俺とロールはナノカとスツーカ(しゃべる犬)とテンザン(やたら目立つゴーレム)と共に祖父の住処であるプロスペロ発明工房へ向かっていた。
ナノカはロールがゴーレムであると知ると非常に興味を持ちロールへあれこれと質問していた。
「ロールってゴーレムなんだよね?すごいな~、本当に人にしか見えないよ」
「見た目はね。でも中身は人間とは大分違うよ?スツーカなら私からモーターの駆動音とか聞こえない?」
「ふむ、確かに聞こえはするが・・・。よほど注意しなければ気づかないな」
「ロールはモータから導線一本まで全て一から作ってあるから、そこら辺の駆動音とかも最小限にしてるんだけど・・・スツーカに聞こえるならまだ改良の余地ありか・・・」
「おいおい、私に聞こえるからって改良か?」
「最終的にロールは人間に出来ることは全て出来るようにまでしたいね。だからモーター駆動音が聞こえるって言うならそれも解消すべき問題点だよ」
やっぱり今の段階の設備だと色々と不具合もあってロールは割と頻繁に改修が続けられている。
最初の頃なんて姿勢制御の方に問題があって何も無いところでよく転んだものだ。
問題が出る度に改修し続けることで最近やっと安定稼動できるようになったくらいだ。
「俺はテンザンに興味があるな。何時かテンザンみたいなゴーレムとかも作る気だったし」
『ガァァッ』
実に素晴らしい。
重厚なボディが漢のロマンを体現しているようだ。
「解体してみたい・・・」
『ガッ!?』
思わずうろたえるテンザン。
「後でおじいちゃんに言ってみれば?テンザンもそろそろメンテする予定だって聞いてたから言えばメンテついでに見せてくれると思うよ」
『ガァッ!?』
そして思わぬ所から援護がきた。
悪気は無いんだろうけど何処か天然そうなナノカはさらっとテンザンに追い討ちをかけた。
「ちょっと、私のメンテが先でしょ?電車のせいでフレームガタガタなんだから」
「分かってるって。ナノカも一緒にどう?ロールのこと気になるでしょ?」
「あっ、それなら興味あるかも。お願いしていいかな?」
彼女も発明家としてはロールに興味があるようで目を輝かせながら言って来る。
「おい、いいかハルト?ロールは君の作品なのだろう。それを他人に見せるなど・・・」
「別に減るもんじゃないしね。それに俺の夢は世界中の技術が発展することだから技術公開に躊躇いはないし」
「ほう、それは結構なことだ。だが公開する技術は選んでくれよ?一つの技術が戦争の引き金になる事だってあり得るからな」
「もうスツーカったら嫌味ばっかり!ハルト、スツーカの言うことなんて気にしなくていいから。私はハルトの夢は素敵だと思うし」
悪い、ナノカ。そのことに対してはスツーカのほうが正しいと思う。
俺の知識の中には国一つどころか惑星一つが消し飛ぶほど危険な技術が詰まっているわけだし。
「ナノカ、スツーカは別に嫌味で言ってるんじゃないって。高度な技術が生まれるとそれで馬鹿やる人ってのは必ず居るもんだしね」
「・・・なるほど、君はナノカのように能天気ってわけじゃなさそうだ」
「もう、スツーカったら!」
どうやら、退屈しない毎日になりそうだ。
・・・
・・
・
「ほぅ、お前さんがハルトか。ワシがお前の祖父のプロスペロ・フランカじゃ」
「ハルト・フランカです。でこっちが・・・」
「ほほぅ、その子がお前さんのゴーレムか!?肌触りは人と変わらんな!動力は何だ!?中枢ユニットのオリハリコン純度は!?内臓火器とかは持ち合わせてゴフッ!!?」
突然ロールの体を弄り出したじいちゃんがロールの胸元あたりを探り始めたところで鉄拳制裁を受け空を舞った。
思考は女の子そのものだから当然の結果だといえる。
「何するのよっ!ハルトにしか触らせたことが無いのに!!」
と人に誤解を与えそうなことを口走りながらじいちゃんに鉄建乱舞でエリアルコンボを繋げる。
戦闘機能に問題は出てないようで何よりだ。
「ハルト・・・ロールの胸触るの?」
「どうやら早熟なのは知識だけではないようだな」
『ガァァッ』
「名誉のために言うけど整備上仕方ないからだからねっ!」
スツーカは分かって言ってると思うけどナノカは目線が絶対零度に近い!
絶対誤解してる!
「ハルトのエッチ!」
「ロールの胸を如何わしい目的で触ったことなんて無いよっ!?」
「問答無用!女の子の胸を触るような悪い子にはお仕置きだよ!」
「必要なことだからねッ!?ロールの設計上仕方ない部分だからねっ!?」
ナノカの女の子的な思考の琴線に触れたのだろう。分からないではないけど理不尽だ。
「ナノカ、余りハルトを虐めてやるな。ロールもマスターが死にそうだからその辺にしておいてくれないか?」
「「スツーカは黙ってて!!」」
おぅ、二人とも息ぴったりだ。
ロールはじいちゃんにそろそろ三桁に達するであろうコンボを繋げ続け、ナノカはハンマーを手に取り俺に詰め寄ってくる。
「あの、ナノカさん?なぜハンマーを手に取るんですか」
「ハルトにお仕置きするためだよ。大丈夫!ハンマーの扱いはおじいちゃんから習って慣れてるから!」
「理不尽だ~」
弟子入り初日、俺とじいさんは仲良くベットで過ごすことになった。