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No.32355の一覧
[0] 【習作】こーかくのれぎおす(鋼殻のレギオス)[天地](2012/03/31 12:04)
[1] いっこめ[天地](2012/03/25 21:48)
[2] にこめ[天地](2012/05/03 22:13)
[3] さんこめ[天地](2012/05/03 22:14)
[4] よんこめ[天地](2012/04/20 20:14)
[5] ごこめ[天地](2012/04/24 21:55)
[6] ろっこめ[天地](2012/05/16 19:35)
[7] ななこめ[天地](2012/05/12 21:13)
[8] はっこめ[天地](2012/05/19 21:08)
[9] きゅうこめ[天地](2012/05/27 19:44)
[10] じゅっこめ[天地](2012/06/02 21:55)
[11] じゅういっこめ[天地](2012/06/09 22:06)
[12] おしまい![天地](2012/06/09 22:19)
[13] あなざー・労働戦士レイフォン奮闘記[天地](2012/06/18 02:06)
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[32355] いっこめ
Name: 天地◆615c4b38 ID:b656da1e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/03/25 21:48
 自分はよく後悔をする。それは、レイフォンの混じりっけのない本音だった。
 勢いで――あるいは何も考えずに――行動した時は、大抵どこかで行き詰まる。そして、行き詰まった先はやはり大抵自分の得意分野では、つまり武芸ではどうにもならない場合ばかりだった。
 いい加減学習能力がないと思うが、それでもやってしまうものはやってしまうのだ。元来、あまりものを深く考える質ではなく、その癖に思考はかなりネガティブ。おまけに運も悪いとなれば、自分は悪くないと愚痴の一つも言いたくなる。まあ、言ったところで現実は僅かも変わりはしないのだが。
 では今回、何がいけなかったのかと言うと、これは一言では言えない。
 学園に到着して一週間あまり、リーフェイスを隠すのに苦労しすぎた事だろうか。見つかれば元の都市に返されるだけかもしれないが、彼女には事情があって居場所があるとは言いがたい。それ以上に、リーフェイス自身が戻ることを望まないだろう。どちらにしてもこれから六年、一緒にやっていかなければいけないのだから、これを苦労などと言っていられない。ちなみに、時々目撃情報のある子供の影が噂を呼び、ツェルニ七不思議の一つになっている事をレイフォンは知らない。
 レイフォンも、さすがに卒業するまで隠し続けられるとは思っていない。だが、どうすれば子供の滞在が許される状況を作れるのか、というのが分からなかった。できる事と言えば、なあなあで済ませられるほど長期間ごまかし続ける事くらい。
 仕事が機関部清掃しかない事に気が滅入ったのか。確かに深夜の力仕事で拘束時間も長く、稼いでも給料は殆ど学費に消えるだろう。残りの額で二人が暮らすとなれば、かなり慎ましやかな生活になる。だが、これもまだ始まってもいない仕事、今から気がなくなる訳がない。
 ならば、入学式で考え事をしていた事だろうか。式の間はリーフェイスがフリーになり、何をしているかはレイフォンにも計り知れない。結構な生徒数が一カ所に集まってはいるが、それでも二年以上は普通に活動しているのだ。誰かに見つかってしまえば、と思うと落ち着きもなくなる。
 理由、つまり言い訳になりそうなものは数あれど、どれも致命的ではない。そして、そんな事を考えた所で時間が戻るわけでもない。
 レイフォンは今、学園の中でもとりわけ豪華な作りになっている部屋にいた。部屋自体はシンプルな作りで、細部に凝らされた意匠には年期を感じる。かなり大きな部屋の筈なのに狭苦しく感じるのは、壁面を埋め尽くしている本棚のせいだろう。いかにも機能性重視の無骨な本棚には、背表紙を見ただけで目眩がしそうな本がぎっちりと詰まっている。
 部屋の中心より僅かに後ろには、重厚な木製の執務机が鎮座していた。机の上には積み重ねられた本と、あとは立てかけられた万年筆。
 座っただけで肩の凝りそうな席は、好んで座りたい類いのものではない。ついでに言えば、この部屋――生徒会長室――にも好きこのんで来たかったわけではなかった。
 全てにおいて馴染みのない、事務的な閉塞感のある部屋で、レイフォンは直立不動で立ち続ける。視線は真っ直ぐで固定して、絶対に下げないように。もしも下ろしてしまえば、この生徒会長室の主と視線を合わせることになってしまう。
 と言っても、それで逃げられるかと言えばそんな事はなく。机に肘を付いた男も、それを考慮するつもりなどなかった。

