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No.32676の一覧
[0] 【習作】あんこたっぷり千雨ちゃん(魔法少女まどか☆マギカ×魔法先生ネギま!+魁!!男塾)[ちゃくらさん](2012/04/07 16:30)
[1] 序  雨の中で遭ったような[ちゃくらさん](2012/04/07 15:42)
[2] 第一章 我が征く道は荒涼の、共は引き摺る影ばかり(1)[ちゃくらさん](2012/04/07 16:10)
[3] 第一章 我が征く道は荒涼の、共は引き摺る影ばかり(2)[ちゃくらさん](2012/04/07 16:14)
[4] 第一章 我が征く道は荒涼の、共は引き摺る影ばかり(3)[ちゃくらさん](2012/04/07 16:18)
[5] 第一章 我が征く道は荒涼の、共は引き摺る影ばかり(4)[ちゃくらさん](2012/04/07 16:21)
[6] 第一章 我が征く道は荒涼の、共は引き摺る影ばかり(5)[ちゃくらさん](2012/04/08 08:57)
[7] 第一章 我が征く道は荒涼の、共は引き摺る影ばかり(6)[ちゃくらさん](2012/04/08 09:00)
[8] 第一章 我が征く道は荒涼の、共は引き摺る影ばかり(7)[ちゃくらさん](2012/04/08 09:04)
[9] 第一章 我が征く道は荒涼の、共は引き摺る影ばかり(8)[ちゃくらさん](2012/04/08 09:15)
[10] 第一章 我が征く道は荒涼の、共は引き摺る影ばかり(9)[ちゃくらさん](2012/04/08 09:27)
[11] 第一章 我が征く道は荒涼の、共は引き摺る影ばかり(10)[ちゃくらさん](2012/04/08 09:47)
[12] 第一章 我が征く道は荒涼の、共は引き摺る影ばかり(11)[ちゃくらさん](2012/04/08 10:11)
[13] 幕間壱    極武髪で死守[ちゃくらさん](2012/04/08 22:53)
[14] 第二章 Sis puella magica! (1)[ちゃくらさん](2012/04/08 22:55)
[15] 第二章 Sis puella magica! (2)[ちゃくらさん](2012/04/08 22:57)
[16] 第二章 Sis puella magica! (3)[ちゃくらさん](2012/04/08 23:11)
[17] 第二章 Sis puella magica! (4)[ちゃくらさん](2012/04/08 23:13)
[18] 第二章 Sis puella magica! (5)[ちゃくらさん](2012/04/08 23:18)
[19] 第二章 Sis puella magica! (6)[ちゃくらさん](2012/04/08 23:22)
[20] 第二章 Sis puella magica! (7)[ちゃくらさん](2012/04/08 23:24)
[21] 第二章 Sis puella magica! (8)[ちゃくらさん](2012/04/08 23:27)
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[32676] 第一章 我が征く道は荒涼の、共は引き摺る影ばかり(8)
Name: ちゃくらさん◆d45fc1f8 ID:c85bc427 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/04/08 09:15

第8話   第一次スーパー逸般人大戦


 開始早々、双方が間合いを詰めるようにダッシュし、そのまま打撃戦となった。最初は五分五分だった流れも、2対1の不利によるものか千雨が徐々に押されていく。

よく見てみると千雨の方は主にパンチで対応しており、脚技は防御か精々ローキック位しか使っていなかった。これには勿論理由があり、千雨としてもこれは『ナンテコ

ッタイ』な状態だった。今の心境を簡潔に表すと

「パンツしか穿いてないから恥かしいんだよ!」

 となる。まさかこんなバトルになるとは思っておらず、スカートの下にスパッツなどを穿いて来てなかったのだ。大股開きでジェット・ソニック・マッハ・パンチなん

てぶっ放そうとした時に、朝倉辺りにパシャリとされたら、一生モノの黒歴史だ。
 何も気にせずパンチラを御開帳する古や、ちゃっかりスパッツを穿いていた長瀬を嫉ましく感じていた。
 それらを抜きにしても、千雨も流石に足技抜きでクロスレンジファイトは不利と感じていた。そもそも彼女の技は技量と比例しても破壊力が強すぎるのである。この二

