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No.33160の一覧
[0] 【ネタ】検証結果が運ゲーだった。【二次】【ごちゃまぜMMO】[注位置秒](2012/05/25 17:30)
[1] 検証結果が『なりきり勢トップ』だった。[注位置秒](2012/05/25 17:31)
[2] 検証結果が二つ名持ちレベルだった。[注位置秒](2012/05/25 17:31)
[3] 検証結果が二人目だった。[注位置秒](2012/05/25 17:31)
[4] 検証結果が俺以上だった。[注位置秒](2012/05/27 22:28)
[5] 検証結果が小説よりも奇なりだった。【本編1】[注位置秒](2012/06/01 20:25)
[6] 検証結果がインチキだった。[注位置秒](2012/06/06 17:02)
[7] 検証結果がアオイが主役だった。【本編2】[注位置秒](2012/06/12 02:02)
[8] 検証結果の登場人物[注位置秒](2012/06/11 16:54)
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[33160] 検証結果が二人目だった。
Name: 注位置秒◆c2c13e9c ID:6f8ebee9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/05/25 17:31
「【ログイン】したら【wis】が止まらなくて怖い」

 次の日にInをすると、頭上から降り注ぎ続ける複数人の勝手気ままな言葉と、知らない奴の発言で埋め尽くされ、高速で流れるチャット欄という怪奇現象に見舞われた。何これ怖い。
 とりあえずそうした万感の想いを込めて俺の【ホーム】でくつろいでるゆうかりんに言ってみる。

「あら、二つ名を名乗るようになったの。【検証者】か……的確すぎて遊びが無いわね。あと『ささやき』は『友人だと共に認めた相手』以外の交信を弾くことをオススメするわ。【メニュー】の【オプション】から【環境設定】を開いて、下のほうに【wis拒否】があるから、それの【フレンド以外】にチェック入れれば弾ける筈よ」

 中の人には今日の4限に報告して驚かれ、問い詰められ、祝われたのだが、『風見幽香』はそんな出来事とは関係ないらしい。初めて知ったかのような言葉と、今更な助言を貰う。
 そういう助言はリアルで話した段階でしてくれよ! 言われるまで忘れてたよそんな機能!

「……そうだな、どうせ【wis】してくる奴なんて居ないし。というか、だからゆうかりんは【wis】じゃなくて【フレンドメール】を送ってくるのか。一々【メニュー】開かなきゃいけなくて面倒だと思ってたけど」

「別に。ただ顔も見えない相手と声だけで会話するのが嫌いなのよ。それだったらまだ文字だけの方がマシ、というだけ」

「さいですか。んじゃあ『幽香』にはまだ言ってないから簡単に経緯を説明したいんだが――――」

 †    †    †

「――――というわけで、適当に盛り上げようと思うんだが、どうすれば良い?」

 かくかくしかじか四角いムーブ。と説明をサックリと終え、幽香の意見を仰ぐ。

「手始めに【聖王都】に居る人間を皆殺しにしたら?」

「お前は【聖王都】の住人に何の恨みがどんだけあるんだ」

 ニヤニヤと笑いながら恐ろしいことを言ってくれる。
 ちなみにコイツの言う『人間』はPC・NPC問わずである。NPCが死ねばゲーム内時間で1年(リアルタイム22日程度)の間、ゲーム内から居なくなる。幽香が二つ名を授与された時、【聖王都】はシャッター街どころか人っ子一人居ないゴーストタウンと化していた。商店は当然利用不可だし、そのNPCが関わるクエストの進行も不可となるため、多くのプレイヤーが困ったことだろう。
 まぁ、そんな思い出話は置いておいて。

「あと言っておくと、レッドネームはなにかと不便だから嫌だ」

「そう、残念ね。なら【救国の英雄】や【Summon Knight】あたりに『戦いごっこ』でも挑んでくれば? アレでなら殺しても問題ないでしょう?」

「【決闘】か。確かにそれはアリだが」

 【決闘】は互いの同意の元、【デスペナルティ】の無いPKフィールドを展開し、その中で戦闘を行うシステムである。このPKフィールド内ではあらゆる成長が無い代わりに、PKフィールド内から出れば戦闘前の状態まで回復できる代物である。ただしMOBの居ない町中MAPでしか使えないのでMOB無限狩り等と甘いことは出来ない。

「ただ、受けてくれるかね。相手だって時間の都合があるだろうに」

「受ける気があるなら時間を作るし、受ける気がないなら何したって断られる。つまり貴方が考えるだけ時間の無駄よ」

 サクサク答える幽香。確かに幽香の言う通りか。馬鹿の考え休むに似たり、って奴か?

