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No.32095の一覧
[0] 【ネタ】七大悪魔が現れた!! オリジナル[0](2012/03/16 01:37)
[1] エロゲをしても怒らない嫁であって欲しい。[0](2012/03/18 00:24)
[2] 皆さん、今までありがとうございました。[0](2013/12/06 02:00)
[4] リハビリだーー!!短くてごめんなさい。[0](2014/07/31 03:38)
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[32095] 【ネタ】七大悪魔が現れた!! オリジナル
Name: 0◆ea80a416 ID:55084a88 次を表示する
Date: 2012/03/16 01:37
「…おい、何故奴等は来ない?」

部屋の中で少女の不機嫌な声が響く。
部屋といっても、大の大人が50人は入れるような大きな部屋だ。大部屋と言っても過言ではないだろう。
その大部屋にはあらゆる一流の芸術品があった。
絵画・石像・装飾品、全てが一流。いや、この世で一つしか存在しないと云わんばかりの輝きを放ってる。
豪華絢爛に満ち溢れた大部屋の中央には、大きな円卓が鎮座している。
円卓に置かれている席は七つ。
どの席も王の椅子、玉座といっても過言ではない壮麗を誇る椅子だ。
しかし今その玉座には空席が目立ち、埋まっている席は本来の数の半分以下の三つしか埋まっていなかった。
その埋まった三つの席の一つに座る少女---嫉妬を司る悪魔、ベルゼブブは不機嫌そうに---否
、憤慨極まる表情で四つの空席の椅子を睨み付けながら言葉をもう一度発した。

「……何故他の四人は来ない?」

「落ち着きたまえ、ベルゼブブ」

憤慨極まんとする少女を諌めたのは、埋まった三つの席の一つに腰掛ている一人の紳士だった。
彫りの深い上品な顔立ちに、顎先に生えた髭がよく似合っている。
その男に相応しい上品なスーツに身を包み、長い足を組みながら紅茶を飲む姿は、正しく紳士と言う言葉を表している。
彼こそは憤怒を司る悪魔、アラストルである。
憤怒を司る者とは思えない落ち着きようだ。
むしろ、ベルゼブブの方が憤怒を司っている様にも見える。

「何が落ち付けだ。アラストル、今日を何の日だと心得ている?」

「我ら七大悪魔が集う、七大悪魔会議だろう?」

「そうだ。これからの魔界の行く末を決める、10年に一度の大行事だ。だというのにあの馬鹿共が…!おい、ベリアル。お前は何か聞いていないのか?」

「知らねーつーの」

ベルゼブブの問いにやる気無く答えた一人の青年。
黒い髪をした髪を肩口まで伸ばして、後ろで一つに縛っている。
東洋系の顔立ちをした、凛々しい顔立ち。
人間界でなら芸能界でも活躍できそうな容姿だ。
この部屋に入る者全てに置いて共通している事は、皆麗しい容姿をしている事だ。

「てか、他の奴等が来ないなら、俺も帰っていい?用事あるんだけど」

「ベリアル…!!」

そのやる気皆無な言葉に青筋を立てていきり立つベルゼブブ。
それを諌めたのはやはり常に紳士たるアラストルであった。

「だから落ち着きたまえ、ベルゼブブ。感情に支配されるほど愚かなことはないぞ?ほら、紅茶を飲んで落ち着きたまえ」

「…憤怒を司るお前に言われたくないぞ」

「だからこそ、だよ。憤怒を司る私が憤怒を制す。これは即ち私が私を制していると言う事なのだからね」

優雅に紅茶を飲むアラストルを見て、チッと舌打ちをしながらベルゼブブは心の中で思う。
この二重人格が、と。

「おっと、私の紅茶が切れてしまった。丁度いい、私の分と君の分の紅茶のいれてもらおう。ベリアル、君の分もどうだい?」

「いらねーす。紅茶苦手」

「紅茶の良さをわからないとは人生を損しているものだというのに」

「ドクペの良さなら幾らでも語れますよw」

それこそ分からん。
と呟きながら、アラストルは円卓の上に置かれていた呼び鈴を鳴らす。
チリリンという鈴やかな音が響くと、直ぐに部屋の扉が開き、一人の悪魔が入ってくる。
ベルゼブブ付きの従魔の一人だ。