人が相手で大怪我させずに勝つのは不可能だろう。只のストレス発散で血を流させる訳にはいかない。この頭が真っ白になりそうなバトルは名残惜しいのだが、千雨はこ

のステージに少し手を加えた。

 「ハッ!」

 千雨は体制を立て直そうとしたのか、バク宙で後方に移動した。其の時、地面すれすれの位置から千雨の指が《何か》を弾いたのを目視出来たのは、傍観者の中でも三

人だけだった。
 千雨は長瀬達から少し離れた位置に着地し、その衝撃を脚に溜めた。ギリギリまで高まった処でそれを一気に解放し、超高速ダッシュで一気に間合いを詰めた。その目

標は――古菲

「古菲! 避けろ!!」

 長瀬の言葉も空しく古菲は動かない、否動けない。

「ダ、ダメネ! 脚が動かないアル!」

 千雨はその間に古菲の眼前まで来ていた。古菲の必死な防御も空しく、千雨の右手に頭を摑まれた瞬間、衝撃が走った。

「千雨圓明流奥義 無空掌!!」


……無空掌とは、ぶっちっけ無空波と菩薩掌のパクリである。最初に思いついた時は虎丸を実験d……もとい練習相手として習得した。しかし当初は余りにも殺傷力が高

く、手加減の難しい技であった。幸いにも伊達師範の競合他社に属する構成員多数の協力により、正確なコントロールを身に付けることに成功したという。余談ではある

が、この場合の《千雨》は《ちう》と発音するのが正式とされている  
《民明書房刊 『ぶっ跳び!ちうちゃん伝説!!』より》


 掌から発する ブウン という音と共に古は地面から浮き上がり、そのまま万有引力に従い ドスン と地に伏した。長瀬が二人の間に入り込むも間に合わず、古は何

か呻きながら痙攣している。

「何をした!長谷川!!」

 怒気を露に長瀬は叫ぶ。そうしていながらも古を庇う位置に立ち、油断無く千雨を凝視しているのは流石と言えよう。

「安心しろよ、2~3時間で回復する。後遺症も残らないし」

 本当なら丸一日動けない筈だったのだが、古は技が極まるギリギリの瞬間、上半身のバネだけで身を捻り、ダメージを緩和したのだ。千雨はこの技量に舌を巻く。コイ

ツには無空掌は二度と効かないだろう。先のクロスレンジにおいてもマッハパンチを撃っていたら、隙を突かれて危なかったかもしれない……だがFPMPになると殺傷

力が高すぎる。その辺の加減が難しい。

「……本当でござるか?」

「ああ、只の憂さ晴らしに無理矢理付き合わせたんだから、せめて軽症レベルに抑えとかないと申し訳ねえ」

「……判ってやっているのなら、今すぐにでも止めてもらいたいのでござるが……」

「ワリイ、無理」

 千雨はそう言って長瀬との間合いを詰めようとするが、長瀬も警戒してか千雨を近づけさせない。
 そうしている間に龍宮が近づき、古を回収していった。安全の確保というよりも、古の脚に打ち込まれた『何か』を調べる為だろう。

