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彼女ができたからデートとかいっぱいするお！って思ってたけど実際無理でした。

最初は特に何の考えずデートしようとしてたんだけどなんかナイフ持って走ってくる女とかが数人いたわけ。俺にも『こだま（俺の彼女の名前）』にも被害は及ばなかったけど無暗矢鱈に出歩くのは危険だと警察官に注意されたので大人しく家デートすることにした。無政府状態もいいところだと思う。

それに加えて俺とこだまは毎日通学はタクシーになった。好きな時に外に出られないっていうのは辛いけど、電車に乗らなくていいのはとても楽。

えっちは２回した。挿入は無理だけど【このワードは１８歳未満には見えません】はできるから全く問題ないとまでは言えないけど、それが大きな問題とはならなかった。むしろ二人で抱き合ってる時に勃起しまくらないからち○こが痛くならないというのは女の子の特権なのではとも思う。生理痛だけはだるいけど。

「こだま～」

「なんですかー」

「こだまってまだ会長のことも好きなの？」

「やだなー　あたしが好きなのはまゆだけなのに……」

瞳をうるうるさせて俺に訴えてくるが微妙に納得がいかない。あのときあそこまで力説してたくせにすっと手のひら返しということからこだまという少女はとても恐ろしいのではないかと思えてくるのだ。でもこの子といると随分居心地がいい。性格はアホの子だけどそれが逆に良くて、見ていて癒されるし和む。ずっとこうしていたい気分にもなるが、それではダメ人間まっしぐらだ。

前世では一応働きつつも生活はろくでなしのような状態だったので、今回は生活リズムをしっかりつけておきたいのだ。幸いにも前世の低血圧ボディとは違い、この体は目覚めすっきり爽快ボディなので『眠いから起きたくないよぉ』となることはあまりない。（たまにある）それに、今日は学校がある日だ。

「はぁ……まゆと離れたくないなぁ。」

「私もこだまと離れたくないよ。」

「えへへ。その言葉だけで今日一日がんばれます。」

「ふふふ。」

二人一緒にさっと布団から出て家事用NPCに朝ごはんの準備をさせる。家事用NPCは料理人のプロが作るものと比べれば大したものではないが、簡単な料理ならば初心者が見様見真似で作るよりは遥かにいい出来のものを作ってくれるので大抵の家庭は朝ごはんは家事用NPCに作らせていると聞く。洗濯なども家事用NPCに頼むことができるが、洗濯は服をドラムに突っ込むだけなのであまりNPCは使われていない。電気代の無駄でしかない機能とまで言われている悲しい機能だ。

すすっとシャワーを浴びて朝の着替えをする。前世では朝シャンなんてしたこともなかったが、今世では欠かさずしている。もちろん夜も入っている。しずかちゃんほどではないが、なかなかの風呂好きであると自負している。

両親はこの家にはいない。この家は俺が自費で購入したものであり、そのため設備なんかも最先端を行く。基本的にグータラである俺は電話が鳴ったら受話器を取ることすらめんどくさいため、自分の声を家のあらゆる機能に認証させている。『ひらけごま』と言うと玄関のドアが開くし、『ひらけまど』と言うとタンスが開く。声だけで扉が動くところは初めて見たときは感動したものだ。なんだか自分が魔法使いになったような気分だった。

小ネタとして、キッチンに向けて『メラ！』と唱えるとIHが起動する。この時代、ガスはもはや駆逐されていて、発展途上国でしか使われていない。クリーンな原子エネルギーを使っている。随分昔に『原子力発電反対』とかいうのがあったような気もするけど、民衆なんて結構簡単に意見がかわるものだなぁとしみじみと思った。

シャワーから出たこだまと一緒に朝食を食べて、俺は学校へ向かうタクシーを呼び寄せた。今日でタクシー通学１週間目。慣れとは恐ろしいもので最初はブルジョア気分を味わっていた俺だが３日もするとこれが普通のように思えてきた。いつの日か電車通学に戻った時がとても不安だ。

