帝都へ越して早三ヶ月。
Eテク関連の技術をじいちゃんに学びながら俺の研究も大いに進んだ。
具体的に言うなら帝都に作った俺の研究室が実家の研究室を上回る設備を整える事になり、量産型ハロが50体に増え、ロールの性能が飛躍的に上がったなど多くの成果を挙げてきた。
そして、長年の夢であったある物品も今日漸く完成を見せたのだった。
思わず顔がにやけてしまう。
「ハルト、キモイよ」
「・・・ロール、お前最近遠慮なくなってきたな」
生みの親として人間味ある成長に喜べばいいのか容赦ない言葉の暴力に悲しめばいいのか悩みどころだ。
「いいか、ロール。これは全国の男の子が一度は夢見た物だ。よって俺がこれを手ににやけてしまうのは仕方ないことでだな・・・」
「せめて私が見てないところでしてね。一緒に居ると恥ずかしいから」
「本当に容赦ないな!」
ロール、現在絶賛反抗期中である。
全国のお父さんの気持ちが少し分かってしまった。
「とにかく起動実験するから」
手のひら大の二つ折りにされたそれを開くと中には小さなディスプレイと数字や記号の書かれた16個のボタンがある。
「5」を三回入力し一番上にある「ENTER」のボタンを押した。
『Standing by』
電子音が響く。
そして全国の男の子が夢見た台詞を言った。
「変身!!」
装着していたベルトにそれを付きたて横に倒す。
『Error』
「え゛っ!?」
次の瞬間、ベルトから弾き飛ばされ壁にぶつかり俺は意識は闇に落ちた。
・・・
・・
・
「まだ頭が痛い・・・」
「もうびっくりしたよ。ハルトの部屋からすっごい音がして来てみればハルトは気絶してるしロールはパニック起こしてるし」
あの後、俺はナノカとロール、スツーカに介抱され気づけばベットに寝かされていた。
どうも後頭部を強打したらしく2,3時間程気絶していたというのだ。
「最近籠もって何か作ってたみただが・・・、いったい何を作ればそんな自体に発展するのやら」
「コレ、ハルトがどうしても作りたいって言うから私まで寝不足だよ」
そう言いながらロールは先ほど起動実験に失敗したファイズフォンとベルトを取り出す。
「ただの通信端末とベルトみたいだが?これで何故ハルトが気絶するんだ」
「じゃあ、ちょっと試してみるね」
ロールはベルトを付けファイズフォンを操作する。
『Standing by』
ファイズフォンが電子音を鳴らし変身準備完了の合図を送る。
「変身」
バックルにファイズフォンを付きたて横に倒す。
『Complete』
ロールの体の回りに光の線がまとわりつき次の瞬間には鋼鉄の鎧をまとった。
「本来はこう使うの」
「わっ、変身しちゃった!」
「ちょっ、何故変身できる!」
俺は吹き飛ばされたのに!
「ハルト、変身適合者のロック解除してなかったでしょ?気絶してる間にちょっと弄って解除しといたからハルトももう使えるでしょ」
そう言いながら変身を解除しベルトとファイズフォンを投げよこす。
「そのベルトと端末は転送装置の役割でさっき私が纏ったスーツを一瞬で呼び出すことが出来るんだけど・・・、スーツには認証システムがあって適合しない人が着ようとするとベルトに仕掛けられた重力制御機関によって吹き飛ばされるって仕組み」
「つまりハルトはそれによって吹き飛ばされて気絶したと?まったく、人騒がせな」
スツーカが呆れながら溜息をついた。
まぁ、確かに認証システムを付けておきながら自分を登録し忘れるってのは呆れ帰る話である。
実際は原作にあった認証システムを設定を変えずに付けてしまったことで起こった事故なのだがスツーカはそんなことを知らないので呆れるばかりだ。
「で、実際そのスーツは使い物になる代物なのかね?こちらに着てから初めての発明品だろうがそんな基礎的なことで失敗する君が作った物など不安で堪らん」
「その点については大丈夫だよ。ハルトは何処か抜けてる所があるけど私を作った実績は間違いなく本物だしね。性能面で言えばテンザンとタメ脹れるくらいに強化してくれると思うよ?」
「・・・信じがたいな。テンザンはマスターが作った最高級のゴーレムだぞ?それと互角など・・・」
「無論、訓練した熟練の戦士が使ってて前提がつくけどね。ハルトじゃ一撃で終わるのが落ちだと思うよ?」
ロール、君は俺をフォローしたいのか?それともと貶めたいのか?
確かに俺は発明知識以外の能力は他の子供と変わらないけど。
「でも使う人が使えばテンザンと互角ってことだよね。それだけでも凄いって思うな!」
ナノカは純粋に言ってくれるから好感が持てる。
時折、純粋すぎて心を抉る様な毒を平然と吐いてくるのは偶に傷だが。
「発明ばかりじゃなくって体も鍛えたほうがいいのかなぁ?」
「マスターの元で修行を続けるならな。Eテクは遺跡の発掘作業も重要な要素となっている以上、鍛えておくことに越したことは無い」
どこかに武術の師匠とか都合のいいものは居ないだろうか?
ハルトの発明図鑑【其の四】
名称:555(ファイズ)
分類:戦闘用強化スーツ
出展原作:仮面ライダー555
ハルト曰く、男のロマンシリーズ第一弾。
完全なネタ仕様でハルトが変身したいがためだけに生み出されたといっても過言ではない一品。
原作と大きく違っているのがフォトンブラッドの廃止と重力制御装置「テスラドライブ」搭載という点。
フォトンブラッドは人体に極めて有害という点で廃止しバッテリー駆動に変更された。
背中にはバッテリーパックとブラスターフォームと同型の飛行用ブースター兼ガトリングガンが増設。
装甲はフェイズシフト装甲へ変更されテスラドライブの重力制御も加わっているため防御、機動力共に大幅な強化が施されている。
しかしフォトンブラッド廃止の影響で攻撃力の低下と必殺技の殆どが使用不能という事態に陥った。
アクセルフォームへの変身は可能だが原作とは違い加速は10倍速で制限時間は1分間、アイドリングタイムの制限は無しとなっている。
これらはの改造は元々オルフェノク用の強化スーツだった555を人間用に改造した時に起こる人体影響の軽減とそれによって起こる性能低下を補うために行われた。
ハルトが始めて変身しようとした時、適合資格の制限解除を忘れて弾き飛ばされる事になったが改修されハルト、ロールが変身適合者として登録される。
現在、スーツは帝都の実験室で保管されているがその内宇宙に人工衛星込みで打ち上げる予定である。
パンチ力:1t
キック力:2.5t
ジャンプ力:一跳び65m
走力:100mを3.8秒
必殺技:擬似クリムゾンシュマッシュ