクトだった。残念。
 アオイは最初の内は俺を興味深そうに見ていたが、途中で飽きたのか、本来の目的であるスキル調整を細々としていた。時々、俺にデータ面での助言を求め、あーでもないこーでもないとブツブツ言いながら自分の【メニュー】とにらめっこしてた。

 †    †    †

 さて、どの程度時間が経ったかしらないが、正直、今日の所は諦めて、明日にでも中の人に聞いてみるか、とか思ったころ。
 バンッ! という大きな音と共に扉が開き、幽香が倒れるように飛び込んできた。何事かと驚いてるアオイは硬直してるし、俺だって驚いてる。
 幽香の様子は、パッと見でこれ以上ないくらい切羽詰っている。このゲームではどれだけ走っても疲れなど感じないが、幽香は四つん這いになりながら、左手で日傘を握りしめ、右手は苦しそうに胸を押さえ、息を切らしながら毒づいた。

「この、根性、無しがっ! ルーミア、程度に……無様に、逃げてぇっ!!」

 何と言うか、尋常じゃない。何だ? どうした? 何が起きた? 別にコイツに『実は心臓が弱い』なんて病弱設定はないからリアル側で問題が起きたわけじゃないだろ。それに、この声を荒げる感じは、『幽香』というより、素に近い。いくら人が居ないと思ってる場所でも、コイツが『風見幽香』のPCボディでこんなことするのは変だ。

「どうしたんだ『幽香』。お前らしくない」

「なっ!?」

 俺が声を掛けると、体を跳ね起こし、俺を見る。そこには驚愕のみ。

「アンタ。どうして、何で? 嘘。アンタは『東方』を知らない筈で」

「落ち着け。深呼吸をしろ。それから、お互い話を」
「黙ってよ!」

 怒鳴り、俺の言葉を遮る幽香。
 ヤバイ。
 ヒスってる。
 どうすれば良い?
 リアルじゃなくて助かった。
 俺の思考が支離滅裂に。ああ、俺も動揺してるらしい。幽香に胸倉を捕まれた。何すんだよ。

「アンタ、お仲間だったワケ? ねぇ、何で黙ってたの? 私、死ぬ気で。死ぬかもしれないって思いながら、此処に来て。何なのよ、この世界。変でしょ? 変よね? ヴァーチャルリアリティーって、どこのSFよ。今何年だと思ってるの? 西暦2012年よ! 俺は死んだの? アンタは死んでこっちに来たワケ? 答えてよ。答えなさい!」

 訳が分からない。何を言っている? 発狂したか? メンヘラ? ゲーム脳?
 『お仲間』? 何のだ? 『黙ってた』? 知らんわ。
 『変』って何がさ。VRのことか? 別に、確かに新しい技術だけど、変じゃない。たった2、30年前は電卓一個が十万だったんだぞ? ましてや、VRは元々軍用に開発された(らしい)代物だ。普通だ。SFでも何でも無い。
 『俺は死んだの?』ってどういう意味だ。お前は生きてる。俺だって生きてる。死んでない。『こっち』って何処だ。どういう意味だ。
 とりあえず。

「質問に答える。だから、離してくれ」

「――――っ!? ご、ごめんなさい」

 言うと、多少は冷静になったのか胸倉を掴んでいた右手を離してくれる。

「まず、俺にはお前の言ってる事が殆ど分からなかった。だからお前の質問には『分からない』とか『知らない』とかしか返答できない。だから、詳しく説明して欲しい。後――――アオイ。いつまで固まってる」

 俺の返答にふざけるな、と叫びそうな気配が幽香からしたのでアオイに振って、その機を逃す。言われるまでアオイの存在に気づいてなかった様で幽香は驚きが怒りを上回ったようだし、1対1の会話ではなく、アオイを含めた3人での会話なら、感情的な発言も多少は減るだろう。

「悪いなアオイ。お前の主義には反するだろうが、今は『なりきり』関係の煩わしい話は無しだ。幽香がこの調子だしな。それと幽香。俺に質問をぶつけるのは構わないが、事情が分かってないアオイにも分かるように説明してくれ。そうすれば、俺も分かりやすい」

 要は、アオイをダシに幽香に冷静になってもらおうって考えである。我ながらセコいと思うが、それで幽香が落ち着くなら万々歳。俺はいくらでもセコくなる。

「なに。アオイはお仲間じゃないってワケ? じゃあ何で此処に居るの? 連れて来たの?」

「そんな感じだ。だから、アオイに説明頼む」

 とりあえず、否定はしない。コイツのこの様子じゃ、今は何を言っても言い訳程度にしか聞かないだろう。
 今は俺が如何に幽香の言ってることを理解できるかという点と、幽香がどれだけ冷静になれるかという点。この2点が重要だ。