「とりあえず、座ったらどうかね?」
「あー……その……」
「まあ、立っていた方が楽だと言うならば、それを尊重しよう」

 柔和な答えだった。もっとも語尾に、この程度の事はね、と付きそうではあったが。
 カリアン・ロス。学園の最上級生にして、生徒会長を務める男。銀色の長髪に眼鏡のアクセントが特徴的な顔立ちは、美形だと言ってそれを特別否定する者はいないであろうと思える程に整っている。あと、付け加えるならば、レイフォンを呼び出した張本人でもあった。
 眼鏡レンズの内側から、元々鋭い眼光をさらに細めてのぞき見てくる。貴公子然とした容貌に似つかわしくない、トカゲか蛇か、そのあたりのは虫類を思わせる視線。
 はっきり言ってしまえば、苦手な視線だった。グレンダンの役所や王宮につとめていた政治屋でも、とりわけ地位権力が大きかった者達と同じ瞳をしている。心の内側を見透かすような――もしくは、見透かしたつもりになっているような――視線。

「まずは生徒を代表して感謝を。レイフォン・アルセイフ君。君のおかげで、大事にならなかったとは言いがたいが、自業自得な者達以外が怪我をする事がなかった」
「はい」

 こんな時の冴えた返し方など分からず、ただ言われたことに返事をする。一方的な苦手意識を裏切った、誠実な返答に戸惑ったのも理由だ。

(案外いい人なのかもしれない。失礼な想像をしすぎた……僕もナイーブになりすぎかな)

 少し落ち着こうと、気づかれぬように深く呼吸をした。普段よりやや早まっていた鼓動が落ち着く。
 もっとも、レイフォンの予想は正しく、すぐに政治を扱う者らしい姿を見せてくれたが。

「入学早々武芸を使ってまでの乱闘、これを一瞬で鎮圧した手腕は見事の一言だ。君は随分腕が立つようだね」

 カリアンの軽いジャブ。それは、油断していたレイフォンの顔面に直撃した。
 僅かに強ばったレイフォンの体を、獲物を観察するような鋭い瞳孔が捕らえる。計られている事が分かってしまうと、彼の体はさらに萎縮した。
 こんな事ならば気を抜くのではなかった。今更思っても意味がない。いつも自分の迂闊さで後悔をする、そんな性質が嫌になる。
 理由なんてものは、結局の所どうでもいい。それが必要とされると言うのはつまり、結果が既に出てしまった後だという事なのだから。起こってしまった現実に課程を求める行為が無意味だとは言わない。しかし、今レイフォンに必要なのは結果と、それの対策だ。
 疲れか不安か嫌気か、とにかく入学式に彼の精神は浮ついていた。入学式の長ったらしい口上も右から左に抜けていく。他の大多数の生徒と同様に、堅苦しい式などとっとと終われと念じていた。
 そんな時に騒ぎが起きたのだ。最初に二名ほどの罵声が上がり、それが広がって声が音へと変わる。それがレイフォンの近くにまで迫った時点で初めて耳を傾けると、悲鳴を上げながら女生徒が倒れてきた。受け止めて軽く無事を確認し、次に騒ぎの中心を覗いて。
 暴発寸前、一言で言うなばそれしかなかった。全く制御できていない衝剄を、無理して錬金鋼なしで撃ち放つ寸前。その衝突は武芸者から見れば大したことがなくとも、一般人が対象ならば十分に驚異だった。
 つまり、危険だ。危険は排除しなければならない。ぼやけて鈍った思考は、そんな簡単な回答を導き出す。結果、一瞬で二人を叩きのめし、入学式は延期した。
 かくしてレイフォンは呼び出され、今に至る。
 投げかけられた台詞に、彼は返す事ができない。迂闊な返答は言質にとられかねない以上、下手な受け答えはできないという思考が、行動を阻害していた。
 はいか、いいえか、それとも沈黙か。どれが正解か分からない。悩み言葉を選ぶが、それはカリアンによって強制的に沈黙を選択させられた。

「それとも、ツェルニの武芸者のレベルは随分と低いのかな。所詮学生レベルと言ってしまえばそれまでだが……どう思う?」
「その、そうかもしれません」

 明確に問われてしまえば沈黙を貫くのも難しく、曖昧な肯定を返す。
 大丈夫だ、念じる。この手合いは、とにかく人を探るのが得意で、好きなのだ。そう割り切ってしまえば、心の内側を占拠してたプレッシャーも多少は除かれる。

「うむ、君もそう思うか。やはり武芸の総本山であるグレンダンの、さらに頂点に立つ元天剣授受者の言葉は違うな」

 さっと、顔から血の気が引く。貧血を起こしたかのように目の前が暗くなっていき、思わず倒れそうになる。体制を維持できていたのは、奇跡に近い。

(知られていた! どこまで知ってる……どこまで調べたんだ?)