「オイ、素通りかよ、テメエもかかって来いよ! 龍宮! 」

 千雨の挑発にも何処吹く風で

「お前が負けそうになるまでは、遠慮しておくよ。だから長瀬、殺る気で頑張れ」

 そう言って龍宮は、古の太腿に出来ている小さな傷跡を凝視していた。

「酷い話でござるな……」

 長瀬の感想に千雨は同意しつつ話しかける。

「だろ? 今度アイツをシメる時には手を貸してくれよ……」

「無理矢理ケンカ売ってきた人間の台詞ではござらぬな」

 この反論に千雨は何も言えなかった。


「それでは折角アドバイスを貰った事だし」

 そう言って長瀬は懐から苦無を取り出し

「少し本気を出すといたそう」

 鋭い眼差しで睨みながら、十数本を投射した。

「おわっ!! テメエ!どこ狙ってやがる!!」

 その全てを回避せずに手で捌きながら、千雨は長瀬を怒鳴る。

 長瀬はニヤリとしながら答える。当然苦無を投げながら。

「何処と言われても、当然長谷川殿狙いでござる。まあ避けると料理に当たるかも……」

「この卑怯者め!!」

 思わず絶叫する千雨は『背に食いモンは変えられない』と隠し玉その1 を使う事にした。すかさずポケットから取り出した手袋を左手にはめ、指先から《何か》を放

つように腕を揮い、こう言った。

「長谷川流魔体術奥義 戮家ウォルター拳!」

 当然これは戮家奥義 千条鏤紐拳なのだが

「Unicodeメンドイ」

 ということで改名したのだった。当然センクウには内緒である。

 千雨と長瀬の間で《何か》がキラキラ と光ったように見えたその直後、投擲された苦無全てが『寸断』された。その破片は慣性の法則に従い飛んで行くも、どれも千

雨には届かなかった。
 流石にこの『現象』に皆が驚いていた時、中国武術に造詣の深い古菲がその正体に気付き、やや説明っぽい口調で話した。

「うぬう……まさかアレは、中国拳法史上最強と謳われた暗殺拳 千条鏤紐拳なのカ! 初めて見たアル!!」

「知っているのか! 古菲!?」

 そこにツッこむ桜咲、まあ護衛対象と同じクラスに『暗殺拳の使い手』がいるなど、悪夢でしか無いのだから気にもなろう。
 龍宮の方は古の傷口から取り出した礫を眺め

「古菲、これは何だか判るか?」

と尋ねる。頭を振る古菲の代わりに超が

「もしかすると……ソレハ翔穹操弾カモしれないネ……デモ……」

 超の歯切れの悪い口調に訝しむ龍宮、超は話を続ける。

「ソノ技は中国の歴史上でも修得者は5人といない筈ネ」

「なんともまあ……色々と出てくるな……アイツ本当に中一か?」

「オメエが言ってんじゃねえ!! 龍宮!!」

 彼女達の会話は全部千雨に聞こえている。その間も飛んでくる苦無をバシバシと斬り飛ばしてた。

「ああ!もうこれじゃあ埒があかねえ!」

 そう言って千雨は右手で焼き鳥を掴み、一気に頬張る。そして残った串を長瀬に投射しつつ叫ぶ

「ふはっへ はふひへんほん(喰らえ!鶴嘴千本)」

「……! 危ないでござるな、それに口の中に物を入れて喋るのは、行儀良くないでござる……よ! 」

 その攻撃を長瀬は紙一重でかわす、だがこれ以降千雨の攻撃をかわす必要が出てきたので、必然的に攻撃が疎かになっていく、それは逆に千雨に余裕が出てくる事を意

味する。その出てきた余裕を全て、串料理の収奪に費やしているのはどうかと思われる。『目的の為なら手段は選ばない』という言葉があるが、この場合どちらが目的で

、どちらが手段なのか判らなくなっている。
 このままでは……長瀬は焦り始めていた。あの鋼糸を防ぐ為には、千雨を防御に追い込む必要があった。だが攻守が交代しつつあり、苦無の残りも少ない。
 千雨同様、長瀬も『このままでは埒があかない』と感じており、一か八かの勝負も考えていた。だが自分から動くと隙が出来るので千雨が焦れてくるのを待っていたの

