『スターブックス・コーヒー』
麻帆良学園の敷地外、麻帆良駅からほど近い場所にあるコーヒーショップを、千草と勇人は訪れていた。
時刻は間もなく午後四時。強制捜査を終えた埼玉県警の警察官達は、とうに麻帆良学園を後にし、さいたま市への帰路に就いている。
しかし所属こそ警察庁と警視庁と異なれ、部署に『特別資料室係』『特殊資料整理室』と似た名を冠する二人の仕事は、これからが本命と言えた。
「……とは言ってもなぁ……」
自身に課せられた仕事を内心で愚痴りつつ、千草はボックス席の相対に座る二人の女子中学生をそれとなく観察した。
片や、尻まで届く金糸のような髪に、澄んだ海のような青い瞳、白磁を思わせる白い肌と、世の中を斜に構えた目付きの悪さがなければ、原寸大の人形と見紛いそうな西洋人の少女だ。本校女子中等部の制服を着ていなければ、八、九歳と誤解しそうな幼さが特徴と言えば特徴か。
もう一方は、緑色の髪を、これまた尻にかかる長さにまで伸ばし、両耳の換わりにアンテナ、ブラウスの首筋から覗くパーティングラインなど、どう見ても人ならざる特徴を備えた少女だ。感情の欠落した無機質な顔の造形からも、長身の少女に見せかけた自動人形と伺われる。
「……エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル……」
口中に広がる苦い響きを声にせず、コーヒーと共に飲み下す。
十日近く前の四月十五日の『麻帆良大停電』の晩、『英雄の息子』ネギ・スプリングフィールドと相対していた魔法使いの少女の身元を探り、辿り着いたのがこの名前だ。
『不死の魔法使い(マガ・ノスフェラトウ)』『人形使い(ドール・マスター)』『闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)』等の異名を持ち、魔法使い達の間では恐怖の対象とされ、陽光をも克服した齢六百歳の『真祖の吸血鬼(ハイデイライト・ウォーカー)』。
それが、目の前の小学生にも見える金髪の少女の正体である。
相手が妖魔の中でも上位に位置する存在と知り、カップを持つ手が震えないよう取り繕うのは、自らの無力を自覚する千草には困難な事だった。これからの交渉を思えば、簡単に弱味を見せるのは憚られると分かっていても、だ。
隣の勇人に至っては、礼儀や常識や身分を弁えたのでもなかろうに、明らかに守備範囲にいる少女に声をかけようとすらせず、半ば顔色を悪くしつつ全身を硬直させている。
しかし六世紀を生きてきた相手に、多少の演技は通用しなかったようだ。
震えそうな手を懸命に抑える千草の葛藤を読み取ったのか、エヴァンジェリンは目を半眼に狭め、片方の唇の端を吊り上げた。
弱者をいたぶる強者の嘲笑ではなく苦笑だと、続けられた言葉が耳に馴染むまで、千草は理解できずにいた。
「そんなに怯えなくても良い。女子供を取って食う趣味はない。それに……」
エヴァンジェリンは指で上唇をめくり上げ、並びの良い白い歯を見せびらかした。
「……今の私は魔力を封じられた力のない小娘に過ぎん。その程度は調査済みだろう?」
「それはそうですけどね……」
千草は認めた。
確かにエヴァンジェリンに吸血鬼特有の長い牙は見られない。彼女が力のほとんどを失い、この麻帆良の地に封印されているとの調査報告の正確さを証明している。
それでも怖いものは怖いと、千草は口にはできなかった。
「話をしたいと、私を呼び出したのはそちらだろう。まずは落ち着け。そんな事では、話もできん」
やれやれと息を吐くエヴァンジェリンに促され、千草は失礼と知りつつ、深呼吸を二回繰り返し、ようやく背筋を正した。先入観のせいか、普通に見詰められるだけで全身が震え出すのを、テーブルの下で太腿を抓る事でかろうじて堪える。
「……では、改めて自己紹介します。私は『警察庁長官官房総務課特別資料室係』の天ヶ崎千草。こちらは『警視庁特殊資料整理室』の志門勇人です」
「それは聞いた」
ばっさりと切り捨てたエヴァンジェリンが、テーブルの一角を左手の人差し指で示した箇所には、二人の名刺が並んで置かれていた。二人の座る位置に合わせて名刺を配置している辺り、机の引出しにしまってしまう近右衛門よりも、社会礼儀を身に着けていると知れる。
「下らん世間話も要らん。用件を話せ」
ただし口は悪い。
狭い麻帆良に幽閉され、近右衛門のような無礼と非常識と不見識な人物の下、十年以上女子中学生などしているから、世間一般の礼儀を学べなかったのだろうと、彼女を知る者からすれば失笑物な誤解をしながら、千草は用件を切り出した。