 どれだけの過去を把握把握されているか、懸命に推察しようとするが、すぐに無意味だと気がついた。どれほど細かく知っていようが、さほどこれからの展開に影響はないのだ。
 元天剣であり、その資格を剥奪され、グレンダンから追い出された。これだけで十分だ。レイフォンを脅迫するならば、これだけ知っていれば事足りてしまう。そして、致命的な情報は全て握られていた。
 暗くなった視界で、椅子に座ったままの男を見る。相変わらずの姿勢で、しかし笑みだけは深くなっていた。
 沈黙は上手くない。ここでそれをしてしまえば、それは肯定しているのと同じだから。しかし、からからに乾いた喉とやけに痙攣している口内が、言葉を発するのを許さない。
 だが。仮に口を開けたとして、何と言えばいい?

「武芸者の質が悪い、これはツェルニの誰も否定しようのない事実だ。誰がどう言い訳をした所で――武芸大会で負け続け、セルニウム鉱山をあと一つまで削られた事実は覆らない」

 セルニウム鉱について、専門家でもないレイフォンが知っていることは、そう多くない。一般常識の範疇で述べてしまうのだとすれば、都市を稼働させるのに必要な動力源。
 むしろレイフォンに、と言うか武芸者に関係があるのは、セルニウム鉱山の獲得方法だろう。
 普段汚染獣を避けながら大地を放浪する自立型移動都市レギオスは、二年に一度同種の都市と接近する。生存競争でもするように、互いに一つずつセルニウム鉱山を賭けた戦争を仕掛けるのだ。その戦争に捻出させる戦力とは、つまり武芸者であり。武芸者の弱い都市は、いずれ糧を失って死ぬことになる。

「上の実力は他都市とそれほど差がないらしいのだが、正直に言って私はそれを信じていない。そんな希望的観測に縋るくらいならば、確実に戦力を確保する。仮にそれが正しかったとしても、今から鍛錬の質を上げてなどという悠長なことをしている時間もない。今ツェルニに必要なのは、上位陣の実力の保証でも優れた教育カリキュラムでもない、純然たる不条理だ。千の努力、万の群れを一薙ぎにする超越した圧倒的な力、それなのだよ」

 カリアンは立ち上がる。今までごまかしていた曖昧な視線、それを真正面から捕らえられた。作り笑いの消えたその顔は、容易くレイフォンを威圧する。
 強烈な、他者を踏みにじる事も厭わない熱意と、支配者層らしい人に圧力をかける事に長けた視線。その二つが精神に絡みついた。

「私はそれを手に入れるためならば、何でもしようと思っているのだ。レイフォン・ヴォルフシュテイン・アルセイフ君」

 ……知られている、全てが。不利になることが、ではなく。最も暴かれたくない事、ヴォルフシュテインがいかにしてその資格を剥奪されたかが。
 今からごまかしてどうにかなるか、考えるがそれは無理だと結論する。カリアンは最初から、レイフォンが天剣授受者本人だと確信して話している。どれほど否定しても、そういう事にしておこう以上の対応にはならないだろう。そして、天剣くらい強い誰かとして、事実を暴かれない代わりにいいように使われる。
 認めようが認めまいが、弱みはもう握られているのだ。既に詰んでいると言っていい。

「とは言え、私も好んで事を荒立てたい訳ではない。実際、君とはいい関係を築いていきたいんだ。まずは……まあ当然の話だが、武芸科に転科してもらって、奨学金ランクをDからAに変更しよう。これで金銭的な負担はかなり軽減される」

 再び人の上に立つ者らしい笑みを作って、同時にゆっくりと歩き出す。

「これで週に3日も働けば、食うに困ることはないだろう。もちろん武芸に支障がでない程度ならば、どれだけ働いてもかまわないけどね。それに……そうだな。武芸大会で結果を残してもらえば、それに応じて賞与も出そう。額までは確約できないが、少なくとも慎ましやかに暮らせば数年は持つ金額を約束する」
「別に……お金が欲しいわけじゃありません」
「そうかね?」

 レイフォンの必死の抵抗に、しかしカリアンは至極どうでも良さそうに返した。

「だが生きるのには金が必要だ。なくて困る事はあっても、あって困る事はまずない。それに、これは何ら後ろ暗いものなんてない、純粋なビジネスの話だよ。レイフォン君は労働力を、私はそれに対価を支払う、それだけの話だ」
「でも……僕は……」

 言うとおりにするしかないのかもしれない。だが、その程度の事で割り切れるのであれば、そもそも悩んだりなどしなかった。
 自分がやっていた事は犯罪だ。分かっている。事情があれば許されるという話でもない。分かっている。誰にも理解されない。分かっている。でも、分かっているつもりなだけだった。
 名誉など要らなかった。天剣だって、絶対になければならないものでもない。町の人から冷たい視線を浴びせられるのも、耐えるのにそう苦労はなかった。
 それでも、家族だけは別だ。心のどこかで理解してくれると思っていたのだろう。
 尊敬の視線が蔑むものに変わった子供達。次々と縁を絶ち連絡を拒絶する兄姉。視線を合わせる事もなくなった養父。どうでもいいものと一緒に、本当に必要なものまで掌から零れ落ちたと知ったのは、それらを味わってからだった。
 未だに思い出すだけで右手が震える。かつて天剣を握っていた右腕が。