「ギギ。お呼びでしょうか」

「ああ、私とベルゼブブに紅茶を頼む。おっと、ダージリンで頼むよ」

「ギギ。申し訳ございません。ただ今ダージリンは切らしております」

ピクリとアラストルの顔が硬直する。
それを見てベルゼブブは少しやばいかもと思う。

「…では他の紅茶を頼む」

「ギギ。申し訳ございません。紅茶は全て切らしております」

紅茶の注文を忘れていました。
そんな言葉を発する己が従魔の言葉と共に、部屋の中の空気が瞬間的に殺人的に重たくなるのをベルゼブブは感じた。
殺人的な空気を醸し出しているのは先ほどまで優雅に紅茶を飲んでいた紳士、アラストルだ。
手の中に持っていた、空となったカップを円卓の上に置いて、俯いていた顔をアラストルが上げたとき、憤怒は爆発した。

「ああ゛!?てめえ!!紅茶が無いってどういうことなんだよ!」

「ギギ!?」

憤怒を司る悪魔の激昂に慌てふためく従魔。
憤怒は止まらない。憤怒は止められない。
憤怒は直進するのみ。

「ギギ、じゃねえよ!!手前と紅茶どっちが大事だと思ってやがるんだ!」

「ギギ?勿論自分であります」

「そうかー……消す」

従魔の言葉にとても良い笑顔を浮かべたアラストルは、己が持つ最強の概念武具、終焉〈テュルフィング〉を発動させながら立ち上がる。
終焉〈テュルフィング〉
憤怒を司る悪魔アラストルが持つ最強の概念武具。
己の手を漆黒の球体で覆うものである。
その力は終焉〈テュルフィング〉で触れたものをどんな物、生き物であろうと問答無用で殺す事だ。
魔界最強の攻撃力を誇るとも言われる凶悪極まりない概念武具だ。
真っ向から対抗できるのは傲慢を司る悪魔ベリアルが持つ最硬の概念武具、領域〈アイギス〉だけだと言われている。
この男、殺す気満々だ。
流石にこれにはベルゼブブが慌てた。
己が従魔がこのままでは存在すら残さず消されてしまう。

「お、落ち着け!アラストル!」

「ああん!?これが落ち着いていられるかぁぁ!」

今度はベルゼブブがアラストルを諌めている。
先ほどとは逆の立場となった二人。
己を諌めようとしてきたベルゼブブを殺人的な目で睨むアラストル。

「いいか、ベルゼブブ!紅茶が!紅茶がなかったんだぞ!?だったら殺すしかないだろうがぁ!」

「いいから落ち着け!!感情に支配されるなど愚かだと自分でさっき言ってただろ!?」

「そんなの知るかぁ!!いいかぁ、憤怒を司る俺が感情に支配される。それはつまり、俺そのものが憤怒の証明となるってことなんだよぉぉ!つまりは俺=憤怒最高ってことなんだよぉ!」

憤怒を司る悪魔 アラストル。
彼は普段は紅茶を飲むことによって、憤怒を押さえ込んでいる悪魔だった。
紅茶を飲んでいる時は、もの静かな紳士なのだが、紅茶が無くなった時、彼は全てに憤怒する荒ぶる化身と化すのだ。
はた迷惑極まりない存在だ。


「流石アラストル、毎度の事ながらマジぱねえっすwwww」

ベリアルはアラストルを囃し立てながら、終焉〈テュルフィング〉の影響を避ける為に、己が持つ最硬の概念武具、領域〈アイギス〉をいつでも発動できるようにしていた。
ちゃっかり自分だけ安全地帯に逃げ込んでいる。
ベルゼブブはベリアルを憎たらしげに睨み付けるが、睨みつけられた本人はどこ行く風といった風情だった。

「とにかく少し待ってくれ。代わりのものがないか私が確認してみる」

「代わりのもの!?」

「ああ、そうだ。少し待ってくれれば、お前を納得できる物を持ってくる」

「………いいだろう。だが俺が納得できなかったら分かっているんだろうなぁ?」

「ああ、そこの従魔を殺していい」

「ギギ!?」

終焉〈テュルフィング〉をちらつかせながら、脅しつけるアラストルに対して、非情の言葉を言うベルゼブブ。
これに慌てたのは従魔だ。
下手したら自分の命がないのである。
あの魔界最強の概念武具 終焉〈テュルフィング〉によって存在を消されるかもしれないのだ。
これに慌てないはずがない。

