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No.32684の一覧
[0] 【習作】正義の味方と夢見る聖者【ネギま!×Fate×トライガン+オリジナル】[T・M](2012/08/23 20:13)
[1] 第一話[T・M](2012/04/07 23:51)
[2] 第二話[T・M](2012/04/08 00:22)
[3] 第三話[T・M](2012/04/12 23:20)
[4] 第四話[T・M](2012/04/18 23:55)
[5] 第五話[T・M](2012/04/19 00:04)
[6] 第六話[T・M](2012/04/30 22:16)
[7] 第七話[T・M](2012/04/30 22:32)
[8] 第八話[T・M](2012/05/12 00:03)
[9] 第九話[T・M](2012/05/12 00:05)
[10] 第十話[T・M](2012/05/16 22:01)
[11] 第十一話[T・M](2012/05/16 22:06)
[12] 第十二話[T・M](2012/05/22 01:08)
[13] 第十三話[T・M](2012/05/22 01:43)
[14] 第十四話[T・M](2012/05/22 01:53)
[15] 第十五話[T・M](2012/05/22 02:11)
[16] 第十六話[T・M](2012/05/29 22:28)
[17] 第十七話[T・M](2012/05/29 22:51)
[18] 第十八話[T・M](2012/08/23 20:08)
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[32684] 第二話
Name: T・M◆4992eb20 ID:dcd07e40 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/04/08 00:22
 ヴァッシュと士郎がウェールズに逗留して、2週間が経った。
 下着泥棒の件でのいざこざが解消されてしまえば、ここは平和で静かで穏やかな場所だった。ただ、最近はヴァッシュ達が来る以前よりも賑やかになっている。
 それは、士郎の活躍によって石にされていた人達が全員、元に戻ることができたからだ。
 ここに来た次の日に作業を始めて、半日足らずで全員の石化が解かれたことには誰もが驚き、それ以上に皆が喜んで、士郎に感謝していた。
 だが、士郎は感謝の言葉をいくら受け取っても、喜ばず、嬉しがらず、少しも笑わなかった。代わりに顔に浮かぶのは困惑と苦笑ぐらいのものだ。
 本当に、士郎は妙な所で歪んだ性格をしている。自己犠牲の精神も行き過ぎれば、自殺行為にしか見えないというのに。
 まるで、昔の僕自身や……レガートを見ているみたいだ。
 そんなヴァッシュの心配をよそに、事態はあれよあれよと好い方向に転がっていく。
 士郎への感謝の気持ちとして、魔法学校はどの施設もほぼフリーパス、調べ物にも当初は10人近くの有志が協力を申し出た程だ。火急の用件というわけではなく、寧ろ深く関わられると説明に困ってしまうということで、厚意だけ受け取って丁重に断ったが。
 問題があるとすれば、2つ。
 1つは、下着泥棒のオコジョ妖精、アルベール・カモミールが脱獄したこと。一種の呪いで『永久にえっちぃことができないようにする(超要訳)』という罰を受けることを猛烈に拒否していたので、それが動機だろうという見解だ。
 刑罰が呪いというのがいかにもこの世界らしいと、ヴァッシュは妙な所で納得していた。
 このことに関しては魔法学校の人達に任せ、ヴァッシュと士郎は調べ物を優先することにした。万が一にもまた勘違いされて逃げ回ることになるのが嫌だから静観することにしたのではない。絶対に。
 問題のもう1つは、肝心の調べ物の進捗状況が捗々しくないことだ。


「駄目だな……空間転移の魔法にも、俺達が望むようなものは欠片も無いな」
 広い机を埋め尽くすほどの量の本に囲まれて、最後の一冊を読み終えた士郎はそう結論付けた。
「あー、やっぱりそうだったか」
