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No.32355の一覧
[0] 【習作】こーかくのれぎおす(鋼殻のレギオス)[天地](2012/03/31 12:04)
[1] いっこめ[天地](2012/03/25 21:48)
[2] にこめ[天地](2012/05/03 22:13)
[3] さんこめ[天地](2012/05/03 22:14)
[4] よんこめ[天地](2012/04/20 20:14)
[5] ごこめ[天地](2012/04/24 21:55)
[6] ろっこめ[天地](2012/05/16 19:35)
[7] ななこめ[天地](2012/05/12 21:13)
[8] はっこめ[天地](2012/05/19 21:08)
[9] きゅうこめ[天地](2012/05/27 19:44)
[10] じゅっこめ[天地](2012/06/02 21:55)
[11] じゅういっこめ[天地](2012/06/09 22:06)
[12] おしまい![天地](2012/06/09 22:19)
[13] あなざー・労働戦士レイフォン奮闘記[天地](2012/06/18 02:06)
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[32355] よんこめ
Name: 天地◆615c4b38 ID:b656da1e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/04/20 20:14
 カツカツと音を立てながら歩くフェリの後ろを、殆ど音を立てずに歩く。レイフォンが音を立てずに歩くのは、別に意識しているわけではない。
 舗装されている地面の上を、ゴム製の靴底で歩けば誰でも大した音は立たない。比べて彼女の足音が大きいのは、恐らく素材に合成樹脂か、もしくは金属で出来ているからだろう。普段、それだけで特別思うことなどないのだが……この時は、きっと蹴られたら痛いのだろうななどと考えて、僅かにすくみ上がった。
 会話はない。だからといって、無音でもない。遠くの話し声や、木々が擦れ合う音などは確かにある。しかし、それよりもっと近くに、少女二人の話し声があった。もっぱらリーフェイスがまくし立てるように言葉を紡ぎ、それに相づちを打つ状態。
 レイフォンは、自分が別段無視されている訳ではないと理解している。ただ、それ以上にリーフェイスとの会話が忙しいだけなのだろう。
 しかし、なぜわざわざ呼び出しをしに来たのだろう。まさかリーフェイスに会いたかったからか、一瞬考えたがすぐ否定する。やるにしたって迂遠過ぎるし、呼び出すまではいいにしても、どこかに連れて行く意味が分からない。それに、

(迷ってるような感じは、全くしないんだよな)

 目的地だけは定まっているようで、足取りに不安はなかった。リーフェイスの事はついで(彼女にとってそうであるかは定かでないが)で、本題は別にあると見ていいのかも知れない。ならば、この少女はただのメッセンジャー兼道案内なのだろう。
 視線を下ろして、彼女を見た。明確に下ろさなければ、後頭部をしっかりと捉えられない。その程度には身長差があった。
 一度目の出会いは(一方的な)口論の末にしがみつかれる。二度目は椅子に座っていた上に、彼女の姿を直視していない。落ち着き改めて見てみた少女の体は、予想よりも幾分小さかった。少なくとも、黙っている姿を見ている分には、無邪気に見惚れている事ができそうだ。
 このどう見ても十歳を少し超えた程度の少女は、上級生だと言う。
 ナルキの言葉を信じれば、なのだが、レイフォンはそれを疑っていなかった。どこで判断したのかまでは分からないが、彼女がその手の話を間違えるとは思えない。そして、先輩という発言を否定しなかったのだから、正解なのだろう。
 道はやがて整地を外れ、落ち葉を踏むようになってきた。人が通って自然と草のよけられた獣道だ。人影が少なくなり、外縁部も近い。そんな所まで呼び出される理由というのが、やはり思い浮かばなかった。

「あの……フェリ、先輩?」

 投げかけた言葉は、酷く自信のないものだった。
 名前はリーフェイスが言っているのを聞いただけ。先輩というのも、ナルキの言を鵜呑みにしただけでしかない。何一つとして自分で確認したものが無いのであれば、それも仕方が無い。

「黙って付いてきなさい」

 勇気を出して声をかけたが、即座に拒否される。
 発せられた言葉にも、ちらりと飛ばしてきた視線にも、先ほどのような威圧感はない。ただし、干渉を拒絶してもいたが。この様子なら、もう少ししつこく声をかければ、何かしらの解答を得られるかもしれない。だが、怒らせるリスクを負ってまで聞きたい質問があるかと言われれば、それは首を傾げてしまう。
 単純に重要度を考えれば、ここで少しでも情報を得て置いた方がいいのだが。

(まあ、何かあれば無理矢理逃げちゃえばいいしね)