「そう悩むことではないよ。少し実力を発揮してくれれば、君ならば容易く達成してくれる。それに、分かってはいるのだろう? この話を受けるのが一番いいとは。レイフォン君にとっても、私にとっても、ツェルニにとっても、都市に住む者達にとっても、誰にとってもだよ」
「それは……そうですけど」

 いつの間にか接近していたカリアンが、軽く肩をたたいてくる。悪魔の誘惑に似たそれに、一層気が重くなる。
 武芸者が戦えば、それがどんなに利己的なものであったとしても大義に準えられてしまう。いつの間にか、都市のために清く正しく力を振るっていると解釈され、そう動くことを強要される。
 力を示せば、恐らくツェルニでも同じような扱いを受けるだろう。そして、偶像となったレイフォンを信じる彼らにとって、カリアンとの契約などは考慮にすら値しない。勝手に信じて、勝手に裏切られたとわめき立てる。
 それが見知らぬ誰かならばどうでもいい。だが、もし親しくなった人達であったら……もう一度、同じ思いを味わう事になるのだろうか?
 過ちを繰り返すつもりはない。だが、友人が、家族が、命の危機に瀕して。犯罪行為であってもレイフォンが動けば助かるのであれば、もう一度そうしない自信もなかった。
 もっと冴えたやり方があるかもしれない。だが、武芸しか取り柄のないレイフォンに、そんな方法が分かるわけがない。

「条件に不満があるならば、可能な限り対処しよう。ないならば、ここにサインをしてくれるかな。あとは、そこの紙袋に武芸科の制服が入っている。それを持って行ってくれ」

 まるでもう決まったかのように、胸元に書類とペンが押しつけられた。見てみると書類は、奨学金ランクと転科の変更手続き。書類は見事に全項目が埋まっており、あとは名前を書くだけで決定する状態。今更ながら、最初から武芸科に行かせるつもりだったのだと思い知らされた。
 実際、脅迫で退路を断たれ、利で背中を突き飛ばされれば従うしかない。いきなり言われても追加の条件など思い浮かぶはずもなく、書類にペンを走らせようとして――
 ふと、レイフォンは閃く。その思いつきは、頭が宜しくない事を自覚する自分にしては、恐ろしく冴えたものだった。

「先輩、ちょっと、本当にちょっとだけ待って下さい! すぐ戻ってきますから! 本当に、逃げるとかじゃなくてすぐ戻ってきますからね!」
「いや、あの……レイフォン君?」
「ちょっとだけ行って、すぐ戻ってきます! 本当にすぐ戻ってきますから待ってて下さい!」

 焦りか興奮か、とにかくレイフォンはまくし立て、生徒会長室のドアを蹴破るように飛び出した。
 一人取り残されるカリアン。今まで意気消沈していた少年が急にまくし立てるのについて行けず、中途半端に伸ばした手を彷徨わせながら、ぽかんと口を開いていた。
 ちなみに。これで初めてレイフォンはカリアンに一矢報いた事になるのだが。幸か不幸か、それに気づいた者はいない。