「良し。じゃあ早速……と思ったけど、絶対【wis】は拒否設定だよな。【フレンドアドレス】は当然知らないから【フレンドメール】も送れないし……【掲示板】か? いや、流石にそれはな……」

 【掲示板】で【決闘】を申し込むとかちょっと熱血思考すぎる。熱血といえば、ブラ坊やは元気でやってるだろうか? 最近顔見てないし、久々に会いに行くのも良さそうだ。

「じゃあ【闘争都市】の【アリーナ】はどう? Lv制限が無いのは【紅魔宮】――――いえ、【竜賢宮】だったかしら」

「あー。【アリーナ】は確かに目立つし、適度に暴れればそれなりに盛り上がるかな? でも俺、パフォーマンスとかファンサービスとか全然分からないぞ」

 あと【アリーナ】は3vs3のチーム戦だった筈だ。俺じゃ人数を揃えられない。
 そんな事を考えてると、俺の言葉に返答しただけなのか、それとも俺の思考が分かったのか知らないが、幽香が言った。

「そんなの要らないわ。強者は弱者を蹴散らすだけよ」

 おっと、どうやらこの点では俺と幽香の考えは合わないらしい。
 珍しいこともあるもんだと思いながら反論する。

「キングのデュエルはエンターテイメントでなければならないという名セリフを知らないのかよ。そんなんじゃ【闘争都市】の人間を敵に回すだけで俺の寿命がストレスでマッハなのは確定的に明らか」

「……? ごめんなさい。ちょっと意味が分からなかったわ。人間の言葉を話してくれる?」

 困ったような顔してさらりと俺を貶しながらお願いしてくるゆうかりん。そこにシビれる! あこがれるゥ!

「人類の言葉として最低限の体裁すら成してないと申したか。今のは素なのかワザとなのか分かり難くて余計に傷つくぜ。このドSめ。それと、付け加えるなら――――会話はネタで出来ている」

「あれも嫌だこれも嫌だとわがままな奴ね。そうやって選り好みしながら無為に過ごしなさい。付き合ってられないし、私はもう行くわ」

 うむ。スルースキルも着実に上がっているらしい。俺の発言になんら反応も示さず立て掛けてあった日傘を持って玄関へ向かう。

「あ、何処行くんだ? もし【ジャック・モキートの館】に行くなら【きいろいはね】拾って来てくれない?」

「見つけたら拾ってあげる。探しはしないわ」

 そう言い残して出て行くゆうかりん。まぁ、あの言い回しなら多分拾ってきてくれるだろう。
 ……このやり取りなんかデジャブだな。
 ともあれ、じゃあ本当にどうするべきかな。ブラ坊やとか、ポニテ君あたりを誘って【アリーナ】か? それとも【救国の英雄】や【Summon Knight】とも顔の聞きそうな【マスター・マスター】か【ダンシングわっしょい】に頼ってどうにか【決闘】に持ち込むか? ワンオフで高ランク精錬品作って【オークション】にかければ性格的に【錬金術師】あたりがアクション起こしそうではあるけど、それも不確実。かと言って【ビッグダディ】や【ブラウニー】はあんまり面倒な事に巻き込むのは俺の気が引ける。あの人たちは善人だからか常に忙しそうだし。
 ……と、ここまで考えて、意外に俺が現状を楽しむ気だと言うことに気づいた。
 随分と前の話だが、検証うんぬんとか考えずに、ただゲームを楽しむためにやってた時期が俺にもあったなぁ。いやまぁ、検証も楽しんでやってるんだけどね。
 折角の公認バグチート――――公認だからバグじゃなくて仕様か?――――なのだから、このキャラでしか出来ない遊び方をしてみるのも悪くない。ちょっとだけ気分が良いし。
 だからと言って、他人に迷惑掛ける気はないが――――
 シャランシャラン、と呼び鈴の音がする。
 ――――誰かが来たようだ。GMさんか? 俺の【ホーム】に訪ねてくるのは幽香を除くとGMさん位しかいない。
 そういえば、二つ名貰ったのに、祝ってくれたのはゆうかりんの中の人と、付き合いのあった一部の検証勢くらいだ。ゲーム内に至っては一人も祝ってくれてない。友達少ないな俺。