「……警察の捜査に、協力をお願いできますか?」
恐る恐る千草が用件を口にした途端、少女の頬が引きつるように強張った。次いで、ぎこちない動きで唇が笑みの形にたわむ。
「ふざけているのか? 私が何者か、知らぬ訳でもなかろう」
音量は抑えられていても、そこに込められた威圧感は、千草の身を縮こまらせるのに十分だった。
「冗談ではないのですよ」
吸血鬼を怒らせて無事で済むとは考えられず、一目散に逃げ出したい気持ちを叱咤し、千草は反論を試みた。
「そちらにどれだけ情報が伝わっているか存じませんが、麻帆良学園に対して埼玉県警察は、本日強制捜査を行いました」
学生達の不安を煽らないよう、今回の捜査に訪れた警察官は全員スーツを着用していた。そうと気づくのは困難だっただろう。既に事後であるし、夕方六時のニュースで報道される内容を、隠し立てしても意味はない。
「それがどうした? メディアで報道されるとでも? はっ! いつものように隠されて、なかった事にされて、それで終わりだろうさ」
「いつもなら、その通り。ですね」
侮蔑を隠そうともせずに嘲っていたエヴァンジェリンは、千草の意外な反応に、おやと動きを止め、無言で説明を待った。
「表も裏も上も……まあ、下はさて置き……今回は乗り気です。どれだけ本気かは、夕方以降のニュース番組でも見ていただければ」
「ほう?」
今度こそエヴァンジェリンは楽しげな笑みを浮かべた。
「つまり、奴らの検閲をかわせると? 面白い、詳しく話してみろ。乗るかどうかはともかく、話だけは聞いてやる」
食いついてきた感触に、千草は内心で喝采を上げた。
「詳しく話したいのは山々ですが、私は末端の一人です。全体を把握している訳ではありません」
ですが、と一区切り置き、自分としてはこれ以上ない程の真剣な表情を作る。
「まず、お願いしたい内容からです。……警察に保護を求めて下さい」
魔法使い達への魔法での攻撃か、何らかの荒事を予想していたのだろうか。
屈辱とも羞恥ともつかぬ苦虫を噛み潰した顔の吸血鬼を、どう納得させたものかと、会談の前に何度も繰り返してきたシミュレーションを、千草は頭の中で反芻した。
◇◆◇
魔法使い達に命を狙われ、六百年を一人で生き伸びてきた見かけ十歳前後の少女な吸血鬼が、これまでに築いてきた自尊心や誇りがどの程度のものか、自分には想像もつかないものだと言う以外、千草には想像できない。
だから、憤怒に顔を赤く染め、今にも喉元に食いつかんばかりに殺意を込めた視線に晒された時には、交渉の失敗と、自身の死を半ば以上覚悟してしまった程だ。
「冗談のつもりなら……殺すぞ」
歯の間から絞り出す掠れた声には、本気の殺意が感じられた。
実行に移さないのは、千草に回避するだけの体捌きや、抵抗できるだけの実力がないと見越してか。あるいは、女子供は手にかけない矜持によるものか。
「……本気です」
平然を装いつつ、カップに手を伸ばす千草でも、手が大きく震えているのは誤魔化せなかった。
「民事不介入が原則なので、助けを求められないと警察は動けません」
そして温くなったコーヒーを一口飲み、カップをテーブルに置く。
「保護された後は、調書の作成と……できれば裁判の時に証言でももらえれば助かります。裁判については、検事側の都合次第ですが。荒事は一切ありません」
最強とも謳われる魔法使いに求めるには余りにささやかな要求に、エヴァンジェリンは意外そうに眉をしかめた。
「それだけか?」
「それだけです」
余程意外だったのか確認に問い返す少女に、千草は即答で返した。
被告を『関東魔法協会』とするか『立派な魔法使い』とするか、現時点では未定ながらも、近衛近右衛門とその配下による監禁と迫害と強制労働を強いられてきた少女を保護したとの名目を立てるには、彼女に事を荒立てられては困るのだ。
「だが、私を保護してどうする? 『元』が付くとは言え、六百万ドルの賞金首、悪い魔法使いだぞ?」
魔法使いの下りで、千草は周囲の反応を警戒した。店内の喧騒に誰も注意せずにいるのを確認してから、芝居がかった仕草で両手を広げる少女に、やや険を込めた視線を向ける。
「その賞金首、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは、一九八八年、『千の呪文の男』ナギ・スプリングフィールドにより討伐されました」
これは魔法使い達の社会で公式に発表されている。真実は、本人が眼前にいる事から察せられよう。
「は! それが虚偽なのは、お前の目の前にいる私で分かるだろう! 私が健在だと知れば、世界中から賞金稼ぎ共が押し寄せてくるわ!」