「……分かったわ、説明してあげるわアオイ。嘘みたいな本当の話よ。黙って聞きなさい」

 †    †    †

 幽香曰く、前世は男だったらしい。あと、本人の名誉のため言っておくがネカマじゃない。リアルは女だ。
 で、その前世ってのが、平安時代だとか、そういう昔じゃなく、今――――つまり、西暦2000年前後だという話だ。
 ただ、その前世と今世の違いは様々な所に多々あり、サブカルチャーな面であったり、歴史であったり、科学技術であったり。それが酷く気味が悪いらしい。別にVRがあっても良いと思うし、明智光秀が織田信長を討つって何の冗談だと思う。幽香曰く『私からしてみれば蘭丸なんて小姓が信長を討ってる方が意味分からない。どっちも結局秀吉に負けてるから変わらないけど』だそうだ。
 ともあれ、そうした違いを気持ち悪いながら受け入れていたら、このMMOを見つけ、前世で存在した『東方project』という物や他にも『この世界では存在しない聞き覚えの有る物』をいくらか見つけた結果、自分の『お仲間』。すなわち、前世の世界を知る人間が製作陣にいると考え、他の『お仲間』探しも含めて、分かる人には分かる『風見幽香』として活動したらしい。『風見幽香』には元ネタがあったのか。道理で『なりきり』キャラにしても設定細かいと思った。『私の黒歴史ノートの結集作』とかじゃなかったのか。

「――――そういう訳で、このMAP【東方の間】に来れるのは私が俺だった世界……前世の世界を知る人しか入れないの。そこに居たのが、貴方たち」

「……な、なるほ、ど? その、私は前世とか信用してませんが……う~ん……」

「OKだ。分かり易く説明してくれて助かった。それで、さっきの質問の返答だが」

「別に、答えなくても分かるわよ。私の勘違いでしょ? 大方、私の後を着いてきたってところね」

 さっきとは打って変わって冷静に物が考えられるようになってる。うん。助かる。

「アオイの方はともかく、アンタは付き合いが何だかんだ長いもの。その間ずっと私を騙せる様な演技派じゃないわよアンタは」

「さっきの取り乱し様とは打って変わってこの仕打ち。俺が一体何をした」

「……私が男の時は気づかなかったから、言ってあげるわ。『男のチラ見は女のガン見』よ」

「何それ怖い」

 いや、結構マジで。俺は比較的性欲が無い人間だって自他共に認めてるけど、それでもバレテーラなの? 女って怖い。しかも中身は元男。結構本気で怖い。色んな意味で。

「安心しなさい。私の意識としては女100%よ。『男の記憶』を持ってる、程度の感覚だから」

「……【検証者】も所詮は男という訳ですね。男ってどうしてこう、下半身直結で物を考えるのか」

「アオイがどことなくお嬢っぽいのは把握した。お前リアルが綺麗だったら許される発言だが、ブスだったら『自意識過剰乙ww』ってなるから気をつけろよ」

「なっ!? し、失礼なっ!!」

「む。悪いな。今のは善意の助言だったんだ。気を悪くしたなら謝る。すまん」

 何だか何時もの雰囲気になってきた。うん。やっぱこうじゃなきゃな。ゲームは楽しんでやるものだ。さっきまでの幽香は絶対楽しんでなんか居なかった。これは確実だ。

「それで、幽香はどうしてあんなに取り乱してたのか、聞いても良いか?」

「……【立て札】は読んだわね? なら、分かるでしょ?」

 【立て札】に書かれていたこと……? 確か。

「このMAPで死んだらキャラロスト食らうって事か?」

「え?」

 俺が言うと、ぽかん、と口を開けて俺をみる幽香。俺、何か変なこと言ったか? とアオイを見てみれば、アオイにも分からない様子。

「あとは、証を集めればどうとかって」

「ちょ、ちょっと待って。今から【立て札】読み直すからっ!」

 アオイの言葉を遮り、【立て札】を確認に行く幽香。食い入るように見つめ。見つめ。見つめ――――

「――――ほ、本当だ。キャラロストだとも読める。な、何だ、もう。あ、あはは、はは、あはは……」

 乾いた笑いをしながら帰ってくる幽香。意気消沈してる。というか。

「それ以外にどういう意味だと思ったんだ?」

「……そう、そうね。キャラロストで済む可能性があるとはいえ、私の予想を否定する材料にはなってないもの。言っておいた方が無難ね」

 幽香は少し悩む素振りを見せたものの、自分なりに納得し、俺らに言うことにした様だ。

「私が【立て札】を読んで予想した結果は『このMAPでのPCでの死はリアルでの肉体の死と同義である』よ。つまり、『風見幽香の死』は、そのままの意味で『リアルの私の死』に繋がる、ということ」

