修学旅行初日。千雨は空を飛んでいた。
「――ちゃちゃちゃ、ちゃちゃちゃ、うー☆ れみりゃ!」
服装は制服。下半身の防御力を高める為にスパッツを着用済みだ。
「ねーママー、妖精さんがお空飛んでるよー」
「あら、どこどこ? ……キャーッ! 衝撃映像よ! カメラカメラ!」
ワーワー。ギャーギャー。
下のほうが騒がしいが、気にしない。
「お、見えてきた」
千雨の視線の先にあるのはJR大宮駅。修学旅行の集合場所である。
「よっ」
地面の近くまで下りて、チルノモード解除。途端に妖精を見失った人々が騒ぎ出す。
「ねえ君!」
千雨の肩に手をかけたのは、カメラマン達撮影スタッフを引き連れたインタビュワー。偶然テレビの街頭インタビュー中だったらしい。
「なんでしょう?」
「さっきこの辺に妖精が下りてきたよね!? もしかして見てないかな!?」
「……ああー、見てたけど見失っちゃいました。どこに行ったんでしょう?」
「君も知らないかー。……お前たち、これは大スクープだ! 絶対に妖精を探し出すぞ!」
そういって、手分けして捜索を開始するテレビスタッフ。
彼らが去って行ったのを確認した千雨は、携帯電話を開いて時間を確認。
「八時四十八分……。よし、間に合うな」
今朝うっかり寝坊した千雨は、騒ぐ人々の中から抜け出て大宮駅に入って行った。
茶々丸の工作活動によって6班に引き抜かれた千雨。班長の桜咲刹那を見つけて駆け寄る。
「あれ? エヴァンジェリンは?」
人数が足りないので尋ねてみる。
「エヴァンジェリンさんは欠席のようです」
「マスターは麻帆良から出ることができませんから」
そんなことは初耳であるが、まあ休むという事実が分かっていればいい。
「ふーん、じゃあ相坂は?」
「え?」
不思議そうな顔をする刹那。
「いや、だから相坂だよ。相坂さよ」
「そんな人いましたっけ?」
茶々丸とザジ・レイニーデイに尋ねる刹那。二人とも首をかしげる。
「なんだよ、二年ちょい同じクラスにいたのに薄情な奴らだなあ。先生ー、相坂が来てませーん」
声をかけられたネギも首をかしげる
「……あれ? そんな人うちのクラスにいましたっけ?」
「先生まで忘れてるのか……。あいつ携帯持ってないし、連絡のしようが無いな。しょうがないから欠席か……」
お供えに八ッ橋でも買って帰ってやろうかと考える千雨であった。