せせら笑うエヴァンジェリンの前に、千草は指を三本立てた。
「その可能性は否定しません。ですが、それには問題が三つあります」
言ってから、まず薬指を折り曲げる。
「一つ。日本では賞金稼ぎを認める法律はありません。捕まえるために暴力を振るえば暴行罪、下手をすれば傷害罪か殺人未遂になります。そして身柄を拘束すれば、略取誘拐罪……それに監禁罪も付けましょうか」
この説明は、鼻であしらわれた。
「そんな法律、『立派な魔法使い』の連中が守ると思っているなら、本当、めでたいな」
「法律が守られるのを期待するなとは、警察官としては言われたくないですね」
侮蔑とも揶揄ともつかないエヴァンジェリンの言葉を、千草は立て板に水で受け流した。魔法使いの順法意識の低さは認識している。
次いで、中指を曲げる。
「二つ。現在の日本の公訴時効は、殺人でも十五年。エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルが関与しているとして、警察が指名手配している時効前の未解決事件はありません。よって、現状、逮捕はできません」
再来年二〇〇五年一月一日より、殺人の公訴時効は二十五年に変更される。それでも、二〇〇三年で時効の成立した事件の時効が取り消され、再捜査が始まる事はない。『法の不遡及の原則』に反する。
仮に警察の把握する未解決事件が存在したとしても、彼女の実年齢がどうであれ、十年以上の前の事件の関係者として、現役女子中学生の身柄を拘束するのは、到底理に適った行動とは言えまい。
最後に残っていた人差し指を折り曲げ、千草は握った拳をテーブルに置いた。
「そして三つ。よその国でどれだけ犯罪を重ねてきたのかはともかく、ICPO――国際刑事警察機構――を通じて、加盟国約百九十ヵ国に対し、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルなる人物の国際逮捕手配がされたとの記録は、存在しません」
それは当然だろう。
彼女が賞金首として手配されていたのは、魔法使いの世界――魔法界――での話だ。
そこは魔法使い達が仰ぎ、在住する国の法律や道徳を下にしてまで、その意思と決定と指導――『立派な魔法使い』の精神――を優先する宗主国……否、教主国だ。日本で生まれ育った魔法使いですら例外ではなく、自分の国籍を保証する国の主権を否定し、『本国』と呼び習わしているその国は、地球上のどの国とも正式な国交は結んでいない。それどころか、地球上にすら存在していない。
加えて、百九十ヶ国もの法律に精通するまでもなく、『賞金首』なるものを認定し、暴行・誘拐・監禁・殺人が常態化すると容易に想起できる『賞金稼ぎ』なる職業を是とする国は、どの近代国家においても法的に認めていないと言い切れよう。
そのような国に、国際条約に基づいた手配ができると考えるのは、魔法使い程度のものだ。
「詭弁だな」
千草の説明を、エヴァンジェリンは一言で切り捨てた。
「せめて屁理屈と言ってほしいですね。少なくとも、筋は通っています」
どこがだ、と言いたげな胡乱な目を向ける真祖の吸血鬼だ。
「百歩譲って、表向きはこの理由で誤魔化せても、だ。『立派な魔法使い』がそんな理由で納得すると思うのか? 実際そう上手くいくはずないのは、お前だって分かっているだろう」
詭弁や屁理屈と言われる通り、表向きの理由に穴があるのは千草も認めるところだ。しかし事は裏側――対魔法使い――が重要なのであり、そこに認識のずれが生じているのは予想できた。
「そうですね……。では、幾つか確認させて下さい」
テーブルの上に置いたままの拳から、人差し指だけを立てる。
「十五年前、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの死亡確認を行った人物に、心当たりは?」
賞金首を討伐したのなら、その死体が間違いなく賞金首のものだと、誰かが証明する必要がある。しかし本人が生存している以上、死体の用意は不可能であり、となれば、通りすがりの第三者や、討伐したと称する賞金稼ぎの言葉以外にも、公的な資格を持つ人物、例えば、医師や賞金をかけた機関から公的な資格を与えられた人物の手による、正式な死亡の証明は必須だ。
千草の質問に何か感じるものがあったのか、エヴァンジェリンはふむと唸ると、記憶を探るようにアゴに手を当てた。
「……ジジイ……近衛近右衛門。ここの学園長だな」
すかさず千草は中指も立てた。
「賞金をかけていたのがどこの組織かは存じませんが、そこへ討伐完了の報告をしたのは?」