「……ゲームで死んだらリアルで死ぬなんて「ありえない」」
「「ありえない」、なんてありえない。アンタの気に入ってる台詞の一つでしょ?」

 俺の言葉に被せるように幽香が繋げる。
 ……確かに、仮定から求められる結果に拘り、実際の結果を否定するのは、俺の主義に反する。結果を受けて、その結果を求めうる仮定を算出するのが、【検証者】である俺だ。

「それに、私がそう考えた理由の一つに、前世の世界ではVRMMOは何かとプレイヤーの命を脅かす物だったから、っていうのもあるわ。PCが死ぬのをトリガーに、超音波で脳を破壊したり、安全装置のバイタルコンディショナーをめちゃくちゃに動かしたりとか、そういうのでリアル側が死ぬ」

 聞いてて、なんというか、悪用された場合の危険性が凄い分かった。常識的に考えてそれは一発でお陀仏だ。だが。

「そんなことして何になる? メリットが何処にもないぞ」

「大抵はただの『娯楽』よ。そこにメリットデメリットの打算なんて一切ないもの」

 聞いてるだけで頭が痛くなってきた。そんな気楽に殺人されるのは流石にたまったものじゃない。こちとら平和な日本で生きてきた人間だ。そんな世界はお断りだ。幽香も中々辛い世界を生きてきたんだな。

「あと、もう一つの理由が……この【立て札】の書き手が『八雲紫』、または彼女を模してるから、って言う理由ね。詳しい説明は省くけど、PCの死をリアルの死だと脳に勘違いさせて殺す、とか出来そうな超能力を持ってるのよ、その『八雲紫』ってのは。だから警戒した」

「ちょっと待った。お前の言う『八雲紫』ってのも『風見幽香』と同じ、フィクションの登場人物だろ? 流石にそんな超能力を持った存在がこの世に居るなんて」

 ……ありえない、なんてありえない? 待て。常識で考えろ。可能性が0の物は否定しなければいけない。検証をする上で消去法を用いる必要がある場面なんざ山ほどある。可能性が0の物まで否定しないのは、逆の意味で思考停止だ。

「私だって、流石にその可能性は低いとは思うけど、無いとは言い切れない。私は『転生』か、それに類したオカルトの何かを経験してる。だから否定し切れない」

「じゃあ、仮に此処でのPCの死がリアルでの死に繋がる、という最悪の場合を想定して……何故貴方は此処に? 正直、そんな危険を冒す理由が分からないのですが」

 アオイが訪ねる。そうだ。こんなゲームのクエストの一つや二つ、命を掛けるに値しない。何故、そこまで拘る?

「訳も分からず人生やり直し食らって、違う世界を生かされて、その答えかも知れない何かが、目の前にあるの。それこそ、命を掛けてでもやらないと一生後悔するって直感できるほどの重大事よ。一般的な感覚で言うなら……そうね、就職活動クラスの」

 何か良く分からないが、重大性は良く分かった。というか、マジその話題止めて就活こわい。

「……分かりました。どうやら止めても無駄な様ですね。では、これを」

 そう言ってアオイは幽香に向けて手を向けて……ってオイ。それって。

「私の【フレンドアドレス】です。此処に来る時は、私を誘ってください。力になります」

「……今の話、別に冗談でも、なりきりでも、何でもないのよ? 分かる? 本気なの。命が掛かってるかもしれないの」

「だからこそ、です。私は貴方と気が合って、信頼できる。『友となるのにそれ以上の理由は要らない』と、ある人に言われました。なら私は貴方の友人で、友人が命を掛けているなら、手助けするのは当然です」

 ……歯の浮くような台詞だ。なんというか、素で言えてるアオイは凄いな。俺が女だったら惚れてるぜ。イケメン過ぎだろアオアオ。ゆうかりんのあの顔を見てみろよ。これは間違いなくオトされたね。ただし百合は俺の見えない所でやってくれ。