従魔は慌ててベルゼブブの所に寄ってきた。
そして小声で会話をする。

「ギギ!ベルゼブブ様!何て事いうのですか!?」

「やかましい!元はといえばお前が紅茶を頼み忘れたのが悪いんだろうが、反省しろ」

「ギギ!反省はするけど殺されるのは勘弁です!」

「ええい、うるさい!それより本当に茶はないのか?」

「ギギ。はい…後はベルゼブブ様に出そうと思っていた、百均の昆布茶しかないです」

「何で私に出す茶が百均の昆布茶なのだ!?」

「ギギ。経費削減でして」

「経費削減だからって、地獄の宰相にして七大悪魔筆頭たる私に百均の昆布茶を出すなぁぁ!」

「ギギ。どうせ味なんてそんなにわかんないでしょ」

「貴様ぁ!ええい、もうめんどくさい!その昆布茶をアラストルに出して来い」

「ギギ!?何をおっしゃいますか!?あんな状態のアラストル様に百均の昆布茶何て出したら本当に殺されてしまいます!」

「うるさい!むしろ殺されて来い!」

「ギギ!?ひでえ!このロリ悪魔ひでえ!!」

「…………ああん?」

従魔はこの言葉を言った事を後悔した。

目の前にいる悪魔は見た目幼女ハァハァだが、その実七大悪魔筆頭であり、地獄の宰相ベルゼブブなのだ。
目の前のベルゼブブの目が緋色から金色になっている。
従魔として長年ベルゼブブに仕えた自分は主のこの状態を知っている。
これはベルゼブブが己が持つ万能の概念武具 栄光〈カドゥケウス〉を使う前兆だ。
アラストルの終焉〈テュルフィング〉と並ぶ凶悪な概念武具。
従魔は自分の死を強く感じた。

「私が…何だって?」

「ギギ!その容姿麗しく、その力は天地魔界並ぶものが居ない至高の我が主ベルゼブブ様です!!」

自分のおべっかに気を良くしたのか、ベルゼブブは金色だった目を普段通りの緋色に戻す。

「よし、では逝ってこい」

「ギギ。……はい」

ベルゼブブに促されて昆布茶を淹れてからアラストルの元に向かう。
進むも地獄、退くのも地獄だ。
まさしく前門の悪魔に後門の悪魔。
ここには悪魔しかいない。
自分も悪魔だけど。

「ギギ。アラストル様…お待たせいたしました」

「遅えぞ!あと4秒遅かったら終焉〈テュルフィング〉をぶちかます所だったぞ!」

荒ぶるアラストルは手に具現化させた終焉〈テュルフィング〉を振りかざそうとしていた。
ちらりとベリアルの方を見るといつの間にか領域〈アイギス〉を発動させていた。
どうやら、ベルゼブブと会話している間にかなり危機的な状況となっていたようだ。
ベリアルは安全地帯である領域〈アイギス〉の中からこちらを見ている。
その表情は非常に面白い見世物をみているかのようだ。
従魔は七大悪魔達の性格の悪さを改めて感じた。
こいつら最悪だ。

「ギギ。こちらになります」

震える手つきで昆布茶をアラストルの前に出す。
これをアラストルが飲んだら自分が死ぬんだ。
そう思うとさらに手が震えた。

「早くよこせ!!」

奪う様にアラストルが昆布茶を取る。
そして一気にそれを飲み干した。
一気に飲み干したはずなのに、従魔にはまるでスローモーションのように飲むように見えた。
そして今までの人生が脳裏を駆け抜けた。
あれ?これってもしかして走馬灯?