「ほいほい、っと。どちら様ですかぁー?」

 そして気軽に出て、ちょっとだけ後悔した。

「――――初めまして」

 そこに居たのは青い服に水色のスカート。そして白い大きなマントと腰に差した金色の剣。長い青がかった黒髪を左右でまとめて、前に持ってきている女性。
 実は――――恐らく相手側も――――意識的に避けてきたトッププレイヤーの一人。

「私は【ブルームーン第五王女】アオイ。貴方が【検証者】ですか?」

 『なりきり勢』トップ【四季のフラワーマスター】の(いろんな意味で)ライバルと言うべき存在。【ブルームーン第五王女】がそこに居た。

 †    †    †

「少し、意外ですね」

「うん? 何がだ?」

 あの後、【検証者】か否かの問いにYesと答え、玄関で立ち話も何だから、良かったらどうぞと家に上げた所、そう呟かれた。
 その呟きについて聞くと、少し慌てた様子でこう言った。

「いえ……そう、随分と辺鄙な場所に建ってますから、内装に期待していなかったのですが」

「あぁ、思った以上にマトモで驚いたってか。まぁ、姫さんから見たら大したものじゃないだろうが、最低限のお眼鏡に適ったなら幸いだ」

 もっとも『なりきり勢』から見たら本当に最低限のものしか揃ってないらしい。その最低限のものにしても、ゆうかりんに言われて揃えたものだ。個人的には、物なんて無ければ無いほど良い。家が散らかるのは物があるからだ。
 ともあれ、さっさとリビングのイスに姫さんを座らせて冷蔵庫を漁る。にしても……

「……悪いな姫さん。今は『冷蔵庫』の中には【ハーブティー】と【ホットドッグ】しか無いんだ。【ハーブティー】だけで良いか?」

 失敗した。二つ名授与から人付き合いが増えかねないことは予想できた筈だ。なら、仮に家に上げた時にも出せる飲食系のアイテムを用意しておくべきだった。
 しかし、反省しても遅い。客はもう居るし、しかもよりによって『なりきり勢』だ。しかもしかも相手は筋金入りの『なりきり勢』である【ブルームーン第五王女】だ。これは彼女の逆鱗に触れるんじゃあ……いや、でも、元ネタ的にはそんなに短気じゃない……とは言い切れないな。召喚した勇者が魔王退治に失敗したら、手の平を返して偽勇者呼ばわりするくらいだし。
 そんな考えが脳内を駆け巡ってたが、返事はそれとはもっと別のところにあった。

「【冷蔵庫】……ですか?」

 不思議そうな顔をして訪ねてくる姫さん。中の人は期待してるかも知れないが【冷蔵庫】なんてアイテムは残念ながら無い。

「あー……何か勘違いされたらアレだから言っておくが、別に【冷蔵庫】ってアイテムは無いからな? 【共用倉庫】を『冷蔵庫』として扱ってるだけだ」

「ああ……なるほど。いえ、お気になさらずに。初めて聞いた名前に興味が沸いただけです。それと【ハーブティー】だけで構いません、手ぶらで訪問するのも気が引けたので【クッキー】を持ってきています。もし良ければ一緒にどうですか?」

 ……これは元ネタ的な警戒をすべきか? 相手は筋金入りの『なりきり勢』。それなら乗った方が『アオイ』的には評価低下しても、中の人的には評価上昇のチャンス……!

「……姫さんの手料理じゃないですよね? 姫さん的に一番得意なのが料理とは言え、もしそうなら好意だけ受け取っておきます」

「あのですね! 確かに私は家事全般が出来ませんが、こういう時に持ってくる物は考えて……」

 イスから立ち上がり、ナイスツッコミ! って感じだったのだが、途中で止まる。

「え? あれ?」

「どうした?」

 動揺した様子を見せるので確認とってみる。とりあえずこの【ハーブティー】二つはテーブルに置こう。

「……私が家事全般を出来ないのは、私に近しい人は知っています。ですが、家事の中では料理が得意なのは、私は誰にも話してません」

「姫さん。一応ツッコむが、作れる料理が黒いナニカだけなのに得意とか言うもんじゃないぞ」

「ですから言ってないんですって! それに、スキル値的にも料理だけは他のスキルと違って0.1上がってるんですからね!」

 話してて分かったが。
 コイツ……ゆうかりんよりよっぽどイジりがいのあるキャラしてるぞ!