「……ありがと。これ、私の【フレンドアドレス】」

「ええ、確かに受け取りました」

 俺、このままフェードアウトが正しい選択じゃね? 邪魔しちゃワルイヨナー。

 †    †    †

「ちょっと。何いじけてるのよ」

「いじけてなんかぬぇーよ」

「どう見てもいじけてるじゃないですか。良い年した男がそんな事しててもキモいだけです」

「ぐぅ……」

 ゆうかりんとアオアオに虐められてる俺。どうしてこうなった。俺は親切で邪魔しないように隅っこで座ってただけなのに。

「じゃ、じゃあ一応纏めるが、一つ。此処の攻略は諦めない。二つ。攻略の際は出来る限り万全の状態で行う。三つ。此処に来る場合、絶対に単独では来ないこと。四つ。此処の情報は外部に一切漏らさない。これで良いのか?」

「ええ。それで良いわ」

 幽香に確認をとる。とりあえず簡単な口約束だからガチガチに固める必要は無い。それこそ、要点さえしっかり抑えれば後はどうでも良い。

「つまり、攻略はまた今度ってことだ。お互いそれなりにメールで情報交換して、万全の状態で攻略するぞ。下手したら命が掛かってるわけだから、もし仮に戦力になりそうな人間を誘うとしても、その説明は絶対にすること。その説明を鼻で笑って信じられない様な奴は、何時もの感覚で戦って死ぬだけだから絶対に此処には連れて来ない様に。下手したらそいつ一人のせいでPT全滅だってありえるんだからな」

「私が誰か誘うわけ無いでしょ。アンタだって誘わなかったんだから」

「だな。主にアオイに言わせて貰うよ。【救国の英雄】や【Summon Knight】クラスが力を貸してくれれば、とか。確かに助かるが、逆に言うならゲームを普通に楽しんでる連中に命掛けで戦えっていう様なものだ。誘う場合はそのつもりで誘え」

「う……わ、分かってますよ」

 分かってなかったなコイツ。

「じゃあ、今日は解散。俺もいくつかやらなきゃいけないことが出来たし、何よりもう良い時間だしな。幽香、此処から帰るには?」

「【ログアウト】をすれば、次に【ログイン】した時は帰還場所に居るわ。それ以外では出れないみたい」

「なるほど。じゃあ、お疲れ様だ」

 そして、挨拶を交わし、【ログアウト】の待機時間30秒が過ぎアオイは【ログアウト】した。
 ……案の定、幽香は【ログアウト】してないわけだが。俺もしてないけどね。

「……【ログアウト】しないの?」

「ブーメランだな。そっくりそのままお前に返す」

「全く。そこまで警戒しなくても、アンタが居なくなったら一人でここの攻略しよう、とか思ってないわよ。安心しなさい」

「死ぬかもしれないって思いながら一人で攻略してた奴が何をほざくか。信憑性皆無だぜ」

「アンタと少し話をしようと思って【ログアウト】しなかっただけよ。他意はないわ」

「さて、どうだか」

 俺も幽香も苦笑いしながら言葉を交わす。まぁ、多分この言い回しなら幽香の言ってることは本当だろうが。

「んで、話って何だよ。散々アオイ含めて話はしたし、何もアオイが居なくなってから話す理由も無いだろ?」

「その……アオイもそうだけど、アンタにもお礼を言おうと思ってね。ありがと。色々と」

「別に感謝されるようなことはまだ何もしてないぞ。攻略が終わったらお礼してくれればそれで良い」

 協力するとは言ったが、まだ協力はしてないのだ。それでお礼を言われてもこちらとしても気にするなとしか言えない。

「それじゃないわよ。アオイは最後の方はともかく、私の説明だけじゃ半信半疑だったし。アンタに私が掴みかかった時だって、アンタは冷静だったもの。ああじゃなかったら勝手に誤解して、友達を一人無くすところだったわ」

「冷静じゃなかったさ。だから落ち着きたくて説明しろって言ったんだ」

「そこで落ち着こうって思える奴が冷静って言うのよ」

 何と言うか、ベタ褒めだ。なんだ突然。この後に何か無茶振りのお願い(と言う名の命令)が飛んできそうな気さえしてくる。

「それに、アオイと違ってアンタは私の話を最初から信じてたみたいだし。何でか聞いても良い?」

「何でって言われてもな……誰も知らない筈の『博麗の巫女の名前』をお前は知ってた。これがお前の妄想だと断定できない証拠で、俺はお前の発言を否定できる証拠を持ってない。なら、お前のいう事は一定の信用が出来る。そういう論理的思考、じゃないか? 後は単純に、お前のことを信用してるから、っていう」

