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No.31933の一覧
[0] GANTZ 低クオリティ編  *R―15[ガツン](2012/03/27 22:25)
[1] 低クオリティ編 2[ガツン](2012/03/13 19:21)
[2] 低クオリティ編 3[ガツン](2012/03/19 00:04)
[3] 低クオリティ編 4[ガツン](2012/03/15 19:51)
[4] 低クオリティ編 5[ガツン](2012/03/19 09:11)
[5] 低クオリティ編 6[ガツン](2012/03/28 05:47)
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[31933] 低クオリティ編 4
Name: ガツン◆3adaabeb ID:8fe8f8ad 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/03/15 19:51
*注意! 妹「私……将来お兄ちゃんのお嫁さんになる」
*拒否反応ある方はUターン推奨します















荒い息がマンションの部屋に響く。
まだ転送を終えていない胸から下を見下ろしながら、僕は荒れ狂う心臓の声を聞いていた。



(誰も帰ってこない……全、滅)


ミッションの終了。
あの後……■■さんの惨たらしい姿を見せつけられた、あの後、僕は簡単に精神の安定を失った。
情緒を爆発させ、とにかく走った。汗と涙と鼻水を垂れ流し、ゲロを吐きながら無我夢中で走り続けた。
戦闘なんざ放棄した。星人がただ怖かった。もしまともに対峙しようものなら、発狂していたかもしれない。
変わり果てた■■さんと参加者達の姿が頭の中でフラッシュバックするかのように蘇り、僕は奇声を上げながら、意味もなくフィールド内を駆けては跳び回り……約束の一時間、タイムアップを迎えた。



「おぇぇぇぇぇぇぇ……!?」



こりずに吐く。
転送を終えた僕はその場で四つん這いになり、もうぶちまけるものなんて残ってもいないくせに、散々えずく。
……あの化物達から逃げ切れたのは、ただの僥倖だろう。
地面に足をついていては駄目だと本能的に察し、何度も跳躍していたのも結果的には良かったのかもしれない。
マリオかよと突っ込みをいれられるくらい、スーツの性能に任せた大ジャンプを僕は繰り返し行っていた。
あのモグラどもは、基本地中から離れられないらしい。



「はぁ、はぁ……!」



GANTZからやかましい音声が鳴り、採点画面が表示される。
僕は手足を床につけたまま顔を上げた。
口についている吐瀉物の欠片を拭い、画面を凝視する。



『うんこたれ蔵
 0点
 ~歩く汚物~ 』



ガンッッ、と僕は採点画面を殴り付けた。













修復不可能な心の傷を負ったまま、僕はGANTZの部屋を後にした。
GANTZは高層マンションの一室にあった。勿論名も聞いたことのないマンションだ。そもそもこの地が一体どこであるのかも僕はわかっていない。
顔は憔悴し足取りは幽鬼そのものだったが、とにかく家族との再会を糧に、僕は帰るべき居場所へ戻ろうとする。
もう何もしたくないという虚無感は、最後の力を振り絞ってどこか遠くへブン投げた。

どうやら僕がいる場所は埼玉県らしい。
旅行の帰り道は確かにこの県を経由していた筈だから、交通事故があった場所も恐らくは埼玉なのだろう。
『僕』のいるこの世界が本当に漫画のGANTZの世界であるとした場合、この星には無数のGANTZがあることになる。(だよな?)
僕はその中でも、日本の埼玉にあるGANTZに召喚されたのだろうか。
漫画は一度一通りしか見ていないので、記憶も、知識も、かなりあやふやだ。

僕の住所は東京の国分寺市。
金は生憎持ち合わせていないが、都と隣接しているここからなら、交通機関に頼らなくても何とか帰れない距離でもない。普段だったら絶対ごめんだけど。
スーツの上から服を着る僕は大して考えもしないまま徒歩で自宅を目指した。
精も根も尽き果てた筈の体は、今はただ作業をこなす機械のように足を進めてくれた。
夜の埼玉は、酷く寒く、暗かった。

星だけは、綺麗だった。















自宅に到着したのは夜が明けた朝方だった。
帰巣本能みたいなもので自宅に辿り着いたのはいいが、鍵がしまっている。車庫には車もなく、父さん達が帰ってきた気配はない。
考えてみれば当たり前か。事故が起きたのは昨日の今日だ。父さん達は今、どこかの病院のお世話になっている確率が高い。

