コキュートスの件の借りを返すために超の手伝いをすることになった千雨。
「つってもコキュートスのデータとか色々やったろ。無茶なことはしねえぞ」
「ハハハ、まあ面白いものをありがとうネ。用件は対したことじゃあ無いヨ」
そういって超は一枚の紙を千雨に渡した。
「……? まほら武道会?」
「今度の麻帆良祭で開こうと思ってる格闘大会ヨ。いろんな格闘大会をまとめてコレ一個にするつもりネ」
「ビラ配りでもやればいいのか?」
とは言いつつも、千雨はそうではないことは分かっていた。
「いやいや、頼みとは、この大会に参加して貰いたいという事ネ」
「まあ、いいけど。八百長でもするのか?」
「そんな無意味なことはしないヨ。大会を盛り上げてほしいだけネ。ああ、優勝しても賞金を返せなんてことも言わないヨ」
超は話は終わりだと千雨に告げる。千雨は了承して帰って行った。
「千雨さんのおかげでメガロは大騒ぎ。大分前倒しになってしまったケド、計画も楽に進みそうネ」
ひとしきり悪そうな笑みを浮かべた超だが、今回のことでどうにも腑に落ちないこともあった。
「魔法バレに関しては専門の対策機関まで存在するネ。たかが式神一体をTVに出したくらいではすぐに対応されて騒動は収まるハズ……」
ところがこの件に関しては、多くの人間が『妖精』がTVに出たと認識している。そこがきっかけとなって多くの人間が魔法使い達の吐く嘘を疑い始めている。
「なぜあの小さな式神が例外となったのだろうカ? ……不思議だネ」
チート転生神が「変身したら正体がバレないのはお約束だよね!」と適当に付加した力が変な風に働いているのだが、神ならぬ身である超にはわからなかった。
帰宅した千雨は超に渡されたプリントを眺めて、どうしたもんかと考える。
「これも計画の一部なのかね」
【恐らくそうでしょう。超常の力を記録した映像を世界にばらまけば、彼女の目的には近づきやすい】
「まあ、私がオコジョにならないなら、勝手にやってくれって思うけど……」
空中散歩も気楽に行ける様になるだろう。もしかしたら弾幕ごっこの相手も現れるかもしれない。
【しかし、どうやって最後の一線を越えるつもりなのでしょう? これだけでは対策機関がつぶして終わりになるのでは?】
「その対策機関ってのがどこまで優秀なのやら。ちびの一件はまだ鎮火されてないんだろ?」
【ええ】
しばし沈黙する千雨とコキュートス。
「まあ、どーでもいいや。今日はちょっとまほネットでアーティファクトについて調べてみるかね」
【あ、これ面白いかもしれませんよ。『力の王笏』】
「見た目がマジで魔法少女ステッキだな。機能については……」