「それもジジイだろう。ナギ……『千の呪文の男』は、いちいちそんな報告するマメな人間じゃない」
即答した自分の言葉の意味に気付いたのか、エヴァンジェリンは目を見開いた。
「おい。まさか……」
構わず薬指が立てられ、三つ目の質問が出された。
「例の協会の運営資金、どこから出ているかご存知ですか?」
『関東魔法協会』がどのように運営されているか、非法人組織のために外部の千草は想像するしかない。
考えられるのは二つ。会員の魔法先生・魔法生徒らに、ボランティアとして無料奉仕させる手段。あるいは、魔法先生には副業として、魔法生徒にはバイトとして、それぞれに給与を支払う手段。
どのような形態であれ組織を運営する以上、どこからか原資を掻き集める必要がある。まかり間違えても、『学校法人麻帆良学園』の資金の一部を流用し、運転資金に回しているなどとはあり得まい。
「いや。あの非常識具合ならやりかねないか?」
二つの組織が別物である以上、貸借対照表などの財務上の手続きも含めて資金を移動し、流れを明確化していなければ、業務上横領を問われてしまう。一方の組織の財産を、財布の紐を握る責任者が同じだからとの理由で、別組織の運営に用いる訳にはいかないのだ。
さすがにそこまで愚かだとは考えられないが、近右衛門の言動に一般社会の常識を見つけるのが困難だった事を鑑みると、その可能性を一笑に伏せないのが恐ろしいところだ。
「資金の出所は私も知らないな。だが、麻帆良学園も協会も、『本国』のヒモ付きだとは、確実に言える」
束の間の驚きから醒め、呆れとも諦めとも付かない複雑な感情を、エヴァンジェリンは浮かべた。
「……と、なると」
千草は手を開き、再びテーブルの上に置いた。
「近衛学園長は、六百万ドル目当てに『千の呪文の男』と共謀し、死亡確認報告もしくは検死報告を『偽造』した上で、賞金をかけた組織へ『虚偽報告』を行い、賞金を『詐取』。さらに自分の地位を利用して、後援組織に損害を与える『特別背任行為』をしてのけた……のかもしれませんね」
憶測の域を出ていませんけれどと、既にエヴァンジェリンが考えついていた内容を、千草は言葉に紡いでみせた。
「本人は、ここの警備員がほしかったから、『千の呪文の男』の話に乗ったと言っていたが……」
「ですから、あくまで憶測です。本心がどこにあったかなど、六百万ドルの行方と同じく、どうでも良い事です」
渋面で近右衛門の擁護めいた言い訳を口にするエヴァンジェリンを、千草は頭を横に振って否定した。
憶測を推し進めるなら、この詐欺は二人の共謀ではなく、三人による犯行の疑惑すら出てくる。
一九八八年当時の米国ドル・日本円の為替相場は、一ドル百二十五円から百三十五円の幅を推移している。六百万ドルともなれば、三人で山分けしたとしても一人頭二百万ドル、日本円換算で二億五千万円前後にもなる。麻帆良の土地事情さえどうにかできれば、家を一軒建てる資金としてもお釣りの来る金額だ。そして麻帆良の土地を管理しているのは、なぜか市役所ではなく近右衛門であり、全寮制の麻帆良学園本校女子中等部にあって、エヴァンジェリンだけ自宅からの通学だ。彼女が無関係とするには、早計すぎやしないだろうか。
「まあ、かれこれ十五年前の出来事です。事件性があったとしても、とうに時効が成立しています。今更どうこうできる話ではありません」
戦後二十年経過した現在でも、魔法使いの間では英雄と讃えられる『千の呪文の男』が、実はケチな詐欺師だった。これが公になれば、魔法使い達の世界はさぞや楽しい阿鼻叫喚に包まれるだろう。
口では憶測と言いつつ、内心では事実と確定している仮説に、魔法使いへの憎悪の溜飲が僅かに下がる気がし、千草は無意識のうちに皮肉な笑みに口元を綻ばせていた。
「そもそも、近衛学園長のヒモの端を握る人物か組織か存じませんが、十五年もの間、全く気がつかずにいるとでも?」
だとすれば、相当にずさんな資産管理をしているか、無能共の寄せ集めなのだと断言できる。
裏の意味を読み取ったエヴァンジェリンの目が危険な光を宿した。
「……まさか、私が生きていると知って、それを放置している……。そう言いたいのか?」
自尊心を傷つけられたのか、再び喉笛を噛み切らん鋭い視線で睨みつけるエヴァンジェリンに、全身が震えてくるのを千草は懸命に堪えた。
「知っているのか、未だに知らずにいるのか。この場合、それは重要ではありません」
思いの外に掠れていた声音を、咳払い一つして元に戻す。