「……コホン。今はその話は良いのです。それより……」

「ああ、うん、この話は止めとこう。俺が迂闊に喋りすぎたってことで。話し込んでもお互い不幸になるだけさね」

 多分、相手も『Sonata』なんて化石みたいなゲームの元ネタに対応できると思ってなかったのだろう。ネットで検索してもマトモに残ってないし、そもそもあのゲームが出たときってネットが普及してなかった気がしないでもない。
 それに、『なりきり勢』的にも元ネタ関係の過度な会話はタブーの一つである。その辺の会話はそれとなく避けるのがマナーみたいなもの。
 なんだか不服そうな顔をしているが、姫さんもそれ以上何も言わず、お互いに【ハーブティー】を飲みながら【クッキー】を食べ、一息ついたところで俺が口を開く。

「それで、何でまた高名な【ブルームーン第五王女】が俺の【ホーム】へ? 流石に【検証者】の顔を見に来ただけ、って訳ではないのでしょう?」

「……そう、そうですね。本題に入りましょう。まずは二つ名の授与、おめでとうございます。何をしたのか、参考までにお聞きしても?」

「悪いが、具体的には秘密だ。分類で言うなら『サーバーに大きく貢献した』系のだな。【ダンシングわっしょい】の奴みたいな特例じゃあない」

 俺の二つ名が【検証者】であることから二つ名授与の理由は何となく推測は立つだろうが、俺の行動により発生する異常な数値がユニークスキルによるものか、ユニークアイテムによるものか、それとも素のステータスによるものか、それすら一部の『検証勢』でもなきゃ分からないだろう。
 ステータスだと推測した『検証勢』でも、ラック補正値の算出が出来なければ、それも推測止まりだ。
 ともあれ、俺はヒントを出すつもりは毛頭ない。悪いが秘密で通させて貰おう。

「そうですか。残念ですが、それに関しては別に構いません。あくまでお祝いが目的ですから」

 ……ゲーム内で初めて祝われたのが、初対面の人間だった。どうしよう。軽く欝だ。

「……あの、どうかしましたか?」

「いや、何でもない。続けて」

 どうやら、表情に出てたらしい。俺にしては珍しい失態だが、まぁ、仕方ないよね。この場合。

「……ではお言葉に甘えて続けますね。次は【四季のフラワーマスター】との関係についてです」

 あー、やっぱりそうなるよね。これがあるから(多分お互いに)意識的に避けてたんだよ。

「彼女は【聖王都】の人間を皆殺しにするような存在です。そんな彼女が『友人』であると言う人、それが貴方だと聞きました」

「そうだな。俺は幽香の【フレンド】で、幽香は俺の【フレンド】だ。あと、幽香は言うほど悪い奴じゃないぞ? ちょっとバイオレンスなだけで」

 予想通りの質問に、事前に考えておいた返答を返す。
 ここで注意すべきは、『アオイ』が『幽香』を嫌っているとしても、アオイの中の人が『幽香』や幽香の中の人を嫌っている可能性は低いということである。

「貴方は二つ名を授けられる程の人間でしょう? それなのに何故、彼女と行動を共にするのです」

 ――――鋭く目を細め、彼女は俺に問う。
 『なりきり勢』と『なりきり勢』の組み合わせは、互いのロールを強調しやすい。
 『【四季のフラワーマスター】風見幽香』のアライメントは『混沌・悪』であり、『【ブルームーン第五王女】アオイ』のアライメントは『秩序・善』である。
 そうした対比により、互いが互いの特徴や魅力を表現しやすくしているのである。