 つまりは、レイフォンがある程度落ち着いていられる理由の根底に、そういう考えがあったのだ。
 全く持って褒められた思考ではない。力業というのはおよそ最後の手段であり、最悪の手段でもある。それを頼りにして行動をしていいものではない。
 しかし、彼には自信があった。武芸者としての活動には忌避感があっても、力そのものに対する自信が。ひたすら刀を振り続けた日々と、それを戦場で形にした経験、それらに信仰に近い確信がある。そして、実際にツェルニではレイフォンを止められる者はいないというのも、恐らく事実。
 いかにレイフォンの気が弱かろうが、結局は彼も武芸者的なのだ。
 力が正しいとは限らない、しかし力に間違いは無い。根底には、そういう考えがあった。
 無言でついて行くことさらに幾分。いよいよ都市外縁部が見えて来そうな程外周に近づいていた。嫌な予感に、たらりと汗が流れる。
 外周区域にしかないものと言うのは、当然ながら多くない。移動都市と言うのは、基本的に都市中心部分に都市機能を置いて、次に住居区や商業区等を置く。外に近ければ、それだけ何かがあったときに《振り落とされる》危険性が高まるのだから、より中心近くに重要な物を置こうというのは当然だろう。それは金や権力が中心に集まるという事であり、つまり内は便利で外は不便なのだ。危険で不便となれば、好んでそんなところに行きたがるのはよほどの変人くらいだろう。変人しか行きたがらないような場所に何かを置くのであれば、それだけの理由が必要になる。
 例えば、対汚染獣の外壁や剄羅砲、はみ出た都市資材の材料や重機の類がある。内外双方になければならない物は置いとくとして。大抵は外に対する備えか、何かしらの――大半は邪魔になるという理由で――内部におけない物を、追いやっているだけだ。

(そして……あとはとてもうるさいものとか。そう、例えば……武芸者の訓練施設)

 目についたのは、大きく頑丈そうな建物だった。とても無骨な長方形の建物は、都市の中でも屈指の強度を持っている。
 そして、今は静かにそこにあるだけの会館。しかし、一度正しく使われ始めれば、分厚い壁でも遮断しきれない轟音が周囲を飲み込む。レイフォンはそれを、誰よりもよく知っていた。
 なつかしい……と言うほどでもないが、間違いなく武芸者の訓練施設。それを確認して、大人しく付いていったのを後悔した。

「あのー、先輩。僕ちょっと用事を思い出したんで、今日は帰っていいですか?」

 言葉と同時に、フェリは振り返った。振り返っただけで、何を言うでもない。ただ胸で抱えたリーフェイスを撫でながら、酷く不愉快そうではあったが。
 帰っていいのか、一瞬甘い考えが浮かんだが、それはすぐに訂正させられる事になった。レイフォンの周囲には、数十の金属製の花びらが浮かんでいる。
 念威端子。通常であれば、端子の周囲の情報を獲得する端末。端子の操作総数や性能は術者の才能と技量によってまちまちで、半径数メルトルが限界の者がいれば、数キルメル平気で探索する者もいる。
 そして、もう一つの普通でない使い方。念威端子を意図的に暴走させて、爆弾として利用する念威爆雷。こちらは実力で爆発の威力に差が出てくるなどという事はなく、威力も低くて幼生体すらまともに倒せない。だが、人間を相手取るには十分に殺傷しうる威力を持っている。
 その殺傷能力抜群の剣呑なものが、レイフォンの周囲を漂っていた。
 殆ど密着した状態で。
 やっぱり、実力を頼りにして楽観すると碌な事がない。再確認以上の意味が無い事を反芻しながら、フェリの後に続いて会館の中に入っていった。

「……失礼します」
「おじゃましまーす!」
「え? あ、失礼します」

 フェリがぼそりと入り際に挨拶をし、それにリーフェイスも同じく声を上げた。レイフォンもそれに、咄嗟に続く。
 挨拶をしてから、それが入館の挨拶ではなかったのかも知れないと思い至った。まあ、中の人に対する挨拶でも行っておいて損はないし、今更訂正するだけの理由もない。
 中を見てのレイフォンの感想は広い、そして綺麗だ、だった。恐らく数十人が利用する前提で作られた会館は、縦横に加えて高さも、かなりのスペースが確保されている。
 なにより、外観から想像するよりも、内部は圧倒的にしっかりと保たれていた。
 少し足の裏に意識を向ければ分かる、靴底を通じて感じられる床のゆがみ。幾人もの武芸者が踏み込みを繰り返し、すり減った証。そこはしかし、新品のようにワックスまでかけられている。ずさんな管理でここまで維持するのは不可能だ。訓練の度に隅まで掃除をして、決して汚れを残さない。潔癖症なほどのワックスがけとメンテナンス、そこまでしてこそ、今の状態で維持できるのだ。
 いい場所だった。嫌いになれる筈がない。自然と零れる笑みを自覚しながら、足の裏の歴史を感じた。