だが、もうそんな余裕は無い。長瀬は覚悟完了した。

「長谷川千雨!! いざ尋常に 勝負!!」

 そう叫んだ長瀬は、会場のテーブルクロスをマチャアキも吃驚なスピードで一気に引き抜き、千雨に向けて投げつける。平面状になるよう投げられたテーブルクロスは

丁度千雨の視界を遮るように広がっていた。

「無駄な足掻きだぜ!」

 千雨は勝利を確信し、テーブルクロスを鋼糸で切り裂く。そしてその切れ端から覗く光景を見て……千雨は青褪めた。

「そんなモン、何処から出したんだよ!!」

 そこには……直径2M位の巨大な十字手裏剣が4つ、千雨に向かって不規則な軌道で飛んでいる。長瀬はその後ろを同じ速度で向かって来る。

「畜生!」

 千雨は焦っていた。あの質量で高速回転する手裏剣に、鋼糸が絡み捕られたからだ。これで戮家ウォルター拳は使えない。実質左手は封印されたも同然だ。逃げように

も鋼糸の長さが逆に行動範囲を狭めていく。下手に手裏剣を回避しようとしても、後ろにいる長瀬がそれを見逃す訳がない。

「畜生! 分の悪い賭けは大嫌いだってのに!!」

 こうなればもう、と千雨は隠し玉その2をぶちかます覚悟を完了する。

「後はもう……刺し穿つのみ!!」

 最早、回避不可能な距離になるも、千雨は微動だにせず構えている。長瀬は相手の出方が判らず迷いが生じていたが、こちらも引く訳にはいかず、一分の隙もなく千雨

の動きを凝視している。
 千雨は振りかぶった右手を手刀の形にする

「長瀬! 避けるんだ!」

 何かを察したのか龍宮がそう叫ぶ、長瀬が反射的に身を捩ったその直後、千雨の技が炸裂する。 

「長谷川流魔体術奥義 フラッシュ・ピストン烈舞硬殺指!!」

 ババババババリーン

 超高速で撃ち出された手刀が当たる度に、巨大手裏剣が粉砕していった。これを全員が唖然とした表情で見ている。当然コレを喰らう処だった長瀬もだ。

「間違いないネ、あれは伝説の暗殺拳、魍魎拳の奥義『烈舞硬殺指』 ならやはり彼女が『拳聖』アルカ……」

 古の独白を聞き、千雨は眉を顰めた。覚悟はしていたが、ついにばれてしまった。賞金額がヤバ目なので色々と手を打っておかないと、後々危険なことになりそうだ…



「だがまあ今は、コイツと決着をつけねえと、な」

 そう言って振り返ると、倒れていた長瀬が起き上がってきた処だった。無理な状態での回避だった為、上手く着地出来なかった為だ。

「んじゃあ、仕切り直しだ」といって千雨は構えた。左手の手袋を投げ捨て、手を手刀状にして。
「やれやれ、でござる……」そう言って長瀬は苦無を持って構えた。どうやら『まだ』隠し玉がありそうだ。
 そして再び緊張感が高まっていく中、このバトルは以外な展開を迎える。


「史伽!し、しっかりしろ~」

 緊迫した状況下、風香の声が響き渡る。何だ?と思い声のした方向を見るとそこには……責任を感じたからか、ワサビ入りプチシューを食べようとしている鳴滝姉妹の

姿があった……
 なんとか一つは食べれたのだろうが、そのままダウンしている史伽と、口の周りを緑色にして史伽を起こそうとしている風香。
 このなんとも言えない空気が漂う中、長瀬は千雨の方を見て目で尋ねた――どうする?――と。
 千雨も完全に毒気を抜かれたようで、長瀬に背を向け姉妹の方に歩いていった。両手を肩幅に広げているので一応暴れる気は無さそうだ。
 千雨は半泣きになっている風香の頭を撫でてこう言った。

「ワリイな、アタシの分がまだ残ってたわ」

 そして皿を持ち上げ、殆ど減ってなかったワサビ入りブチシューを口に流し込む―――今度はワサビの辛さしか感じなかった。
 千雨はそのまま手を振りながら会場を後にする。