□□□■■■□□□■■■



 フェリ・ロスという少女は。およそロマンチストであり、同時にリアリストでもあった。
 この世には神も天使も存在しない。当然だ、そういった超常存在は人が自然や理不尽に理由をつけるため、あるいは逃避するために作られた偶像なのだから。しかし、存在しないと分かっていながら、いてほしいと願うし、いてもいいのではないかと思っている。
 思考の方向が、メルヘンな嫌いがあるという自覚はあった。誰かに知られてしまえば恥ずかしい類いの考えではあったが、だからと言ってそういう要素がなければよかったとも思っていない。
 神は助けてくれる。天使は微笑んでくれる。そして、私にはきっと念威繰者以外の道がある。
 彼女が夢物語を空想し祈るのは、もしかしたら念威繰者の道しか用意されていない事への反逆かもしれない。
 誰もがフェリ・ロスという人間の念威にしか目を向けず、それは親兄弟ですらそうではない自信がない。家族ですら才能しか見ていないのではないか、そんなジレンマ。
 普通ならば馬鹿馬鹿しいと一蹴してやればいい、思春期特有の妄想だと。しかし、不幸にも彼女には簡単に笑い捨てられない程の才能があった。
 錬金鋼を持たずとも念威繰者の真似事ができ、調整された重晶錬金鋼を持てば他の念威繰者が何十人集まろうが相手にもならない。そんな力を、努力もせずに手に入れられた。
 家族が本当にこの力を愛しているのではないと言えるか? もしくは、フェリ自身への愛と混同していないと。少なくとも、フェリにはそう言い切れなかった。妄言を笑い飛ばせないだけの、才能を持ってしまっていた。
 どうでもいいと思っていた武芸者の才能に、嫌悪感を募らせるのにさしたる時間はいらなかった。二言目にはフェリを案じる言葉を吐きながら、一言目で必ず武芸を褒め称える両親が不安になる。そして、その才能に支配されて武芸者として生きる事に恐怖すら感じた。
 なによりたちが悪いのが、フェリ自身にすら、武芸者以外の道などないであろうと自覚できるほどの才能だったことだ。念威繰者以外の未来を探しているなどと言われれば、なぜそんな勿体ないことをと思っただろう。それが自分でさえなければ、だが。
 フェリはロマンチストだ。神や天使に願いを乗せてみたりする。家族は自分自身を愛していると信じているし、自分の未来は無限だと希望を持っている。きっと輝かしい明日が来てくれるはずだ――
 フェリはリアリストだ。空想の産物に願っても意味などないと理解している。家族の気持ちなど分からず、ただ自分より先に才能を褒め称える事実だけがあった。将来に選択肢などはない。彼女が武芸者意外になる事など、誰も期待はしていなかった。理想に反した嫌なことばかりが思考に居座る。
 しかし、それ以上に嫌だったのが、彼女自身が殆ど諦めてしまっている事だった。武芸者でない自分が理解される事も、武芸者以外の何かを見つけるという事も、求める感情とは真逆に何もできないでいる。
 痛烈な程に求めておきながら、ろくな行動を起こしていない自分。いつか誰かが本当の自分を理解してくれるという、本当の意味での妄言。ひたすらに惨めな姿。
 だからこそ武芸科に入れられ、やりたくもない訓練をして、今もこうして兄の使い走りをさせられていた。武芸者でない自分など、ひとかけらも見つけられないままに。
 そんなだから夢想を止められない。
 神は何者も助けない。人は人を理解しない。未来はひたすらに建設的で、恐ろしく効率と成果を優先するようにできている。一度敷かれたレールから逃れるならば、全て失い全てを賭けてもまだ足りない。非情な現実は、現実的に過ぎた。
 それでも、と。フェリはよかったと思う。自分がロマンチストで、夢の類いを未だに信じられる人間で。
 なぜならば、この世界に信じられる神はいなくとも。
 天使は、いたのだ――いたのだ!

「……ん~?」

 長椅子にうつぶせになって転がり、顔だけを持ち上げて上目遣いにフェリを見上げ、かわいらしい鳴き声を上げながら、くてんと首を傾げる。恐らく3歳か4歳くらいの少女。
 その無垢な瞳がフェリを捕らえた時、確かに彼女の心臓は何かに激しく貫かれた。それの正体などは何でもいい、ただ衝動のままに少女を視界に納め続ける。
 くりっとした大きな瞳はまるで宝石のようであり、その周囲を長いまつげが飾っていた。金色の長髪はよく手入れをされているのだろう、癖一つなく流れるような金糸が背中を隠す。長椅子に乗ったからだろうか、靴は行儀よく揃えて置かれている。黒のソックスに包まれた足は印象通りに小さく、それは前方に伸ばされた手も同じだった。年齢から考えると少々痩せ形のように思えたが、それでその子の愛らしさが褪せる訳はなく。
 昔、フェリは一目惚れというものを馬鹿にしていた。いや、一瞬前まで馬鹿にしていた。欠片も内面を知らない相手に惚れるなど、どうかしていると。
 しかし今ならば、この情動を知ってしまったならば肯定せざるを得ない。恋ではないこの思い、しかし溢れる愛おしさが止まらない。
 この世全ての可愛らしさを集めたような姿、これを天使と言わずしてなんと言う!

「おねーちゃ、だれー?」
「……え……あ」

 急に問われて、フェリはとっさに答えることができなかった。その姿に視線を奪われすぎて、上手く頭が働かない。
 上手く言えていないのは、椅子で胸を押さえられているからだろうか。そんなことは気にせずぱたぱたと足で椅子を叩く少女。その愛くるしさに、フェリは思わず赤らんだ顔を手で押さえてよろめいた。

(いけない、これではまるで変質者です)

 端から見れば完全にアウトなのだが、そんなことは気にせず気を取り直した。
 幸いにも、少女はそれを全く気にすることなく、好奇心ばかりが宿った目を向けたままだ。
 フェリは腰を落として、少女に視線の高さを近づけた。少女もそれを見てか、椅子の上に座り直すと、二人の視線の高さは殆ど同じになる。

「わたしの名前はフェリといいます。あなたの名前をきいてもいいですか?」
「ん。わたしはねー。リーフェイスってゆーの。でもね、パパはね、リーフィってよぶの」
(ぱぱって、パパ……父親、ですか?)