「おっと、フェリちゃんお疲れさん。んで、そこの彼が例の?」
「……ええ」

 一つの返事で、二つの肯定。相変わらずの必要最低限だった。
 あの黙して語らずのスタイルは、こちらが嫌いだからではないかと思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。それでどうにかなったわけでもないが、とりあえず安堵のため息をついた。

「で、だけど」

 やる気無く床に座り込んで雑誌を読んでいた男が顔を上げる。ファッション誌を投げ捨てて現れた顔は美形だったが、どこか引きつってもいた。

「その子、どこの子よ」
「わたしの娘です」
「違いますよね! あなたの娘じゃありませんよね!」

 いきなり既成事実でリーフェイスを我が物にしようとしたフェリ。それを全力で否定した。
 声を荒らげたレイフォンに向くフェリ。その顔は、余計なことをしやがって、とでも言いたげだった。

「……余計な口を」

 しかも口に出してまで言われた。ご丁寧に、その後に舌打ちまで付けて。

「もとい……、……わたしの愛娘です」
「だから違うでしょ! 一応僕の娘ですから!」
「いやお前、それもおかしいって分かってるか?」

 無茶苦茶な言葉が飛び交っている中に、正確に言葉を差し込む男。レイフォンははっとした後、わたわたと慌てながら言い訳をした。

「あのですね、僕とこの娘が親子って言うのは、書類上の処理の問題と言いますか、一番近い関係を表したと言いますか……。いえ、正確にはやっぱり違うんですが、とにかく保護者は……」
「わたしが引き取った娘です。こっちの人は誰ですか? むしろリーフィを浚いに来た誘拐犯ですね、都市警察を呼んで下さい」
「さりげなくまた犯罪者にされた!?」

 むっとした顔で、さりげなくリーフェイスを体で隠すあたり芸が細かい。むしろ腹立たしいが。
 レイフォンも必死に誤解を作られまいと努力してはいる。いるが、その挙動不審な様子が存在しなかった疑念を作る理由になると気づくのはいつだろう。

「あー、待て待てお前ら、一度落ち着け。とりあえずフェリちゃんは黙んな。嘘にしても意味不明すぎて訳が分からん。んで、そこのお前」

 ぶすっと、口を膨らませるフェリ。明らかに納得してはいないが、とりあえず言われたとおりにした。
 いきなり名指しにされ焦る。流れで次はこちらに来ると予想してはいたが、あまりに気安い、慣れぬ雰囲気がテンポを狂わせていた。

「その子供はリーフェイスって言って、僕の故郷から……」
「違う、そこじゃない。フェリちゃんは去年からいるのに、いきなり娘なんぞ出来るわけがないだろ。なら、そこの子供は確かにお前さん預かりなんだろうよ。ま、確かに事情はちょいと気になるがな。けど、おれが今聞きたいのはお前さんがどこの誰かって事だよ」
「あ、すみません。僕は一年のレイフォン・アルセイフです。一応、武芸科の」
「ふぅん、一応ねえ」

 レイフォンが一般教養科に居たのを知っている。そう言っている相づちだった。と言っても、その後の顛末までは知らないだろうが。

「しかしお前も大変だったな。ウチの会長、ヤリ手で有名だからな。えげつないとも言う。おめでとう、お前は一年の初被害者だ」
「あはは……ありがとうございます。全く嬉しくないですけど」
「お、なんだ。もっと堅い奴かと思ったけど、案外そうでもなさそうだな。ちなみにおれは四年のシャーニッド・エリプトンだ。お前には特別に偉大なるシャーニッド先輩と呼ばせてやろう」

 人なつっこい笑みを浮かべながら、レイフォンの肩を抱いてくるシャーニッド。ミィフィとは別種の、人付き合いが上手いタイプだ。
 二人のやりとりを無視したフェリは、いつの間にか無言で会館隅にある椅子に腰掛けていた。当然リーフェイスを抱えたままで、少女と遊んでいる時だけはうっすら笑んでいる。
 とりあえず、シャーニッドがいい人だろうというのだけは分かったのだが。結局何で呼ばれたのかがまだ分からない。まさか、こうして男同士の友情もとい馬鹿話をさせるために呼んだ訳でもあるまいが……。しかし当のフェリに説明するつもりはなさそうだ。先輩も、そういう雰囲気ではない。
 シャーニッドも武芸者なのは間違いない。剄の脈動を感じさせているし、それ以前に武芸科の制服を着ている。これに念威繰者のフェリも加わっているのだから、まさか武芸の話ではありません、などという事もあるまい。

(と言うことは、つまり。この人達は協力者って事かな?)

