二人でどこかに行こうとしているネギと明日菜に声をかけようとした千雨は刹那からようやく詳しい事態の説明を受けたのであった。
「そんなことになってるとは」
「とはいっても、長谷川さんは気にせず修学旅行を楽しんでください」
そうは言われても、木乃香が狙われているのに何もせずにいるというのも気分的によくない。
「ただまあ、相手が動かないことにはどうしようもないか……」
刹那が式神を飛ばすのを、黙ってみているしかなかった。
関西呪術協会の本山に親書を届けに行ったネギたち。明日菜とのちゃんとした仮契約は今朝したばかりだ。
「――これは、無間方処の咒法です」
いともあっさり罠に引っかかった。
「本物の刹那さんは助けに来れないの!?」
「敵が狙っているとわかった以上、お嬢様の側を離れる訳には……ってああ、本体のほうでも敵が――」
そういってちびせつなの姿が薄れて、なぜか別の姿になった。
「え?」
「あれ?」
「は?」
それは薄い水色の髪、青い瞳で、緑のリボンを頭に着けていて、白いシャツの上に青いワンピース。
デフォルメされたチルノであった。
「おっす! あたいちびチルノ! 夜露死苦!」
「ちょ、いったい何が起きたの! 刹那さんは!?」
明日菜がちびチルノに詰め寄る。
「サイキョーのあたいが答えてやろう! 知らん!」
明日菜は目の前が真っ暗になった!
「ていうか、何が起きてんの?」
ちびチルノの疑問に閉じ込められたことを必死で伝えるネギたち。
「ふーん……、よし分かった! サイキョーのあたいが何とかしてやる!」
そういってちびチルノは、あさっての方向をむいて、氷弾を放つ!
「そこかーっ!」
鳥居にぶち当たる。
「こっちかーっ!」
柵にぶち当たる。
「隠れても無駄だーっ!!」
やみくもに氷弾を放つちびチルノ。さすがにネギたちにはあてないようにしているものの、周囲の物がどんどん壊されていく。
「わはははははは!!」
ああ、これはもうだめだとネギたちが思った瞬間、学ランの少年が飛び出してきた。
「ちょっ、俺はこっちや! むやみにモノ壊すんやない!」
「出てきたな! なんか犬っぽいやつだな! あたいが相手だーっ!!」
戦い始めるちびチルノと学ラン少年。
思いっきり置いてけぼりをくらったネギたちだが、ふとネギがあることに気が付く。
「あ、明日菜さん! たぶんなんですけど脱出方法がわかりました!」
「……あ、御免。事態が急展開過ぎてちょっと意識が飛んでた。で、何?」
「ちびチルノさんは周りの物を壊していただけでした。でもあの男の子は遠くからあわてて出てきて、ちびチルノさんと戦い始めたんです。もしかしてこの罠って中のどこかに弱点があるのかも!」
「な、なるほど……」
「僕たちはちびチルノさんがあいつを引き付けてくれている間にここから脱出しましょう!」
そういってネギもバンバン魔法を使って周りの物を壊していく。
「ちょ、まてまてまてまたんかー! ってああああ!!!」
ネギたちとちびチルノの無差別破壊活動を止めることができず、結局流れ弾やら何やらでズタボロにされた少年。彼は術が解けても破壊活動を続けたネギたちの様子を見に来た関西呪術協会の人間によってとらえられた。