 一瞬その子が言った事が理解できなくて――正確には上手く連想ができなくて悩むフェリ。父という単語は、この都市においてこれほど馴染みがないものも中々ないだろう。
 学園都市とは、単純に学問所が集合したレギオスを指す言葉ではない。よほどの例外がない限り、十五歳から二十一歳までの学生のみで運用される、本当に生徒と学園しかない都市なのだ。
 そんな所で子供の存在は、極めて珍しくはあるが前例がない訳ではない。学生のうちに結婚して子供を作った例は、知識の中でだけならば知っていた。
 小さな子供であれば、親がいない方がおかしいのだが。学園都市という場所には違和感が大きすぎて、上手く思い出す事ができなかった。リーフェイスに心を奪われすぎて、その辺を失念していたのも一因だ。
 しかし、それで疑問が消えたわけではない。

(これくらいの子供がいるとすれば、確実に上級生の筈ですが……噂すら聞いたことがないなんて、そんな事があり得るのでしょうか?)

 およそ社交的な性格をしていなく、その自覚もあるフェリだったが、情報収集能力には自信がある。とりわけ手慰みに念威を飛ばしては、噂話を盗み聞きなどしていたのだから。実際、大きな噂は殆ど把握していると言っていい。
 果たして自分が、学生結婚をした上に子供までいるという、良くも悪くもゴシップのネタになりそうな話をピンポイントで逃すだろうか。少なくとも最近妙に出てきた子供の幽霊などという話よりは、よほど話しやすい題材に思えた。
 ただ聞き漏らした、もしくは聞き流したと言ってしまえばそれまでの話なのだが。なんとなく釈然としないものを感じながら、首を傾げるフェリ。
 そう言えば、そもそも学生結婚をした現役生徒の話すら聞いたことがない事に気がつく。ならば放浪バスに乗ってはぐれて来た子供か? 新入生入学の時期、可能性がなくもない。しかしその場合、なぜ子供が待たされているのが都市警察ではなく、生徒会の所有する執務塔なのかが疑問だ。第一、そうなるとパパなる人物の心当たりが完全になくなる。

(どうも……怪しいですね)

 顎に手を当てながら、一人思案するフェリ。どうでもいいと言えばどうでもいいのだが、だからといって納得できる訳でもなく。
 脳裏に何か知っていそうな人物をリストアップして――最重要参考人として自分の兄を上げながら――いつの間にか長椅子の隅を叩いていた指先。それが、きゅっと柔らかい何かに掴まれた。
 遊んでいた指を握って、楽しそうにぶんぶん振るリーフェイス。その姿を見て、フェリは胸を銃弾で撃たれたかのように握りしめた。それとは対照的に、切なそうに赤らむ顔。
 その光景の前には、どんな可能性だろうとどうでもいいものでしかなかった。

「それじゃあ、わたしと遊びましょうか?」
「んーと……あい! おねーちゃんと遊んでいい子にしてます!」

 フェリは今までの人生で一番感情を込めて語りかけた。自分ですら驚くほどに、自然で柔らかな笑み。それこそ、普段のフェリを知っている者が見れば驚嘆するほどに。
 愛らしい子供の返事に、思わずがばりと抱きついてしまった。リーフェイスは一瞬顔を白黒させるが、すぐにぱっと笑顔に戻り抱き返す。
 天使もとい天使のような少女を抱えながら、もう死んでもいいと――まるで天国にでもたどり着いたかのような状態。

「あのねー、パパはねー、すごいんだよ! 剣でねー、ずしゃーってやって、とってもつよいの!」

 フェリは少女を膝の上にのせる姿勢で、長椅子に座った。背もたれ代わりのフェリの体に、少女が体を預ける。心地よい体温が、腹から全身に広がった。
 よほど父親が好きなのだろう、リーフェイスは興奮した面持ちで指を握ったまま熱弁する。もう片方の腕をしきりに振るっているのは、恐らく剣技の真似なのだろう。

「そうですか、それは凄いですね。リーフィはどうなんですか?」
「んむ? んー、びかびかーってなって、ばりばりー?」
「そうですか。それも凄いですね」
「むん! リーフィもすごいの!」

