恐ろしい声がする。
怨嗟の声だ。
地の底から響くような、あるいは遠雷のような轟声だ。
『おおおおお、許さぬ、許さぬぞ、たかが草木の分際でオレを閉じ込めるとは――――!! ぐぅおおおおおおおぉぉぉぉおおおおおおおお!!!』
森の暗がりに一際巨大な樹が生えている。小さな丘くらいはある巨大な樹だった。
それは、まさしく竜の形をしていた。
まるで蔦が竜にそのまま纏わりついて樹木の形を成したかのようだった。
そして恐ろしい轟声は、その樹の中から響いてくるのだ。
この樹は牢獄なのだ。
唸り声と共に竜の形をした巨木が揺れ、風の魔法と共に幹が内側から裂けて竜の鱗が垣間見える。
竜の口と思しき場所から猛烈な火炎が噴き出る。
しかしそれでもすぐさま幹が成長して亀裂を埋めてしまう。鱗など見えなくなり、幹はさらに竜を絞めつける。
火炎に燃やされた枝葉は毒の煙となって、竜の肺腑から浸透し、さらに竜を苦しめる。
森を荒らした邪竜の末路であった。
死の森に住むオークたちは、昼夜を問わず響くその恐ろしい吠声に竦み上がった。
そしてそれ以上に、吠声が日に日に弱々しくなってゆくことと、竜すらも殺さんとする森の木々に恐怖した。
ここは死の森。
『歩かないマンドレイク』というマンドレイクの本能に矛盾した異常種――マンドレイク・フォレストキングが支配する迷宮異界(ダンジョン)だ。
森の中とは、すなわちマンドレイクの胃の中と同じことだ。生殺与奪は森の王の加減次第。
だがモンスターたちはここを離れない。離れられない。
死の森という名称とは裏腹に、この森ほどに豊かな場所もまた存在しないのだ。
森には森のルールがある。
マンドレイク・フォレストキングが敷くルールからさえ逸脱しなければ、他で暮らすよりもよほど楽に暮らせるのだ。
森の木々は、日差しと暑さ寒さからモンスターたちを守る。
森の何処でもいつも瑞々しい果実が生り、食べ物に困ることはない。
果実だけではない、栄養たっぷりの腐葉土の中や枝葉に紛れてまるまる太った芋虫だって居る。
地下深くからフォレストキングが汲み上げた水が、樹の根元から湧き出して泉を作っている場所だってある。ポンプのような作用を持った樹を、モンスターの為にフォレストキングは作り出しているのだ。
木の根元にある枯れかけの葉には、塩分が蓄えられていることがある。余分な塩分を一塊にして排出するという樹々の作用だ。
そして咽返るほどに濃い魔力が、森には満ち溢れている。それはモンスターたちにとって何にも代えがたい極上の環境なのだ。
何より森は、ニンゲンたちからもモンスターを守ってくれる。
森の王はニンゲンを憎悪しているからだ。
森の王はモンスターたちを決して好いてはいない。
だがそれ以上にニンゲンを嫌っている。
だからここにはモンスターたちが集まってくるのだ、森の王の庇護を求めて。
◆◇◆
これは『森蝕時代』が始まるほんの少し前の話。
一匹の邪竜と、一匹のオーク鬼の物語。
◆◇◆
竜が囚われてから何年もの月日が流れた。
日に日に竜のうめき声は小さくなり、ついには殆ど何も聞こえなくなった。
だが、竜の形の巨木は時折不気味に鳴動している。
だからまだ竜は死にきっていないのだろう。だがそれも時間の問題だ。
「森の樹も、酷なことをしなさるね」
小さな影が、竜の牢木の枝の一つに、とんっと軽やかに飛び乗る。
仔豚のような顔立ちをした亜人――オーク鬼であった。まだ成人していないのか他のオークに比べて幾分小柄だが、それでも平均的なニンゲンよりは大きい。
このオークは竜が死んだのかどうか、近くのオーク鬼の集落から偵察に派遣された者である。何日かに一度様子を見に来ているのだ。
『……また貴様か、小娘。まだオレは死んでおらんぞ』
「それも時間の問題でしょうに、よっと」
『――だろうな』