 ヴァッシュも付け焼刃の魔法や魔術の知識で本を読み漁って、士郎よりも早くその結論に至っていた。魔術に詳しい士郎なら、或いはヴァッシュが見落としたことから別の結論を導き出せるかもと期待していたのだが、そんなに上手くは行かないようだ。
 2人して机に突っ伏して、深く大きく溜息を吐く。
 この2週間の9割以上を費やした時間が徒労に終わったのだから、溜息も盛大になろうものだ。
「でさ、士郎。君がこっちに来た原因は、やっぱり思い出せないか?」
 ふと思いついて、一緒に旅してから何度目かになる質問をする。
「ああ。恐らく1カ月ほど、記憶の殆どが抜け落ちている。転移の際に何かがあったんだろうが……」
「それが分かれば、もしかしたらって……思っちまうよな」
「そうだな」
 ヴァッシュがプラントの力でこの地球に来たように、士郎も“何かの力”によってこの地球に来たはずだ。そうであれば、あの時にヴァッシュを襲った何かにぶつかったような衝撃や、プラントの力とは違う異質な力を感じた孔、そして士郎がヴァッシュと殆ど同じ所から落ちて来たこと、全部に説明がつくのだ。
 その“何かの力”が明確になれば、まだ別のアプローチの仕方もあるのだが、分からないのではどうしようもない。
「……並行世界や時間旅行の研究は、科学分野だけか」
「それもまだまだ机上の空論で、実現には程遠いね。プラントに関しては、言うに及ばずさ」
 プラントの力が類する科学技術は、圧倒的に未発達。科学分野でのアプローチは絶望的だ。だからこそ、魔法の分野に期待していたのだが。
「どーしたもんかねぇ。リヴィオも見つからないし、お先真っ暗だよ」
 あの後、校長にリヴィオの捜索を頼んだのだが、そちらの音沙汰もない。
 黒い帽子とマントを身に付けた、十字架を模した二丁拳銃の使い手の牧師見習いだから、特徴に事欠かないとは思うのだが。



「しっかし、お互いよくもまぁ読み漁ったもんだねぇ」
 積み重ねられた本の山を見て、ヴァッシュがそんなことを呟いた。
 改めて見てみると、我ながらよくもこれだけの量を読破したものだ。恐らく、一日で十冊以上は読んだことになるだろう。
「ああ……流石に、事が事だけに集中力が段違いだったな」
 これだけの量を読み続けたことなど、学問が本分であった学生の時でもなかった。やはり、人間というものは、必要に迫られれば普段以上の実力を発揮できるようだ。
 前触れもなく、ぐぅ、と、腹の音が鳴る。どちらがではなく、どちらともだ。
「……飯にするか」
「そだね」
「それじゃあ、僕も御一緒させてもらおうかな」
 昼食を提案し、ヴァッシュが頷いたのを見て、3人揃って椅子から立った。
 ……3人?
 脳を酷使し過ぎて感覚が狂ったかと、士郎はゆっくりと周囲を見回す。
 机の対面にはヴァッシュがいて、他には誰もいない……と思いきや、何時の間にかこちら側の端に、見覚えのある白い男が座っていた。
「アラン!?」
「プレイヤー、いつの間に」
「割と前から」
 ヴァッシュは大声を上げて立ち上がり、士郎が問うとプレイヤーはさも当然のように答えた。神出鬼没とは、この男に最も似合う言葉だろう。
「どうやってここまで来たんだ?」
「無論、不法侵入というやつさ。バレずに潜り込むのは得意だからね」
 真っ先に浮かんだ疑問を問うと、事も無げにそう言った。
 ここメルディアナ魔法学校の警備は蟻も漏らさぬ布陣という程ではないが、笊でもない。しかし、侵入者に気付いている様子は見られない。
 自分から得意というだけあり、侵入や潜入の腕前は確かなようだ。
「久し振りだね。で、何しに来たんだ?」
 落ち着きを取り戻し、椅子に座り直してからヴァッシュが要件を問うた。プレイヤーも頷いて、すぐに答えた。
「君達がウェールズで下着ドロに身を窶したと聞いて、心配で飛んで来たのさ」
「なんだと!?」
 何時の間にかイギリス国外にまで自分達の誤った醜聞が広まったのかと、士郎は思わず大声を出してしまった。
 しかし、叫んでからすぐに、士郎はこの男の気性を思い出した。
「あ、冗談だから安心して。下着ドロに関しては、ここに来るまでに小耳に挟んだのさ」
 あっけらかんと、なんら悪びれた様子も無く言った。
 この男と会話をしたのはほんの僅かな時間だが、それだけでこの男の特徴や気性を知るには十分だった。
 プレイヤーは、まるで息をするように自然と冗談を言うのだ。しかも、うっかりと信じてしまうようなものを絶妙なタイミングで言うのだから、性質が悪い。