 脅迫と裏取引でねじ込んだ、武芸大会の秘密兵器という事になっているレイフォン。それを単体で運用して「さあ行ってこい」と言うわけにも行かないだろう。なにしろ、生徒会長に武芸者に対する指揮権などない。
 ならば、有力な者と顔通しをさせる。そして、それらを通じて意図通りに運用されるよう調整すればいいのではないか。
 もっと早くて楽なのは、レイフォン自身を目立たせることだろうが。そこら辺は、カリアンも意を汲んでくれたのだろう。もっと強引で非情な人かと思ったが、案外調整をしてくれる人らしい。
 レイフォンはとにかく、目立ちたくない。彼が目立つと言うことはつまり、武芸以外にありえないからだ。そして、武芸で目立つというのは期待を背負うという事である。そんなのはもうごめんだ。二度とごめんだ。彼らの一員として、もしくは彼らに指揮される人間の一人として居るのであれば。その賞賛や期待はレイフォンに向かない。武芸者として、実力以上の、それも自分で成していない事を称えられるのは業腹だろう。だが、あの生徒会長の仲間だと言うのであれば、それを背負っても都市を救いたいと思っている人間の集団なのだろう。
 そう思うと、すっと心が楽になった。考えすぎていた自分が馬鹿みたいで、なんだか笑えてくる。
 気分が浮いたのと、シャーニッドの軽快な語りで、緊張がかなり解ける。ぽつぽつとだが自分から話しかけられるようになった。
 そんな頃である。がらがらと、けたたましい音がしたのは。

「おっと、そっちの彼がそうなの?」
「おーう、期待の一年くんだ。名前はレイフォン・アルセイフだとよ」
「へえ。あ、僕はハーレイ・サットン。錬金科の三年だよ。君の錬金鋼調整を担当することになる。よろしくね」
「先に紹介して貰いましたけど、レイフォン・アルセイフです。よろしくお願いします」
「ちなみに、僕相手にそんな堅くなることないからね。気軽にしてくれていいよ」

 薄汚れたつなぎを腰で縛り、上半身に黒いシャツ。両手には軍手をはめて、頭の帽子は落下物で頭部を怪我しないためだ。見事なまでの技術系生徒だった。
 こちらはシャーニッドのような、要領のよさは感じない。しかしいい人であるというのは間違いないだろうが。上手くつきあえそうだ、そう感じられてほっとする。
 キャスターに押されて持ってきたのは、錬金鋼の調整器だろうか。かなり大型な道具だ。錬金鋼という質量までもを変化させる錬金術の傑作を調整するには、それだけのものが必要だった。同時に、それに見合うだけの大電力が必要になるのだが、そこら辺の事情をレイフォンはよく知らない。

「ニーナは?」
「小隊長の集まりがあるらしいから、もう少しかかるかな。でも、すぐ来るって言ってたよ」
「んじゃ先に錬金鋼の調整すんのか?」
「いや、それは後。と言うかニーナに絶対にやるなって止められた」
「お前はやり出したら止まらないから。あとからゆっくり時間をかけて調整してやんな」

 ハーレイは持ってきたキャスターを、壁際で止める。つま先でキャスターのロックを入れると、そこでしっかりと固定した。
 そのすぐ横にはずらりと並んだ棚がある。そこに、色々な種類の簡易模擬武器が、無数に立てかけられていた。同じ種類の武器がいくつも並んでいるのは、ここは授業でも使われるからだろう。
 簡易模擬武器、錬金鋼もどきなどとも言われるもの。剄の通りは悪く、収束率も微妙。さらにすら調整できないとなれば、訓練用にするしかない道具だ。しかし、逆に言ってしまえば――それは錬金鋼以外で唯一剄を運用できる物質であるとも言える。生産も容易であり、訓練をするにはもってこいの道具だった。レイフォンも、かなり昔に何度かお世話になった記憶がある。
 部屋の隅、錬金鋼調整器の横で何かの設定をしているハーレイ。武芸者でなければ運動服も着ていない人が訓練場にいると言うのは、どこか新鮮で不思議な光景だった。いや、グレンダンでもそういう事はあったのだろうが、レイフォンに見た記憶はない。
 惹かれて後ろ姿を眺めながら、ふとレイフォンは、思い立った事を口にしていた。

「あの、ハーレイ先輩、ちょっといいですか?」
「うん? なんだい?」

 人の良さそうな先輩はその印象通りに快諾し、背後を向いた。どうやら設定ではなく機械の調整をしていたようで、手にレンチを、顔に油を付けている。

「その……僕って、誘拐とかしそうに見えます?」
「……は?」
「ぶわぁははははは!」

 予想外の質問にハーレイは惚けて、そしてシャーニッドが爆笑した。床に転がって腹を抱え、両足をだんだん床に叩きつけている。
 確かに、密談をした訳ではない。大して大きな声は出さなかったが、だからといって誰にも聞かれないほど気を遣ったわけでもない。ちょっと耳をたてれば、或いは耳が良ければ、簡単に聞き取れるのだが。

