学園長に呼び出された千雨。お茶を出されて世間話中。
「このかとは仲良くやってくれてるかね」
「ええ、まあ同じ部活ですし」
幼いころ、馬鹿にされまくったのが悔しくて必死に勉強した千雨。その頃に本が好きになり、現在図書館探検部に籍を置いている。
「ところで、最近何か変わったことはなかったかの?」
「いえ、特に何も」
まさか前世の記憶云々を言うわけにもいかないだろう。
「……ふむ、そんなことはないじゃろ。――たとえば吸血鬼に襲われたとか」
そう言った学園長の目は鋭く光っていた。どうやらこの爺さんも只者ではないらしい。
「まさか、ぬらりひょん!?」
「……ワシ、人間じゃよ?」
説得力がない。
「はあ、魔法使い、ですか」
「たくさんおるのじゃよ。普通の人間は知らんがの」
そこで千雨の脳裏にひとつ疑問が浮かぶ。
「でも、魔法使いって不老不死だから、いつか人間にばれると思うんですが……」
「……は?」
どうやら種族が魔法使いなんてのはすでに居なくて、なる方法も失われているらしい。
「それにしてもおかしな話じゃのう。禁術のことは知っておるのに魔法使いがたくさんいることは知らんとは」
まあ、ここまで来たので、千雨は前世で特殊な場所にいて、そのころの記憶を持っていることを話した。
「ふむ。そうか……。その辺に謎があると考えていいのか……」
「謎?」
「うむ、君は自覚していないかもしれんが、現在君はワシらが魔力と呼ぶ力を、ものすごい勢いで放出し続けている状態なのじゃよ」
「はあ」
「君自身の魔力容量は普通の人間の平均程度で、現在もそのまま。放出している魔力量は莫大。普通に考えればすぐに気を失ってもおかしくない状態じゃ」
タライの水をバケツでくみ出しているのに、ちっともタライの水が減ってないような矛盾。
そこで何がどうなっているのか気になった学園長は千雨を呼び出したらしい。
「元気そのものですけどね」
「何が原因なのやら……」
と、そこで千雨の携帯が鳴った。
「あー、もう時間か」
「何か予定でも?」
「ネギ先生が元気ないみたいなので、パーティーでも開こうかって話が」
「ふむ、そうか……。千雨君には特に問題もないみたいじゃし、今日は帰っても構わんよ。調査は続けてみるが」
「はい、それじゃ失礼します」