テロリストに学校を占拠されたせいで危険が危ない。
V●PPERたちが必死に奮闘している中、当の女子高生たちはおしゃべりに徹していた。
「『関西だしじょうゆ団』ってことはテロリストの出身地は関西なんじゃないの?」
「何言ってるのクラスメートC!! そんなこと言ったら『ニューヨークタイムズ団』とかいうのはニューヨークなのかって話になるじゃない。」
「え、ちょっとクラスメートCって呼ぶのはさすがにまゆぴーとみさきちだけにしてほしいんだけど。なんでMOBのあなたにクラスメートCだなんて言われなきゃならないのよ!」
「じゃあ本名なんて言うのよ。」
「ふっふーん。よくぞ聞いてくれました。クラスメートCの本名。みんなが気になるその名前はち■■■■(インクが滲んで見えない)って言うんだよ!」
「え、何? ち○こ?」
「違うよー そんな名前つける親がいるとかありえなくねー 仮にいたとしても役所に提出する時点で差し止められるからねー」
クラスメートCとMOBキャラの花子さんが何やらくだらない舌戦を繰り広げているようだ。テロリストが学校を占拠しているというのに実に平和なことだ。
テロリストはどうやら日本政府と交渉中だそうだ。学校に張り巡らされたジャミングのせいで全然俺に情報が入ってこないからわけわかんないんだよね。みんなもそういうのがわかってるから敢えてそういうことは考えずにおしゃべりに熱中してたり、自習してたり、麻雀してたりするわけなんだよ。ただしクラスメートcは除く。
自習してるやつってのは別に真面目な人間というわけではない。ジャミングが可能であるということはすなわちこの学校にある監視カメラも操作可能であるということだ。だから俺たちの行動は全て政府に筒抜けであると仮定して、彼女たちは勉学に勤しむ姿を政府に見せつけ、いわば内申点を稼ごうという腹なのだ。
俺はと言うと、今日は目を開けて笑顔をキープし、ピースサインを作った状態で、寝ることに挑戦した。前世の肉体では「ピースサイン + 寝る」すら不可能だろうこの行動は、チートボディであるため多分可能!
・目を開けることで「寝てないよアピール」
・笑顔で朗らかさアピール
・ピースサインで「みんな元気だよ + 今日も平和ですアピール」
・寝ることで時間短縮
という4つの効果をもたらしてくれる。ついでに数学の問題を下敷き代わりにして寝よう。
そしてうつらうつらし数時間経過すると突如轟音が鳴り響いた!
「わ、わ! 何? どうしたの? 新手の目覚まし時計か!」
「まゆ、ひょっとして目開けたまま寝てた?」
「ね、寝てたわけないじゃーん 目開けたまま寝れるとか人間業じゃないよ。クラスメートCじゃないんだから。」
「それもそうかな。」
「さりげなく私のこと罵倒したよね! ていうか私目開けたまま寝れないもん!」
「そうなの!?」
「そこ驚くとこじゃないと思うなー 私これでも人間だよー」
「そういえばテロリストはどうなったの?」
「交戦中だって。」
前々から思ってたんだけど、女子高ってやっぱり俺にとっては異次元空間の園なのかもしれません。「今日って雨ふるんだっけー?」「降らないよー」というノリで「テロリストってどうなったのー?」「まだ交戦中だよー」という会話をする女子高校生は未だかつて見たことがない。俺は第一話で女子高は自由奔放ではなくただだらしないだけだと言ったけど案外度胸が据わった肝っ玉かあちゃん育成所みたいなところだったのかもしれない。
「大変だねぇ軍隊さんも。」
軍隊と言えば日本は前は自衛隊だったが何回か戦争を経験しており、『自衛』のままではまずいということで、軍の制度を再び取り入れたそうである。昔と違うところは、陸海空だけではなく、情報軍というのも新たにできており、現代戦での要となる情報戦を一手に引き受ける軍が軍隊の花形と言われている。情報軍に入るには体力などは特にいらず、自分の情報に関する能力を遺憾なく発揮できれば入隊資格を得られる。
ただし公式の情報軍への募集要項が存在しておらず、情報軍へ参加したい人間は自分の手で募集要項を見つけなければならない。
まぁ情報軍へ参加する人と言うのは自分で情報関連の起業をできなかった人間が行くのがほとんどであるからぶっちゃけると情報軍は落ちこぼれの巣とも呼ばれている。でも情報軍に向かって『やーい落ちこぼれやーい』というと憤怒するから注意な。
建物全体が揺れている中でも女子高生たちは全く動じることはなかった。あるところでは七並べが開催され、あるところでは麻雀がまだ続いていた。そうして麻雀にして2半壮くらいたった頃であろうか、制圧した軍隊が俺たちを救出しに来た。俺個人としてはこのメンタンピン3色を上がってから脱出したいところだったが、そうは問屋が卸さず、泣く泣く絶好のテンパイを蹴って帰路に就くこととなった。
家に着いて俺は鞄を放り出した。本当はテロが起こった際はメンタルケアとかをするべきらしいのだが、うちの学校は何やらみながみな自由に行動していたためケアは超短期間で終わった。テロリストを倒してさぁようやく救助だと思ったら救助対象が暢気に麻雀なんかやってて、しかもメンタンピン3色がーメンタンピン3色がーだなんて喚いていたらものすごくやるせなくなると思う。まぁ悪いのはテロリストだから俺たちは悪くないんだけどさ。そう。俺は悪くない!
ホームページに行って生存報告をする。
『テロなんてはじめて遭遇しました。今は無事に生きてます。』
そう書き込みをするとすぐさま大量のコメントがついてきた。いつもはすぐさま大量のコメントがつくと「うへぇきもちわりぃ」と思っていたのだが、なぜか今日ばかりは笑顔になることができた。ひょっとしたらこの生存はこいつらのおかげかもしれないと柄にもないことを考えつつ、俺はエロゲを始めた。
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ねみ(´・ω・`)
今回短いのは前編と後編で分けたからです。間にV●PPERのを挟んだだけです