「んん!!?」

従魔が人生初の体験に戸惑っていると、昆布茶を飲み干したアラストルが奇声を上げていた。目を大きく見開く。そしてワナワナと震え始めた。
やはり百均の昆布茶では駄目だったか。
あれ?あれって俺が子供のときに飼った悪魔虫じゃないか、懐かしいなぁ。あの時、飛んで逃げちゃったんだよなぁ。本当に久しぶりだ。
従魔は走馬灯の中に再びトリップした。

「どう?アラストル、うまい?まずい?どっちwww」

うまいもまずいもない。
まずいに決まっている。
アラストルはいつも最高級品の紅茶ばかり飲んでいた。
そんな舌が肥えたアラストルに百均の昆布茶など、飲む価値すらないだろう。
決まりきった事を確認してくるベリアルの人の悪さに従魔はやるせない気持ちとなった。

アラストルは昆布茶を飲み干した後、顔を俯いた。
カップを円卓の上に置き、静かにしている。
嵐の前の静けさ。
この静けさが終わったら自分は死ぬ。
ふと、周りを見ると、自らの主のベルゼブブがベリアルの近くに避難していた。
何かあったら、すぐにベリアルの領域〈アイギス〉に飛び込む気満々だ。
自分を見捨てる気満々だ。
世知がたい世の中に従魔は涙が出そうになった。

その時、アラストルが俯いていた顔を上げて一言叫んだ。

「う…うまい!!」

世界が止まった。

まじっすか。
アラストル。
昆布茶なのに。

「ギギ!?」

「うぞぉ!?」

「まじっすかwww」

その言葉に驚きを表す三人。
特に従魔の驚きは凄い。
何せ、自分の命が助かったのかもしれないのだ。
昆布茶すげえ。

そんな三人に目もくれず、アラストルは続ける。

「ああ、うまい!実にうまい!私は今まで様々な紅茶を飲んできたが、こんな味は味わったことがない!!」

そりゃ昆布茶だからな。
三人は同時に同じ事を思った。

「従魔君!!この紅茶はなんて言うんだい!?是非とも教えてくれたまえ!」

その言葉に従魔は焦った。
ここで実は百均の昆布茶でした。
何て言える訳がない。
昆布茶を飲ませられた事がアラストルにばれたら、終焉〈テュルフィング〉が飛んでくるかもしれない。
ここが生きるか死ぬかの岐路だ。
選択を誤ってはいけない。

「ギギ!?え、えーと…わ、我が家秘伝の、こぶッティーといいます」

だが、その答えは残念な答えだった。
テンパリまくった従魔の頭からは、まともな答えを導き出せなかった。
従魔の言葉にぶふぅ!と笑いを堪える声が二つ響いた。
確かめるまでもない、ベルゼブブとベリアルの二人だ。
もう、七大悪魔に災いあれ。
従魔は本気で思った。

「何と…!!秘伝のこぶッティー!!…従魔君、とてもいい物を飲ませてもらった。是非ともまた飲ませていただきたい」

「ギギ。こ、光栄です」

昆布茶さいこー。
従者は本気で思った。

「君の家の秘伝のこぶッティーを出してくれたお礼だ。受け取りたまえ」

そう言い、アラストルは懐から、純度の高い魔石を取り出し従魔の手の中に収めさせる。
魔石は人間界では宝石のような物だ。
純度が高ければ高いほど高価なものとなる。
今、アラストルが出した魔石クラスとなると、下手な城を買えるクラスの魔石だ。
当たり前だが、百均の昆布茶とは釣り合いは全然取れていないものだ。
むしろ取れていたらびっくりだよ。
後年、この話を元に一つの格言が生まれる。
それは人間界に置いて、棚から牡丹餅と同じ意味を持つ言葉だ。



こぶッティーから魔石。



あらたな格言の元となる話が魔界に生まれた瞬間だった。





こぶッティーに満足したアラストルが機嫌よく椅子に座りなおした時にその一報は来た。

バン!と大きな音を立てて、大広間の扉が開く。
ベルゼブブ付の先ほどとは別の従魔の一人だ。

「騒がしいぞ!!」

「ブブ。も、申し訳ござません!ベルゼブブ様」

主の叱責に謝罪の言葉を出しながらも、明らかに従魔は慌てている。
その様子にただ事ではないなとベルゼブブは判断する。

「それでどうした?緊急事態か?」

「ブブ!ベルゼブブ様。暴食のモロク様がお亡くなりになられました!」

その言葉が従魔から出された瞬間に部屋が驚愕に包まれた。

「何だと!?」

「あのモロクが…!?」

「こいつは…冗談じゃすまされねえな…」

七大悪魔の三人の驚愕の声が出される。
それほど今入ってきた情報は信じられないものだからだ。

モロク。
七大悪魔の暴食を司る悪魔 モロク。
二メートルを超える長身を誇り、屈強な肉体を誇る悪魔。
極限までに鍛えられた肉体から繰り出される戦闘技術は、近接戦闘に置いては七大悪魔の中でも最強と言われている。
モロクが持つ最適の概念武具、覚醒〈ミームング〉との相性の良さも手伝い、戦闘に関しては抜群の信頼感を持つ悪魔。

