ヴィータが独り言のように呟く。
「うへえ、また威力上がってんだろ」
あたりを見回していたシャマルがほっと胸をなでおろす。
「周りにいた人たちは全員無事ですね。結界が張ってある建物が近くにあってよかったです」
「重ね掛けしないと私たちも危なかったな」
「まあ、この結界も今回の一撃で相当ガタガタになったみたいだが」
そうシグナムとザフィーラの言葉が続く。
救出された人の中には一応小太郎と月読もいて、結界の中から土煙の収まらない外の様子を呆然と見ていた。
一方この惨事を引き起こしたなのはのいる場所。千雨はその威力に感心していた。
「まさかここまでぶっ飛んだ威力の砲撃とは……。もう弾幕ごっこもなのはに負けるかもしれねえなあ」
にゃはは、となのはは頭をかく。そのなのはめがけて、上空から石の槍が落ちてくる。
「なのは、危ない!」
千雨がそれに気付いて、なのはを突き飛ばす、千雨が代わりに石の槍に貫かれ、落ちる。
「千雨さん!」
フェイトが叫び、バルディッシュを構える。降りてきた白髪の少年は、表情を変えずに言った。
「君は危険すぎるね。できればさっき仕留めたかったな」
そう言われたなのはは、なぜか千雨が落とされたにもかかわらず、不敵な笑みを浮かべていた。
「……なのは?」
「そういえばフェイトちゃんには言ってなかったね――」
少年は下から一瞬で伸びてきた氷の槍に貫かれる。
「――妖精は、ピチュっても復活できるんだよ」
槍の上には、いつの間にか千雨が浮かんでいた。
「こっちでもそうだっていうことは教えといてくれ、なのは」
「ごめんね、千雨ちゃんも知ってるかと思ってた」
千雨が念のため、虫の息のスクナが何かの拍子で暴れないように凍らせていたら、絶対零度近辺に到達したはずなのに、まだ温度を下げられそうなことに気が付いた。
「物理的に無理がありそうだけど……」
好奇心の赴くまま、千雨は絶対零度以下にチャレンジ。なぜだかスクナがぐずぐず消えていった。
「なんでだろう?」
熱エネルギーがないにもかかわらず熱を奪い取ろうとした結果、質量がエネルギーに変換されて奪い取られたので消えたように見えたのだが、千雨はそんなこと知る由もなかった。