 この乱闘事件は千雨の今後に大きな影響を残した。先ずは「食い物が絡むと洒落が通じない」「キレると始末に終えない」「どう見ても893」等の畏怖の念。またそ

れとは逆に「カタギには手を出さない?」「生き様に一本スジが通ってる」「漢の中の漢」「長谷川のアニキ!」「『お姉さま』と呼ばせてください」等の敬意……本人

が聞けば頭を抱えるようなモノだが……少し変わって食欲旺盛な処から「ギャルちうちゃん」「朝から二郎」「魔神チユ」「女将を呼べ!」等本人が聞いたら只じゃあ済

まないモノ。

 最後に、その強さは万人に賞賛されていた。後に
龍宮真名   桜咲刹那    長瀬楓    古菲    そして長谷川千雨    
 この五人を称して

武道四天王  と呼ばれるようになる。

 この呼称に奮起する者一人、「やれやれ、困ったでござる」と呟く者一人、特に気にせず振舞う者二人、そして「何処からツッコミゃあいいのやら……」と頭を抱える

者――ご存知一人
 以上が今回の第一次スーパー逸般人大戦の結果である……あくまで『表側での』と付くのだが……


 所謂『裏側』の方はまだ継続中である。そう、誰もいない筈の会場跡でも……

「ほう……ここまで《気》を使わずに破壊出来るとはな……」
「まあ、ウチのクラスには元気な子が多すぎるからね」

 紛争跡地のように破壊し尽くされた部屋を調べ回っている二人。『多い』じゃなく『多すぎる』と言ってしまう辺り、それなりに苦労しているようだ。

「この切り口は……まさか戮家の千条鏤紐拳か? それにしては断面が荒い。鋼糸の切れ味に頼りすぎだ! コレだから最近の若い者は、直ぐ道具に頼る……私が修行中

の頃は、絹糸で巨岩を切り裂く者がゴロゴロと……」

 年寄りの長話が始まったか、と男の方は思う。勿論その事を口にも顔にも出すことは無かったが……

「ククク……おい見てみろ、この手裏剣の破壊部分を。こいつはおそらく魍魎拳の烈舞硬殺指だ。純粋なスピードと肉体の強化で鉄塊すら粉砕する、まさに邪拳……」

 女の方は面白い玩具を見つけたように上機嫌で喋り続ける。

「戮家と魍魎拳。武術史上燦然と輝く二大暗殺拳を修得、おまけに邪法といわれる翔穹操弾か……これは将来が楽しみだな」
「僕は逆に……将来が不安なんだけどね……」

 クラス担任は至極当然な事を言った。

「で、私に毒見をしろ、と?」

 女の方は ニヤリ と笑う。男の方は不本意そうな顔をしながらも何も言わない。つまり……是 であると。

「彼女自身、少し情緒不安定な処があってね、衝動的に暴力を揮いかねない……」
「だから、その人間性を見極め、もし危険だと判断されるなら、深層心理にまで恐怖を植え付けて暴力を嫌悪すようになればと? 何とも、教育熱心なことだな」
「……矯正が出来ないようなら、此方側に引き込む事になる。本人の希望は兎も角ね……」

 女の皮肉を男は否定も肯定もせず、只起こりうる未来を語った。

「まあいい、長谷川千雨が只の阿婆擦れだろうと、腹に一物持っている裏の関係者だろうと……」

 久々に学園公認(オール・ウェポンズ・フリー)で暴れられるのが嬉しいのか、全身から気力と魔力を滲ませつつ豪語する。

「このエヴァンジェリンA・K・マクダウェルが、真の恐怖というものを教育してやるわ!!」

 エヴァンジェリンの興奮振りに、タカミチ・T・高畑は心中で長谷川に詫びつつ、この問題が収束してくれる事を願った――その期待は見事に裏切られる事になるのだ

が―― 
 

 何と無く寒気を感じつつ千雨は自室に向かっていた。とりあえず一暴れ出来たせいか、心身ともにスッキリしている。暫くは普通に生活できるかな?と思いつつ階段を

上っていくと、踊り場に誰かがいた。
 千雨は誰だろ? と思いその人物を凝視し、眉を顰めた――そこにいたのはクラスメイトのザジだった。よく考えてみると寮内で会ったのは初めてだし、先ほどのパー

ティーにもいなかった。
 彼女の存在に訝りながらも、社交辞令として「おやすみ」と言いそうになった時、ザジが話しかけてきた。

「この世界のエネルギー濃度は低い」と

 千雨は「はあ?」と思いながらも聞く。何故かそうしたくなったから。ザジは話を続けた。

「この世界は魔法の乱発、特殊空間の維持などで、世界を構築するエネルギーが常に不足しています……」

「いきなりかよ……もうちょっと伏線無かったのか?」

 こう呟く千雨だったが、話が進むにつれ徐々に血の気が減っていった。その内容の衝撃に。

「……よって並列世界よりエネルギー状のモノが流れ込み易くなっているのです……川が山から海に流れるように、台風の中心に向かって風が吹くように……」

 千雨はもう何も言えない。彼女が言っている事の壮大さ、自分にとっての重大さが理解出来た。口の中がカラカラで、目の前が真っ暗になりそうだった。それでも千雨

は耐え、一字一句聞き漏らさぬよう全神経を集中させる。そのような状態を知ってか知らずかザジは爆弾を投げ込む。

「よく流れてくるのはエネルギー、情報などで、時々生物や物質が来ることもあります。そして極最近ある変わったモノが並立世界から流れてきました。それは――」

 千雨の心拍音が跳ね上がる。ザジの口から確かに聞こえてきたのだ。

 ――魂――と。


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