そんなモロクが死んだというのだ。

七大悪魔の三人にはとても、同僚たるモロクが死んだというのが信じられるはずが無かった。

「っ!核は!?天魔核は無事なのか!?」

「ブブ。はい。天魔核の無事は確認されております」

「そうか…天魔核は無事か…」

従魔の言葉に無い胸を撫で下ろすベルゼブブ。

天魔核。
それは高位の天使や悪魔が宿す核。
高位の天使や悪魔の肉体が滅びると一つの核を残す。
それが天魔核だ。
高位の天使や悪魔は例え肉体を失っても、この天魔核さえあれば、復活が可能となるのだ。
なので彼ら七大悪魔にとって真実の死とはこの天魔核の破壊を意味する。
しかし天魔核となってしまうと最低でも10年は肉体の再生はなされない。
それはつまり、肉体が滅んだ悪魔は、最低でも10年もの間天魔核として生きるという事を意味する。
それは屈辱極まりない事なのである。
モロクをそんな屈辱の事態に巻き込んだであろう、存在にベルゼブブの胸中に敵意が沸いてくる。
しかしいったい誰がモロクを殺したというのだ?

「モロクを殺した存在…まさか、七大天使か…」

ベルゼブブの脳裏に七人の天使達が思い浮かぶ。
七大天使。
天界における最高幹部の七人の天使達。
魔界における最高幹部たる自分たち七大悪魔の対にあたる存在である。
七人が七人とも出鱈目の戦闘能力を誇り、自分たちを殺せるであろう可能性を持つ存在。
自分達、七大悪魔を除いてモロクを殺せる存在など限られてくる。その可能性はベルゼブブの中で高まっていた。
最終戦争〈ハルマゲドン〉の先触れとして彼らが攻めてきたのだろうか。


「ブブ。その事ですがモロク様の死の原因は確認されています」

「!?何故モロクは死んだのだ!?」

己が従魔の言葉に荒く詰問をする。
ベルゼブブだけでなく、アラストルやベリアルも固唾を呑まず従魔の言葉を待っていた。

「ブブ。はい…モロク様の死因は…」

「死因は…?」

ゴクリと誰かが唾を飲み込む音が聞こえる。
魔界切っての武の悪魔、暴食のモロクを殺した存在とは…!?




