恐れていた事態が起きた。
食堂で昼食をとっていた千雨は、周りが騒がしいことに気が付く。
どうやらみんなテレビを見ているらしく、千雨も視線をテレビに向けてみたら、ちびチルノが映っていた。
「ブフウゥッ!!」
ゲストに出された飲み物のコップから顔を出していたちびチルノ。千雨は速攻で氷を作って、指先でちびチルノを回収した。
しかし番組は生放送。日本全国にちびチルノの存在が知られてしまった。携帯でネットの状況をチェックすると、もう話題は拡散して、動画までアップされていた。
「……どーしよ」
千雨も一応魔法使いに弟子入りしたので、バレたらオコジョにされるのは知っていた。
ビクビクして午後を過ごした。いつ学園長に呼び出されてオコジョにされるのか心配でしょうがない。
「……いざとなったらチルノとして生きようかな。……幻想郷に戻るのもいいかな」
ところが学園長からは何の連絡もない。やってきたのは人の言葉をしゃべれないほどに混乱したネギだけであった。
千雨は状況が気になって、放課後になって学園長室に行こうとしたら、しずな先生に止められた。今は忙しいのだそうだ。
仕方なく出直そうとすると、茶々丸からメールが来る。エヴァが修行に来いと言っていることを伝える内容だった。
師匠に相談してみると、眼鏡をかけて説明してくれた。
「お前のことはジジイに報告してある。ド素人のくせに私の呪いを解いた人間だとな。……呪いをかけたのは、ぼーやの父親『千の呪文の男』だ。コイツは今でも大英雄。そんなやつが掛けた呪いを、魔力の扱い方も知らんのに力技でブチ破って『闇の福音』という化け物を解き放った、化け物以上の化け物がお前だ。ジジイがお前のことを本国に報告しているなら手を出す勇気があるやつなんざいないし、報告していなかったならお前がいること自体知られてない」
「なるほど、よくわかりました師匠。チート万歳」
「……? ついでに化け物扱いの私も責任は取らされることもない」
面倒なことが来ても学園長のところで止まるから、心配いらないと話を締めくくるエヴァ。
「だからぼーやも意味不明な言葉を呟いてないで、別荘に入れ。修行を始めるぞ」
結局その日も魔力放出を止めることができなかった千雨であった。
帰宅した千雨がネットを見たら、なんか話が変な方向に飛んでいた。
1.妖精さんはいたんだよ。
2.奇跡も魔法もあるんだよ。
3.ていうか魔法使いもいるんだよ。
4.普通の人たちに紛れて暮らしているよ。
5.実はNGO団体を隠れ蓑にして活動してるよ。
6.魔法の世界もあるよ。
7.実は火星に幻想空間を作ってそこで生活してるよ。
8.魔力が枯渇してその幻想空間壊れそうだよ。
9.完全なる世界に移住するといいよ。
10.とにかく妖精さん萌え。←今ここ