『電探報告します。周囲200光秒以内に艦影ありません。敵艦隊とは160光秒の距離を維持しています。』
『望遠鏡報告します。10光分以内に所属不明艦の発見はありません。引き続き周囲の探索を行います。』
漫画やアニメに出てくるような宇宙艦船のブリッジの中。そこでは真ん中で一際高い位置にある席に座る人物――恐らく艦長だろう――に対し、虚空に現れたモニタを通して複数人が報告を行っていた。
艦長はそれぞれの報告に対して頷くだけで返答とすると、一つ、また一つとモニターが消え去っていく。
全てのモニターが消え去った後。艦長は傍らのテーブルに置いてあるカップに手を伸ばすと、ゆっくりと口元へと運んでいく。
「周囲は問題なし、と。地上の方はどうです?」
報告の間微動だにせず後ろに佇んでいた人物が、そんな艦長へ向け言葉を投げる。
艦長は渋い顔から更に眉を潜め、苦々しい、不機嫌そうな顔へと変わる。
そのまま返答をせずとりあえず飲み物へ口をつけるが、顔つきが変わることは無いようだ。
「地上で戦闘は起きんよ。一般人を巻き込むことになる。それは向こうも同じ話だ。」
「でも全ての箇所に部隊の展開はしているのでしょう?」
「……念のため、だ。」
カップをテーブルへ戻し会話をする艦長達。その眼下では多数のオペレーター達が忙しなく作業をしているが、その誰もが浮かない表情だ。
オペレーター達を一瞥した後、艦長は虚空へと手を伸ばす。すると世界地図を表示したモニタが現れた。
世界地図には11箇所の光点が輝いている。その光点のいくつかを触り様子を見るが、映し出されるのは円陣を展開している地上部隊のみ。敵らしき姿は無く、放っておくと気を抜きそうになる兵士達と、それを諌める指揮官達の姿が見える。
「しかし、馬鹿だ馬鹿だとは思っちゃいましたが、ここまで恩知らずとは……。」
「ふん、所詮獣だ。知的な判断など出来るものか。」
何故自分達が生きていられるのか、もう忘れたんですかねぇ。立っている人物はそんな事を呟いて溜息を吐く。
一方の艦長は時計を見つめ何かを待っている。先ほどから状況に変化は無く、オペレーター達も徐々に落ち着き始めていた。
「先手は向こうに渡すんですか?」
「我々が先手を出しては大義名分が失われる。それに今は大接近だ、不用意に近づくわけにはいかん。」
「増援が転移してくるかも、ですか。敵さんは本能で生きている分、そういう勘は侮れませんからね。」
ややこしいし、厄介ですねぇ。そんな呟きに対し、艦長は同意するかのように溜息を吐いた。
と、その時。
『望遠鏡から緊急報告! 9時の方向5光分の距離に所属不明艦隊……いえ、所属不明部隊を発見! その数、こちらに倍します! 映像送ります!』
「9時方向……?」
けたたましいアラーム音と赤い光を伴って、先ほど報告していた人物を映したモニタが現れる。
敬礼もせず艦長の返事も待たずに話を進めたその人物だが、艦長は何も言わずただ映像が映し出されるのを待つ。
俄かにざわつき始める艦内。そしてそれを助長するかのように、再度アラームが鳴り響く。
『地上から報告! イグアス近くで民間の都市が襲撃を受けています!』
「馬鹿な!? そこにゲートは無い筈だろう!!」
それらの報告に続き、ブリッジのメインモニタへ大きく二つの映像が映し出される。
片方は都市を受けている都市の様子。
片方は此方へ迫る所属不明部隊。
そして、それらに共通していることは――
「何故だ、何故あいつ等が動き出す!?」
夜の闇の中よりも、宇宙空間よりも尚黒い。漆黒の、異形の部隊だということ。
◇◇
「って銀○伝かよっ!?」
ガバリ、と布団を跳ね飛ばして起き上がる。……ん、布団? なんだ夢か。
全く、この間の宇宙の夢といい今の夢といい、一体何なんだ? 宇宙艦隊を率いるのが私の夢なのか? ありえねー。
私はフツーに恋愛して結婚して、危険なんかとは一切関らずに一生を終えるのが夢なんだ。 なんで戦争っぽいモンに憧れなきゃならねーんだ。
そんな事を考えつつ、私はさっきまでの夢を頭の中から追い払うように、何度か頭を左右に振る。そして目を擦りながら、眼鏡をかけようと枕元に手を――って、あれ?
