転生した経緯を思い出した千雨は、どこまでチートなのかを試すためにちょっくら高速飛行してみた。
大気圏突破して光速も突破。ブラックホール突入して別世界に飛び出してしまった。
「……チートすぎる」
寮においてきたちびチルノとのつながりはまだあるらしく、氷で転移すれば元の世界に戻れることを確認した千雨はどんな世界なのか見て回ることにした。
この世界の地球の日本列島に降りた千雨。ちょっくら散策してみたら、見覚えのある神社を見つけた。
「博麗神社……もしかして戻ってきたのか?」
結界をぐいぐいと潜り抜けてみたら、やはり幻想郷があった。
「……また来た」
声がしたので後ろを振り向くと、そこにはチルノの記憶のままの博麗霊夢が箒を持って立っていた。
「今度はどこの妖精?」
「えーと、ちょっと待ってくれ。また来たってどういうことだ?」
「質問してるのはこっち、早く答えて」
仕方がないのでチルノであることを告げると、霊夢は驚いた。
「チルノ? あのバカな氷の妖精!?」
「本人目の前にしてそれはないだろう。……否定は出来ないが」
霊夢の説明によると、どうやらあのチート転生神がほいほい転生させまくった妖精たちが続々と帰ってきているという。
「あの馬鹿な神の言葉によると、半年以内に全員一度は帰ってくるとか」
千雨は違和感を覚える。
「半年? 私は十五年位人間やってたぞ?」
「時間の流れは世界によって変わるし、チート存在は時間を超える事が出来たりもするらしいわ。これも馬鹿神の言葉」
霊夢は騒動や異変を起こさないよう釘を刺して、掃除を再開しようとした。
「あ、そうだ。そのチート転生神はどうなった?」
霊夢がなんでもないことの様に、千雨に教える。
「紫のところでサンドバッグやってるって聞いたけど」
人里を訪れてみれば、前より活気があった。チート転生した妖精たちがそこらへんで人間と一緒に暮らしているようだ。
「まあ、人間に転生したなら、そういうこともあるか」
ぶらぶら歩いていたら、赤い髪の高校生くらいの少年が千雨に声をかけてきた。
「おーい、もしかしてチルノじゃないかー?」
「ん? お前誰だ?」
「おいおい、忘れたのか? 鍛冶屋で手伝いやってた……」
「ああ、シロウか」
「おう」
チルノ時代に時々遊んだりしていた相手だ。確か紅魔館のメイド長にナイフを作っていたとか言っていた。
「お前もチート転生してたのか」
「おう、もっといい刃物作りたいって言ったらいきなり転生させられてな」
チート転生神も無茶苦茶だ。
「その願いは叶ったのか?」
「もちろん。投影、開始」
呪文らしきものを唱えたシロウの手の中にキラキラ光るなんだかすごそうなナイフが出現した。
手に取って観察していたら、シロウがチルノにやるよといった。
「いいのか?」
「ああ、材料とかも別にいらないし。じゃあ俺はメイド長に注文されてたナイフも納品したし、転生先の世界に帰るよ」
そうして彼は宝石でできた棍棒のようなものを取り出して、どこかに消えてしまった。
「今度はなのはもつれてくるか」