「相変わらずだね」
 ヴァッシュが苦笑しつつそう言うと、プレイヤーはニヤリと得意げに笑った。目元は、相変わらず帽子に隠れて見えないが。
「本題だけど、君達にお知らせしたい情報があってね。漸く君達の居場所も分かったことだし、ここまで来たのさ」
「情報?」
 そういえば、プレイヤーは如何わしい界隈――所謂、社会の暗黒面、裏の世界で“何でも屋”を営んでいると言っていた。
 その関係で情報収集もしているのだろうが、何故、態々士郎達に知らせに来たのだろうか。
 世界中を転々としているそうだが、活動拠点は話に聞く魔法世界に在り、そちらでの仕事の方が多いと言っていたはずだ。
 それなのに、顔見知り程度の仲でしかない自分達に情報を伝えるためだけに遠路遥々会いに来るなど、純粋な善意だけによるものとは思えない。
 そんな疑問を思いながらも士郎は一言も口に出さず、プレイヤーの話に耳を傾ける。
「君達がパソコンか携帯電話を持ってたら、それで済ませたんだけどね」
 プレイヤーの言葉に、ある嫌な記憶を思い出す。
 そうだ。現代の利器を利用せずに世界中を旅するなど馬鹿げている。本来なら、パソコンは無理でも、携帯電話は多少の無理をしてでも調達したいところだ。
 だというのに、この男と来たら……。
「あ~、あのちっこい電話か。前に買ったことあるんだけど、3時間で失くしちゃったんだよね」
「それも3回連続でな。お陰で俺も持つのがバカらしくなった」
 ヴァッシュは何故か、携帯電話をすぐに失くしてしまう。
 いや、何故ではない。何かの騒ぎに首を突っ込んで、その拍子に失くしてしまうのだ。
 通信機器に関してはヴァッシュが便利な物を持っているので困るわけではないし、携帯電話を入手する度に失くされては堪ったものではない。
 そういうことで、携帯電話を所持することを諦めた。諦めた当初はどうなる事かと思っていたが、今になって振り返ってみると、意外とどうにかなるものだ。
「相も変わらず、愉快且つ元気みたいだねぇ」
 小さく笑いながら言って、プレイヤーは漸く本題を切り出した。
「で、肝心の情報だけど、まず一つ目は探し人。僕の友達が街中で『ダブルファング』と名乗る黒い帽子とマントを纏った、腰に十字架を2つ吊り下げた人物と会ったんだって」
 明らかに特徴過多のその人物には心当たりがある。ヴァッシュが予てから探していた彼だ。
「どー考えてもリヴィオだよ、それ! あー、良かった。無事だったんだなぁ……」
 ヴァッシュと共にこの世界に来てしまったという牧師見習いの青年、リヴィオ・ザ・ダブルファング。
 ノーマンズランドでも最強クラスの戦闘能力を有するものの、士郎とヴァッシュほどではないにしろ、他人を信じ易く騙され易いお人好しらしい。
 相当目立つはずなのに今まで少しも行方が分からなかったので心配していたが、無事なようで何よりだと、士郎も安堵の息を吐く。
「良かったな、ヴァッシュ」
「うん。ありがとう、士郎。リヴィオと合流できたら真っ先に紹介するよ」
 心底から安心した表情と声で、眼の端に涙を浮かべながらヴァッシュは頷いた。
「それで、場所は?」
 ヴァッシュは居ても立っても居られないとばかりに、そわそわとしながらプレイヤーにリヴィオが発見された場所を問うた。
「日本の京都」
 あっさりと返って来た答えを聞いて、士郎は軽い眩暈がした。
「…………日本、だと?」
 ああ、なんということだ。
 俺達がこの世界に迷い出た近くに、探し人もいたとは。やはり、世界中を探し回るよりも先に、日本中を探し回るべきだったか。
 一方、日本の地理に疎いヴァッシュは、まだ士郎ほどショックを受けていない。
「あっちゃあ、スタート地点の近くにいたのか。士郎、参考までにあの街からキョートまでどれくらいだったんだ?」
「そうだな……6時間程度じゃないか?」
 この世界の交通機関は、士郎の世界の同時代のものと大差ない。新幹線などを使えば、埼玉から京都まではその程度の時間で着けるだろう。
 これを聞いて、ヴァッシュも仰天した。
「近っ!? 僕達のこの7ヶ月はなんだったの!?」
「それを言うな」
 この世界に放り出されたのが8月中旬で、今はもう3月末、もうじき4月だ。
 これだけの期間世界中を旅して回ったというのに、探し人がまさか出発地点から少し離れた場所とは。