「何故かって? そんな簡単なことも分からないのか?」

 ――――俺は哂いながら答える。
 例え話になるが――――『名探偵』と『怪盗』の様なものだ。『怪盗』は手の込んだ手法で鮮やかに宝を盗み、『名探偵』はその手法を暴き、先を読み、犯人を捕まえる。
 『怪盗』は『名探偵』が居なければ、ただの泥棒になり魅力は減るし、『名探偵』も『怪盗』がいなければただの探偵になり魅力は減る。両者が揃うことで、本当の魅力が表現できるのだ。

「ええ、分かりません。ですから、答えなさい。返答によっては、彼女を斬り捨てるより前に。今ここで、貴方を斬り捨てます」

 ――――彼女はイスから立ち、腰の剣を抜き、俺の首に向ける。
 『なりきり勢』のトップが『悪』であった以上、追随し、双璧をなす『なりきり勢』は『善』になるのは必然だったのだろう。
 ともあれ、そうした『なりきり』の関係で非常に敵対的ではあるのだが、トッププレイヤーともなればお互いのそうした立場を分かっている可能性が高い。お互い分かってるという暗黙の了解があれば、お互い敵対関係になるのも心持ち気軽になる。

「気が合って、信頼できる。友となるのに、それ以上の理由は要らないな」

 ――――この答えで不満なら好きに斬るが良い。
 ……だが、言わば敵対関係にあるPCと特に親しいPCが一人だけ居る、となると、放って置く筈がないのだ。放っておく理由が無いと言っても良い。ならば、より『自然』な行動を信条とする彼女は、その特に親しいPCが『なりきり勢』ではないとしても、場合によっては敵対関係――――ケンカを売りに行かなければならない。『風見幽香』の友人だから、という理由で。

「――――」

 ――――彼女は、驚いたような顔をした。言葉は無い。ただ、そのまま、数秒見つめあう。
 そういや、『魔王決戦』ではゆうかりんと姫さんでコンビ組んだ場面があったって言ってたな。お互いノリノリだし、姫さんは前衛寄りの万能キャラ、ゆうかりんは前衛も出来る火力魔法キャラだからもう最高だったって中の人が興奮しながら騒いでたな。ソロ専門だったからPT戦とか協力プレイとかに飢えてるのかもしれない。

「本当に、彼女は良い友人を持ってますね。正直、羨ましい限りですよ」

 ――――笑顔で、そう言った。
 俺の首に向けていた剣を鞘に収め「失礼しました」と謝罪しながらイスに座りなおす。

「何、構わないさ。幽香との付き合いは長いから、この位は慣れたもんだ」

「そう言って下さると助かります。それと最後に、これを」

 その言葉と共に差し出される右手。見ても、その手には何も持っていないが、直後に響く『ポーン』という電子音。
 ……これは。

「私の【フレンドアドレス】です。何か困ったことがあれば、【フレンドメール】で連絡をください。私に出来ることがあれば、力になりましょう」

「……驚きだな。まさか姫さんが、二つ名持ちとは言え『幽香の友人』に【フレンドアドレス】を渡すとは。最初からそのつもりで?」

 【フレンドリスト】を確認すれば、今まで『風見幽香』の文字しかなかった画面に『アオイ』の文字が追加されている。

「はい。ですが、貴方が良識ある人なら、という前提がつきますし……それに最初は『渡しても良い』程度でしたが、今は『受け取って欲しい』と思っていますよ」

 苦笑しながら姫さんは答える。
 まぁ、『なりきり勢』は特にとっつき難いからなぁ。拒否反応を示す人だって居るし。そういう意味では、自然な会話が出来る俺は貴重な人間か。

「そうか。んじゃ、ま。ほれ」

 アオイに対してターゲティング、えーと……あった。普段使わない機能までは流石に覚えてないなぁ。

「俺の【フレンドアドレス】だ。幽香と姫さんの立場的にも、お互いに共通の【フレンド】が居た方が何かと便利だろ? 俺は幽香と同じく【フレンドアドレス】は渡さないんだが……ま、別に拘りがあってそうしてるわけじゃないからな。渡した方が姫さんたちに都合が良いなら渡すさ」

 そして姫さんを見る。そこにあったのは笑顔……ではなく、どこか不満げな表情。
 あれ? なんかミスった?