 前者は跡付けのこじつけ。後者は、まぁ、俺の本心。

「……ああ、まぁ、確かに『博麗の巫女の名前』は証拠になるのね。なるほど。もっと早く言ってよ。前世の話云々でどれだけ時間使ったか」

「いや、まぁ、良いじゃないか。過ぎたことだ」

 言えない。今考えた適当な理由だって。

「……ともあれ、私が言いたかったのはこのお礼だけ。もう寝るわ。お休み」

「ああ、お休み。また明日」

 そして、今度こそ幽香は【ログアウト】した。
 ……今日は、疲れたなぁ……ともあれ、何だかんだ此処での検証結果は後々大切なことになりそうだ。サボらず今日の検証結果を纏めるか。

 †    †    †

 今日の検証結果――――事実は小説よりも奇なり。トンデモ体験的な意味で。



================================================================
オマケ~自意識過剰乙wwって言われた中の人~
「わ、私の思考は自意識過剰なのでしょうか……いえ、別にそんなことは……でも、それってつまり私が美人だと自分で決めるようなもので……やっぱりそれも自意識過剰に……いえいえ、でも男は狼って良く母さんから聞いてるし、その、う~ん……」
================================================================

【博麗神社】
元ネタ:東方project
概要:主人公 博麗霊夢の住む神社。神様は居ないらしい。それで神社と言えるのか。

【ハクレイのミコ】
元ネタ:ラクガキ王国
概要:HP表示が999のクセに内部データ的には1500とかHP持ってる。何故ダメージ受けてもHP減らないし。って感じに最初はなる。隠しボス。

【グリーマレーヴ大聖堂】
元ネタ:.hackシリーズ
概要:.hackシリーズでは何かとキーポイントとなる『ロストグラウンド』の代表。『ロストグラウンド』はシステム管理者すら手が出せない特殊なMAPのこと。

【無限回廊】
元ネタ:サモンナイトシリーズ
概要:永遠と敵が出続ける試練・修練の道。ゲーム的にはレベル上げやアイテム収集のマップである。

【エアフォルクの塔】
元ネタ:アトリエシリーズ
概要:意味も無く魔王っぽい何かが居たり、とても重要なレシピの書かれた本が落ちてたり、何も無かったり。何か良く分からない塔。イロイロな所に建ってる。

【瘴気ストリーム『?』】
元ネタ:FFCC(クリスタルクロニクル)
概要:瘴気に覆われた世界においても特に瘴気濃度の濃い場所であり、その瘴気の属性にあったクリスタルでなければ通行すら出来ない場所。その属性は地水火風の4属性なのだが、『?』とは一体……

【堕ちた都市レックス】
元ネタ:ソード・ワールド(無印)
概要:アレクラスト大陸の東方に存在する古代遺跡。元々は浮遊の魔力で空に浮かんでいたが、古代王国の滅亡時に墜落した。ラピュタのパクリと思った奴はIDの数だけ腹筋な。

【VRで死ぬとリアルで死ぬ】
元ネタ:ソードアートオンライン
概要:デスゲームオンラインで有名。ちなみに作者は小さい頃、結構本気でラ・ヴォスに世界を滅ぼされると信じてた。クロノ頑張って!

【ありえない、なんてありえない】
元ネタ:鋼の錬金術師
概要:強欲 グリードが言ったセリフ。つまり『可能性0%が存在する可能性は0%である』
ということ。まるで『僕は嘘吐きです』と言われたときのような言葉の理不尽さを覚える。

【八雲紫】
元ネタ:東方project
概要:妖怪の賢者 八雲紫。その能力は境界を操る程度の能力。昼と夜の境界を区切って線の向こう側は昼。こっち側は夜とか変なことも出来るし、頑張れば常識と非常識の境界とかも弄れる。物理的なものから概念的なものまで汎用性は高いようだが、それも限界はある様子。西行妖を単独で完全封印できなかったりとか。

【PC死亡でキャラロスト】
元ネタ:ウィザードリィやTRPG全般
概要:死んだら生き返るはずありません。という当然の設定。素直に新規キャラを作りましょう。

【少女祈祷中……】
元ネタ:東方project
概要:いわゆる『Now loading』。



オマケ
【男のチラ見は女のガン見】
元ネタ:俺の姉
概要:他にも『売られたケンカは3倍買い取り』『買ったケンカは返品不可』『酒に溺れて溺死したい(死体?)』『部屋から出て行け。話はそれからだ』と言った良く分からないことを言っている。多分元ネタはあるんだろうが、俺には分からん。もしかしたら元ネタないかも知れん。俺には分からん。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.023674964904785