「上司が偽証、あるいは横領まで行っている可能性が高いのは、死んだとされている人物が生きている事から、麻帆良の魔法使いの間で周知の事実でしょう? 健全な組織を目指すのなら、上司の背任行為を放置などせず、さらに上に報告するのが社会正義……立派な行為ではないですか」
それが彼らの求めて止まないものでしょう? それを見て見ぬ振りでは、『立派な魔法使い』の名が泣きますよ。
最後の揶揄する言葉を、千草はコーヒーと共に喉の奥に流し込んだ。
魔法使いの場合、報復人事として死地へ追いやられる危険が無きにしも非ずだ。それを恐れて上司に迎合しているのだとすれば、何が『立派な魔法使い』だと言うのか。
鬱屈した思考に陥りかけた千草を元に戻したのは、爪先を軽く蹴った勇人の足だった。
失礼と、エヴァンジェリンに気付かれない程度に小さく頭を下げた勇人を軽く見遣ってから、思考を切り替える。
「それに騙されたとは言え、賞金は支払われていますから、一度取り下げた指名手配をもう一度かけ直すのは無理です」
魔法使いの社会が地球の近代国家に近い物だと仮定すれば、彼女の関係する事件は全て『被疑者死亡』の形で処理されているはずだ。『犯罪被害者給付金制度』があれば、被害者家族に支援金が支払われているし、事件に関係する裁判もとうに終えている。
それを今さら生存が確認されたからと、支援金の返却を求めるなり、終了している事件の捜査を再開するなど、できようはずもない。
「悪い例え方をすれば、一つの商品に二回代金を払わせるようなものですからね。払う客はいません」
それでも釈然としない様子のエヴァンジェリンに、おそらくは一番説得力があるだろう言葉を向ける。
「賞金と指名手配をかけ直すと言うのは、その組織は、自分達の判断が間違えていたと、その間違いに十五年も気づかずにいたと、大々的に認める事になります。そういう殊勝な、いえ奇特な組織ですか?」
そもそも、そのような間違いを犯さないためにも、日本では審理を三回まで行える『三審制』を採用しているのだ。『魔法界』の司法制度がどのようなものであれ、最終確定した判決を、間違えましたと言って差し替えるはずかないと、容易に想像できる。
「まさか。間違いなど決して認めはせんさ」
自らの即答に満足したのか、エヴァンジェリンは口元を歪めた。
「だがな。その組織――メガロメセンブリアの元老院――が認めなくても、私の生存を知れば、私を狙う『立派な魔法使い』は出てくるぞ? どうするつもりだ?」
「異な事を」
おかしな事を訊くものだと、千草は心持ち肩を竦めた。
「どこからも手配を受けていない相手に、危害を加える目的で近づくなんて、ただのストーカーかごろつきか狂信者か……呼び方はどうであれ、ただの犯罪者予備軍ではないですか。普通に対処すれば良いだけです。それとも『立派な魔法使い』とは、唱えれば魔法使いが手出しできなくなる『魔法の言葉』ですか」
そこが正に難点だった。
近右衛門を例に出すまでもなく、『立派な魔法使い』とは、在住する国の法だけでなく、自分達魔法使いのための法や道義すら、自分の都合で平然と踏みにじり、まるで悪びれない無法の徒だ。
千草の最後の一言に対し、エヴァンジェリンはどちらとも取れる曖昧な笑みで答えた。
「ふん、なるほど」
これまでの説明に納得したのか、両腕を組み、しばらく黙考する。
「屁理屈も並べ立てれば、それらしい説得力を持つように聞こえるのだな」
「それでも、表裏どちらも手出しできないのは理解してもらえると存じます」
エヴァンジェリンが次の言葉を発するまで、一分近い時間を要した。
「話は分かった」
そして、底意地悪く片唇を吊り上げる。吸血鬼の本性が現れていたら、鋭い牙が覗けただろう、いかにも悪そうな顔だ。
「私が協力するとして、だ。その対価として、何を用意する?」
「……対価、ですか?」
「そうだ。私は悪い魔法使いだからな。ただ働きはせん」
予想されていた反応だった。
それだけに、応じる『対価』も用意してあるのだが、口にして良いものかどうか、千草は決断に迷った。
「買収行為に当たりますから、金銭や物品の提供はできません」
濁した言葉にエヴァンジェリンが不快気に顔を歪めるのを見、これから提示するものを用意した『上』を、内心で罵倒する。
「こちらにできるのは、麻帆良の『協会』によって侵害されている権利……基本的人権を取り返す手伝いです」
理解できていない様子の彼女に、言葉を変えて説明する。
「自由権……つまり、麻帆良に封じられている現状の打開。『登校地獄』と言いましたか? それを解除します」
今度こそ意図は伝わったようだった。
理解が及ぶにつれ、呆気に取られた表情が、興奮とも憤怒とも恥辱とも取れる形相へと変化していく。