「そ……そんなに笑わなくてもいいじゃないですかぁ!」
「いやだってお前……ははははははは! ひいい~~~、っくくくっ……!」
「いやあの、何がどうしたの?」

 完全においていかれ、何が何だか分からないとハーレイ。その様子がツボにはまったのか、さらにシャーニッドは声を大きくした。
 考え直してみれば、確かに質問の内容が馬鹿馬鹿しい。むしろ馬鹿馬鹿しすぎて答えようのない質問でもある。それでもレイフォンは真面目に考えているのだ。放浪バスの中で誘拐犯扱い。ツェルニについても誘拐犯扱いの連続。レイフォンでなくとも、自分に自信が持てなくなると言うものだ。
 ちなみに。爆笑し続けるシャーニッドに、恥ずかしさに悶え苦しむレイフォン。その様子を見て、フェリはこっそりとため息を吐いていた。

「くひぃぃ~っ。安心しろよ、お前さん全く誘拐やらかすようには見えないさ。どっちかって言うと、ビビりながら誘拐しようとするけど、子供にあしらわれて慌てふためいているような印象だぜ」
「それって結局誘拐犯っぽいって言ってません!?」
「ちょっと都市警呼んできますね」
「やめて! って言うかこんな時だけ話に混ざってこないで!」

 絶妙なタイミングで愛の手を入れたフェリに、即座に突っ込む。一瞬スルーしようかとも思ったが、手が腰の錬金鋼に添えられていた。いつでも通報できる体勢だったのが、リアリティを増して恐ろしい。

「ははは……。まあ事情はよく分からないけど、少なくとも僕にはそんな事するように見えないよ」
「ううぅ、ありがとうございます。味方はハーレイ先輩だけです」

 ぽんぽんと肩を叩かれながら慰められる。制服に気を遣ってか、軍手は外されていた。唯一の良心である。

「なんだよハーレイ、ノリ悪いぞ」
「君たちは悪のりしすぎだよ」
「わたしは本気でした」
「なお悪いよ。もうちょっと自重して。……と言うか、君ってそんなキャラだっけ?」

 ハーレイにじと目で見られても、気にすらしない。
 仲間内から見ても、すっかりキャラの崩れているらしいフェリ。やはりと言うか、避難の目もスルーしてマイペースっぷりを発揮していた。今も、リーフェイスの手をぷにぷにする仕事に余念が無い。
 肩に残る疲れを感じながらも、レイフォンはこの出会いに感謝した。クセは強いが、悪い人たちではない。いや、それどころか自分には勿体ないくらいいい人ばかりだ。……フェリだけは、手放しにそう言うには釈然としないものがあったが。とにかく、上手くやっていけそうな人たちではあった。
 などと考えていると――いきなりずだん、という音が会館内に反響した。
 急な音に、思わず緊張したレイフォン。しかしそれは彼だけだったらしく、他の皆は至って普通の態度だ。

「すまん、遅れた!」

 と言いながら早歩きで来たのは、金髪でショートヘアの女性だった。背が高い。男性の平均身長ほどあるレイフォンと、視線の高さが殆ど同じだった。かなりの長身である事も印象的だったが、それ以上に瞳が強く心に残る。
 確かに、彼女の目つきは鋭い。獲物をじっと捉えて、食らいつくような肉食獣を彷彿とさせる鮮烈さ。だが、真に注目すべきはその内側の眼光だった。それだけを見て、何が分かる訳でもない。レイフォンのそれも、結局の所はただの印象でしかないのだから。しかし、それで済ますには彼女の視線は――意思が強すぎた。高望みでしかないかもしれないし、夢物語かも知れない。だが、それだけでは終わらせない。そう雄弁に語っている、レイフォンにはそう見えた。
 それは、とてもまぶしい目だった。そして、覚えのある目でもある。
 かつて――レイフォンもあんな意思を宿していた時があった。もう無くしたものだ。一年と少し前に。だから、それを見続けることができなくて。視線が合わさったわけでもないのに、自然と目をそらしていた。
 目の前を通過すると、持っていたバッグを乱暴に部屋の隅まで投げる。それが落ちるのを確認もせずに、ハーレイに向きかえった。

「準備はできてるか?」
「ばっちりだよ。いつでも調整できる」

 聞いて、女性は満足げに頷いた。そしてまた忙しなく動き、訓練所の中心あたりまで移動する。そこで、肩幅より僅かに広いくらいに足を広げて、しっかりと立って見せた。視線は、今度こそレイフォンを捉えている。