竜には最早、何の力も残されていなかった。
少し前の竜であれば、こんな殊勝な悟ったような物言いは決してしなかっただろう。
それほどまでに弱っているのだ。
するするとオークの少女が枝の間を跳んで樹を登っていく。身体強化魔法を使い、とても身軽に竜の頭があるらしき場所まで登る。竜の頭は、オークの少女を楽に一飲みできるほどに大きい。
登ってきた木を見下ろせば、牢木には内側から竜の血が滲み出ており、幹がドス黒い色に染まっている。竜の血を浴びたものは強靭になるというから、森の王はさらに力を増したことだろう。
竜の皮膚は樹から滲み出る毒によって無残に爛れていることであろう。牢木の枝葉には、木が伸びる際に巻き込んだのであろう、剥がれ落ちた竜の鱗が埋まってキラキラと光っている。
どこからか、腐ったような膿んだような臭いもする。
よくもここまでにもなって生きているものだ。
オークの斥候の少女は素直に感嘆した。竜の生命力に。
(いや、生かされているのかな)
これは見せしめなのだ。
森を荒らすものを決して許さない、惨たらしく殺してやるという、森の王の意思表示。
粗方、水と最低限の魔力だけは与えて、そのまま嬲り殺す心算なのだろう。
『そうだ、このマンドレイクは、オレをタダで殺すつもりなど無いのだ』
オークの少女の心を読んだわけではないだろうが、竜が語りだす。
『血も皮も肉も骨も髄も、全てを貪り侵し尽くして殺すのだろう。
オレの身体を、何本もの生木の杭が貫いている。
それから溢れる樹液はオレを生かしてもいるが、同時にそれ以上にオレを苦しめるのだ』
竜の言葉には諦念が滲み出ていた。
「……なあ、私はその時生まれてなかったから知らんのだけどさ」
『何だ』
「アンタは何で森に喧嘩を売ったのさ」
囚われの竜は、ごふごふと低く笑った。
それはあるいは自嘲であったのかも知れぬ。
『さて、何でだろうなぁ』
「何、自分でも分からないのかよ」
『そういう訳ではない。まあ、暴れて暴れて、この森をオレのものにしたかったのさ。そんなところだ』
「は? 馬鹿かいアンタは。そんな事出来るわけ無いだろう」
『ああ、その通り。森は強く、オレは傲慢で、――その挙句にこのザマだ』
「そりゃ御愁傷様」
それだけ言ってオークの少女は牢木を飛び降りる。
『なんだ、もう帰るのか。折角だ、ゆっくりして行け』
「ふん、なんだい弱気になってるのかい? 竜のくせに」
『死にかけの竜なんてこんなものさ』
「確かに、少し前まで苦鳴で息も絶え絶えだったものねえ」
くすくすと小馬鹿にするようにオークの少女が笑う。
ぐふぐふと竜も喉を震わせる。
『ああそうだったな。だがもう痛くないのさ』
「へえ、そりゃまたどうして」
『神経がな、もう繋がっておらんのさ。痛みを感じる元気もない』
「……」
それは、どれだけの苦痛だったのだろう。
なまじ生命力がある竜だから、そんな瀕死になっても生きていられるのか。
オークの少女は顔をしかめる。
『だからオレはきっと長くない。もういつ死ぬかわからない』
「そうかい」
『ああだから――』
「それじゃあ――」
「『 毎日様子を見に来る必要があるというわけだ 』」
――――。
図らずして重なったセリフに、オークの少女も竜もくすくすぐふぐふと笑う。
「じゃあね、また明日。死に損ないのドラゴンさん」
『ああ、また明日、だな。小生意気なオーク娘よ』
◆◇◆
それから毎日、オークの少女は竜のもとに通った。
囚われの竜はそれを心待ちにしていた。
彼らは何でもないことを話した。
「アンタってさ、元は何処に居たのよ? この森で育ったって訳じゃないんでしょう」
『元はここからずっと南の黒竜山脈だな。そこで育ったのだが、武者修業と自分の領地(ナワバリ)を持つためにここまで飛んできたのだ』