「ここ……どこだ?」
ベッドや周囲を良く見れば、そこは全く知らない場所だった。窓の外は既に明るく、朝と言える時間はとっくに過ぎているようだ。
マテマテ、落ち着け私。学校はどうした? ここは何処だ? いや、まず私が寝る前には何をしていた?
確か昨日は学校が終わった後アリサ達がプールに行くっつーからそれから逃げて、家でコスプレ衣装を作り、晩飯を食べた後なのはに呼び出されて、プールでの出来事を聞きながらジュエルシードの反応が有る学校へ行って、そこで……
「あああ! 思い出した!」
そうだ、トイレでなのはの魔法に巻き込まれたんだった!
あのヤロー人の事をお構い無しに撃ちやがって! ……っつーことは、あれか? ひょっとして私、トイレの床に倒れたのか……!?
うわ、お、お風呂! つーかここ本当に何処だよ!?
私がそんな事を思って一人慌てていると、部屋の隅にある扉を開けて私の良く知る人物が入ってきた。
「あら、起きたのね。」
「シャークティ! 風呂貸してくれ!」
そうか、ここはシャークティの住んでる所なのか。多分倒れた私を持て余したなのはがシャークティに連絡を取って、そのままこの家に運んだんだろう。
つーか今はそれより風呂だ! き、気持ち悪い! 気分の問題だと判っちゃいるが、それにしても耐えられねーって!?
私はベットから降りてシャークティの下へ向かおうと、足を床に下ろして立ち上がる。
いや、立ち上がろうとしたんだが。
「うお、あ、あれっ……?」
……立ち上がれない。
なんつーか、体を動かすことは何とか出来るんだが、全く力が入らない。な、何だ?
私がそうやって何とか立ち上がろうと四苦八苦していると、シャークティは私の傍に来て肩を押し、そのまま私はベットへと簡単に寝かしつけられた。
何だ? なのはに撃たれたせいで何か後遺症でも残ったのか……!?
「ハァ。スクライア君の言った通りね。」
シャークティの話を要約するとこうだ。
昨日の夜なのはからの連絡を受け学校に行くと、トイレで倒れている私と困り果てているなのは、スクライアを発見。
魔法によって倒れたようなので私の家へ連れて行く訳にも行かず、そのままシャークティの家に運んで治療を施した。
とはいっても外傷は殆ど無く倒れた時に体をぶつけた程度だったみてーだが……。
で、本題の何で体が上手く動かないのかっつーと、だ。
なのは達の魔法には殺傷モードと非殺傷モードという大きく分けて二つのモードがあるらしい。物騒なネーミングだ。
で、殺傷モードは普通に私達がイメージする魔法。非殺傷モードは物体に作用せず、対象の魔力に対してダメージを与えるんだとか。細かいことを言い出したら他にも色々あるらしいが。
ここからはシャークティの推測だが、恐らくなのはの魔法がクリティカルヒットした私は生命維持に必要な、本当に必要最低限の魔力だけを残し、他は吹き飛ばされたのだろう、と。
恐らく非殺傷モードとはそういう物なのだろう。休んでれば時期に魔力も戻ってくるらしい。
つーか、ホント迷惑な話だぜ……
「学校はどうしたんだ?」
「ああ、休みの連絡は入れておいたわよ。お母さんに対してもね。倒れたという事にしておいたけど、心配してたわよ?」
「だよなぁ……はぁ。」
私もバリアとか防御とか、そういう魔法もっと覚えた方がいいんだろうか。攻撃はなのはに任せれば言いとしても、余波で倒れてちゃ世話無いよなぁ。
でも一応障壁とか覚えてはいるんだが、あの時咄嗟に使うことなんて出来なかったし。魔法の訓練はしても、戦闘訓練なんてしてねーし。
この先なのはと一緒にジュエルシードを封印して回るなら、やっぱり戦闘訓練もしないとダメだろうか?