「お前の名前は?」

 言われて、しばらく惚ける。レイフォンがその言葉が自分に向けられたのだと気づいたのは、彼女が眉を潜めたからだ。

「レイフォン・アルセイフです」
「そうか。わたしはニーナ・アントークだ。三年で、見ての通り武芸科だ」

 一つ一つ、まるで何かを確認するように言う。もしかしたら、こちらに記憶させるためにわざとそうしているのかも知れない。
 しばしの沈黙。ニーナの指が、両腰に付けられた剣帯の、左側にある錬金鋼の柄を叩いた。
 さらにしばらく、かつかつと金属と爪の先がたたき合う音だけが響く。レイフォンは困惑に顔を歪めて、そしてニーナは不機嫌そうだった。

「おい、何をしている。さっさと取ってこい」
「……すみません、何をですか?」
「何を、だと? そうか、武器はいらないと言うことか。……新入生、いい根性だな。その根性が曲がらない事を祈っているぞ」
「いやちょっと、待って下さい! 本当に何の話ですか!?」

 肉食獣の眼光が、いよいよ獲物を刈り取る段階になる。本気の剄の流れ、それを感じて、レイフォンは慌てて手を振った。
 ニーナの目尻がさらに傾く。

「レイフォン・アルセイフ、まさか自己申告だけでポジションが決定するとは思っていないだろうな。お前には小隊員として持ちうる技能を全て出し切る義務があるし、わたしには小隊長として隊員の全能力を把握する義務がある。まだ一般武芸科生徒気分が抜けていないなら、今すぐそれを捨てろ。出来なければ、無理矢理たたき出してやる」
「ちょ、ちょっと待って! 本当に、小隊とか一体何の話です!」

 いよいよ、ニーナが剣帯から錬金鋼を引っ張り出したところで。レイフォンの台詞に、ぴたりと止まった。

「お前、ここに何をしに来たか分かっているか?」
「ぜんぜん」

 錬金鋼を半分抜き出した姿勢のまま、問いかけて。その解答に、びしりと固まった。
 レイフォンに向けられた怒りは、そのまま横にスライドした。移動した視線に習って向けてると、そこではやばい、というような顔をしたシャーニッド。そして、リーフェイスと戯れて気にしない振りをしているが、僅かに動きがぎこちないフェリ。

「貴様ら、まさかとは思うが……事情を説明していなかったのか? あれほど先に済ませておけと言ったのに」
「わたしは言われたとおり、レイフォンを連れてきました。ならば、説明はあっちの人がやるべきです」
「いやちょっと待ってよフェリちゃん。それは移動しながら言えばそれで済んだんじゃない? それに言ってくれれば、おれだって説明したさ」
「同罪だ馬鹿者ども。失敗は訓練で取り返して貰う。覚えておくように。……と言うか、その子供は一体何だ?」

 見苦しい責任の押し付け合いをする二人を同時に切り捨てて。今まで気にならなかったか、それとも計っていたのか。今は膝の上を横断するように、俯せに転がっている少女を見た。
 自分が指されたのを感じたのか、リーフェイスは顔を起こした。僅かに視線を彷徨わせ、呼んだ張本人を捉える。無垢で純な視線に、ニーナは思わずたじろいだ。

「あい! リーフェイス・エクステです!」
「いや、聞きたいのはそういう事ではなくてだな……。ああ待て、だが間違っている訳でもないんだが……」

 かぶりを振って否定し、しかしもう一度同じ動作をする。くくっと、疑問符を浮かべて首を捻るリーフェイスに、今度は息を詰まらせた。
 聞きたいことは決まっている、しかしそれをどう表現すれば伝わるかが分からない。そういう感情が、傍目から見ているレイフォンからも見て取れた。シャーニッドなどは、その様子を面白そうににやつきながら外野をしている。
 そして、やはり。フェリが余計な事を言い始めた。

「そして、わたしの娘になりました」
「違うよ! だから僕が保護者ですからね!?」
「ええ、そうですね。昨日まではそうでした」
「昨日も今日も、そしてこれからも変わりませんよ!?」

 殆ど絶叫をしながら――と言うかそれくらいしか出来ることがない――否定をしていく。フェリはつんと態度を鋭くさせて、レイフォンの主張を突っぱねていた。

「おい、シャーニッド。フェリは、その、どうしたんだ?」
「おれも知らね。ただ、あの子がお気に入りで、その保護者に嫉妬中って事くらいは予想できる」
「嫉妬ではありません。純然たる事実です。……事実にします」
「こわっ! この人何か怖いこと言っている!」

 ぎゃーぎゃーと、にわかに騒がしくなる室内。音が反響するためか、妙に耳障りに響いた。
 と言っても、それも長続きはしない。ニーナの咳払いと同時に、強制終了させられた。彼女にとっては、こんな下らないことで取っていい時間ではない。