「へえ、飛べるんだ。流石ドラゴン」
『もう翼の皮膜は残っておらんから飛べんがな』
「そうなんだ。まあ、そりゃそうか。で、ドラゴンてやっぱり他にも居るんだ?」
『ああ居るとも。オレたちは広大な領地(ナワバリ)を必要とする関係上、基本的に群れはしないがな』
――――「またね」
――――『ああ、また明日』
――――「未だ死ぬなよー?」
――――『善処するさ』
「そういえば、基本的には群れないってことは、群れることもあるんだ? ドラゴンって」
『強力な竜王が現れて、そいつが号令を掛けた時とかな』
「ふうん」
『まあ、オレも竜王になりたくて、この森まで修業にやってきたのだがな。力が及ばなかったということだ』
「へえ、森の王を倒せば、アンタ竜王になれるの」
『そうだな、それくらいにここのマンドレイクは、隔絶して強い。もし倒すものが現れたら、ソイツが何者であろうとも世界を手にできるだろうな。――もっとも、それでもこの森を殺しきることは出来んだろうがな。直ぐに蘇るに決まっている』
「凄いんだ。でも、一回ニンゲンに焼かれたんでしょ、この森って」
『だからこそ、二度と焼かれることはない。学習能力と変異能力を兼ね備えたマンドレイクがこれほど厄介だとは、誰も思わなかっただろうよ』
「確かに、恐ろしい森だねえ、ここは。そんなところに来たのがアンタの運の尽きってわけだ」
『……そういうことだな。まあ無いと思うが、貴様はここのマンドレイクには逆らうなよ? 自殺願望があるなら止めはせんが』
「アンタの末路を見てりゃ、そんな気は起きねえって」
――――「またね」
――――『ああ、また』
――――「未だいけそう?」
――――『そうだな、不思議と生きられそうだ』
――――「そいつは重畳」
「やっほー、まだ生きてる?」
『死にそうだ』
「ここ最近ずっとそうじゃん。ドラゴンてしぶといのね」
『オーク鬼に比べればな。今の私は、体力が回復するたびに削られている状態だ』
「ある意味平衡状態?」
『そうだ。だがもうそろそろ、マズイな。根本の生命力が尽きかけている』
「そりゃあ何年もかけて衰弱させられたらねえ」
『そうだ。……だから――――』
「ん? 何よ」
『――――いや、何でもない』
――――「またねー」
――――『ああ』
――――「結局さっき言いかけたのは何よ?」
――――『……また明日、な』
――――「はあ、思い出したら言いなさいよー」
「でさでさ、森の中で新種の果物を見つけるのが私らの楽しみってわけよー。それを潰して酒作ったりね」
『……』
「酒って言ったら、ハニービーの巣から蜂蜜取って作る蜂蜜酒も良いのよね」
『……』
「樹液酒とかも独特の風味があって中々。でも毒のない樹液を出す樹を見つけなきゃいけなくて――――って、聞いてる?」
『……』
「おーい? 死んだ?」
『……っ、いや、聞いている、ぞ』
「あ、生きてた」
――――「またね」
――――『……』
――――「また意識飛んでる」
――――『……』
――――「アンタが死ぬと、寂しくなるなあ」
――――『……』
――――「……じゃあまたね」
――――『……ああ、また』
「やっほー」
『貴様か』
「あ、起きてた。具合はいいの?」
『最悪だ』
「そりゃそうだよねー」
『……頼みがある』
「私に出来ることなら。この牢木から出せってのは無理よ?」
『――――オレを殺してくれ』
「……放っといても死ぬのに? というかどうやって?」
『このままマンドレイクに殺されるのは、癪だ。オレの魂の力をマンドレイクに渡すのは業腹だ。だから貴様に頼む』
「ああ、まあ気持ちは分かるけど。私にとってもメリットあるから良いけど。でもどうやってよ? アンタの身体は全身くまなく牢木で覆われているし、どのみち私の腕力じゃアンタにダメージ入らないでしょ」
