「あー、眠い……。全部あのアホ吸血鬼のせいだ」
千雨はコーヒーを飲んで眠気を覚ますためにスターブックスへやってきた。
そこには何故か嬉しそうに笑うエヴァンジェリンの姿があった。
「えいやっ」
「おぶっ!?」
取り敢えずムカついたので張り倒す。
「ち、千雨さん! だめですよ、暴力は!」
「長谷川千雨、貴様ッ!」
自分でも軽率だったと思うので謝る千雨。
「あー、すみません先生」
「マテ、謝る相手が違うだろうが……!」
エヴァンジェリンが怒るが、昨晩ピーピー泣いて逃げ回った奴に凄まれても千雨は全然怖くなかった。
「うるせえドヘボシューター。悔しかったら被弾数を一ケタ減らしてみろよ」
ちなみに昨晩のエヴァンジェリンの被弾回数は59223回である。遠い道程だ。
「何を訳のわからんことを。貴様一人殺す事くらい造作もないのだぞ」
「あー? テメー昨日大技出したっぽかったけど、ちっとも効かなかったじゃねえかよ」
「……フフフ、とにかく貴様が今すぐ死にたいらしいことは分かった」
始動キーを唱え始めたエヴァンジェリンを必死に止めようとネギが奮闘する。
「そ、そんな悪いことしてるとまたチルノさんが懲らしめに来ますよ!」
苦し紛れにネギが放った一言で、エヴァンジェリンの動きがぴたりと止まる。
「……ちるのこわい」
一気に幼児退行するエヴァンジェリン。涙目になって体育座りして震えだした。
「ごっ、御免なさいエヴァンジェリンさん。チルノさんいません。来ませんから!」
「いや、ここにいるんだけど」
自分を指さしていった千雨に、一同がぽかんとする。
「またまた、千雨ちゃん冗談が下手なんだから」
明日菜が笑いながら千雨の肩をたたく。
「フフフ、あまりにもくだらなすぎて逆に笑えてきたじゃないか」
「そうですよ千雨さん。どう見ても違うじゃないですか」
笑い出した一同を見て、千雨はぱっとチルノモードに移行してみた。
「キャーッ!」
エヴァンジェリンが見た目相応の悲鳴を出して逃げ出す。
「エヴァンジェリンさん! 待ってくださーいっ!」
ネギがエヴァンジェリンを追いかける。
「チ、チルノさん!? え、千雨ちゃんはどこ? ちょっとチルノさん、千雨ちゃんをどこにやったの!」
明日菜が千雨の肩をつかんで揺さぶる。
「よ、妖精さんだ! 妖精さんが出てきたぞ!」
騒ぎ出すほかの客たち。
ガクガクと揺さぶられながら、千雨は思わずこうつぶやいた。
「解せぬ」