「ブブ。食中毒です」



時が止まった。



「…………」

「…………」

「…………はい?」

「ブブ。厳密に言うと、モロク様の体内で新種の食中毒が発生したようです。新種だった為に抗体を持たなかったモロク様は、健闘空しく亡くなったそうです」


「…………………」

「……ふ、彼らしいと言うべきかな」

「モロク…まじぱねえっすwww」

「………………………………」

「彼は本当に何でも食べていたからね。何かまずい組み合わせの食べ物を口にしたのかな」

「モロクは食に関しては、まじぱねえからなwwwあいつ生肉とか生魚とか平気で食べてたしwww」

「……………………………………………」

「彼もまた己が司る感情のままに生き、そして死んだいったのか…悲しいね、我ら悪魔というのは」

「英霊となったモロクに敬礼 ビシ!!」

「……何がビシ!!だ!?ボケェェェェェ!!」

ここでベルゼブブが大爆発。

「馬鹿か!?我ら魔界のトップである、七大悪魔が食中毒で死亡って馬鹿なのかぁぁぁぁ!!」

「だって、実際に死んでるんだし、仕方が無いじゃん」

「仕方がないですむか!今最終戦争〈ハルマゲドン〉が起こったら、我らはモロク抜きで戦う事になるんだぞ!?唯でさえマモンはあれなのに!」

ていうか、肉くらい焼いて食べようよ。モロクさんよ。

「それは大丈夫だろう。まだ、サタン様は降臨されていない。向こうとて、ルシフェルはまだ居ないと聞く。最終戦争〈ハルマゲドン〉までは時間があろう」

「くぅ…その通りだか…嗚呼、申し訳ございません。サタン様…貴方様が居ない今、我ら七大悪魔が魔界を取り仕切らなければいけないというのに…」

よよよ、と泣き崩れそうなベルゼブブ。

「とにかくだ、今は我々がすべき事は、モロクの死によって空いた席の後釜を見つけることだろう。少なくとも後10年はモロクは蘇らないのだからな」

「そ、そのとおりだな。アラストル。よし、従魔に次世代の暴食候補達の資料を持ってこさせよう」

アラストルの言葉に、気を持ち直したベルゼブブが円卓の上に置かれている呼鈴を取ろうとしたが、その前に扉はまた大きな音を立てて開いた。

「また騒がしいぞ!」

「ベベ。も、申し訳ございません。ベルゼブブ様」

主の叱責に謝罪の言葉を出しながらも、明らかに従魔は慌てている。
その様子にまたもやただ事ではないなとベルゼブブは判断する。

「今度は何だ!?また緊急事態か!?」

「ベベ!は、はい!ベルゼブブ様。色欲のアスモデウス様がお亡くなりになられました!」

「んなぁ!?」

「何と…」

「ちょwww皆死にすぎwww」

新たな七大悪魔の死を告げる従魔の言葉に、再び驚愕に包まれる室内。


アスモデウス。
七大悪魔の色欲を司る悪魔 アスモデウス。
細い顔立ちと体つきをした悪魔で、美形揃いの七大悪魔の中でもっとも美しい悪魔だ。
その凄まじい美貌は美を魅入らせ、狂わせた存在とも言われ、魔貌のアスモデウス。絶倫のアスモデウス。寝取りのアスモデウス。100股のアスモデウス。頼むから死んでくれよアスモデウスと、様々な異名を持つ悪魔である。
アスモデウス自体の戦闘力はそんなに大した事は無いが、アスモデウスが持つ、最愛の概念武装 恋人〈モラルタ〉によって、常に彼の周りは愛人達によって守護されている。
その愛人達に守られた彼を殺す事ができる存在となると限られてくる。

「今度こそ七大天使か…?いや、アスモデウスは他の悪魔達にも恨まれていた。もしや公爵級の反乱…?」

アスモデウスはその美貌によって、数多くの愛人を持っている。
ゆえに、他の男の悪魔達に大層恨まれていた。
悪魔人気調査で、嫌いな悪魔編でぶっちぎりの第一位を誇る悪魔だったのだ。
そんな全男悪魔の嫉妬を集めてると言っても、過言ではないアスモデウスなのだ。
公爵級達の反乱によって殺された可能性というのは十分に有り得る。
ベルゼブブはそう判断していた。

「ベベ。また、アスモデウス様の天魔核の無事と共に死因も特定されています」

「!?アスモデウスの死因は!?」

「ベベ。アスモデウス様の死因は…」

ゴクリと誰かが唾を飲み込む音が聞こえる。
魔界切ってのプレイボーイであり、その愛人達に身を守らせる悪魔、色欲のアスモデウスを殺した存在とは…!?





「ベベ。腹上死です」




時がかなり止まった。



「……………」

「……………」

「……………はい?」

「ベベ。厳密に言うと、自分の限界を知りたくなったアスモデウス様は、愛人1000人を集めて全員とやり抜くことを決めたようです。幾たる困難、くじけそうになる自らの心と精力。しかしアスモデウス様はそれらを乗り越え、見事1000人切りを果たし、そして…前倒れに…真っ白になって力尽きたそうです…」



巨星堕つ。


正しく男の中の男です。
従魔は多大な嫉妬とかなりの尊敬を込めて呟いた。
腹上死、アスモデウスは男の浪漫の一つを貫き通したのだ。

「アスモデウス…まじぱねえにも程があるっす」

「我々は真なる漢の生き様を見れたようだね…」

ベリアルとアラストルが万感の思いを込め呟く。
確かにアスモデウスは死んでしまった。
しかし、彼は自らの漢としての限界に挑んだのだ。
多くの者は彼を愚かだと思うかもしれない。
だが、自らの限界を突破せんが為にその命を燃やし尽くした彼の生き様は永遠に語り継がれるだろう。
愛すべき愚か者…勇者として。




「アスモデウスに…敬礼!!」

本気の敬礼をしてみせるベリアルとアラストルの横で七大悪魔筆頭にして地獄の宰相たるベルゼブブはかなり白くなっていた。








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