朝日の照る玄関の前でしばらく立ち呆けていた僕は、まずは家に入ることにした。ポストに隠している予備の家の鍵を使って戸を開ける。
服とスーツを乱暴に脱ぎ散らしてシャワーを浴びた後、ベッドにも向かわず泥のように眠ってしまった。

次に目を覚ますとまた朝だった。丸一日ぶっとおしで寝た。木崎彰人は、色んな意味で一杯一杯だったらしい。
いくぶんか調子を取り戻した僕は、これからどうしようかと考え、祖父祖母の家に電話をかけてみることにした。
どこにいるかわからない父さん達に直接連絡をとるのは不可能だからだ。この時代、携帯はまだ普及していないのである。今はポケベルの全盛期ですよ、奥さん。
事故から二日も経てば親戚には連絡が回っているだろう。いまだ我が家で現役を誇っている黒電話の受話器を手に取り、僕はダイアルを回した。



「……いや、ちょい待て」



最後の番号を回そうとする直前、僕はある可能性に気付く。
漫画では……GANTZによって製造された人間と、そのオリジナルの人間が同時に存在するという異常事態が起きていなかっただろうか。
序盤の方でヒロインをはっていた……き、き……岸? 駄目だ、思い出せない。あのキャラすぐに退場したから影が薄過ぎる。
とにかく、自殺未遂をやらかしたそのヒロインは二人存在していた筈だ。
漫画の言葉を借りるなら、今の僕はファックスから出てきたコピー(……意外と凹む)だ。オリジナルが生きていた場合、多分僕の方が偽物ということになる。



「勘弁してくれよ……」



二人の木崎彰人が鉢合わせた場面を想像して、頭が痛くなった。
まだ可能性に過ぎないが、オリジナルが生きていた場合、もう一人の僕は家族と一緒にいるだろう。そこに僕が連絡を取れば、一体お前は誰なんだという事態になる。
父さんと母さんもGANTZの部屋にはいなかった。実は僕も奇跡的に助かっているのかもしれない。
ちぃちゃんの側で、あの小さな手を今も握っているのかもしれない。
……全身から力が抜けて、へたり込みそうになった。
僕の居場所は、ひょっとするともう存在しないのか。



「……頼むから死んでいてくれ、僕」



すげー言葉を吐きながら僕は電話をするのは止めにした。
家族の安否は気になるが、今はまだ迂闊な真似をしない方がいい。そもそも僕が無事にくたばっていたとして、一人家に帰っていることをどう説明すればいいんだ。
今は状況が動くのを待とう。しばらく様子見だ。

そうと決まると僕は動き出した。
もう一人の僕がいるという最悪のケースを想定して、『僕』が家に帰ってきていたという痕跡を消す。玄関に施錠しスペアキーもポストへ、まだ誰も帰ってきていない我が家の状態を演出した。
それから僕は散らかした衣服を持って、離れにある蔵へ移動。
この建物は一階が物置で、二階は僕とちぃちゃんの遊び場だった。軽い秘密基地みたいなものだ。
漫画の収まった本棚やシーツも敷いてあって、食糧や寝床を確保さえすれば、生活するには問題ない。

ここの窓を覗けば本家の様子もすぐにわかる。
僕はここに籠城して、誰かが家に出入りするのを窺うつもりだった。家族の一人でも姿を現せば、ぐっと見通しがつきやすくなる。
自分の家だっていうのにこそこそ隠れる真似をして、歯がゆい。
僕はつくづくそう思った。

……ふぅ、ダイの大冒険でも読むか。







そして、二週間が経とうとする頃。
焦れまくった僕が行動を起こすか否か本気で悩んでいると、家に誰かがやって来た。
はっとした僕は窓に近付いておそるおそる覗き見る。
いたのはたった一人。
小さな身長に、おかっぱ気味の黒い髪。
ちぃちゃんだ。



(……!)



感動とか衝撃とかで僕が言葉を失っていると、ちぃちゃんは台座を使ってポストに手を伸ばし、予備鍵を持って家に入ってしまった。



「おい、どうなってるんだ……?」



時刻は夜。外は闇が落ちてすっかり暗くなっている。
ちぃちゃんが一人って、何だこの状況。
父さんも母さんも、僕もあの子の側にいないって、どういうことなんだ。
何でちぃちゃんが、こんな時間に、一人で家に帰ってくるんだ。
まさか、まさか、まさか。
騒ぎ始める心臓の音を聞きながら、僕は無意識のうちにガンツスーツへ手を伸ばしていた。上からジャンパーとパンツを着て、そっと蔵を出る。
あ、しまった。
スーツ洗ってなかった。
ナンか臭う。



(二階……?)