「ふ、ふざけるなぁっ!」
この面談で最大の音量をもってエヴァンジェリンは吠えた。
◇◆◆◇
『登校地獄(インフェルヌス・スコラステイクス)』
不登校の学生を強制的に登校させるため、魔法使いが用いる呪いの一つである。ふざけたその効果もさることながら、不登校となった原因には目もくれず、場当たり的な対処のみで解決とする辺り、良くも悪くも魔法使いらしいと言うべきか。
齢六百歳の真祖の吸血鬼を麻帆良に閉じ込める物の正体が、この下らない呪いだと知った時には、大いに呆れたと同時に、感心もしたものだ。
魔法使いには、する事なす事全てに反発心と敵愾心しか抱けない千草でも、エヴァンジェリンを無力化し、麻帆良に封じている手際だけは称賛しても良かった。
「……それを解呪するとか、正気を疑うわ……」
愚痴は内心で漏らすだけに留め、『上』の方針を改めて伝える。
「ふざけてなどいません。麻帆良外への移動と行動が、本人の合意なしに制限されていれば、『監禁罪』の要件を満たしていると判断されます。保護を求められれば、警察としては動かざるを得ないのですよ」
先の咆哮で一時衆目を集めたエヴァンジェリンは、やや声音を落とすと、テーブルを殴り付ける真似で激昂を表した。
「私が言っているのは、その事じゃない!」
この席では、魔法使い達が頻繁に用いる認識阻害や、たわいのない会話に見せかける魔法を使っていない。魔法使い達に秘密の会話をしていると明言する必要などないし、何事も魔法で片付けたがる魔法使い達への、千草なりの皮肉でもある。
「いや。そのおかしな理屈もそうだが、そもそもこの呪いは、私が十五年かけて解けなかった呪いだぞ! それをよくも、簡単に解けるような口振りで話せるものだな!」
「解呪の手段と伝手なら、近衛学園長なら幾つも持っているはずですけどね」
刃物のように狭められた視線に、生きた心地もせずに千草は解説した。
「近衛学園長の生家は、日本に古くから伝わる陰陽師の一族です。退魔や厄払いの術なら色々と取り揃えていると思いますが?」
現代でこそ名字だけの赤の他人とは言え、元を辿れば近右衛門の近衛家は、五摂家の一家と祖を同じにする旧家だ。数十世代に渡り培われてきた知識の蓄積は、六百百年生きてきたエヴァンジェリンに勝るとも劣らぬはず。
「本人がその手の術に心当たりがなくても、伝手はあるでしょう。協力を得られるかどうかはさて置き」
近右衛門自身は魔法使い側に降ったにせよ、麻帆良から一歩も出られないエヴァンジェリンと比べ、日本国内の陰陽師とのつながりは段違いに強いのは確かだ。
しかしその伝手を頼れるかと問えば、否と答えるしかない。それ程に、陰陽師業界での近衛一族への信用と信頼は、底辺にある。
理由は単純だ。
呪者としての近衛一族は、先代で途絶えて、否、途絶えさせてしまったからだ。
近右衛門が十代前半で魔法に傾倒し、麻帆良に移住した時点で、先代は血縁筋から養子を取るなりして、後継者を用意する旧家としての義務があった。どのような理由が本人にあったにせよ、それを怠り、結果として、近衛一族を近衛一族たらしめる特殊性――一族秘伝、あるいは一子相伝で口伝のみで継承されるだろう秘術――全てが失われてしまったのだ。
後継者の立場を投げ捨てた近右衛門もまた然り。後継の責務を放棄した無責任さは、業界内では未だに語り草となっている。
残ったのが術者として優れた才能を持つ血筋だけでは、信用が地の底を這うのも頷けると言うものだ。
「ちょっと待て。それじゃあまるで、ジジイはその気になれば、いつでも私の封印を解けたような言い草だな」
「解けるのではないですか?」
千草はにべもない。
彼女達が知る由もない事実に、近右衛門の蔵書の中には、調べればものの一、二時間とかからずに、エヴァンジェリンの呪いを一時的に無効化する記述があるのだ。十五年もあれば、完全に解呪する方法の一つも見つかっていよう。
「なら、なぜ私を十五年間もここに縛り付けてきた……?」
自分の詐欺行為の生き証人を野放しにできないから。封じられていた真祖の吸血鬼を野に放てば責任を追及されるから。などの理由は口にはしない。
代わりに、別の言葉を紡いでいた。
「十五年前も、現在も、そして十五年後も、その後も、危険の伴う最前線に放り込んでも生還し、負傷しても完治して障害が残らず、加齢で能力が低下せず、絶対に逃亡せず、使い減りしない駒を、誰が進んで手放すと?」
近右衛門が一連の犯行を隠蔽し続ける腹積もりなら、エヴァンジェリンを永遠に麻帆良で飼い殺しにするしかない。