 しかし自分の事を聞かれると、途端に曖昧な口調で疑問系になる。その様子を見ると、抱きしめる腕に自然と力が入った。肯定されて凄む様など、思わず頬ずりしたくなるほど無邪気だ。
 こうして、太ももの上で戯れるリーフェイスと一緒にいると、まるで世界が変わったかのような気さえした。普段は憂鬱でしかない執務塔の通路も、今では草原のような爽やかさを感じることさえできる。
 本当は今、兄の呼び出しを受けていたフェリだったが、すっぱりと無視する事にした。リーフェイスとの触れ合いを中断してまでするような事ではないと断言する。もし重要な話だったとしても、無理矢理そういう事にする。それに彼女の経験は、どうせ碌な用事ではないと言っていたし。

「でね、パパとせんせーはすぐケンカするの。せんせーがごわーって言うと、パパはうるさーいって」
「それは大変ですね。いつもどうやって止めてるんですか?」
「ちょっとどかーんぼかーんてやって、それで疲れたって言ってやめるの」
「先生もお父さんも、随分元気な方達なのですね」

 父親と先生、この二人は恐らく武芸者だろう。そして、先生と呼んでいる以上は、リーフェイス自身も武芸者である可能性が高い。
 こんなに小さな子供が、既に武芸者としての訓練を受けている。そう思うと、フェリの心の中に暗澹としたものが漂った。剄脈がある、ただそれだけの事で、こんなに小さな子供の未来を決められてしまうのか。……決められてしまうのだろう。今の世の中とは、レギオスの外とは、そういう脅威が蔓延っている場所なのだから。
 雰囲気まで暗くなりそうだったが、なんとか気を取り直した。笑っている子供の前でするような顔ではない。まあ、親にはリーフェイスの見てないところで、脛に一撃入れてやろうと決めてはいたが。

「パパが作るごはんね、すっごくおいしいの! リーフィ、パパのスパゲティだい好きー」
「わたしも食べてみたいですね」
「おねーちゃんもいっしょにごはん?」
「ええ。今度一緒に食べましょう」
「えへへ、いっしょにごはん、いっしょにごはん!」

 少女の父親は料理ができる、その事実になんとなく敗北感を感じながら。フェリは殆ど聞き手の状態で、時折相づちを打ちながら頭を撫でていた。
 人付き合いは苦手だ。実際友人と呼べるような相手は数えるほどしかいないし、また誰かと一緒なのも得意ではない。そんな彼女が誰かと居て心から楽しめるというのは、貴重な事だった。

(養子縁組とか、そういう事できませんかね?)

 リーフェイスの相手をする傍ら、無駄に高性能な脳を使って思考を分断。法律関係の知識を索引しつつ、かなり本気でそんな事を考えていた。
 親子でも、姉妹でも、何でもいい。とにかく家族になる、それはとてもすばらしい事に思えた。それを想像すると、顔の火照りが止まらない。まずはくたびれた服を、もっと似合うかわいらしいものに変えよう。
 その姿を想像しながら、しかしその時間は長く続かなかった。

「リーフィ!」
「パパ!」

 フェリの上で多少忙しないながらも大人しくしていた少女が、その声に顔を上げた。廊下の向こう側、丁度生徒会長室がある方向から、一人の男がやってくる。
 その男は、一言で言って冴えない男だった。顔立ちは悪くないが、どうにも垢抜けない野暮ったさがある。黒い髪の跳ねは、ファッションと判断すればいいか寝癖と判断すればいいか微妙なライン。全体像を見るとなんだか肩の力が抜けそうな、覇気が全く感じられない雰囲気。

(……あやしい)

 フェリは即座にそう判断した。
 まず制服がおかしい。リーフェイスの話を信じるならば父親は武芸者なのだが、ならば武芸科の制服を着ているはずだ。男は一般教養科の制服を纏っている。
 他にもおかしい所はある。男はどう多く見積もっても上級生(この場合は四年から六年の生徒を指す)には見えず、むしろ制服の真新しさを考えれば一年生の可能性すらあった。しかも、髪の色が茶色い。リーフェイスは鮮やかな金色だった。瞳の色も、同じ気が無きにしも非ずだがやっぱり違う。違うったら違う。
 これは、集めた情報をフェリが冷静に解読した判断であり、そこに一切の私情は挟まれていない。ついでに言うと、リーフェイスとの一時を邪魔されて苛立ってもいない。
 近づいてきた男は、フェリを確認すると一瞬ぎょっとした。まるで見つかったら不都合があるかのような態度。疑念が確信に変わる。

「靴を履いて。あと、お姉ちゃんにありがとうってしなさい」
「はい! おねーちゃん、ありがとうございました!」
「すみません、どうも世話をしてもらったみたいで。ありがとうございます」
「……いえ」

 男は、先ほどの挙動不審などなかったかのように言う。見られて不味いことなどない、そうごまかしたのだ。しかもやけに焦って少女を連れて行こうとしている。
 この時点で、フェリの中で確信が激しく燃え上がっていた。
 はっきり言って憶測が穴だらけだし、第一リーフェイスが親と認めているのだが。フェリはそんなことは些末だと言わんばかりに睨んだ。強烈な敵意を向けられた男は明らかに怯んでいる。
 子供に靴を履かせ終えた男が、だっこをしながら居心地悪そうに言った。

「それじゃあ、失礼します」
(行かせません!)