『……今から最期の力でブレスを吐く。そうすれば口の周りの牢木が吹き飛ぶだろう。あとはその辺に散らばっているオレの鱗で、オレの口の中を刺せば良い。今のオレは、それだけで死ぬだろう』
「ふうん? まあ、やるだけやってやるわ。でも、私で良いの?」
『お前だから頼むのだ』
「へえ、ほお、ふうん? にしし、そこまで言われちゃ仕方ないわね! ちょっと武器に出来そうな鱗を集めてくるから待ってなさいな」
『ああ』
◆◇◆
『ではいくぞ』
「バッチコーイ!」
『吹き飛ばされぬように気をつけろ』
一拍後に、竜の口のあたりから轟音が響いた。
牢木の中で響きあった火炎のブレスが、ついに牢木を吹き飛ばし、その口を露出させた。
オークの少女は素早く樹に登り、竜のアギトへと飛び込む。
「うひゃあ、ひどい有様だ」
『早くしろ、もう幾らも持たん』
「はいはい」
牢木の中の竜の有様は、それはもう酷いものであった。生きながらに腐れて爛れた肉体は、悪臭を放つどころか完全に乾いてミイラのようになっている。
残っているのは、生命維持に必要な最低限の部分のみなのだろう。この竜は、最早痛みも感じないと言っていたが、それも道理だ。これでは痛みの感じようがない。
オークの少女は竜の口の中に飛び込むと、竜の鱗を振りかぶる。
「んじゃ行くよ。スパッと介錯してあげる」
『そこまでは期待しとらん』
「いやいや、見くびんないでよね。後先考えなきゃ、私だって凄いんだから。これでも集落じゃ腕利きなのよ」
途端にオークの少女の手の中にとんでもない量の魔力が集まり、渦を巻く。
そう、ここは死の森。
森の王の恩恵を受けられる場所、魔力に溢れた魔物の楽園。
死の森のモンスターは、その魔力の恩恵を受けているから精強だ。
たかがオークでも、命を賭ければ死にかけの竜を屠れる程度には。
「おおおおおおっ! 命を――――燃やせえええええっ!! 竜鱗よ、無念の竜に慈悲の刃を!!」
『な、これは!? 貴様、生命力まで使って!? 何故――――』
「そのくらいさせなさいよ! 命くらい賭けさせなさいよ! これでも私はアンタのこと気に入ってんのよ!」
生命力を犠牲にして、強大な魔力が渦巻く。
触媒にされた竜の鱗が光り輝き、巨大な光の剣となる。
それを竜の口内で宙に浮かせて構え、喉奥に狙いを定める。狙うのは脳幹、一閃で命を刈り取る。
構える間にも、オークの少女の生命力が刻一刻と失われていく。死相が浮かぶ。
「友人の最期の願いくらい、全力で叶えてあげるわ」
『貴様……』
「いくよ」
『――――応。介錯、かたじけない』
「アンタのこと、割と好きだったよ。――――じゃあね」
瞳を閉じて息を整える。
宙に浮かべた竜鱗の光剣に意識を集中する。
死の淵に自分を置き、命の流れを凝視する。
自分の急所も、竜の急所も、ありありと見える。
「介錯仕る。 ……光剣一閃!!」
竜鱗の光剣が一際強く光り輝き、振るわれる。
一閃。
その一撃は竜の喉奥を大きく切り裂き、骨を断ち、脳髄を削り、竜の命を刈り取った。
もう竜と彼女が会話することは、ない。
「バイバイ、私の友だち」
◆◇◆
生命力を使い果たして、オークの少女が倒れる。
だがその直後に、失われた生命力を補うように、竜の魂の力が流れ込んでくる。
殺した相手の魂の力を吸収するのが、この世界の理。
遙かに格上の相手にトドメを刺したことで、オーク鬼の少女の身体に巨大な力が満ちる。これで死ぬことはないだろう。
そこまで打算して、オークの少女は全身全霊で魔術を振るったのだ。友を弔う気持ちも本物だが、モンスターというのは生き汚くできているから当然だ。
だが、もちろんそのまま死ぬ可能性も高かった。トドメの一撃程度で、ここまで膨大な力が流れこんでくるはずはないのだ、瀕死になるまで竜を痛めつけたのは森の王なのだから。オークの少女は自分が生き残る確率は五割程度だと思っていたが、これだけの力が流れてくるところを見ると、想像以上に竜は格上の存在だったようだ。