「『私』としてはそう言った理由でなく、純粋に友人として渡して欲しかったところです」

 あー。まぁ、確かに。わざわざ打算を含むってことを言わない方が良かったか。
 いや、でも理由を言ったほうが、相手も幽香関連の出来事に俺を巻き込みやすいじゃん? そういうつもりで渡しましたよー。って言われてれば、『幽香と【聖王都】で殴り合ってる! 緊急で至急にカマン! そして止めて!』とかって呼んでも良心が咎めないじゃん。

「それと、ずっと気になってたのですが、その『姫さん』という呼び方、どうにかしてください」

「ああ。まぁ、【フレンド】になったことだし、さんづけも変か」

「敬称のつもりだったのですか? というか、そういう意味では……いえ、まぁ、構いません」

 何だか何処となく疲れた様子の姫さん。そういや、幽香もこんな感じでうな垂れること多いような気がする。
 『なりきり』ってのはそんなに精神力使うのか。大変だな。
 ともあれ、どうするか考える。ああ、そろそろ真面目な話も終わったし、こういう時に丁度良いセリフもあった。

「それではアオイと。……ああ、この響きは実に君に似合っている」

「貴方、さらりと……いえ、いえ。何でもないです」

 ニックネームはアオアオだな。良し。今度ゆうかりんに殺されかかった時は「アオアオ! 君に決めた!」とか言いながらけしかけてみよう。多分二人にボッコボコにされるだろうけど。

 †    †    †

「……もうこんな時間ですか。随分話し込んでしまいました」

 【フレンドアドレス】を交換した後、折角だからと雑談に興じてみれば、時間はあっという間に過ぎた。
 互いに『幽香』という共通点もあるから、会話は弾んだ。お互いに彼女と初めて会ったのは、というところから、最近では『魔王決戦』での共闘まで。アオイが未だに幽香をキルできたことがないと言えば、俺が幽香のステータス・スキル監修してるから同レベル同装備帯じゃ簡単に勝てないぞと言い、そんなのズルいと文句を言われ、人脈も力だバーローと返す。話すことはいくらでもあったので、そんな感じでぐだぐだと時間が過ぎた。
 ゲーム内時間では、アオイが来たのは朝だったのに今や既に夜。ざっと、リアルタイムで1時間は話してたことになる。まるで『マッタリ勢』みたいだ。幽香とだってこんなに長話したことない。

「全くだ。お蔭様で今日のゲーム時間はただのトークタイムと化したよ」

「貴方は皮肉が過ぎますね。貴方だって楽しんでいたでしょう?」

「否定する気はないな。中々有意義な時間だった」

 今日は検証する気も起きないし、丁度良いから今日はもう寝るかな。

「じゃあ、今日のところは【ログアウト】するよ。アオアオは?」

「アオアオって呼ばないでください。私は……そうですね、スキル構成の見直しでもしておきます。貴方の話を聞いて、少し思うところがありましたので」

 そう言い、イスから立ち玄関まで向かう。イスもしまい、テーブルの上を確認して片付け忘れがないか確認するあたり、好感が持てる。大切だよな、そういうの。

「まぁ、行き詰ったら助言くらいならしてやるよ」

 俺も玄関まで向かい、彼女を見送る。

「それじゃ、またな」

「ええ、また会いましょう」

 別れの言葉を交わし、玄関を閉める。
 とりあえず、今日のところは寝るか。纏める検証結果もないし。

 †    †    †

 今日の検証結果――――アオイは二人目。俺のフレンド的な意味で。



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検証式はお休み。というか、この検証式最初はラック計算式だけのつもりだったし以降は気が向かなきゃやらないぜよ。

オマケ~ゆうかりん的にGMって?~

「GM? ……ああ、八雲の連中みたいな奴らね。私の邪魔をしない限りは、管理ご苦労としか思わないわ」
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【かくかくしかじか四角いムーブ】
元ネタ:ダイハツ ムーブのCM
概要:かくかくしかじか四角いムーブ。車のCMである。

【闘争都市】【アリーナ】【紅魔宮】【竜賢宮】
元ネタ:.hack//G.U.
概要:元ネタの作中ゲーム The World内にあるPC間対戦専用のサーバー(タウン)『Ωサーバー闘争都市 ルミナ・クロス』である。アリーナは三つあり、Lv50以下が参加できる紅魔宮、Lv100以下が参加できる碧聖宮、Lv制限の無い竜賢宮の三つである。