 リーフェイスを連れ去ろうとした(ように見えた)男のベルトを、両手でがっちりと掴むフェリ。進もうとして急にブレーキをかけられた男は、口元を引きつらせながら振り返った。

「あの……まだ何か?」
「失礼ですが」

 フェリは下から、男の顎をカチ上げるように睨んだ。
 完全に及び腰の男。よほど後ろ暗い事があるに違いない。

「あなたの名前、学科、学年は?」
「え? ええと……名前はレイフォン・アルセイフ。一般教養科の一年ですけど」
「今、一瞬悩みましたね?」
「いや、それは唐突な質問だったからで……」

 そんなわかりやすい逃げに騙されてやるほど、フェリはできた人間ではない。焦り続ける男を、さらに追い詰めていく。

「先ほど、リーフィから話を聞きました。お父上は随分腕の立つ武芸者なそうで」
「それは……僕が武芸者の道を希望してないだけで」
「それに容姿の特徴も随分違うのでは……」
「すみません、本当に急いでますので!」

 ベルトに捕まるフェリを、無理矢理振り払うようにして逃げようとする男。
 このまま逃がしてはいけない、リーフェイスを行かせてはいけない! 強烈な確信もとい妄想が、フェリの背中を押した。体当たりをするように男の腰にしがみつき、両手でがっちりとホールド。そして、男に向かって絶叫した。

「行かせませんよ、この誘拐犯!」
「なんで!?」

 何で、とは何の事か。誘拐犯とばれた事か、少女を連れて逃げようとした事か、どいういう経緯でバレたかか。しかしその問いは、さらに腕に力を込めるのに十分な理由だった。
 男は腕を必死に引きはがそうとするが、どうにも上手くいかない様子だ。片手でリーフェイスを抱えているのと、暴力を振るう気がないのとで、振り払える見込みもなかった。
 仕方なしに、フェリを引きずりながら歩き出す男。
 体力に優れるわけでもなく、体格でも大幅に負けている彼女には抵抗する術がない。だが、逃がすまいとする意思だけは本物だった。

「今すぐリーフィを下ろして自首しなさい! そうすれば、悪いようにします!」
「だから、なんで!? しかも悪いようするとか、さりげなく怖いこと言っているし!」
「やはり! やましい事があるから!」
「ないよ! いや、全くないわけじゃないけど……」
「やっぱり。逃がしはっ、しません!」
「あぁ……なんでこんな事に……」

 男の懐できゃいきゃい喜んでいる声、それを聞くだけで彼女の力は無限に湧いてくる。密着した腰がぎしぎしと悲鳴を上げるのも無視して、さらに強く締め上げる。
 肺から無理矢理空気を押し出され、うめき声を止められない男。それでも歩みを止めないあたり、大したものではあった。

「い・ま・す・ぐ、その子を放しなさいいぃぃ……」
「本当に後で説明するから! 今ちょっと急いでるから後でにして!」
「そうやって、言葉巧みにわたしを騙して逃げるつもりですね」
「今の台詞のどこにそんな要素があったんだあああぁぁぁ!」
「あはははは! おねーちゃ、がんばれー!」
「ほら、わたしを応援しています!」
「リーフィはちょっと黙っててお願いだから!」

 ちょっと涙声になっている悲鳴を聞いて、このまま行けば勝てる、そう確信する。何となくこの男は悪くない気がしてきたし、目的を見失ってる気もしたが、やっぱり気のせいだ。
 通常時ならば足音以外の音はまずしない廊下を、ひたすらに騒がしく通っていく三人。彼ら以外にそこを通る者がいなかったのは幸運だったのだろう。うめきながら子供を抱えてゆっくり進む男に、その腰にしがみついて引きずられる少女。控えめに言って、とても怪しい一団だった。
 がちゃり、とドアを開ける音がする。音でだけしか確認できなかったのは、フェリが半ば腰に顔を埋める状態になっているため、視界が制限されているからだ。辛うじて見える景色からは、明らかに見知った調度品が並んでいる。
 首をひねって視線を動かす。その先には兄が――非情に珍しいことに呆然としながら、フェリ達を見ていた。

「この子の滞在を認めて下さい!」

 食らいついたままのフェリを殆ど無視する形で、男がリーフィを掲げながら言う。
 カリアンは少女に視線を向けて、次に男に。最後に妹、つまりフェリに視線を投げる。再度男に視線を向けながら、口元を押さえてかぶりを振り。至極真剣な口調で、言うしかなかった。

「すまない、最初から説明してくれないか」


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