 リヴィオの件で喜びながらも若干の疲労感を覚えていると、プレイヤーが再び口を開いた。
「もう1つの情報なんだけど、ガッカリしないでよ?」
 プレイヤーが持って来たという情報は2つ。リヴィオの情報は特に前置きが無かったというのに、今度は「ガッカリするな」と言う。
 予想できないし考えたくもないが、リヴィオのこと以上にある意味でガッカリするような情報なのだろう。
「なんだ。帰る手立ては何も無いことが断定された、とかか」
「それってもうガッカリを超えて絶望だろ」
 つい度の過ぎた最悪の予想を口にして、ヴァッシュにつっこまれる。
 そんなやり取りを見てか、僅かに口元を歪めながら、プレイヤーはもう1つの情報を伝えた。
「時空を超える技術、君達が帰還する一縷の望み、麻帆良に在り」
 聞いた瞬間、思考が停止した。
 頭の中が真っ白になって、一切の思考を拒否する。
 錯覚だろうが、ピシリ、という擬音と共に世界が凍りついたようにも思える。
 混乱はしていない、俺は冷静だ。冷静だからこそ、素直にその朗報を受け止めたくないのだ。
「……士郎。僕の記憶違いじゃなければさ、麻帆良ってスタート地点そのものだよな?」
「ああ、そうだな」
 妙に重苦しい空気の中、ヴァッシュは気の抜けたような声で問うてきた。それに士郎がすぐに頷くと、数秒の間を置いてから共にガックリと項垂れ、机に突っ伏した。
「…………僕達、本当に何やってたんだろうね」
「…………言うな。泣きたくなる」
 プレイヤーが持って来てくれた情報はどちらも、この7ヶ月間、探し求めながらも見つけられなかったものだ。それらの情報が一度に手に入って、しかもどちらも近い場所にあるというのだから、これは間違いなく僥倖だろう。
 だが、あの時。麻帆良にそのまま滞在するという選択肢を真っ先に放棄し、世界を旅して回るという選択肢のみを考えてしまった己が憎い。後悔先に立たずとは、こういうことか。
「まぁまぁ、いいじゃないか。急がば回れとも言うし、目的地までの寄り道は、旅と人生の醍醐味じゃないか。それとも、今日までの日々は無味乾燥だったのかい?」
「ま、そうだけどね」
 プレイヤーのフォロー、をするような性質ではないから、本心からの言葉だろう。それを聞いて、ヴァッシュは苦笑しつつも頷いた。
 今日までの日々には色んな事があった。望む成果こそ得られなかったが、その全てが無意味で無駄な時間だったかと問われれば、士郎も首を横に振る。
 俺は、自分の今までの旅路が失敗だらけだとしても、そのことを後悔することだけはしたくない。……流石に、さっきは本気で悔やんだが。
 そこまで考えて、ふと、あることに考えが及んだ。
「って、待て。まさかお前、あの時も知ってて黙っていたのか?」
「うん? ああ、技術のことね。まさか、そのことを知ったのはほんの数か月前だよ。報せるのが今日まで延びたのは、連絡しようにも、その頃には君達、ドクターとも別行動になっていたみたいだし」
「む、そうだったか」
 この男の気性を思えばもしや、と思ったが、杞憂だったようだ。それに、もしも本当にそうだったのなら、今日こうしてここに来てはいないか。
「というわけで、報告はお終い。後者についての詳細は、知ってのお楽しみ、君達自身で調べるといいよ。だから、遅かれ早かれ、日本に行くことをお勧めするよ」
 言って、プレイヤーは帽子を左手で押さえながら立ち上がった。
「そうだな。校長に頼んで、麻帆良の責任者に紹介状を書いてもらうか」
 日本に行くべし、という勧めに否を唱える理由は無い。今すぐにでも行きたいところだが、素性の知れない人間が何の頼りも当ても伝手もなく赴いた所で、門前払いが関の山だろう。
 ならば、今ある人脈は可能な限り活用すべきだ。そうすれば、着の身着のままで行くよりはずっといい。
「ありがとう、ホワイトマン。お陰で希望が見えて来たよ」
愛称で呼びながらヴァッシュはプレイヤーに歩み寄り、右手を差し出した。
 それを見て、少しの間を置いてから、プレイヤーはヴァッシュの手を取り、握手した。
「お気にせず、レッドメン。実はこれ、僕の為でもあるからね」
「お前の為?」
 纏めて複数形で呼ばれたことよりも、その言葉が気になり聞き返す。
 プレイヤーは握手の手を放すと、踵を返す前に口を開いた。
「また、日本で会えば分かるさ。その時は、知り合いの誼で、1回ぐらいはこのしがない小悪党を見逃してくれよ? 正義の味方【Crime Avenger】」