【キングのデュエルはエンターテイメントでなければならない】
元ネタ:遊戯王5D’s
概要:デュエルキング(作中ゲームでのチャンピオンみたいなもの)であるジャック・アトラスが言ったセリフ。個人的には自分の中だけで完結している人と違い、自分に出来ることを通して観客に何かを伝えようとするその姿勢はとても大切だと思う。

【~~~~という名セリフを知らないのかよ】【俺の寿命がストレスでマッハ】【確定的に明らか】
元ネタ:FF11のプレイヤーBrontより
概要:個性的な考え方と天才的な言語センス持つ彼の迷言の一つ。元ネタでは『仏の顔を三度までという名セリフを知らないのかよ』と『このままでは俺の寿命がストレスでマッハなんだが・・』と『火を見るより確定的に明らか』。

【そこにシビれる! あこがれるゥ!】
元ネタ:ジョジョの奇妙な冒険
概要:俺たちに出来ないことを平然とやってのけたディオに対して子分が言った言葉。

【会話はネタで出来ている】
元ネタ:Fate/stay night
概要:元ネタ公式ページのトップにある文章の冒頭。元ネタでは『体は剣で出来ている。』。一人の青年の生き様を語った一文。

【ジャック・モキートの館】【きいろいはね】
元ネタ:FFCC(クリスタルクロニクル)
概要:ミルラの木と呼ばれる特別な木を、自分の家の庭に持つギガースロード ジャック・モキートをBOSSとするMAP、それが【ジャック・モキートの館】である。なお、【きいろいはね】はそのMAPでしか入手できない素材アイテムの一つであり、最強の盾【チョコボシールド】を作るのに必要となる。

【アライメント】
元ネタ:D&D(ダンジョン&ドラゴンズ)
概要:そのキャラクターの性格を現すもの。『秩序・中立・混沌』は簡単に言えば『規則を重要視するか』であり、『善・中庸・悪』は『一般道徳を重要視するか』である。例として『海賊となり、自分の夢を追い続けながら、仁義や人の笑顔の為に命を賭けられる』というルフィ(ONE PIECEより)は『混沌・善』であり『多くの部下を引き連れ、原住民を皆殺しにして星の地上げ屋をしていた』フリーザ(ドラゴンボールより)は『秩序・悪』である。

【『名探偵』と『怪盗』】
元ネタ:まじっく快斗
概要:主人公 黒羽快斗が怪盗、ライバル 白馬探が名探偵である。知っている人は知っていると思うが、名探偵コナンに登場する怪盗キッドは彼である。自作品と自作品でクロスするのは漫画家のロマンの一つなんだろうか。

【それでは~~と。……ああ、この響きは実に君に似合っている】
元ネタ:Fate/stay night
概要:ヒロイン 遠坂凛とそのサーヴァント アーチャーが互いに自己紹介した時に、アーチャーが言ったセリフ。元ネタでは「それでは凛と。……ああ、この響きは実に君に似合っている」と言った。どう見ても口説き文句である。

【ニックネーム】【~~! 君に決めた!】
元ネタ:ポケモン
概要:ゲーム ポケットモンスターでは捕まえたポケモンにニックネームを着けるか毎回選択する。また、アニメ ポケモンにて主人公 サトシが手持ちポケモンを出す時の掛け声が【(ポケモンの名前)! 君に決めた!】である。

【バーロー】
元ネタ:名探偵コナン
概要:相手をバカにするコナンの台詞。「馬鹿野郎」を混ぜて短縮したんだバーロー。ちなみに、最初に言ったのは元太くんであり、「バーロー」ではなく「バーロゥ」だった。

【アオアオ】
元ネタ:月姫
概要:主人公 遠野志貴が先生と慕う人物 青崎青子がフルネームで呼ばれることを嫌う理由。アオの後にアオが続くのが気に食わないらしい。まぁ、気持ちは分かる。

【八雲】
元ネタ:東方project
概要:東方projectの舞台 幻想郷を管理する妖怪の賢者 八雲紫とその式神 八雲藍のこと。場合によっては八雲藍の式神 橙を含むこともある。ともあれ、彼らはその幻想郷を囲っている結界の修復などが仕事らしい。他にも幻想郷全体の危機になり得る大事にも関わったりしてる。


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