「まあ、許可を取ってあって、邪魔さえしなければ何でもいい。それよりも続きを……じゃないな。まずは説明からしなければならんのか」

 手に持っていた錬金鋼を剣帯に戻して、ニーナは語り始めた。鋭いと言うか、剣呑な雰囲気は完全に途切れている。勘違いだったというのもあるが、それ以上にリーフェイスの件で空気を遮断されたからだろう。
 曰く、小隊とはツェルニ武芸者のトップエリートの事で、名誉な事である。曰く、武芸大会もしくは有事の際に、一般の武芸科生徒を従える指揮官として動く役割がある。曰く、これは大変名誉な事であり、武芸者であるならば拒否は許されない。そこまではまあ、良かったのだが……。
 彼女の言葉を信じるのであれば、レイフォンが小隊入りをするのは許可済みであるらしい。これを聞いたときに、レイフォンは思わず目眩を覚えた。
 カリアン・ロスは、多少はこちらのことを考慮してくれるのかと思ったが、全くそんな気はないらしい。それどころか逆に、徹底的に使い潰すつもりすらある様子だ。
 目立てば、それだけレイフォンに注目が集まる。注目が集まれば、調べようとする者が出てくるだろう。そういう者達を前に、どれだけ過去を隠し通せるだろうか。いや、隠し通せたとして、それだけ頑なに秘匿するのは怪しまれるのではないだろうか。強烈な不安が、胸に押し寄せた。
 勿論、生徒会長はそれについて対策を立てている可能性は大いにある。だが、立てていない可能性もある。そして、レイフォンに前者だと信じることができない。僅かに上げたカリアンへの評価が、一気に落ちていくのを自覚する。

「いや、その……僕は小隊とかそういうのは、ちょっと遠慮したいと言うか……」

 それでも、なんとか抵抗をしてみる。ささやかなものでしかない。本当にないよりマシかを問いたくなるような、小さな抵抗。
 ニーナの反応は、レイフォンが予想していたものだった。眉を跳ねて、視線を鋭くする。つまりは怒りと苛立ち。

「もう一度言うが、既に生徒会長の承認は貰っている。厳密に言えば、お前は既に小隊員だ。なぜそんなに嫌がる?」
(契約したのは武芸大会で勝つことだけだからだ!)

 思わず絶叫しそうになって、必死に口をつぐむ。一応は正式な契約でも、裏取引の内容など誇って語れるようなものではない。それに、そこにつけ込んでリーフェイスを認めさせたのも事実なのだ。後ろ暗さはなくとも、負い目は十分にある。
 しばらく。レイフォンが拳を握りながらも次の句を告げないと見て、ニーナは口を開いた。

「それに、奨学金ランクがAになったんだろう。なら他に何ができるんだ?」
「……うん?」

 奨学金ランクがAだと何になるのか、意味が分からない。小首を傾げたレイフォンを見て、ニーナはため息をつきながら続ける。

「そもそも、奨学金Aランクは学園側が学費を全額負担することになるのだぞ。それを認める相手とは、つまりそれだけ能力がある相手となる。お前、武芸に関して実力以外に何か、取り柄があるのか? 学費全額免除されるだけの何かが。ちなみに、現在小隊員以外でAランクを持っている武芸者は、武芸大会戦術開発の専門家だ」
「な……え?」

 言われてみれば当然の話だ。学園都市が学生の学費を免除するのであれば、それだけのものが必要になる。レイフォンはそれだけのものを持っている自信があったが、問題はそこではない。持っている、というのを対外的に証明するのが必要だった。
 つまり、戦うことしかできないなら、小隊に入って披露するしかない。最初から、仕組まれていたのだ。

「だ、騙された!」
「何が騙されただ。それに、武芸者がその力を発揮するのは義務だ。それを使わないと言っている時点で、お門違い極まりない。全てが的外れだ」

 剛健とした雰囲気を僅かも崩さず。小さく唱えて復元した錬金鋼で、ぴっと壁際の模擬武器を指した。

「つまらん事を言う暇があったら、とっとと武器を持ってこい」
「……はい」

 抵抗するまでもなく負けているのを自覚して、項垂れながら取りに行く。
 手に取ったのは、ごく普通の細身剣だ。別に選んだわけではなく、一番近くにあった刃物の武器がそれだったと言うだけである。あとはそこそこの、振って不快感がない程度の武器であればなんでもよかった。
 右手に剣を垂らしながら、ニーナの正面に立って。怪我しない程度に真面目にと思っても、全くやる気が出てこない。

「パパ、くんれんするの? じゃあリーフィもするの!」

 両者が対峙して間もなく、まだ始まりの合図もない頃。やや空気が緊張に帯電し始めて――その空気を察知したのだろう、リーフェイスが言ったのだ。
 フェリの膝の上から飛び降りて、簡易模擬武器を物色し始める。刃が付いているわけでもないので危険はない。それに付き添ったのはフェリとハーレイだった。三人で、リーフェイスが押しつぶされない程度に小型な武器を探し始める。その様子に、レイフォンは明らかに狼狽した。