我ながら酷い説明だとうんざりする千草をよそに、何やら思い当たる節があるのか、聞かされた当人にも面白くない話だったからか、エヴァンジェリンは苦虫をまとめて十匹ぐらい噛み潰したような顔をした。
「勿論、善意からの思惑があって、呪いを解かずにいるとも考えられます。近衛学園長が善意の人か、自分勝手な思い付きで周りに迷惑をかける人物か、権力を固持したいだけの老人か、付き合いが十五年もあるそちらの方が詳しいでしょう?」
とは言え、近右衛門が髪の毛一筋程の善意も持ち合わせていないのは、千草の中では確定事項だ。学園長室での面談から、この場での会話に出てきた行動まで、礼儀的な最低限な他者への配慮すら、近右衛門から感じ取れなかった。あるのは己の地位を誇示する恫喝と利の追及であり、『関東魔法協会』『麻帆良学園』のいずれの利も考慮の外だ。
千草の問いとも確認とも取れる口調に、エヴァンジェリンは渋面を深めて返答に替えた。
「話を戻しますと、私達の提供できる解呪の手立てとは、近衛学園長がその気になれば、とうの昔に行っていただろう手段の一つです」
この手段の説明で、また激昂されるのだろうと予想し、重くなった口を動かすのにしばし時間がかかる。
「魔法使いの魔法で解呪できないのなら、呪いの術式だけ焼き払ってしまえば良い話で……」
「……神凪か」
予想に反して冷静な反応を返したエヴァンジェリンに、千草はおやと目を瞬かせた。
「ご存じでしたか」
「当たり前だ」
心外だと言わんばかりに、エヴァンジェリンは憮然と両腕を組み直した。
炎の精霊王と契約した『契約者(コントラクター)』を始祖とし、一千年の間血脈をつないできた炎を操る一族の名だ。魔法使いの魔法が、あくまで物理法則の範疇に収まるのに比べ、神凪一族の操る炎はそのくびきに囚われず、人に取り憑いた悪霊のみを焼いたり、燃やした周辺の草木には焦げ跡一つ残さずと言ったり、燃やしたい対象だけを燃やす理不尽な代物だ。身体に傷を付けず、呪いの術式のみ焼き払うなど造作もない。
「噂ぐらい聞いているし、解呪の手段の一つとして調べもした。戦って負けるとは思わんが、今の状態でやり合って愉快な相手ではないな」
存外にも高い評価だ。
「しかし私の呪いを解くために、連中に協力させるのはどう考えても無理だぞ。どうするつもりだ?」
悪霊怨霊、妖魔などの魑魅魍魎に対し、力のない人々を守るのを一族の使命と捉えているのが神凪だ。真祖の吸血鬼は討滅すべき対象の一つであり、それを開放するための助力など、鼻であしらわれて終わるどころか、とどめを刺しに麻帆良へ攻め込んで来かねない。あるいは、呪いを燃やすと見せかけ、エヴァンジェリン諸共に焼滅させようとするかもしれない。
「いっそ、一族を上げて麻帆良に攻め込んでくれれば、どれだけ世話のかからない事か……」
麻帆良の魔法使いと、神凪一族の殲滅戦。術の多彩さと人数で麻帆良、一点突破の火力で神凪に分があるか。なかなかに良い状態で潰し合ってくれそうだ。
警察官として不穏当な思考を、千草は彼方に押しやった。
「その仲介に我々が入ります」
「……それで動く連中か?」
エヴァンジェリンは懐疑的だ。
神凪一族の過剰なサービス精神を知っていれば、当然の反応だ。依頼のものは確実に焼却し、依頼以外の物も焼く。ついでに依頼がなくても燃やす。妖魔や同業者に留まらず、結界に封印に念動力にケブラー繊維、建物、公園、森、果ては狂った神に魔神と、燃やす対象は見境いなしだ。ある一面においては、麻帆良の魔法使いよりも性質の悪い集団なのは否定できない。
「他に解呪の宛ては?」
退魔の炎に身を晒すのは、さすがに抵抗があるのだろう。神凪の風評もあり、警戒したい気持ちは一抹ながら理解できる。
「神凪で不安なら、実力は折り紙つきの風術師を紹介します。まだ無名ですけれど、こちらは依頼分の仕事だけ確実にこなす人物です」
神凪が炎の精霊を操る炎術師であれば、風の精霊を操るのは風術師である。情報収集や索敵に優れる反面、荒事における戦闘力は最低と言われている。
「……風術師だとぉ……?」
あからさまに不満の声を上げるエヴァンジェリンに、これまで沈黙を続けていた緑髪の自動人形が初めて口を開いた。
「……検索完了。ヨーロッパのオカルトサイトに書き込みがありました。風の精霊王の『契約者』は日本人だそうです」
自動人形に驚いた風の一瞥を向けたエヴァンジェリンは、愉悦に満ちた笑みを千草に投げかけた。
「つまりお前達は、その『契約者』に伝手があると言う訳か」
「さあ? そこまでは確認していません」