 真剣な声調で告げ、食事は次の機会にね、と言い残して、プレイヤーは図書館の本棚の方へと消えて行った。
「小悪党、か。どう思う? ヴァッシュ」
 プレイヤーは初対面の時の自己紹介で、士郎が正義の味方を志していることを話すと、

「それは奇遇だねぇ! 実は僕、生粋の、それはそれは卑しい小悪党なんだ。その時はお手柔らかに頼むよ」

 などと言って来たのだ。
 聞いた時は冗談だと思ったのだが、ジョーも真面目な顔で頷き、今回もプレイヤーは真剣に自身を小悪党と称した。
 自らの価値観や存在を『悪』と断じ、そこに一片の迷いも見せずに自らを肯定する人間に会うのは、初めてではない。だが、その知っている男とプレイヤーは、余りにも平素の様子が違っていて、ピンと来ないのだ。
 それで、人生経験が自分よりも色々な意味で豊富なヴァッシュに訊いてみたのだが、難しい顔をして唸っている。
「う~ん、どうだろ。性格がぶっ飛んだりしてるやつって、普段の態度だけじゃ分からないからな」
「やっぱり、そういうやつに会ったことはあるのか」
「うん。伊達に長生きしてないさ」
「……とびっきり凄いのだと、どんなやつがいた?」
「そうだな…………士郎が聞いたら機嫌悪くなるだろうからやめとく」
「なんだそりゃ」
 一頻りその話題で話し続けて、再び腹が鳴った所で昼食を摂ることにした。
 その後、侵入者が見つかったという通報も特になく、メルディアナ魔法学校は今日も平和そのものであった。
 他に、気掛かりな点があるとすれば。
 士郎とヴァッシュが日本に行くことでプレイヤーにどんなメリットがあるのか、ということだけだ。





 メルディアナ魔法学校の敷地を悠々とした足取りで抜けると、プレイヤーはそこであることを思い出し、ついさっき行ったばかりの場所を振り返った。
「ああ、いけないな。勘違いさせるようなことを言っちゃったよ」
 言いながら見ているのは、もう衛宮士郎もヴァッシュ・ザ・スタンピードも離れているであろう大図書館だ。
「時空を超える技術を知ったのは最近だけど……彼らが帰還する一縷の望みは、初対面の時から知っていたからねぇ」
 悪びれた様子など寸毫も見せず、寧ろ楽しげに、面白げに、口を歪める。
 そして、左手の掌を見遣る。そこには、蚯蚓腫れのような痕が刻まれている。つい数日前に若干の痛みと共に顕れた、プレイヤーの企みが順調であることの証だ。
「さて。今のところ、兆しが出ているのは僕だけか。後の候補は……衛宮士郎は鉄板として、ソードと、ウェルンくんと、噂の英雄子息ってところかな。残る2人は誰になることやら」
 それだけ呟くと、踵を返して帰路へ着いた。こんな場所で不用意に長居をしていたら、どんなデメリットが発生するかもしれないのだ。
 やがて、最近になって完全に復興したという村に差し掛かると、改造携帯電話が着信を告げるメロディを鳴らした。軽快な音楽を楽しみながら、通話ボタンを押して耳に当てる。
「あ、エミリオ? 久し振り。元気みたいで何よりだよ。僕の方の用事は終わって、今から帰るところ。そ、予定より早目。珍しいだろ。それで、例の仕事の件だけど、準備はどうだい? もうすぐだけど。…………そう、ナイン達も一緒さ。折角のウェルンくんからのお誘いじゃない、僕らも楽しまないとね」
 2ヶ月前の仕事で負傷し、大事を取って長期療養していた親友の復帰と、仕事の準備も滞りなく進んでいることを確認する。ナイン達の移動準備まで出来ているのなら、準備万端と言っていいだろう。
 流石はソード、勤勉で真面目で実直で、こういうことを任せたら間違いない。また「煩わしいことを押しつけたな」と愚痴られそうではあるが、些細なことだ。
「ん? ウェルンって誰かって? フェイト・アーウェルンクスその人だよ。フェイトきゅんもアーウェルンクス少年も駄目出しされたから、こう呼ぶことにしたんだ。素敵だろう?……え? ダサイ? ビミョー過ぎる? 五月蠅いよ」
 最後に他愛のない会話をして、プレイヤーは最終確認を含めた挨拶で通話を終えた。
「それじゃ、予定日時に変更なく、京都で合流ね。それまでに一度は顔を出しておくから」



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