ぱちり、ぱちり、と居間や書斎、一階にある部屋の明かりがついては消えたかと思うと、今度は階段の電球が灯った。ちぃちゃんは上の階へ移動しているらしい。
まるで、誰かを探すように家の中をさまよっているような動きだ。

物陰で息を殺していた僕は、家の壁際まで出てくると、ぐっとジャンプした。
スーツの力によって七メートルはある瓦屋根に難なく着地する。
音を立てないように屋根の上を移動した僕は、直感的に自分の部屋の窓に身を寄せた。
あらかじめ鍵を開けておいた窓をほんの少し横にずらし、室内からは見つからないように、そっと中をのぞく。

ちぃちゃんは、それからすぐ部屋に入ってきた。



「……ひ、ぅっ」



明かりもつけず部屋をきょろきょろと見回していたかと思うと、ちぃちゃんは、あっという間に涙を流し始めた。
刃物で切りつけられたかのような痛みが僕の胸に走った。



「おにい、ちゃんっ……どこに行っちゃったのぉ……?」



ぺたん、とその場に座り込むちぃちゃん。
嗚咽を何度も漏らし、両手で何回も目を拭う。



「パパ、ママぁ……みんな、ちぃを置いてかないでぇ……!」



その言葉を聞いて受けた衝撃は、どれほどのものだったのだろう。
夜の窓辺にひそむ僕は一瞬自分を見失った。
けど、すぐに。
動いた。
ちぃちゃんが泣いている。



「ちぃを、ひとりにしないでっ……!」



もう後先のことなんて放り出して、僕は勢いよく窓を開け放った。



「ちぃちゃん!!」



突然窓から現れた僕を、ちぃちゃんは振り向いて唖然とした顔で見つめた。
土足で自室に侵入する。
ちぃちゃんは、僕が目の前までやって来るまでその瞳を見開き続け、やがて顔をくしゃっと歪めた。



「お兄ちゃんっ!」



ちぃちゃんは転がるように、勢いよく僕の胸へ飛び込んできた。



「あ、ぁ、ぁ……っ!? おにい、ちゃっ……本当にっ、おにいちゃん……っ?」


「うん、僕だよっ、彰人だっ。ちぃちゃんの……馬鹿兄貴だよっ」


「うぇっ、ぁ、うぅ~~~~~~~~~~~~~~~っ!!」


「ごめんね、ごめんねっ……!」



ちぃちゃんは泣きじゃくりながら、僕の胸に何度も顔をすり寄せてくる。
その頭に手をやって抱き寄せる僕も、瞳に涙を溜めた。
馬鹿野郎と自分を罵る。ちぃちゃんをこんなにも悲しませやがって。
身の保険のことばかり考えて、僕はたった一人の妹にずっと寂しい思いをさせていたのだ。
あの部屋で自殺を踏み止まったのは、ひとえにこの子のためだったというのに。

ごめん、ごめん、と僕は繰り返し謝った。
泣き続けるちぃちゃんは僕の服をぎゅっと握りしめて、決して離そうとしなかった。
この子が泣き疲れて寝てしまうまで、僕はその体を痛いほど抱きしめ続けた。










祖父祖母に連絡を取ったのは、それからすぐ後のこと。
眠りに落ちても決して僕を放さないちぃちゃんを抱っこしながら電話をかけた。
最初はとんでもなく驚かれて、しまいにはおいおい泣かれてしまったが、お祖母ちゃんから電話を変わったお祖父ちゃんにこの二週間何があったか聞いた。

あの日、通報を受けた救急車が事故現場に駆け付けると父と母は既に虫の息だったらしい。
後部座席にいたちぃちゃんは軽い打撲程度。『何か』が覆い被さったような隙間が、潰れた車内の中で気を失っていたこの子を守っていたそうだ。
そして、僕だけが忽然と姿を消していたのだと。

病院に搬送された父母は意識不明の重体。
手術は成功したものの予断が許さない状態が続き、やがて翌日の朝に息を引き取ったらしい。
……父さんと母さんは、即死を免れたからGANTZに呼び出されなかったのかもしれない。
ミッションが行われる当日にさえ死ななければ、GANTZの強制力は発動しないのか。

