「あ、すいません。ジョジョ通ありますか?」
新幹線の車内販売員に尋ねる千雨。
「え、あ、は? ジョジョ通……ですか?」
「ええ、ジョジョ通です。……ああ、あったあった」
ひょいとワゴンからジョジョ通を取り出して代金を渡す千雨。
「……やっぱ若返ってるなー、先生」
そのままジョジョ通を読みはじめる千雨。
「あ、すいません。私にもジョジョ通をください」
しばらくして、車内販売員に千雨と同じものを注文する人物がいた。
「あ、はい。ええと……」
「……あ、ない」
「なんでせっかくの修学旅行なのにそんなもの読もうとするのよ」
友達に呆れたように言われていた。
「修学旅行でもジョジョ通は読みたいよー」
そのやり取りをきいていた千雨は親切心を出してみた。
「読み終わったら差し上げましょうかー?」
声を上げ、仲間の居場所を確認するために席から立つ。
「え、でもいいんですか?」
「ええ、速読できるんで、すぐに……」
声のする場所から立ち上がったのは、他の学校の制服を着た、髪の毛を左側でまとめ、サイドテールにした少女。千雨は彼女を見て止まってしまった。
「……? ちょっと、どうしたの?」
隣に座っていたらしい金髪の少女が立ち上がり、サイドテールの少女に尋ねるが、彼女は千雨から目を離さない。
「いったいどうしたの? な――」
先に動いたのは、サイドテールの少女。バッと音がして、一瞬で髪の色が変わる。背中から羽が飛び出した。一緒ににいた少女たちが仰天する。
「もしかして――」
その光景を見て、千雨もバッと羽を開く。一瞬で髪と目の色が変わる。
「やっぱり! チルノちゃん!」
サイドテールの少女、いや、『大ちゃん』と『チルノ』が呼んでいた妖精が嬉しそうに千雨に飛びつく。
「大ちゃん! どうして?」
場所を移して二人っきりになった『大ちゃん』と千雨は再会を喜んだ。
「でも大ちゃんも生まれ変わっていたなんて……」
「チルノちゃんも人間になってたんだー」
そして何くれとなく話し始める。
「『チルノ』の頃の事は、最近ようやく思い出したとこなんだ」
「私は小学生の頃にちょっとした事件に関わってから」
「ふーん。……魔法関係?」
「え? チルノちゃんも『こっち』にあるの知ってるの?」
「ちょっと吸血鬼に噛まれて」
「ええっ!? 大丈夫なの?」
「ああ、元凶はぼこぼこにしといた」
あはは、と『大ちゃん』があきれたように笑う。
そこでふと、何かを思い出したように『大ちゃん』が手をたたく。
「そうそう! チルノちゃんの『今』の名前、教えて!」
「え? ああ、千雨。長谷川千雨だよ」
「私は、高町なのは! なのはだよ。よろしく、千雨ちゃん!」
そういってなのははにっこり笑った。