……って何私はナチュラルに戦闘する前提で考えてるんだ。そもそも私が戦闘場面に居る事が間違ってるんじゃねーか? トンヌラ達は居る意味ねーし、魔法は勉強中だし。
なんて、そんな事を考えていると……
「さて、それじゃお風呂に入りましょうか。」
そうシャークティが切り出した。
あー、ちょっと忘れてたのに。入りたいのは山々なんだが……
「この状態じゃ一人で入れねー。何時頃動けるようになるんだ?」
「夜になれば、かしらね。というか入れてあげるわよ?」
一緒に入ればいいじゃない、とシャークティは言う。
……こいつと一緒に? お風呂? 冗談じゃない! 何されるか判ったもんじゃねー!?
「ヤダ」
「そう即答されると、ちょっと傷つくわね……。」
そう言い顔を伏せるシャークティ。だが、フフフと不気味な笑い声を漏らすと、顔を伏せたままとんでもないことを喋りだす。
「それじゃあ、トイレの床に顔や体をつけて倒れてた千雨ちゃんは、そのまま洗わずに夜まで過ごすのね。ああ、別にいいのよ? 布団は洗えば良いだけだから、気にしなくても。」
「んなっ!?」
っく、そこを突いて来るか……!
ああ、くそ、どうする!? こいつと一緒にお風呂に入るのか? このまま動けるようになるまで待つのか? いやそれは論外だ!
なんとか一人でお風呂に入れねーか? でも思うように動けねーし、お風呂で溺れたとか言ったら笑われるし……ど、どうする? 背に腹は変えられない、か……?
うーー、仕方ない、のか……!?
「し、仕方ないから、一緒に入ってやっても……」
「あら。別に私は入らなくても良いのよ。」
こ、このやろう……!
「くそっ! い……一緒に……」
「一緒に?」
「一緒にお風呂に、は、は、入って、下さい……。」
ああ、くそ、暑い、つーか熱い! 何でこんなことに、ぜってー顔真っ赤だぜ、私。
それもこれもなのはのせいか、あのヤロー!
「はい、よく出来ました。お風呂は沸いてるから、このまま連れて行くわね。」
「え、ちょ、おま、おい!?」
そうして。
私はシャークティに抱き上げられ、脱衣所へと連れて行かれた。
◇◇
「いいお湯だったわねー。」
「洗われた……全身洗われた……」
あのまま脱衣所へと連行された私は、シャークティのされるがまま服を脱がされ、お風呂場へ行きシャワーを浴びせられ風呂に入れられた。
風呂の中ではシャークティにずっと抱っこされ、シャークティの柔らかい感触が……
そのまま取り留めの無い会話をした後、今度は椅子に座らされ、全身……体の隅々まで、全、身……ぬああぁぁぁぁ!?
「女同士なんだから、そんな恥ずかしがらなくてもいいじゃない。」
「てめーら外国人とは違うんだよ! それに人が上手く動けないのを良いことに、あ、あ、あんなこと……うがあぁぁぁ!」
消してくれ、誰かこの記憶を消してくれ……! くそ、こんなことなら夜まで我慢するんだった……!
私はリビングのソファーに横たわりながら顔を伏して身悶えているが、シャークティはそんな私を見て軽く笑ってコーヒーの準備をし出す。
ああ、くそ、相変わらず余裕だな。大人の女性って感じか? でもちょっと違う気もするけどよ。
それにしもシャークティの体綺麗だったよな。肌も滑々で引き締まってて、胸も大きくて綺麗な形で、皺や無駄毛も無くて。なんかそういう魔法でも有るのか?