タクシーに乗り込む。自動運転のタクシーだ。自動運転は何も珍しいものではなくて、むしろ手動運転しかできない車の方がめずらしい。レトロな車はかなりの価格がついており、レトロ車破産という名前まであるくらい高額で売りに出されている。

街をタクシーで通過する。目的地はいつもの女子高。いつもの通り進んでいつもの通り曲がる。なんてことのない日々だ。

校内に入り、玄関に着く。上履きをはいていざ自分の教室へ。そう思った矢先のことだった。

「聞けえええぇぇぇ！！　この学校は我々『関西だしじょうゆ団』が占拠した！！　死にたくなければ静かにしろぉ！！」

そんな絶叫サウンドがスピーカーを通して校内全体に響き渡った。しかしそんなことでたじろぐ女子高校生はこの学校には存在しない。皆一様に「なんかのデモンストレーション？」とか「関西だしじょうゆ団って何？　まるで近くにポテチがあったからそこからとってつけたような名前ね！　ちょっとはひねれ！」とか「カルビーのデモンストレーションね。」とか「いやだーしにたくなーい」とかいう声があちらこちらから聞こえる。女３人よれば姦しと言うが、２０００人いるこの女子高では単位で表すと『６６７カシマシ』くらいうるさい。

ドグヮン！！！

そしてそんな強烈な破裂音と共に沈黙が訪れる。

「馬鹿どもめ。これはデモンストレーションではない。我々、関西だしじょうゆ団は立派なテロリスト集団であり、国際指定テロリスト集団にもランクインしている！　私が今撃ったのは　AK-848　というバズーカ砲である。我々は諸君らに求めることは何もない。が、日本政府に求めることがある。よって諸君にはしばしの間、人質になってもらう。いいな！！！」

自称テロリストの演説が終わった後学校は静まり返る。いや静まり返っていたがさっきは自称テロリストの演説のせいでうるさかっただけだ。今はカッコウの鳴き声しか聞こえなかった。だが、そんな中、一つのクラスから爆音とも言える歓声が上がる。

「よっしゃーーーー！！　今日の長距離走なしじゃん！！！！　ありがとうテロリスト！　ありがとう反日本政府団体！」

「数学の小テストもなくなりますかーーーーーー！？」

「英語の課題提出はなくなりますかーーーーー！？」

思わぬ反応にテロリストは無言。そりゃそうだ。俺だって昔はかなりこのノリに戸惑っていた。しかし現在は別に大したことではない。これがこの女子高のノーマルでありデフォルトでありスタンダードであるのだ。

テロリストと言えども、むちゃくちゃに人質を殺したり拘束したりすると、交渉の余地なしと思われて制圧の準備をされるから、テロリストたちはこちらに手出しできない。尤も、なんとかして学校から出ようとして射殺されるなどは文句の言い様もないが。

だから俺たち人質は大人しく教室とトイレの行き来をすることしかできない。昔は、テロリストに屈してはならないという精神から人質の身が危険にさらされたことが数多くあったが、現在ではテロリストの言い分も一応みんな理解できているためきちんと交渉に応じている。テロリストと一言で言っても宗教的テロリストでなければ、社会的には迷惑な集団だと思われているのみで一部の一般人にはお祭り騒ぎの一種とも思われている。そんなお祭りにイラついたテロリストがうっかり人質を１人殺した事件もあるが、その後テロリストたちがあまりにも無残な死体で発見されたため、現在では一応人質という形を採っているものの、人質に危害を加えることはめったにない。

この場合、生徒たちは嫌いな授業を回避することができたり、教師たちは一日寝てるだけで給料と危険手当がつくのであながちデメリットばかりとは言えないなのだ。

だが

この学校に俺がいるということが、イレギュラーを生み出した。

つづく