千草にもその辺りの情報は伝わっていない。聞いているのは、エヴァンジェリンの封印を解呪できる腕利きと言う触れ込みと、あまり褒められた人格でないという人物評程度だ。情報が制限されているのは、件の人物との窓口は、特殊資料整理室――正確には霧香――が仕切りたい、との意思表示なのだろう。
「ふん。まあ、いいさ。それほどの実力者なら、この忌々しい封印は解呪できるだろう」
「納得してもらえましたか?」
「お前達の言葉通りならば、な」
エヴァンジェリンは回答を濁らせ、千草をねめつけた。
「だが、納得したからと言って、警察に保護を求めるような無様な真似、気安くすると思うなよ」
そう釘を刺してから、気になった質問を口にする。
「それで、もし私が協力せず、警察に保護を求めなかった場合、どうするつもりだ?」
「何もしません」
千草の回答は簡潔だった。
「先程も説明しましたけれど、助けを求められなければ、警察は動けません。ですから、保護を求められなければ、保護に動く事も、解呪の仲介に入る事もありません」
この回答はエヴァンジェリンに問われるまでもなく、説明の項目に含まれていた内容だ。
「保護を求めるかどうかはそちらの自由ですし、今すぐ返事が必要な訳でもありません。情勢を見極めてから判断されるのが良いでしょう」
ただし計画が順調に推移し、それでも保護を求めなかった場合、彼女の生存率が著しく低下するのは火を見るよりも明らかだ。近右衛門が武力で抵抗を試みる可能性は決して低くなく、その時の先兵に立たされるのは彼女だ。もしくは、証拠隠滅に走った近右衛門の手により謀殺されるか、全ての責任を彼女に被せた魔法使い達の手により抹殺されるか、体の良いスケープゴートにされる危険性は、彼女が自覚している以上に高い。
「さて。お話しするのはここまでです」
予定していた内容は、全て語ったはずだ。
隣を見遣り、勇人が同意に小さく頷くのを確認してから腰を上げる。
その動作を、エヴァンジェリンの待てとの声が止めた。
「最後の質問だ。どうして……どうして警察は、私を保護しようなどと酔狂な事を考えている?」
どう答えるべきか少し迷ってから、千草はようよう口を開いた。
「人道的にどうこうの綺麗事を聞きたい……訳ではないのでしょうね……」
エヴァンジェリンが頷くのを待ってから、話を続ける。
「麻帆良の魔法使いの何割が、この先、警察の捜査に対して力ずくで抵抗してくるか分かりません。その抵抗する中にいられては、こちらにとって具合が悪いからです。死傷者の発生と言う意味において、ですが」
付け加えるなら、近右衛門と魔法使い達の間に不和の種を撒くのも目的の一部だ。
近右衛門は呪いで彼女を麻帆良に縛り付け、良いように操っている。
それが全体での評価だ。
千草の『上』は、その戒めから解放する事で、彼女の協力を取り付けようと本気で画策している節がある。真祖の吸血鬼を身内に抱える危険性を全く考慮しない浅慮さには、呆れて言葉もない。
「それでは、今日はご足労ありがとうございました」
最後に別れの挨拶を述べ、千草と勇人の二人はコーヒーショップを後にしたのだった。
◇◆◇◆◇
『教師がブログや掲示板に不正アクセス。学園に不利な書き込みを削除。
埼玉県警察署は二十四日、埼玉県内にある『学校法人麻帆良学園』のサーバーより不正アクセスが行われていたとして、同学園大学部を強制捜査したと発表した。これはかねてより大手新聞社サイト、個人ブログ、各ネット掲示板などのネット上において、麻帆良学園に関係する書き込みが、何者かにより即座に削除されるとの苦情を受け、埼玉県警が密かに調査していたもの。管理者の教諭・弐集院光に任意同行を求め事情を聴取したところ、『二〇〇三年式電子精霊群』なるマルウェアの開発と、それを用いての不正アクセス行為を認めたため、現行犯逮捕した。この件に関し麻帆良学園側は「今回の事件は職員の独断専行であり、当学園は一切関与していない。今後このような事を起こさないよう、担当者を厳しく罰したいと思う」と語っている』
当事者を罰すれば自分の責任を果たしたと誤解している発言が、いかにも近右衛門らしい。
麻帆良学園本校女子中等部の修学旅行三日目の夕方、各ニュース番組で小さいながら報道されたこの事件は、今度こそ各新聞社サイトから削除されたりはしなかった。
◎参考資料◎
・赤松健『魔法先生ネギま!③』講談社、2003年11月17日
・警察による犯罪被害者支援ホームページ『犯罪被害者給付制度とは』
・まさかりの部屋『殺人行為による罪と罰』2010年05月05日
・山門敬弘『風の聖痕』富士見書房、2002年1月25日
・Wikipedia『国際刑事警察機構』
・Wikipedia『国際手配』
・Wikipedia『犯罪人引渡し条約』