魔法公開肯定派の魔法使いからの情報暴露等で、公開否定派の魔法使いたちが隠蔽工作に躍起になっていた頃。
「『おわるせかい』と『千の雷』が出来て、なんで……」
広範囲殲滅魔法をあっさり成功させるが、垂れ流しの魔力を止められないおかしな弟子に頭を抱えるエヴァ。
ちびチルノを消せないなら制御させてみようと、関西呪術協会の資料を手に入れて教えてみてもうまくいかなかった。
「しかたがない、もっと別の方向からのアプローチを試す」
そうしてエヴァが提案したのは、なのはたちが使うミッドチルダ式、ベルカ式の魔力制御方法。
「GWを使って高町なのはたちがいる海鳴市に行くぞ。別荘から出たら連絡を入れておけ」
「はーい」
まあそんな感じで千雨とエヴァは海鳴市に行くことになった。
なのはからフェイトを通じてフェイトの母、リンディに話が伝わり、そこからなのはたちが所属する時空管理局という組織にまで千雨の話が到達した。
「なんか、大事になっちゃったね」
「これじゃまるで兵器の実験じゃねえか」
千雨となのはがそうつぶやく。無人世界に移動して、現在時空管理局の局員たちによって千雨のミッド式魔法の使用実験の準備が行われている。
「でも、千雨はなのはといっしょで『妖精』なんでしょう? 下手すると京都の時みたいなことが……」
フェイトの言葉を否定しようとしたが、千雨は自分がチート存在である事を思い出し、ないとは言い切れなかった。
「まあ、細かいところを調べておけば問題点もわかるやろ」
はやては続けて、にやりと笑う。
「これだけ大掛かりやし、管理局は千雨ちゃんをスカウトする気でいるかもしれへんな~。何しろなのはちゃんに匹敵する素材やし」
「……まあ、将来の選択肢の一つには入れとくか」
そうして千雨はミッド式の魔法教本を読み始めた。
「なんとなく理解はできたけど……」
教本を読み終わった千雨は、リンディからデバイスを受け取る。なんだか機械的だが、これが魔法の杖なのだそうだ。
【Hello world!】
杖が、しゃべる。
「は?」
【起動SE再生完了。はじめまして。今回、長谷川千雨様のミッドチルダ式魔法習得を補助するAI、仮名称『Fairy-01』です。よろしくお願いします】
英語のようだが、頭ではちゃんと日本語の様に理解できる。
「お、おう」
【では、まずはバリアジャケット構築……。構築中です。しばらくお待ちください……】
少女変身中。
「なんださっきの魔法少女の変身シーンみたいなものは」
【仕様です。バリアジャケットは千雨様の普段着をアレンジさせていただきました】
現在の千雨の格好は、チルノの服に似ていた。確かに普段着ではある。細かい部分を見ると、なのはの変身後の衣装に似ているような気もする。
【ではさっそくエターナルコフィンを――】
「ちょ、ちょっとまって!」
リンディが『Fairy-01』を止める。
【なんでしょう?】
「それは極大氷結魔法じゃない! 何であなたに記録されているの!?」
【彼女の力を十全に発揮するためには、氷結魔法こそがベストだと判断しました。名称は対象を永久凍結する効果をもって、エターナルコフィンとしました。同じ名称の魔法が存在するのですか?】
なんだかリンディと『Fairy-01』がもめた。しばらくして『Fairy-01』が折れた。
【では要望通り、組み上げたプログラムを破棄して、遠距離攻撃魔法を行使します】
「ええ、そうして」
【では千雨様、構えてください】
何度か『Fairy-01』から姿勢がダメだといわれて、修正した千雨。『Fairy-01』は納得がいったらしく、OKを出す。
【では、スターライトブレイカー発射シークエンス開始します】
「ちょっとまってえ!」
リンディが絶叫する。青色の光が『Fairy-01』の先端に集まり始める。
【停止命令。……エラー。スターライトブレイカー発射シークエンス継続します】
京都でのなのはの一撃がスターライトブレイカーだったことを思い出して、千雨は顔を青くする。
「大丈夫だろうな?」
【人命にかかわることはありません。観測機器が粉砕される恐れがあります。魔力集束中です】
「負傷者は出るか?」
【…………千雨様には一切影響はありません。魔力集束完了しました。発射シークエンス、次の段階に移行します】
即座に避難命令を下すリンディ。
負傷者はおらず、観測機器はいくつか壊れた。弁償はしないで済むらしい事に千雨はほっとした。