羨ましいな、身長もあるし、あんな体になれるなら……って私は何を考えてる。
なんか最近、何でもシャークティの思う壺に嵌ってる気がするぜ。
ピンポーン
シャークティがコーヒーを入れ終わりテーブルの方へと持って来ようかという時、そう呼び鈴が鳴らされた。
コーヒーを運ぶのを辞め玄関の方へと出て行くシャークティ。私は何気なく時計を見ると、その時刻は午後4時半を回ったところだった。
この時間に来るってことは、多分あいつらか?
そんな予想を立てていると、その読み通り。リビングには肩にスクライアを乗せたなのはを先頭とし、その後ろからアリサとすずかが入ってきた。
「千雨ちゃん、ごめん! 大丈夫!?」
「ごめんなさい、自分の分しか障壁を張れなくて……」
「なのはが千雨を魔法でぶっ飛ばしたって聞いたときはビックリしたわよー。大丈夫なの?」
「大丈夫? 千雨ちゃん。」
「あー、とりあえず大丈夫だ。ちょっと体が動かしにくいけど、それも夜には治るみてーだし。」
女3人寄れば姦しい、とは言うものの。残念ながらそんな雰囲気では無いらしい。
アリサは私が普通に喋ってる時点で呆れ顔、すずかはずっと心配そうな顔、そしてなのはは今にも泣きそうな顔をしている。
わたしは寝転がったままなのはに手を伸ばすと、なのははおずおずとその手に触れる。
そのままなのはの手を握ると、私の方へと引き倒した。途中でスクライアが落ちた気がするが、知らん。
「わ、キャア!?」
そうして私の上に覆いかぶさる形になったなのは。
そのままなのはの頭を撫でてやると、最初は緊張して力んでいた様子だが、力が抜け私に体を預けてくる。
仕方ない、フォローしてやるか。私はなのはの頭を撫でたまま、励ましてやることにした。
「全く、次は上手くやってくれよ? 期待してるぜ。」
「ち、千雨ちゃん……!」
そう言うと、なのはは私の胸にすがり付いたまま小さく泣き出した。泣かせないように励ましたつもりなんだが、結局泣かせてちゃ世話ねーな。
まぁ何も言わないとか、ただ許すよりは良いだろうよ、多分。
「何よ、かっこつけちゃって。」
「アハハ、千雨ちゃんらしい、よ?」
……っく、聞こえてるぜ、2人とも。
「ほら、私の家……月村家は所謂名家だから、昔からそういう裏事情、魔法とかの存在だけは知っていたんだ。私も見たのはシャークティさんの魔法が初めてだったけど。」
ごめんね、黙ってて。そう言いすずかは両手を合わせ頭を下げる。
時間は少々過ぎ、さっきまで泣いていたなのはも落ち着きを取り戻し。場面はプールの事件に対する説明へと移っていた。
月村家のメイドであるノエルさんとファリンさんが、ジュエルシードが生み出した化け物相手に大立ち回りをした事に対しての説明をアリサが求めたから、らしい。まぁそりゃ求めるよな。
私、なのは、すずかと3人とも魔法関係者――すずかは少々事情が違うが――であることに臍を曲げたのか、アリサは不機嫌だ。
「で、それとノエルさんやファリンさんがあんな事出来るのがどう繋がるのよ?」
「ほら、アリサちゃんの所もそうだけど、トラブルが多くて。その対策で強い人が我が家のメイドをしているの。茶々丸さんの件を知ったのも、誘拐されかけた所をシャークティさんに助けてもらって、その繋がりからなんだ。」
「ゆ、誘拐!? すずか、あんた大丈夫だったの!?」
大丈夫じゃなかったのはアリサ、お前だけどな。なんてことは言わないが。
軽々しく喋ることじゃなかったからと、そう言い頭を下げ続けるすずかに対し、アリサは明らかにうろたえてすずかの心配をし出す。
なのはも目を見開いて驚いているがアリサ程心配はしていなさそうだ。今ここに居るんだし今更心配しても、って所か。