「先輩、その子に武器を持たせないで!」
「おいレイフォン、集中しろ!」
「大丈夫だよ、危険なものは持たせないから。ちゃんと見てるから安心して」
「まったく、騒がしい人ですね。ほら、これなんかどうですか?」
「そういう意味じゃないんです! 本当に武器を持たせないで!」
「おい、貴様いい加減に……」

 武器を放り出して、三人に寄ろうとする。いよいよニーナの我慢が限界を迎え、レイフォンにつかみかかろうとした時。
 会館内に、甲高い破裂音が響いた。強烈な音は、続く小さな打撃音に彩られる。フェリは驚きに座り込み、シャーニッドは体を起こし、ニーナは目を丸くしていた。絶叫が響く。泣き声、小さな子供が声を上げてわんわん泣いている。
 酷いのはハーレイだった。床の上でばたばたと悶えているのは、恐らく粉砕して飛び散った金属片の直撃を受けたからだろう。悲鳴を上げながら、ばたばたと床を転げる。
 リーフェイスの手には、何もなかった。正確に言えば、握り部分以外何も。その先にあった、何かの武器を模した金属は、全てはじけ飛んだのだ。内側の圧力に負けて、風船が限界を迎えるように一気に破砕した。誰もが事実について行けず、ただ時に取り残される中、レイフォンだけが冷静に動く。

「ほらリーフィ、おいで」
「うあああ゙あ゙あ゙あ゙! ぱぱぁー!」
「そうだよね、いきなり大きな音がしたらびっくりするよね。けどもう大丈夫だから、怖くないからね」

 服にしがみつく子供の背中をぽんぽんと叩きながらあやす。今でこそこんな事は起きていないが、昔は何度かあったのだ。対応は覚えている。
 いち早く起きたのは、さすが隊長と言うべきか、ニーナだった。

「な……何が起きたんだ?」
「剄の過剰供給ですよ」
「なに? 何だそれは?」
「剄の量が多い人に、割とあるんです。錬金鋼が剄の量に耐えきれなくなって、自壊するって事が」

 涙こそ止まったが、未だにしゃくり上げるリーフェイス。背中を優しくさすって、なんとか体から力が抜けてきていた。

「この子の剄に、普通の錬金鋼は耐えられない。だから、錬金鋼より許容量の少ない模擬武器なんて持たせたくなかったんです。すみません、先に行っておけば良かったですね」
「いてて……いや、たぶん聞いても信用できなかったと思うからいいよ。こうして体験しても、信じられないくらいだ。世の中、冗談みたいな本当の事ってあるもんだね」

 体をさすりながら、なんとか持ち直したハーレイ。肌の露出した腕部分は特にダメージが大きかったようだ。見るからに痛い、真っ赤な腫れがいくつも作られている。そんな目に遭いながら、しかし彼の目は好奇心にらんらんと輝いていた。なんと言うか、わかりやすい人だ。

「フェリ先輩。すみませんけど、またこの子を預かって貰えますか?」
「ええ、それはかまいませんけど。むしろ歓迎しますが」

 ぎゅっと胸元にすがりついていた少女は対象を変えて、フェリの胸を掴んで小さくなった。
 虫のように体をたたむリーフェイスを撫でている。その彼女の耳元に、そっと顔を寄せていった。

「それと、できればリーフィをつれて、どこか別の場所に行っていただけませんか」
「それは構いませんが……しかしなぜです?」
「……あまり、僕が戦っている所を見せたくないんですよ」

 なんとも曖昧な答え。なぜ、が何にかかっているのかもごまかしながら答える。それで納得して貰えたかどうかは分からないが、少なくとも満足はして貰えたようだ。少女を大事に抱えながら、通路へと消えていくフェリ。
 その姿を見届けながら、レイフォンは満足そうに頷いた。実際、満足している。
 転がしたままの剣を手に取り、軽く構えた。ニーナはやや面食らったが、すぐに一対の鉄鞭を掲げる。ハーレイは、試合を見ようか二人を追うべきか迷っていたが。

(よかった)

 頭の中でだけ反芻する。これだけで、随分やりやすくなった。変な義務感が、体から徐々に消えていく。
 これで良かったのだ。適当に戦い、最低限の実力だけは見せておき、そこそこの評価で満足して貰えばいい。
 あとは、試合はそこそこのあたりで負けてしまえばいい。並の一年よりは結構使える、そうも思って貰えれば最高である。
 だが、そんな無様な姿を、リーフェイスにだけは見せたくなかった。その懸念も、もう解消された。
 まずは、さしあたって――迫り来る鉄鞭をいなすところから、始めればいい。


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