とりあえず今頃落ちてきた天ヶ崎千草と、呆然としている犬上小太郎と月読を捕まえておいたらエヴァンジェリンがやってきて、救援に来たといった。
「戦いならもう終わったぞ」
「そうか、それはよかった」
千雨の言葉に心底安堵した様子のエヴァ。そこにちびチルノがやってきて、エヴァを追いかけまわしたりしたが、まあそれは置いておく。
「パッと見たところ、ほとんど石化されたみたいだな」
「そうです! みんなの石化を解かないと!」
思い出したように叫ぶネギ。エヴァは紙に何かを書いて千雨に渡してきた。
「なんだこれ?」
「石化解呪の呪文だ。お前が馬鹿みたいに垂れ流す魔力を使えば少々強引になるが解呪もできるだろう」
そういって小さな杖を渡すエヴァ。木乃香やなのはたちにも杖と紙切れを渡していく。人海戦術で解呪していくつもりらしい。
「ぼーやは呪文だけあればいいな。最初は近衛詠春あたりを解呪した方がいいか。奴なら西にいる石化解呪できる術者を知っているはずだ」
そういって解呪に取り掛かるエヴァ。千雨は役に立つかわからないが、やらないよりはましだと考えて手の中の紙切れを見た。
「えーと、何々? プラ・クテ ビギナル……」
途中千雨がエヴァンジェリンにかかっていたらしい呪いを解いてしまうというアクシデントがあったものの、何とか全員元に戻った。
「学校卒業したら南の島で人形作ったり、子供たちに魔法を教えながら暮らそうかな……」
などとエヴァンジェリンが元賞金首らしからぬことを呟いていたのを千雨は聞いた。
あと、どうもなのはたちの魔法とエヴァンジェリンたちの魔法は違うものらしく、互いに興味を持っていた。
長谷川千雨は夢を見ている。それはまだ、長谷川千雨になる前の事。
チルノは縄張りにしていた湖の上で、大ちゃんと追いかけっこしていた。
「少女たちよ! 転生したくはないか!?」
なんだか真っ白でピカピカ光る、変なおっさんがあらわれてそんなことを言った。
「だれあんた?」
「うむ、名前はまだないが、私は神だ!」
そう言い切る変なおっさん。
「神様?」
大ちゃんは不思議そうに首をかしげる。
「うむ、正確にはチート転生の神! さまざまなチート能力を与え、あらゆる世界に転生させることができる神だ!」
チルノはそんな神様聞いたことがなかった。
「うさんくさー」
「何を言うか! 私は今までこの幻想郷に住む妖精たちをたくさんチート転生させてきたぞ!」
そういわれると、最近妖精の数が減ってきていたような気がする。
「では、質問を変えよう。君たちには何か願い事はないかね?」
チルノは速攻で手を挙げて、いつもの言葉を口にする。
「あたいはサイキョーになりたい!」
大ちゃんはおずおずと、手を挙げて、
「私はチルノちゃんみたいに強くなりたいなあ……。あ、あと自分の名前もほしい!」
「なんで?」
「チルノちゃん達は私のこと『大ちゃん』って呼んでくれるけど、ほかの人たちは、『大妖精』って呼んでくるから……」
「そっか」
チルノたちのやりとりを聞いていた自称チート転生神は大きくうなずく。
「そうかそうか、両方とも簡単な願いだ! 私がかなえてあげよう!」
「ほんとっ!?」
自称チート転生神が、笑う。
「そうだとも。よし、君たち二人は仲がいいようだし、同じ世界に転生させてあげよう」
「やったあ!」
そして、チルノと大ちゃんはピカピカの光に包まれる。
「一つ注意だ! チート転生してもチート能力は悪用してはいけない!」
「はい!」
「はーい!」
二人が元気よく返事をしたので、チート転生神は二人を転生させた。
夢から覚めた千雨は、ぼんやりとつぶやいた。
「そういやそんな経緯だったっけ」
ちなみにこのチート転生神、戦闘力は皆無で、異変に気が付いた博麗の巫女に三秒で倒された。
後、転生したチート妖精たちがあとで全員帰ってくるという驚愕の事実が判明して、八雲紫が「最悪」と言い切った異変である。