ちぃちゃんが目を覚ますと家族は誰一人残っちゃいなかった。
散々泣いた後、この子は人形のように黙りこくってしまったそうだ。
行方がわからない僕は気掛かりだったものの、祖父と祖母はちぃちゃんを自分の家に連れて帰ったらしい。
そして今日。
祖父達が葬儀やら今後のことを話し合っているうちにちぃちゃんは二人の前から消え、僕や亡き父さん達を探すように、この家へ一人で訪れたのだ。



『彰人、お前どうして助かった? いや、あの日一体何が起きた?』


「……それが、僕にもよくわからなくて」



ありのまま起こったことを話しても信じてもらえる筈がない。
僕にできることは白を切ることだけだった。気が付けば知りもしない場所に寝ていた、と。
祖父は到底納得できない様子であったが、それ以上僕に言及することはなかった。
祖父自身、常識外の何かが起こったと薄々勘づいているのかもしれない。でなければ、今回の事件は説明不可能なのだから。

でも、そうか。
父さんと母さんは、死んでしまったのか。
生き残ったのは僕とちぃちゃん……いや、ちぃちゃんだけ。

……これから先のことを考えるとほとほと憂鬱になるが、今はとりあえず。
こうして妹と再会できたことを、ただひたすら喜ぼう。
それに、うん、あれだ。
今日はちぃちゃんと添い寝だ。
ひゃっほぃ。

はぁ……テンション上がんね。














「お兄ちゃん!」



父と母の葬儀を終えた後、僕とちぃちゃんは祖父祖母の家に厄介になることになった。



「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」



葬儀の前後は終始沈んでいたちぃちゃんは、日に日に元気が戻ってきている。



「お兄ちゃん、あのね! 聞いて!」



一つ問題があるとすれば、ちぃちゃんはあれから僕にずっとべったりだと言うことだ。



「えへへ……ちぃね、お兄ちゃんのこと大好きっ!」



このままだと少し不味くぁwせdrftgyふじこlp






僕の妹は今年で八歳になる。
小学二年生と言えばまだまだ子供だが、それでも周りの子と比べると、幼さというものが言動の中で目立っていた。
事故後は、より一層その面が強くなったような気がする。
や、僕限定であるのだが。



「お兄ちゃん」


「なに、ちぃちゃん?」


「……うふふ、何でもな~い」



ちぃちゃんはあぐらをかいた僕の膝の上に座り込んでいた。
その小さな体をすっぽりと僕の胸の中に収めながら、寄りかかるようにして頭をこちらに預けてくる。
何がそんなに嬉しいのか、僕が一々返事をするだけで妹はころころと笑った。

いや、嬉しいよ僕だって。
可愛い妹とこんなイチャイチャできるなんて、もう兄冥利に尽きるよ。泣いて叫びたいくらい。
だけど……手放しで喜べないのが、僕とちぃちゃんの現状だ。



「ねぇ、ちぃちゃん。たまには友達と遊んできたら?」


「いい。ちぃ、お兄ちゃんと一緒にいる」



はたから見れば仲の良い兄妹に映るのだろうが、実際はもっとドロドロしてる。
ちぃちゃんのコレはただの甘えじゃない。依存だ。
父さんも母さんも失って、よるべき所が僕しか残されていない(と思い込んでいる)ちぃちゃんは、僕を決して離そうとしない。
いや、失うことを極度に恐れているのか。

ふと考えてしまうのだ。
今もこうして僕に付きっきりの妹は、僕がいなくなったらどうするのかって。
もし……もし、僕があの部屋から帰ってこれなかったら、ちぃちゃんは。
そんなもしもを想像してしまう。
これが現状を手放しで喜べない理由だ。依存され依存する僕とちぃちゃんの関係は、色んな意味で、非常に危うい。

あーちくしょう、行きたくねぇぇぇ。
GANTZよ、僕をもう巻き込んでくれるな。
原作に設定忠実じゃないとアタイ信じてる。



「ちぃちゃん、そんなこと言ってたら、お嫁さんに行けなくなっちゃうよ?」



──と、ちぃちゃんにそう言った瞬間。
嫌な寒気が僕を襲った。
一時的な身体の硬直も同時に起きた。
思った側から……コレかよ。



「じゃあ……ちぃ、お兄ちゃんのお嫁さんになる」



こちらへ振り向き、頬を桜色に染め、恥ずかしそうに微笑む妹は……本当に、本当に可愛かったんだ。
それなのに、僕ってやつは腹の底から喜ぶことができなかった。
笑ってやれたのかもわからない。

あの悪夢のような夜が、またやって来る。
胸の中にいるちぃちゃんを抱きしめながら、僕は泣きそう目で天井を見上げた。


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