すずかは顔を上げて大丈夫だったと説明すると、アリサは諦めたように溜息を吐きテーブルに突っ伏した。
「そりゃ言えないわよね。そんな事で怒るほど狭量じゃないわよ。」
「……本当に?」
「信じなさいよ!?」
なのはの言葉に対し慌てて証明しようと言葉を重ねるアリサ。そこにはすっかり何時も通りの光景が広がっている。
これで一先ずは良いのか、私のそれと違って嘘は言ってねーもんな。
正直こんな事を何時までも繰り返していたらそのうち破綻するんじゃねーかとは思うが、だからといって本当の事を言えば良いのかっつーと首を捻るところだ。
一体どうするのが正解なんだろうな。恐らくそれは結果が出て見ないとわからないのか、とは思うが。
私はそんな事を考えながら、焦って自分がいかに度量が広いかをなのはに説明するアリサ、面を食らっているなのは、にこにこと見つめるすずかを横目に見ながらコーヒーを飲む。
こんな関係が何時までも続けば良いな、なんて思いながら。
ん、でもそれじゃ何時までも私はこっちの世界にいるということに……?
「そーだ、シャークティさん!」
「あら、何?」
一通りなのはへの説明が終わったのか、アリサが突然シャークティの名前を呼ぶ。シャークティは何やらノートを書いていたが、その手を止めてアリサへと視線を合わせた。
「折角来たんだし、また魔法見せてよ!」
「あ、僕もしっかり見てみたいです。この世界の魔法も興味深いですし。」
テーブルの上でクッキーをかじっていたスクライアがアリサの言葉尻に乗る。
スクライアは兎も角、アリサは諦めていなかったんだな。ひょっとしてまだ練習してるのか?
アリサはスクライアを掴みシャークティの近くへ寄ると、勢い良く頭を下げる。
「お願いします!」
「はい。見せるのは構わないけど……何だったら千雨ちゃんの魔法も見てみたほうが良いのかしら?」
「ん? 私か?」
シャークティはノートを閉じ私に向けて言葉を投げる。
何でも人によって色々と癖があるから、初歩的な話なら複数人の魔法を見て学んだほうが良いと尤もらしいことを言っているが。どうも私には面倒臭がっているようにしか見えん。
つーか、そもそもだ。
「魔力、無いんだろ? 今。」
だから動けないんだし。
「ええ、動けないのは魔力切れのせい。なら単純な話、魔力を供給してあげれば……」
そう言うと懐から私の絵が描かれたパクティオーカードを取り出し、私に向け魔力供給を開始する。
私の体が仄かに光り始るが、その光はどんどんと体内に染み込んで行き、それと共に体がぐんぐんと軽くなった。
ああ、なるほど。考えて見れば単純な話だよな。なんで気がつかなかったんだ……って――
「――おい。それなら何も一緒に風呂に入らなくても……」
「……あ。しまった。」
そう言い、半笑いで口元を押さえて冷や汗を垂らすシャークティ。そうか、こいつ俗に言う確信犯という奴か。
ふ、ふふ。そういえばアリサとスクライアが魔法を見たがっているんだったな。
火よ灯れを見せてやってもいいんだが、折角だ、どうせならもっと違う魔法が見たいよな?
「ち、千雨? なんか怖いわよ?」
「何、心配ねーよ。アリサが見たこと無い魔法を使ってやろうっていうんだ、良く見ておけよ?」
何だか調子が良い。今ならどんな魔法も成功しそうだ。
そうだ、どうせなら今まで成功したことのない、あれを……!
『エゴ・エレクトルム・レーグノー ものみな 押し流せ ねじれた海蛇――』
「ちょ、ちょっと、それはダメー!?」
「うるせー! 私の裸は高いんだよー!」
「……はぁ。なにやってるのかしら。」
「にゃ、にゃはは……わかんない……」