その直後に、竜の遺骸が崩れ始める。白い菌糸に覆われて。
「これは、パラサイトマタンゴ……」
死の森の掃除人、パラサイトマタンゴ・キング。森の王の共生者。
おそらく竜の至る所に菌糸を仕込んでいたのだろう。
それが、竜の死によって生命力のバランスが崩れて、一気に侵食したのだ。
目に見える勢いで竜の遺骸が消化されて、土に還っていく。
少女のいる場所も、白い菌糸に覆われ、どんどんと下へ下へとずぶずぶ崩れ落ちていく。
「弱肉強食。諸行無常……。儚いものね」
増強した生命力によって、一瞬で動ける程度に回復したオークの少女は、自分の身体に身体強化を施し、急激に空洞化していく牢木の中を跳ねながら登る。
だいぶ下まで落ちてしまった。出口は、あの竜がブレスで吹き飛ばした場所しかない。そこまで登らないと。
「よっと、っと、と。はあ、こりゃ凄い、まるで生まれ変わったみたいに身体が軽い!」
よっぽど強い竜だったんだなあ、とオークの少女は改めて友人に感嘆の念を抱く。
重力の軛など無いように、少女は竜の形の空洞(うろ)を飛び跳ねる。
一本一本の太さが少女の身長ほどもある枝――あの竜は「生木の杭」と言っていたか――が何本も、竜の体があった場所を貫いている。竜の体が崩壊したため、取り残されたのだろう。
「それになんだか、妙な感覚がするねえ。まるで――」
まるで最期の瞬間に、命の流れが見えた時のような。
森の命が全て見えているような。
森の王の生命力に絡め取られたような――――?
【ほう、私の声が聞こえるのか】
「――――ッ!?」
ついにオークの少女がうろの出口に差し掛かった時、それが聞こえた。
頭の中に直接響くような声。
途端にぞわっとオークの少女に鳥肌が立つ。
――――これに逆らってはいけない。
生存本能が、そうやってがなり立てる。
恐らく、いや間違いない。これが、森の王。
死の森の支配者、歩かないマンドレイク。
――マンドレイク・フォレストキング。
(存在の格が違いすぎる……!!)
相手は迷宮異界(ダンジョン)になるまで成長したモンスター。
竜を屠ったとはいえ、一介のオークとはまるで全く格が違う。
見渡すかぎり一面の森全てが、このマンドレイク・フォレストキングの身体なのだ。
【オーク鬼。ふむ、そうか――――】
心臓の音が痛いくらいに響く。
この遭遇が早く終わってくれるようにと一心に祈る。
【――――いい事思いついた。お前たち、私に仕えろ】
断ることなど、出来はしない。
竜も生前言っていた。「森の王には逆らうな」と。
言われなくても逆らうものか。
「っ、拝命、しました。森の王」
◆◇◆
これは『森蝕時代』が始まるほんの少し前の話。
森の王とオーク鬼が盟約を結ぶ、ほんの少し前の話だ。
=================================
【オーク・ドルイド……。じゃあ名前は『オード』ちゃんだな】
「(……ネーミングセンスが壊滅的……ッ!!)」
オーク鬼はブヒブヒという感じで共通魔物語のオーク鬼訛りで話し、竜はがおがおと共通魔物語の竜訛りで喋ってます。
2012.04.08 初投稿
因みに「マンドレイク・フォレストキング」にする前の仮タイトルは「さあ食えお前好きだろマンドラゴーラ」だったりする。
もし野菜が意識を持っていたら、そしてニンゲンの意図を汲み取って勝手に自分で品種改良されていったら……という一発ネタにする予定だった。
「マンドラゴーラって苦いから嫌いなんだよなー」
『何をーー!? なら甘くなってやらあ!! ふぬぬぬぬぬ、はあっ! 品種改良完了! さあ食えお前好きだろマンドラゴーラ!』
という感じだった。