「うー」
夜、鼻水をすすりながら茶々丸のゼンマイを巻くエヴァンジェリン。
ゼンマイを巻くのは魔力供給の儀式で、茶々丸が活動するために必要な行為だ。
「すみませんマスター。もっと強くしていただけないでしょうか?」
従者の要望に、エヴァンジェリンは顔をしかめる。
「これ以上は無理だ、体調が悪い。くそ、長谷川千雨のせいだ」
「……わかりました」
魔力供給も終わり、エヴァンジェリンは眠りについた。
その様子を確認した茶々丸は、小さくうなずいて立ち上がった。
茶々丸が訪れたのは、千雨の部屋。
「巻いてください」
「なんだ藪から棒に」
「あなたが! あなたがこんな体にしたんじゃないですか!」
「いや、わけわからん」
半分寝ぼけていた千雨はとっとと帰ってもらう為に、巻いた。
カリカリカリカリカリカリカリガリガリッ!
「そッ、いきな、ああっ、や、んくっ、ぃいやあああああああぁぁ!!」
「もういいな。ハイじゃあお休み」
玄関が閉められて、倒れ伏す茶々丸が残された。
「普段からあんな声出してるのか? 作ったのはハカセ達のはずだから。……ちょっと付き合い方考えたほうがいいかもしれんね」
その日の千雨の夢には、オヤジ臭いことを言いながらゼンマイを巻くエヴァンジェリンと、喘ぐ茶々丸が出てきた。
次の日の授業中。
そこには授業そっちのけで千雨をガン見する茶々丸の姿が!
「あ、あの茶々丸さん、ちゃんと授業を……」
「すみません、ネギ先生」
茶々丸は謝ったが、千雨を見続けていた。
昼食の時間。食堂に行こうとした千雨の元にすっと近寄ってきた茶々丸。
「千雨さん」
「……なんでしょう絡繰さん?」
スッと差し出されたのは、お弁当箱。
「……これからも、よろしくお願いします」
名残惜しそうに教室から出ていく茶々丸。
綾瀬夕映の言葉が教室に響いた。
「茶々丸さん、本気なのでしょうか?」